ミニレビュー

球春到来! 太っ腹な「スポナビライブ」と小型プロジェクタの大画面プロ野球が快適

 春。普段ほとんどテレビ放送を見ない筆者にとって、テレビを長時間つけっぱなしにする数少ない季節の到来である。

球春到来! スポナビライブの映像をFire TV Stick経由でプロジェクタ視聴

 もっとも、実際にテレビのプロ野球中継にかじりつく時間は、かつてに比べ減りつつあるのが実情だ。というのも、最近のプロ野球はネット中継が増え、一部球団を除いては多くの試合をPCやスマホ、タブレットで視聴できるのが普通になったからだ。

 ネット中継では、得点経過や選手の打撃成績をチェックしながらの視聴も簡単だし、他の試合の途中経過もまとめて追える利点がある。筆者の場合、ここ1~2年はネット中継を基本に、もしそれがなければテキスト速報のみで済ませることが多くなりつつある。しかしその一方で、迫力あるライブ中継を大画面で楽しみたい気持ちもないわけではない。

 そんな中、今年新たな選択肢として加わったのが、手持ちのプロジェクタにAmazon「Fire TV Stick」を組み合わせ、プロ野球のネット中継を大画面で楽しむ方法だ。本稿執筆時点ではまだ開幕カード3連戦を消化したばかりだが、これがなかなか快適で、今後の視聴環境の本命になる気配が濃厚だ。

 といった話題の概略をSNSで書いたところ、編集部からそれで記事にまとめてほしいと声を掛けられたので、今回は筆者宅におけるプロ野球のライブ視聴環境について、現状でのよい点や悪い点を交えながら紹介したい。似た環境の構築を考えておられる方の参考になれば幸いだ。

「スポナビライブ」。10球団の主催試合を5月末まで無料でライブ配信する太っ腹なキャンペーンを行なっており、現状では大本命といったところ

Fire TV Stickで使えるスポナビライブアプリが登場

 AmazonのFire TV Stickは、映像配信サービス「Amazonビデオ」などをテレビで視聴するための機器だ。HDMI端子さえあればテレビに限らず利用できるので、筆者は昨年購入した家庭向けのコンパクトプロジェクタ「QUMI Q6」にFire TV Stickを接続し、日頃からAmazonビデオを大画面で楽しんでいる。「QUMI Q6」はHDMI端子を2基搭載するため、Fire TV Stickを抜き差ししなくても別の機器を繋げられるのがなかなか便利だ。

「QUMI Q6」。手のひらサイズながら800ルーメンという明るさを持つコンパクトプロジェクタ。実売価格6万円台前半とやや値段は張るが、部屋の照明をつけたままでもそこそこ見られる明るさがある
HDMIを2系統搭載するため抜き差しせずに2台の機器から入力できるのが大きなメリット。なお内蔵スピーカーは音が割れるため、外付けのスピーカーは事実上必須だ
Fire TV Stick。スティックタイプのSTBで、HDMI端子に挿して使用する。筆者が利用しているのは2015年モデルだが、4月6日に登場した新モデルは音声入力に対応したリモコンが標準添付される。価格は4,980円
「QUMI Q6」に「Fire TV Stick」を挿すとワイヤレスで使える動画配信プロジェクタのできあがり。実際にはここに電源ケーブルが加わるが、本体が小さいこともあり取り回しは悪くない
新モデルでは標準添付になった音声入力対応のリモコン。もっともプレイバック機能を使わない限り、ライブ中継中に操作する機会はほぼない
「QUMI Q6」は本体角度を調節する機構がないため、壁面投映にあたってコンデジ用のスタンドを取り付けて角度を調整している

 さて、Fire TV StickはAmazonビデオだけではなく、アプリをインストールすることにより、NetflixやHuluなど、様々な映像配信サービスも利用できる。ホーム画面からすぐにタイトルを選べるAmazonビデオ、プライムビデオと違い、外部サービスを利用するためにはアプリを選択して起動する一手間はかかるものの、Fire TV Stickが1台あればさまざまな映像配信サービスが利用できるのは大きなメリットだ。

 アプリの中には、プロ野球のライブ配信を行なっているサービスが複数存在する。今回紹介する「スポナビライブ」もその一つで、もともとは今年の夏から投入予定だったのが、前倒しでシーズン当初から利用できるようになったという経緯があるらしい。

 注目すべきなのは、このスポナビライブが現在、5月利用分までの無料キャンペーンを行なっていることだ(通常はソフトバンクユーザーとYahoo!プレミアム会員が月額980円、その他は月額1,480円)。申込日によって若干前後するようだが、いま申し込めば交流戦前のリーグ戦最終日となる5月28日までの試合が無料で観られるわけで、控えめに言って神対応である。というわけで、早速使ってみることにした。

 なお、筆者が使っているFire TV Stickは従来モデル(2015)だが、4月6日には、CPUをデュアルコアからクアッドコアに強化し、通信も11acへと対応させた新モデルが発売されている。筆者の環境では2015モデルでも十分だったが、環境によっては11acをサポートしないとスムーズに視聴できない場合もあるだろうし、CPUが強化された新モデルでは、ホーム画面周りの操作のもっさり感も改善も期待される。価格も同じなので、これから購入する人は新型を選ぶとよいだろう(すでにAmazonでは2015モデルの販売は終了している)。

フルHDでプロ野球の試合を視聴可能、ハイライトや見逃し配信にも対応

 利用に当たっては、まずあらかじめスポナビライブのアカウントをPCやスマホなどで取得し、IDを用意しておく。今回は試していないが、ソフトバンクの携帯・スマホを使っていればそれらのアカウントでそのままログインすることも可能なようだ。

 Fire TV Stickを起動し、まず最初に行うのが「スポナビライブ」アプリのインストールだ。FireTV Stickのホーム画面からアプリを選択し、横にスクロールしながらアプリを探す。見つかったらインストールを実行し、アプリを開いてログイン。あとは画面左のメニューから視聴したい番組を選ぶだけでよい。すぐに放送が開始される。

Fire TV Stickを起動して「アプリ」カテゴリから「スポナビライブ」を横スクロールしながら探し、見つかったらインストールを行なう
利用規約に同意
メニューから「プロ野球」を選ぶと、当日にライブ配信される試合に加え、過去試合のハイライト配信、見逃し配信などが表示される。ちなみに女子プロ野球も配信されている
未ログインであればこの時点でログインするよう促される。会員登録はあらかじめ済ませておこう。なお無料期間もクレジットカード番号の登録は必須となる

 いったん起動してしまえば、その後は通常のテレビ放送とほとんど同じだ。フルHDということで解像度も十分、ネット中継にありがちなブロックノイズなどもなく、プロジェクタと組み合わせると大画面テレビが室内に出現したようになる。従来のネット中継では転がったゴロすら見えないこともしばしばだったが、4段階ある画質設定をいちばん下の「低画質」にでもしない限り、そのような心配も皆無だ。従来の、試合経過が分かるだけで十分というレベルのネット中継に慣れていると、その画質のよさに感動する。

 また、プレイバック機能も用意されているので、たまたまよそ見をしていたところ大歓声が聞こえてきて、画面に目をやると打者がダイヤモンドを一周してホームインする瞬間だった……という場合も、リモコンのボタンをワンプッシュすれば、だいたい投球直前くらいの位置から観直せる(ボタンを複数回押せばさらに前の位置まで戻れる)。番組内でのリプレイを待つ必要がないので、ながら作業をしながら中継を楽しみたい場合にぴったりだ。

ログインして再度試合を選択するとすぐさまライブ中継の映像が表示される。右上の字幕を見る限り、この試合はフジテレビONEから映像提供を受けているようだ

 ちなみにこの「スポナビライブ」は、ライブ中継はもちろん、ハイライト配信、さらには一試合まるまるの見逃し配信にも対応している。ライブで見られなくともあとからチェックできるのは、ひとつの利点と言っていいだろう。なお一部チームについては非対応の場合もあるようなので(プロ野球ファンならだいたいお察しだろうが)、詳しくは同サービスの紹介ページで確認してほしい。

ちなみにスマホ版では、テキスト速報および成績が画面下に表示される

高画質でストレスフリー。遅延の幅は他サービスより大きめ?

 さて、動画配信サービスでプロ野球中継を観るにあたって、ファンとしてどうしても譲れないのは、「プレーがスムーズに観られるか」だろう。野球に限らずどんなスポーツにもつきものだろうが、決定的瞬間で画面が固まってしまったり、カクカクした動きになると、視聴する側のストレスは最高潮だ。一試合にこうしたことが何度も起こるようでは、サービスの解約に至ってもおかしくないだろう。

 しかし、今回ヤクルト-DeNAの開幕カード3試合、およびオリックス-楽天戦1試合を途中から視聴した限りでは、こうした問題は見られなかった。接続した直後、帯域が最適化されるまでの十数秒程度は画面が乱れることもあるが、これはネット中継であればどこも似たようなもので、それ以降は非常に安定している。今回使用したFire TV Stickは2015年モデルゆえWi-Fiは11acに非対応(11a/b/g/nのみ対応)だが、筆者宅においてはこれで十分なようだ。

 なお、唯一ネックになるかもしれないのが、放送の遅延だ。ネット中継は地上波やBSと比較すると十数秒前後の遅延が発生するのが一般的だが、スポナビライブはこの遅延の幅がかなり大きいようで、後述するAbemaTVで同じ試合を見比べても、20秒ほど遅れて映る。スポナビライブにはスマホアプリ版もあるが、今回使用したFire TV版はそれらと比べてもさらに数秒程度は遅れるようなので、リアルタイムに比べると30秒ほどは遅延していると考えられる。

 それゆえ、ネットでテキストによる試合実況を目で追いながらライブ映像を観ていると、瞬間的にテキスト実況からネタバレが発生する。例えば、プロ野球の試合経過をスマホで見る際に事実上の標準になっている「スポナビ プロ野球速報」アプリは、更新速度の異常な速さに定評があるが、上記の環境で試合を視聴しながらこのアプリを使うと、一時的にアプリ上のテキスト情報が、ライブ中継映像よりも先に表示されるケースがある。得点経過を知ろうとテキスト画面を見ていてうっかり視聴中の打席の結果を知ってしまうことになりかねないので、気をつけたほうがよさそうだ。

AbemaTVなどほかにも対応サービス多数。Fire TV Stickは新モデルがおすすめ

今回はスポナビライブを例に紹介したが、Fire TVにはこのほかにも、野球中継にまつわるアプリとして、AbemaTVやDAZN、ニコニコ生放送などがラインナップされている。また国内からはライブ中継は見られずハイライトを中心とした視聴になるが、MLB.TVなども、メジャーリーグのファンには要注目だろう。

今シーズンの横浜DeNAベイスターズ主催全71試合を完全無料するAbemaTVもFire TV対応のアプリが用意されている。試した限りではスポナビライブに比べて遅延は少なく、横浜DeNAベイスターズ戦に関してはむしろスポナビライブよりもおすすめできる。ちなみにスマホでは可能な視聴予約は、Fire TV版ではできないようだ
横浜DeNAベイスターズと広島東洋カープの主催試合(広島県内及び一部地域は視聴不可)を中継するDAZNもアプリが用意される。オープン戦では一部試合が放映中止になるトラブルがあっただけに対応に注目が集まる

 この手のネット中継では、会員数が増えてサーバに負担がかかり始めた際、事業者がどのような改善策を打ち出すか否かが、視聴を継続するか否かの指標となる。そういう意味で、なるべく多くのユーザがこの無料視聴を試してくれれば、6月以降にスポナビライブを有料契約するか判断がつきやすくなるので、現在検討中の筆者個人としてもたいへんありがたい。もちろん、そうした事情を差し引いても、おすすめしたいサービスであることに変わりはないので、プロ野球ファンの方はぜひ試してみてほしい。

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山口真弘