ミニレビュー
球春到来! 太っ腹な「スポナビライブ」と小型プロジェクタの大画面プロ野球が快適
2017年4月7日 08:00
春。普段ほとんどテレビ放送を見ない筆者にとって、テレビを長時間つけっぱなしにする数少ない季節の到来である。
もっとも、実際にテレビのプロ野球中継にかじりつく時間は、かつてに比べ減りつつあるのが実情だ。というのも、最近のプロ野球はネット中継が増え、一部球団を除いては多くの試合をPCやスマホ、タブレットで視聴できるのが普通になったからだ。
ネット中継では、得点経過や選手の打撃成績をチェックしながらの視聴も簡単だし、他の試合の途中経過もまとめて追える利点がある。筆者の場合、ここ1~2年はネット中継を基本に、もしそれがなければテキスト速報のみで済ませることが多くなりつつある。しかしその一方で、迫力あるライブ中継を大画面で楽しみたい気持ちもないわけではない。
そんな中、今年新たな選択肢として加わったのが、手持ちのプロジェクタにAmazon「Fire TV Stick」を組み合わせ、プロ野球のネット中継を大画面で楽しむ方法だ。本稿執筆時点ではまだ開幕カード3連戦を消化したばかりだが、これがなかなか快適で、今後の視聴環境の本命になる気配が濃厚だ。
といった話題の概略をSNSで書いたところ、編集部からそれで記事にまとめてほしいと声を掛けられたので、今回は筆者宅におけるプロ野球のライブ視聴環境について、現状でのよい点や悪い点を交えながら紹介したい。似た環境の構築を考えておられる方の参考になれば幸いだ。
Fire TV Stickで使えるスポナビライブアプリが登場
AmazonのFire TV Stickは、映像配信サービス「Amazonビデオ」などをテレビで視聴するための機器だ。HDMI端子さえあればテレビに限らず利用できるので、筆者は昨年購入した家庭向けのコンパクトプロジェクタ「QUMI Q6」にFire TV Stickを接続し、日頃からAmazonビデオを大画面で楽しんでいる。「QUMI Q6」はHDMI端子を2基搭載するため、Fire TV Stickを抜き差ししなくても別の機器を繋げられるのがなかなか便利だ。
さて、Fire TV StickはAmazonビデオだけではなく、アプリをインストールすることにより、NetflixやHuluなど、様々な映像配信サービスも利用できる。ホーム画面からすぐにタイトルを選べるAmazonビデオ、プライムビデオと違い、外部サービスを利用するためにはアプリを選択して起動する一手間はかかるものの、Fire TV Stickが1台あればさまざまな映像配信サービスが利用できるのは大きなメリットだ。
アプリの中には、プロ野球のライブ配信を行なっているサービスが複数存在する。今回紹介する「スポナビライブ」もその一つで、もともとは今年の夏から投入予定だったのが、前倒しでシーズン当初から利用できるようになったという経緯があるらしい。
注目すべきなのは、このスポナビライブが現在、5月利用分までの無料キャンペーンを行なっていることだ(通常はソフトバンクユーザーとYahoo!プレミアム会員が月額980円、その他は月額1,480円)。申込日によって若干前後するようだが、いま申し込めば交流戦前のリーグ戦最終日となる5月28日までの試合が無料で観られるわけで、控えめに言って神対応である。というわけで、早速使ってみることにした。
なお、筆者が使っているFire TV Stickは従来モデル(2015)だが、4月6日には、CPUをデュアルコアからクアッドコアに強化し、通信も11acへと対応させた新モデルが発売されている。筆者の環境では2015モデルでも十分だったが、環境によっては11acをサポートしないとスムーズに視聴できない場合もあるだろうし、CPUが強化された新モデルでは、ホーム画面周りの操作のもっさり感も改善も期待される。価格も同じなので、これから購入する人は新型を選ぶとよいだろう(すでにAmazonでは2015モデルの販売は終了している)。
フルHDでプロ野球の試合を視聴可能、ハイライトや見逃し配信にも対応
利用に当たっては、まずあらかじめスポナビライブのアカウントをPCやスマホなどで取得し、IDを用意しておく。今回は試していないが、ソフトバンクの携帯・スマホを使っていればそれらのアカウントでそのままログインすることも可能なようだ。
Fire TV Stickを起動し、まず最初に行うのが「スポナビライブ」アプリのインストールだ。FireTV Stickのホーム画面からアプリを選択し、横にスクロールしながらアプリを探す。見つかったらインストールを実行し、アプリを開いてログイン。あとは画面左のメニューから視聴したい番組を選ぶだけでよい。すぐに放送が開始される。
いったん起動してしまえば、その後は通常のテレビ放送とほとんど同じだ。フルHDということで解像度も十分、ネット中継にありがちなブロックノイズなどもなく、プロジェクタと組み合わせると大画面テレビが室内に出現したようになる。従来のネット中継では転がったゴロすら見えないこともしばしばだったが、4段階ある画質設定をいちばん下の「低画質」にでもしない限り、そのような心配も皆無だ。従来の、試合経過が分かるだけで十分というレベルのネット中継に慣れていると、その画質のよさに感動する。
また、プレイバック機能も用意されているので、たまたまよそ見をしていたところ大歓声が聞こえてきて、画面に目をやると打者がダイヤモンドを一周してホームインする瞬間だった……という場合も、リモコンのボタンをワンプッシュすれば、だいたい投球直前くらいの位置から観直せる(ボタンを複数回押せばさらに前の位置まで戻れる)。番組内でのリプレイを待つ必要がないので、ながら作業をしながら中継を楽しみたい場合にぴったりだ。
ちなみにこの「スポナビライブ」は、ライブ中継はもちろん、ハイライト配信、さらには一試合まるまるの見逃し配信にも対応している。ライブで見られなくともあとからチェックできるのは、ひとつの利点と言っていいだろう。なお一部チームについては非対応の場合もあるようなので(プロ野球ファンならだいたいお察しだろうが)、詳しくは同サービスの紹介ページで確認してほしい。
高画質でストレスフリー。遅延の幅は他サービスより大きめ?
さて、動画配信サービスでプロ野球中継を観るにあたって、ファンとしてどうしても譲れないのは、「プレーがスムーズに観られるか」だろう。野球に限らずどんなスポーツにもつきものだろうが、決定的瞬間で画面が固まってしまったり、カクカクした動きになると、視聴する側のストレスは最高潮だ。一試合にこうしたことが何度も起こるようでは、サービスの解約に至ってもおかしくないだろう。
しかし、今回ヤクルト-DeNAの開幕カード3試合、およびオリックス-楽天戦1試合を途中から視聴した限りでは、こうした問題は見られなかった。接続した直後、帯域が最適化されるまでの十数秒程度は画面が乱れることもあるが、これはネット中継であればどこも似たようなもので、それ以降は非常に安定している。今回使用したFire TV Stickは2015年モデルゆえWi-Fiは11acに非対応(11a/b/g/nのみ対応)だが、筆者宅においてはこれで十分なようだ。
なお、唯一ネックになるかもしれないのが、放送の遅延だ。ネット中継は地上波やBSと比較すると十数秒前後の遅延が発生するのが一般的だが、スポナビライブはこの遅延の幅がかなり大きいようで、後述するAbemaTVで同じ試合を見比べても、20秒ほど遅れて映る。スポナビライブにはスマホアプリ版もあるが、今回使用したFire TV版はそれらと比べてもさらに数秒程度は遅れるようなので、リアルタイムに比べると30秒ほどは遅延していると考えられる。
それゆえ、ネットでテキストによる試合実況を目で追いながらライブ映像を観ていると、瞬間的にテキスト実況からネタバレが発生する。例えば、プロ野球の試合経過をスマホで見る際に事実上の標準になっている「スポナビ プロ野球速報」アプリは、更新速度の異常な速さに定評があるが、上記の環境で試合を視聴しながらこのアプリを使うと、一時的にアプリ上のテキスト情報が、ライブ中継映像よりも先に表示されるケースがある。得点経過を知ろうとテキスト画面を見ていてうっかり視聴中の打席の結果を知ってしまうことになりかねないので、気をつけたほうがよさそうだ。
AbemaTVなどほかにも対応サービス多数。Fire TV Stickは新モデルがおすすめ
今回はスポナビライブを例に紹介したが、Fire TVにはこのほかにも、野球中継にまつわるアプリとして、AbemaTVやDAZN、ニコニコ生放送などがラインナップされている。また国内からはライブ中継は見られずハイライトを中心とした視聴になるが、MLB.TVなども、メジャーリーグのファンには要注目だろう。
この手のネット中継では、会員数が増えてサーバに負担がかかり始めた際、事業者がどのような改善策を打ち出すか否かが、視聴を継続するか否かの指標となる。そういう意味で、なるべく多くのユーザがこの無料視聴を試してくれれば、6月以降にスポナビライブを有料契約するか判断がつきやすくなるので、現在検討中の筆者個人としてもたいへんありがたい。もちろん、そうした事情を差し引いても、おすすめしたいサービスであることに変わりはないので、プロ野球ファンの方はぜひ試してみてほしい。
FireTV Stick(新) | QUMI Q6 |
---|---|