ミニレビュー

CDの曲をiPhoneへ簡単に持ち出し。進化したパイオニアのWi-Fiドックを活用

 ネットで配信される楽曲は少しずつ増えてはいるものの、音楽リリースの主流は現在もCDだ。一方で、ノートパソコンにおいては光学ドライブを搭載しない機種が増えており、CDをリッピングできる環境は徐々に減りつつあるのが現状。今回紹介するパイオニアのワイヤレスドック「APS-WF01J」とiPhoneアプリ「Wireless Hi-Res Player 〜Stellanova〜」は、PCを使わずにワイヤレスでiPhoneへ直接楽曲を取り込めるようにする組み合わせだ。

 スマホの定額音楽配信やYouTubeなどで新しい曲を知る機会も増えているとはいえ、CDを買うのをやめて、音楽を聴くのを100%配信だけに絞るのはまだ難しい。好きなアーティストの新曲がCDと同時に必ず配信開始されるとは限らないし、ハイレゾで購入できるアーティストも全体から見ればまだまだ少ない。CDを買う回数が減ったとしても、全く買わなくなるということはしばらくなさそうだ。

 Wi-Fi(無線LAN)を搭載したパイオニアの「APS-WF01J」(オープンプライス/実売12,000円前後)は'13年から販売されているモデルで、USB接続した別売BDドライブなどをワイヤレスでパソコンに接続してBD/DVD/CD再生などが行なえるが、同製品のファームウェアが7月にアップデートされ、新たにiPhone/iPodに直接CDを取り込めるようになった。パソコンを使わずにCDリッピングとiPhoneへの転送ができ、利用の幅が一段と広がった形だ。

 筆者は先日、家で使っていたPCの内蔵DVDドライブが壊れてしまい、外付けのドライブを買おうかどうか迷っていたところ。そこで、7月下旬発売の新製品として登場した薄型のUSB 3.0対応Blu-rayドライブ「BDR-XS06J」(オープンプライス/実売16,000円前後)と、ワイヤレスドックを組み合わせて、PCレスのワイヤレスリッピング機能の使い勝手を試した。

左がワイヤレスドック「APS-WF01J」、右がBDドライブ「BDR-XS06J」

CDリッピングは簡単に、音質もこだわりたい

APS-WF01J

 ざっくり説明すると、ワイヤレスドックのAPS-WF01Jが他の機器と連携してできることは、「iPhone/iPadやパソコンを使った光学ドライブのワイヤレス化」と、USBスピーカーなど「USB機器のワイヤレス化」の2つに分けられる。細かく説明すると1台で何役もこなす製品だが、今回はiPhoneのワイヤレス接続による音楽用途をメインに紹介する。

 ワイヤレスで光学ドライブと接続できる大きなメリットは、CDのリッピングをPC不要で行なえ、楽曲をiPhoneに直接転送できるという点。iPhoneでCD音楽を聴く場合に、一旦パソコンのiTunesに登録してからiPhoneを同期する作業が簡略化できる。CDを複数枚まとめ買いした時などは特に便利だ。今回は手持ちのiPhone 5sでこの機能を試した。なお、今のところAndroidには対応していないようだ。

 まずは、ワイヤレスドックを設置して初期設定から。Wi-Fi接続には「アクセスポイントモード」と「ステーションモード」の2つがある。

 アクセスポイントモードは、Wi-Fiルーターを介さずドックとiPhoneを直接ワイヤレス接続する方式。Wi-Fi環境が無い場所でも簡単に接続できる。もう一方のステーションモードは、Wi-Fiルーターを介して接続する方式で、アクセスポイントモードに比べて転送速度が半分になるというのが主な違い。

 PCと接続した場合は、アクセスポイントモード時はPCではWi-Fiでインターネットが使えないという難点があるが、iPhoneで接続した場合は、モバイル通信回線でインターネットも使えたので、基本的にはルーターを介さないアクセスポイントを選ぶのが良さそうだ。なお、PC利用時もルーターとWi-FiではなくEthernetで有線接続すれば、ステーションモードでも高速転送とインターネット接続を両立できる。

 アクセスポイントモードで接続するには、底面のスイッチを内側(AP)に入れ、ワイヤレスドックのACアダプタを接続すると起動。iPhoneのWi-Fi設定で、ワイヤレスドックの底面ラベルに書かれたSSIDとパスワードを入力するだけだ。

 リッピングする前に、光学ドライブとワイヤレスドックをUSB接続してiPhone側も設定する。といっても、iPhoneにはアプリ「Wireless Hi-Res Player 〜Stellanova〜」をインストールすればほとんど設定は不要。次はCD取り込みに移る。

 なお、取り込んだ楽曲を管理/再生できるのは、このWireless Hi-Res Playerアプリであり、iPhone標準の「ミュージック」アプリでは再生できない。

底面。BDドライブなどと接続するUSB端子や、接続モードの切り替えスイッチなどを備える
アプリの「Wireless Hi-Res Player 〜Stellanova〜」
接続完了すると、機器名などを表示

 CDをドライブに入れて、取り込む前に2つだけ確認。まずは取り込み時の音質を決める。形式はWAVとAAC、Apple Lossless(ALAC)。AACのビットレートは64/80/96/128/160/192/224/256/288/320kbpsから選択できる。

 もう一つはパイオニア製ドライブ利用時に限られるものだが、同社独自技術である「PureRead」をONにしておくことだ。

 パイオニア製ドライブではおなじみのPureRead機能だが、一応おさらいしておこう。一般的なCD再生において、ディスク上のキズや指紋、または反りなどディスク自体の不良によってエラー訂正システム(CIRC)でも補正しきれない読み取りエラーが起きた場合、そのエラー部分は前後のデータから生成し補間される。これはあくまで“補間”であって元のデータと同一ではない。一方、PureRead機能は、ディスク状況を自動で判断して最適な読み取り方法を調整し、リトライ(再読み取り)を実行するため、補間をせずに様々な方法で正確な読み取りを図るものだ。特に、レンタルCDや中古CD、傷が付いたCDなどに有効な機能とされる。

フォーマット/ビットレート選択
PureReadの説明
PureReadをONにする

 デフォルトではPureReadがOFFになっているが、せっかく同社製品を利用するなら、ここはONにしておきたい。再読み取りをすると時間が長くなるのでは? という疑問を持つかもしれないが、結論から言えば気になるほど大きな時間差はなかった。

 例えば、ワイヤレスドックをステーションモードで接続し、6曲入りのミニアルバム1枚(約22分12秒)をApple Losslessで取り込んだ場合の時間は、PureRead OFF時で約4分3秒、ON時で約4分40秒だった。傷の多いディスクなどだともっと時間差が出るかもしれないが、この程度の違いであれば、音質のためにPureReadはONにしたほうが安心だ。

 Wi-Fiルーターを使って、ステーションモードの接続も試した。ワイヤレスドック底面のスイッチを外側(ST)に入れてから起動し、底面の「かんたん接続ボタン」を押してから、ルーター側の「かんたん接続」に相当するボタンを押す。筆者の環境ではNTTのホームゲートウェイ「PR-500KI」にWi-Fiカードを挿しているため、PR-500KIの背面にある「らくらくスタートボタン」を押すことでワイヤレスドックとの接続が完了した。ドック下部の「ステータスLED」と「ワイヤレスLED」ランプが、いずれもオレンジに点灯していれば成功だ。なお、この状態は「ルーターに2.4GHzで接続している」ことを示しているが、手動設定により5GHzで接続することも可能。5GHz接続時は、ステータスLEDの点灯が緑色になる。

 アクセスポイント接続時は、前述した通りステーションモードより転送速度が遅くなるとのことだが、先ほどと同じCDでPureReadをONにしてリッピングしたところ、完了までの時間は約5分22秒だった。

 アーティスト名や曲名、ジャケット画像のデータは、最初にCDを読み込んだ時にGracenoteのデータベースから取得して、自動で付与できる。今回取り込んだCDの中には、ジャケット画像がデータベースに無い作品もあったが、iPhoneのフォトライブラリから手動で選択して追加することもできた。

Gracenoteのデータベースから情報を取得
iPhoneのフォトライブラリからジャケット画像を指定することも可能
編集画面

iTunes楽曲と混在して再生可能。バックアップも

 Wireless Hi-Res Playerは、名前の通りプレーヤーアプリであり、取り込んだCD楽曲や、既にiTunes経由で転送してあった楽曲も混在して再生可能。シャッフルやリピートの機能も備える。CDを取り込まずに、ドライブからリアルタイムで再生することもできた。

アプリでの再生画面
iTunesで転送したアルバムと、ワイヤレスドック経由の曲は色分けして表示

 今回使ったアプリの名前はWireless Hi-Res Player〜Stellanova〜という通り、もともと同社ハイレゾオーディオシステムの「Stellanova APS-WF02J/APS-DA101J」シリーズと連携するアプリとして提供されているもの。DSDを含むハイレゾ再生(アプリ内課金で対応)など、フル機能を使うには、(ハードウェアの)Stellanovaが必要となる。ただ、無料のままでもハイレゾではないファイルのプレーヤーとしては特に不満無く使えた。

 CDからiPhoneへの取り込みだけでなく、iPhoneからUSBメモリなどのストレージにアルバムのデータをコピー/移動したり、削除することも可能。iPhone内のストレージが一杯になってしまったときなどに楽曲を退避できる。ただし、iPhoneから書き出せるのはワイヤレスドックで転送した楽曲のみで、iTunes経由で転送した曲は対象外。コピー/移動/削除する場合は、アルバム選択画面で目的の作品を右から左にスワイプするとメニューが現れる。もちろん、USBメモリから再びiPhoneへ書き戻すことも可能だ。もっとも、iPhoneではなく、128GBまで大容量化した第6世代iPod touchがあれば、ストレージの残量をあまり気にせず使えそうなので、良い組み合わせになるかもしれない。

手持ちのUSBメモリを接続してみた
アルバム選択時に右から左へスワイプすると、コピー/移動/削除のメニューが表示
ローカルからUSBメモリにコピーする場合の画面
こちらはファイル移動中の画面。残り時間も表示

 今回組み合わせたBlu-rayドライブの「BDR-XS06J」は、本体の薄さ18mmで、スロットローディング式。USB 3.0接続で、バスパワーで駆動する。メディアの使用状況を学習し、不要な電力を自動的にカットする「インテリジェントエコモード」や、独自のアルゴリズムで読み取りを行なう「PURE READ2+(原音再生)」、BD/DVDビデオ、オーディオCDの再生時に低回転で静音を保ち、データをHDDに保存するときは高回転で動作させる「アドバンスド静音ファームウェア」も搭載する。なお、ワイヤレス接続時はBD/DVDビデオの再生はできない。

 PC用ソフトとして、BD/DVD再生の「PowerDVD 12」や、ビデオ編集ソフト「PowerDirector 10 LE」、ライティングソフト「Power2Go 8 for PURE READ」などを同梱している。パソコン用のドライブとしても買ってすぐにいろいろな用途に使える。

BDドライブ「BDR-XS06J」
縦置きでも今回試した限りでは使えたが、本来は横置きのみサポート

 ひとつ注意しておきたいのは、このドライブは縦置きをサポートしていないという点。ワイヤレスドックにはドライブを装着できるスリットや、フィットさせるためのスペーサーも付属しているので、試しに縦置きで装着してみた。CDを読み込むと問題無くリッピングできたのは確かだが、メーカーとしてはサポートしていないので、正しくは横置きのみとのこと。スリットの幅は約21mmなので、縦置き対応のドライブであれば装着できる。今回のBDR-XS06Jの場合は、使用しないときに立て掛けるといった使い方になるだろう。

PCとのワイヤレス接続には、専用ソフト「Pioneer WirelessConnect」を使用。BDドライブだけでなく、USB HDDなどをドックに接続すると、PCとワイヤレスで接続してデータ転送できた
ワイヤレスだけでなく、USBでパソコンと接続することももちろん可能

手持ちのUSBスピーカーをiPhoneとワイヤレス接続。アプリの進化も楽しみ

 ワイヤレスドックのAPS-WF01Jが持つもう一つの機能として、DAC内蔵USBスピーカーをつないで聴けるというという使い方がある。例えば、同社製のUSBスピーカー「ISS-C270AS」と組み合わせると、小音量でも高音質で臨場感のある音を楽しめるという。

 筆者はB&WのiPhone/iPod用スピーカー「Zeppelin mini」を持っているが、30ピンDockコネクタのため、今は古いiPhone 4S専用になっており、Lightning端子のiPhone 5sなどでは利用できない。ただ、この製品はUSBスピーカー機能も備えているので、ドックとワイヤレス接続できるかどうか試してみた。

 Zeppelin miniとワイヤレスドックをUSBケーブルでつなぐと、Wireless Hi-Res Playerアプリの[USBオーディオ]項目に認識され、「Bowers & Wilkins Zeppelinmini」と機種名まで表示された。音楽を再生すると、ちゃんとスピーカーから音が出るのを確認できた。今回使ってみたかったCDリッピング機能以外に、思わぬ収穫があった気分だ。USBスピーカー全てに対応しているわけではないと思うが、古いDockスピーカーをiPhoneとのワイヤレス接続に活かせたのはうれしい。

Zeppelin miniと接続してiPhoneの楽曲を再生

 今回試したワイヤレスのCDリッピングは、現時点ではデータの保存先はiPhone本体か、別途USB HDDなどを用意するという方法になる。アプリが今後さらに進化して、例えば他社製品にもあるようなNASへデータ直接保存にも対応するなら、個人的には有償化してもかまわないと思うほどなので、ぜひ期待したい。

 ただ、今回試したようにワイヤレスドックや光学ドライブとつなぐだけで、PCレスのCDリッピングシステムとしても十分に役立つことが分かった。パイオニア製ドライブの高い信頼性も、この組み合わせを選ぶ大きなメリットといえる。少なくとも、これまでの「CD→PC(のiTunes)→iPhone」から、「CD→iPhone」の2段階に減らせたことは、とても気に入っている。

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(中林暁)