ミニレビュー

ボーズっぽくない!?、超小型でも快適サウンド「SoundTrue Ultra in-ear headphones」を聴く

 ボーズが9月中旬から発売したイヤフォン「SoundTrue Ultra in-ear headphones」は、“同社史上最小”というのが謳い文句だ。音質が重要なイヤフォンにおいて、“小さいか否か”は、個人的にあまり気にしていなかったが、音を聴いてみてとても気に入った。サイズはともかく、非常によく出来たモデルになっている。価格は17,000円だ。

SoundTrue Ultra in-ear headphones

 実のところ、ボーズのイヤフォンでハウジングの大きさを意識したり、不快に感じた事はない。御存知の通り、同社のイヤフォンは通常のカナル型イヤフォンとちょっと異なり、独自の「StayHearチップ」を採用しているためだ。

 一般的なカナル型イヤフォンが、イヤーピースを耳栓のように耳穴深くまで挿入するのに対し、StayHearチップは耳穴手前の空間にピッタリフィット。チップ自体が穴深くまで挿入される事は無く、不快感を抑えながら、高いホールド力を維持している。

 新モデル「SoundTrue Ultra in-ear headphones」も基本的はスタイルは同じで、StayHearチップと似た、新しい「StayHear Ultraチップ」を使う。一方で、イヤフォンのハウジングは大幅に小さくなり、見た目はとてもシンプルになった。カラーバリエーションもチャコール/フロストで、こちらも落ち着いた配色。なお、リモコン違いで2モデルあり、iOS機器向けがチャコールとフロスト、スマートフォン向けはチャコールのみとなる。

SoundTrue Ultra in-ear headphones
左がチャコール、右がフロスト

 カラフルなイヤフォンも「SoundSport in-ear headphones」(11,500円)として9月中旬から発売されている。こちらのモデルは、ハウジングサイズが従来モデルとほぼ同じ。防滴仕様で、スポーツでの利用も想定している。ただ、「SoundTrue Ultra」も防滴仕様で、エクササイズ程度であれば利用できるとされている。ボーズ的には“防滴仕様は当たり前”という状態になりつつあるようだ。

「SoundSport in-ear headphones」はカラフルなモデルをラインナップしている

超小型ダイナミック型ユニットを搭載

 ボーズは、あまり細かな製品の仕様を公表していないが、独自に開発した超小型のダイナミック型ユニットを搭載しているという。ハウジングが小さくなっているので、低音が出なくなるのではと心配になるが、「重低音から高域の繊細なニュアンスまで、極めて広い帯域に渡って安定した再生能力を発揮する」事を念頭に開発されたという。

イヤーチップを外したところ。ハウジングはかなり小型だ

 ケーブルはY型で、分岐部分にT字型のパーツを備えている。タッチノイズを吸収する役割を持つという。入力プラグは4極のステレオミニ。長さは115cm。iOS/スマートフォン向けとして、マイク付きのリモコンをケーブルに搭載。着信への応対や通話、音楽の再生/停止/音量調整などが行なえる。

分岐部分にT字型のパーツを搭載
iOS/スマートフォン向けとして、マイク付きのリモコンをケーブルに備えている
入力端子は4極のステレオミニ

 昨今のトレンドからすると、ケーブル着脱やバランス接続にも対応して欲しいところ。17,000円と、価格的には高価なモデルと言っていいので、断線時に容易に交換できるか否かを気にする人もいるだろう。ただ、前述の通りエクササイズなどでの利用も想定されたモデルなので、堅牢性は高めだと考えられる。

 重量はMサイズチップ装着時で18gと軽い。StayHear UltraチップはS/M/Lの3サイズを同梱している。

StayHear Ultraチップ
StayHear Ultraチップを装着したところ

 StayHear Ultraチップの装着感は、これまでのStayHearチップとほぼ同じで、耳穴に深く挿入しないので、不快感は少ない。ポロッと抜け落ちてしまうのではと心配になるが、羽根のように飛び出た部分が耳の上部に引っかかるので、そう簡単には抜けない。ホールド力も高く、着けて歩いているとイヤフォンがモゾモゾ動いたり、ズリ落ちてくる事は無かった。イヤフォン本体が軽い事も、この安定感に寄与していそうだ。

 また、耳穴を完全にふさいでいないので、屋外で使っている際、周囲の声や、接近するクルマの音がある程度が聴き取れる。カスタムイヤフォンや、耳穴に深く挿入する細身のカナル型イヤフォンの場合はあまりにも無音になって危険を感じる事もある。そうした経験がある人にとって、周囲の状況の“察知しやすさ”は、1つの魅力と言えるだろう。

ボーズっぽくない音

 試聴にはハイレゾプレーヤーの「AK Jr」、「AK380」やスマートフォンのXperia Z1を使用した。

 再生した第一印象は「非常にニュートラルなサウンド」だ。ボーズのイヤフォンやヘッドフォンには、中低域に厚みがあり、高域が突き抜ける、どちらかというとドンシャリ系の印象を持っているが、この「SoundTrue Ultra in-ear headphones」には当てはまらない。

 「藤田恵美/camomile Best Audio」の「Best OF My Love」(96kHz/24bit)を再生。低音から高音まで、バランスが良く、特に低域が強過ぎるという感じはない。モニターライクな素直なサウンドで、妙な言い方だが「ボーズっぽくない音」だ。

 特筆すべきは空間の広さだ。StayHear Ultraチップは耳穴に深く挿入しすぎないので、閉塞感が少なく、空間が広い。どちらかと言うと、ヘッドフォンに近く、フワッと広がりのある音場が楽しめる。頭内定位もキツくなく、長時間気持良く音楽を聴いていられるタイプだ。

 低音は量感が豊かで「Best OF My Love」のアコースティックベースの“ゆったり感”が心地よい。厳密に聴くと、最低音の沈み込みの深さはさほど深くなく、硬くて芯のある「ゴーン」と地を這うような低音は出ていない。

 ただ、音圧と量感が豊かでありながら、それが膨らみ過ぎず、適度なタイトさを持っているので、心地が良く、特に不満を感じずに聴いていられる。苦手な部分をそう感じさせない、“音作りの上手さ”が光る。

 低域は、中高域に覆いかぶさらず、高域の明瞭さは維持されている。高域の輪郭に誇張や強調感は無く、「茅原実里/この世界は僕らを待っていた」(96kHz/24bit)のヴォーカルのサ行も柔らかで、質感がよく出ている。クラシックの弦楽器も、艷やかで上品さがある。音場の広さも相まって、意外にクラシックに向いたイヤフォンだ。

 ベースラインも明瞭で、音楽の安定感は抜群。全体の分解能はカリカリシャープではないが、十分に細かく描けており、ハイレゾの良さもキチンと聴きとれた。

長時間ストレスなく楽しめる快適サウンド

 音質全体を一言で表すと、「長時間リスニングに向いた、快適サウンド」だ。高域がキツかったり、輪郭がシャープ過ぎて、疲れる音とは真逆。かといって、ボワボワに眠い音ではない。バランス、分解能がいずれも絶妙なポイントをついており、音楽をキチンとしたバランスで、楽しく、安心して聴き続けやすい製品になっている。

 ハイレゾ楽曲の細かな音を分析的に聴き取りたいとか、重低音の低さに徹底的にこだわるというマニアっぽいニーズとは方向性が異なるが、恐らく多くの人が“好ましい”と感じる音にまとまっている。安価とは言えないが、5万円以上のモデルが当たり前のように並ぶ昨今のイヤフォン市場ではリーズナブルと言って良く、音とターゲット層がマッチしているとも感じる。「耳に負担が少なく、長時間音楽を気持ちよく楽しみたい」という人にはオススメだ。

 個人的には、マルチウェイの高級バランスド・アーマチュア(BA)イヤフォンを既に持っているという人にも、気分転換に使うイヤフォンとしても聴いて欲しいと感じる。どこかホッとさせるサウンドは逆に新鮮で、それでいて基本的な再生能力も高い。小さな優等生モデルだ。

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(山崎健太郎)