ミニレビュー

DSD対応NAS「RockDisk Next」とDLNAコンポでハイレゾを快適に

NAS+ソニー「MAP-S1」でPCオーディオ派から転向?

 ハイレゾ音源に対応したオーディオ機器が各メーカーから続々と登場している。また、e-onkyoやmoraといったハイレゾ音楽の配信サービスも、この1年ほどで楽曲数、配信サイトともに増えており、対応製品やサービスが増えたことで、自分の視聴スタイルや環境に合わせてシステムを構築するための選択肢も多くなっている。ハイレゾ=高音質に音楽を楽しむ環境はより身近になってきた。

DSD対応NASのRockDisk Next

 ハイレゾ音源を楽しむための機器構成にはいくつか種類があるが、筆者の場合はライターという仕事上の関係でPCの前にいる時間が長いので、PC→DDC→DAC→ヘッドフォンという繋ぎ方でPCオーディオ環境を構築している。この環境自体に、いままで大きな不満は感じていなかった。

筆者のPCオーディオ環境。PCに繋いだDDCから、DACを経由してヘッドフォンで出力している。これ自体には満足しているのだが……

 ただ、筆者の場合、PCの前は趣味の場であると同時に仕事場でもあるので、完全にはリラックスできない環境とも感じるようになってきた。たまにはソファに身を預けて、じっくりと音楽に浸ってみたいとも思っている。

 そう考えると、場所はPCの前からスピーカーのある場所に移した方が良いだろう。でも、ここからオーディオに何十万円も追加投資をするのはつらい。今あるPCオーディオの環境も活かしながら、リラックスできるハイレゾ環境も欲しいと考えた。

 そこで、今持っているハイレゾ音源をNASに集約し、DLNA対応のコンポで音楽を聴くネットワークオーディオを試してみた。自宅のリビングなどでゆったりと音楽を楽しむ目標に、NASとしてアイ・オー・データ機器の「RockDisk Next」を、コンポにはニーの「MAP-S1」を選んだ。

ソニーのDLNAコンポ「MAP-S1」。スピーカーは50kHzまでの高音域再生が可能でハイレゾ対応を謳う「SS-HW1」だ

 この組み合わせの特徴は、いずれもDSD音源(DSF/DFFファイル)に対応している点。DLNAの規格ではDSDをサポートしていないが、RockDisk NextではDSD音源のネットワーク配信に独自対応している。

 このほかの機能面では、Samba/FTP/NFP/AFPサーバーやHTTP/FTPダウンローダーといった転送機能を装備。MPEG-1/2/4などの動画のDLNA/UPnP再生に対応するほか、無料アプリの「iSharing」を用いることで、スマートフォンなどの端末からリモートアクセスも可能だ。使用可能なHDDの容量は80GB〜4TB。SSDも使用できる。

HDDを装着したところ。SSDも使用できる
設置例

 MAP-S1は、24bit/192kHzのPCM音源に加え、2.8MHzまでのDSD音源を再生可能。再生可能フォーマットはDSD(2.8MHzまで)、WAV、FLAC、MP3、WMA、AAC、AIFFだ。

 ハイレゾ再生は、PCと接続した際のUSB DAC機能を使用した場合と、ウォークマンやUSBメモリとUSB接続した場合、ネットワーク経由でのDLNA/AirPlayで再生した場合の対応となる。音楽CDや、iPhone/iPad/ウォークマン/USB、Bluetooth、FM/AMラジオなどの再生も可能となっている。

 直販価格は、RockDisk Next(2TBモデル)が18,500円(税込)、MAP-S1が65,000円。また、今回はハイレゾ対応のスピーカーとしてソニーの「SS-HW1」(56,000円)を利用した。あとは、無線LANルータや操作用のスマートフォンなどがあればハイレゾ再生環境が構築できる。

 なお、RockDisk NextはHDD無しのキットも用意されており、直販価格は9,500円(税込)。もし手元にHDDやSSDが余っているなら、それらのストレージを組み込むことで、より安価にハイレゾ配信環境が構築できる。

Webブラウザでサクッと設定

本体にはUSBとeSATAを備え、外付けのストレージも増設できる

 まずはRockDisk Nextをセットアップしてみよう。NASでDLNAというと「ネットワークの設定が……」などと面倒だったり、難しそうと感じる人もいるかもしれない(筆者もその一人だったが……)。しかし、やってみればそれほど難しいものではない。要するに、要はNASに転送したハイレゾ音源を、ネットワーク経由でコンポから再生するだけだ。

 本体に電源やEthernet端子を繋いで自宅のネットワークに接続後、PCのWebブラウザを立ち上げ、URLの入力欄に「http://myisharing.com/」と打ち込み遷移すると、「個人クラウドを探す」と表示される。入力欄に本体底部に記載しているMacアドレスを入力すると、初期ログイン画面が出るので、ID/パスワードともに「admin」と入力すると、PCのデスクトップ画面を模したような設定画面が表示されるはずだ。

Webブラウザで最初にアクセスする画面。MACアドレスでNASを特定する
ログイン後の画面。主なフォルダへのアクセスは左側のアイコンで、設定関連と各種ツールは右側のアイコンがそれぞれ担当する

 オーディオコンポでRockDisk Nextに保存した楽曲を再生するためには、Sambaサービスとメディアサーバー機能を有効にする必要がある。本機の主な設定はほとんどが設定画面右下の「プリファレンス」に集約されているので、設定を変更する必要がある場合は、ここを見るようにしよう。メディアサーバーの設定完了後は、アカウントに「admin」と表示されていることと、PCのネットワークに「isharing」が追加されていることを確認すれば、ひとまず最低限の設定は完了だ。必要に応じてセキュリティや各種サービスなどの設定を行なっておこう。

プリファレンスは右下の歯車アイコンから開く
メディアサーバーの設定。チェックが有効になっていることを確認しよう
楽曲は好きなRockDisk Nextの好きなフォルダにコピーするだけ

 楽曲ファイルの入手は、ハイレゾ対応の音楽配信サイトで購入するのが一般的だ。国内ではe-onkyo music、OTOTOY、mora、VICTOR STUDIO HD-Music.、HQM STORE、music.jp STOREなどがある。それぞれ取扱う楽曲のラインナップが異なるので、あるサイトで見つからなかった曲が、別のサイトでは見つかるといったことがよくある。取扱う曲によって複数のサイトを使い分ける必要がある、という点はハイレゾの課題といえるかもしれない。

 楽曲ファイルの転送は、パソコンなどからRockDisk Nextの好きなフォルダにドラッグ&ドロップするだけ。初期状態では共有名が、[ishareing]となっているので、Windowsであれば、フォルダ上部のアドレス入力で「\\isharing」を入力してEnterすればアクセスできるはずだ。あとは、任意のフォルダに楽曲をコピーすれば良い。

スマホ経由でWi-Fi接続。Music Unlimitedやradiko.jpの利用も

 DLNAコンポの「MAP-S1」をセットアップするためには、一時的にPCやスマートフォンなどの端末が必要になる。MAP-S1単体では無線LANのSSIDやパスワードの入力ができないためだ。今回はソニーのワイヤレスオーディオ操作アプリ「SongPal」を使って、Androidスマートフォンで設定した。

SongPal
スマートフォンからBluetoothでMAP-S1とペアリングする
Music Unlimitedで選んだ曲をMAP-S1で再生できる

 設定自体はとても簡単で、SongPalの画面からスマートフォンとMAP-S1をBluetoothでペアリングし、ネットワークのパスワードを入力するだけ。スマートフォンが繋げているネットワークにMAP-S1も繋げに行くことを前提として、SSIDの入力を省略する仕組みだ。したがって、この時要求されるパスワードはスマートフォンが接続しているネットワークのパスワードなので、スマートフォンが自宅のネットワークにつながっているかどうかを事前に確認しておこう。

 なお、ネットワーク再生時は付属のリモコンによる頭出しなど一部の操作を受け付けなくなるが、SongPalで頭出し操作が可能。リモコンの代わりとして使用できるほか、「Base/Trebleコントロール」やアップサンプリング機能「DSEE HX」の操作を行なえる。この他、ソニーの定額制音楽配信サービス「Music Unlimited」や、インターネットラジオ「radiko.jp」などもMAP-S1で再生できる。

Base/Trebleコントロール
DSEE HX
SongPalからMusic Unlimitedにサインインしたところ
radiko.jpの操作も可能
スマートフォンをリモコン代わりに使える。操作性はリモコンのほうが良い

ハイレゾの魅力を十分に体験できる

 無事に接続できれば、MAP-S1による楽曲ファイル再生の準備は完了だ。「Home Network」を選択し、RockDisk Next(今回は「isharing」)にアクセスして楽曲を選べば再生できる。

SongPalでRockDisk Nextに接続する
RockDisk Nextの中のフォルダ一覧
再生可能な楽曲が表示される
楽曲を再生しているところ
ネットワーク再生中のMAP-S1の画面表示。曲名などは特に表示されない

 今回聴いた音源は2.8MHzの溝口肇「世界の車窓から -QUINTET-」と、ポリスの「Synchronicity」。後者は24bit/192kHzのFLAC音源。

 今回の組み合わせで聴いた体験の中で最も印象に残ったのは、演奏者との距離感。普段はヘッドフォンを使っているせいか、これまでは演奏者の距離がいささか近すぎるように感じていた楽曲が、適度な距離感をもって楽しめた。

 また、スピーカーから聴こえる音の広がりの豊かさや奥行き、各楽器の音がはっきりと聴き分けられるほどに明瞭な解像感は、ハイレゾ音源ならではの体験と言える。これは音源の力でもあるのだが、今回聴いた中ではポリスのSynchronicityで顕著に現れており、楽器の奏でる音の一つ一つに存在感がありながらも、ボーカルの声は全く輪郭を失わずに聞こえるため、最後まで聞き疲れせず気分よく楽しむことができた。

 DSD音源の世界の車窓から -QUINTET-は、音の艶やかさや密度感が他の音源とは段違いで、まるで生演奏を目の前で聴いているかのよう、とまでは言わないが、スピーカーを通した先の空間に演奏者の存在を感じさせるような生々しさを感じた。

 また、スマートフォンでサクッと楽曲検索して再生、というのも気軽でいい。PCでの操作も個人的には慣れていて楽なのだが、PCに向き合うと、個人的にはどうしても「仕事してる」感が出てしまう。リラックスできる環境での音楽体験というのは格別のものだ。

NAS+DLNAコンポでハイレゾ入門を

 NASとDLNA対応コンポの組み合わせでのハイレゾ環境は利便性の面でも満足度が高い。ダウンロードしたハイレゾ音源をNASに転送すれば、コンポ側で何もしなくても再生できる手軽さと、DSD音源が他の音源と同じように扱える点はとても便利に感じた。

 ネットワーク経由でハイレゾ音源を聴くというと、難しそうに感じるかもしれないが、NASの設定さえできてれば、楽曲をNASに集約していた方が運用はシンプルでわかりやすい。価格的にもリーズナブルだ。

 また、ハイレゾ音源は1曲で数百MBの容量に達することもあるが、PC本体よりは容量に余裕はあるし、いざとなれば大容量のHDDに換装できる。また、一度環境を構築してしまえば、その後はずっと同じように運用できる点も魅力だ。当然、通常のNASとしても活用できる。

自室から繋がっているリビングにあるコンポを、スマートフォンから操作した。楽曲のファイルは目の前にあるNASに収まっている

 今回初めてNASを使ったネットワークオーディオを試したが、様々な場所で同じソースを楽しめるというのは便利。コンポ+スピーカーの再生は、普段使っているPCオーディオ+ヘッドフォンの組み合わせとはまた違う、ゆったりとした楽しみ方を提供してくれた。

(協力:アイ・オー・データ機器)

(関根慎一)