ミニレビュー

速く使いやすくなった「Fire TV Stick」は音声標準対応。テレビで映画、スポーツの新基準

 AmazonのHDMIメディアプレーヤー「Fire TV Stick」がリニューアル。音声操作に対応し、動作を高速化して4月6日から発売された。価格は従来モデルと同様の4,980円(税込)。プライム・ビデオやAbema TV、Netflix、DAZN、dTVなどの映像配信サービスを、テレビの大画面で見るために最も安価な選択肢といえるFire TV Stick。生まれ変わった新モデルを試した。

Fire TV Stick

名前はそのままで一回り大きく

 新Fire Stick TVの強化点は、音声検索対応リモコンが付属し、音声操作が「標準」になったこと。従来のFire TV Stickは、音声認識リモコン付きモデル(6,480円/税込)と音声認識非対応リモコン付き(4,980円/税込)を用意していたが、これからは全てのFire TV Stickで音声検索が標準になる。あわせて、メモリやCPUのパフォーマンスが向上したほか、無線LANも802.11ac対応のデュアルバンド/デュアルアンテナWi-Fiに対応(従来は11a/b/g/nのみ)し、高速化が図られた。

Fire TV Stickパッケージ

 Fire TV Stickは、テレビのHDMI端子に直接挿して、映像配信サービスなどを楽しめるいわゆるHDMIスティック端末。外形寸法は85.9×30×12.6mm(縦×横×厚さ)、重量は32g。ACアダプタやHDMI延長ケーブルなどが付属する。一応、電源供給無しでも動作するが、ACアダプタ接続を促すアラートが表示されるので、基本的にはテレビへのHDMI接続に加え、ACアダプタの接続も必要だ。

Fire TV Stick。給電用のUSB端子
リモコンは音声検索対応
ACアダプタや延長HDMIケーブルなどが付属

 名前も共通で、デザインイメージもほぼ同じように見えるので、サイズもほぼ同じと思い込んでいたが、新旧Fire TV Stickを比較すると結構サイズが違って、従来モデルのほうが一回り小ぶりの84.9×25×11.5mm(縦×横×厚さ)、重量は25.1gとなっている。ただ、テレビの背面に刺すものなので実用上は問題ない。

装着例
従来モデル(左)と新モデル(右)
リモコンも少し大きめに。音声非対応の従来モデル用リモコン(左)と新モデル(右)

 なお、HDMI端子の幅一杯にFire TV Stickが占有するため、HDMI端子間の幅が狭い場合は、隣のHDMIに干渉してしまう。そうした場合は、付属の延長ケーブルを利用したい。

隣の端子に干渉するので、旧Fire TV Stickを延長ケーブルで接続

高速化を実感。上位機Fire TV相当のUIに

 CPUは、従来のデュアルコアから、クアッドコアのMediaTek Quad-core ARM(1.3 GHz)に強化し、専用GPU「Mali450 MP4」も搭載。無線LAN802.11ac対応のデュアルバンド/デュアルアンテナWi-Fiに対応(従来は11a/b/g/nのみ)。メモリは1GB搭載し、「Chromecastの2倍のメモリで素早く滑らかな動作を実現」するという。

新Fire TV Stickのホーム画面
視聴中の番組やよく使うアプリを上部に表示

 ユーザーインターフェイスは、従来Fire TV Stickのようなアイコンが多いデザインから変更され、Fire TV相当のものになった。プライムイチオシのコンテンツやアプリが最上部に表示され、視聴中の「次に見る」、「プライム 日本のドラマ」、「最近見たゲーム&アプリ」などが並ぶ。よく使うコンテンツやジャンル、アプリが自動的に上のほうに出る仕組みでとなっており、従来のFire TV Stickよりかなり使いやすくなったと感じる。

 上下移動だけでなく、ホーム画面の左右で番組検索やマイビデオ、映画、TV番組、アプリなどの検索も可能。本体設定もここから行なえる。

従来のFire TV Stickホーム画面。これもシンプルでつかいやすい

 Amazonプライム会員であれば、プライムビデオやミュージックだけでも十分楽しめるが、アプリとしてNetflixやHulu、dTV、niconico、DAZN、スポナビライブ、AbemaTVなどほぼすべての映像配信サービスに対応。プライムフォトやSpotifyなどのアプリも用意されているので、使っているサービスをまずは探してほしい。特に映像配信サービスにおいては、このアプリの充実はFire TVシリーズの大きな魅力といえる。

 例えば、Abema TVをよく使う人であれば、Fire TV起動時の最上部にAbema TVのアプリアイコンが表示されるし、NetflixやHuluも同様。プライム以外のよく使うアプリ/サービスへのアクセスがとてもよく、使いやすい。いい感じに、ユーザーの利用状況にあわせて調整してくれるのがありがたい。

 高速化を謳う新Fire TV Stickだが、従来モデルと比べると確かに操作のレスポンスは良くなったように感じる。筆者は、普段リビングでFire TV、寝室でFire TV Stickを使っているが、UIが異なることもありFire TVのほうが快適と感じていたが、新Fire TV Stickはそうした不満を解消してくれそうだ。

 従来のFire TV Stickも別段遅いわけではないのだが、新UIは動作をより滑らかに見せてくれるほか、再生開始時に徐々に画質が上がり、HD表示に移行するまでの時間も新型のほうが早く感じた。また、トリックプレイの反応速度も新型のほうが上だ。無線LANの5GHz対応もあると思うが、会社の2.4GHz環境で比較してみても、新型のほうが快適に感じる。

新Fire TV Stickの操作
Fire TV Stick(2015)の操作

 もう一点重要なのは「リモコン」。従来モデル(音声非対応)より一回り大きく、背面がラウンドしたものになり、手になじみ操作しやすくなった。基本的には、従来の音声対応Fire TV StickやFire TVとほぼ同デザインのようで、Fire TVユーザーの筆者が使い慣れているということもあるが、その点を差し引いても新しいリモコンのほうが使いやすく、操作性向上に寄与していると感じる

標準で音声検索対応。スポーツの春にもバッチリ?

 そして気になるのが音声認識/検索。Amazonといえば、音声エージェント「Alexa」を搭載したスマートスピーカー「Amazon Echo」を始め、年初のCESではAlexa搭載のテレビや家電製品が続々発表されて話題を呼んだ。

 だが、Fire TV Stickにおける音声検索は限定的で、基本的にはプライムビデオなどのAmazonサービス用という位置づけだ。この点は従来のFire TV/TV Stickと大きな変化はないようだ。ただ、音声認識の精度はかなり良いので、プライム関連のコンテンツ操作であれば、ほぼ音声でこなせるはず。バーチャルキーボードを開く必要はなさそうだ。

新Fire TV Stickのリモコン。上のマイクボタンを長押しして、音声検索
リモコンは従来モデル(音声非対応)より、若干大きくなっている
グランドツアーで検索
検索結果

 他社サービスの検索はできないので、例えば「テラスハウス」と検索しても、Netflixのテラスハウス新作は検索にはかからず、プライムビデオ内のテラスハウスがヒットするだけ。認識精度はしっかりしているので、他社のサービスまで横断検索できると、さらに便利になるとは思う。ただ、NetflixやAbema TVといったアプリの呼び出しは可能で、リモコンに「Abema TV」と語り掛ければ、検索結果としてAbema TVを表示し、決定キーを押すだけでAbema TVアプリを起動できる。

「テラスハウス」の検索結果は、プライムビデオ関連のものだけ。同種の恋愛リアリティショーであるバチェラージャパンがヒットしている

 一見大きな変更がないと思っていたが、サイズも中身もユーザーインターフェイスも一新し、確実に進化した新「Fire TV Stick」。4K出力以外の機能は、上位機の「Fire TV」に近づき、それでいて4,980円という低価格が魅力といえる。

 また2015年のFire TV/TV Stick登場当時と比べると、プライムビデオはもちろんだが、アプリケーション環境も大幅に充実した。開幕したJリーグを見るために「DAZN」を使う、あるいは「スポナビライブ」で野球を見る、といったアプリ/サービスが充実してきおり、より多くの人が手に取りやすいものになったと感じる。映画、音楽、スポーツを手軽に楽しみたい人にとって、間違いなく魅力的といえる製品の登場だ。

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FireTV Stick

臼田勤哉