ミニレビュー
JリーグオンデマンドがApple TVに対応。アンテナは要らなくなるのか?
(2015/3/31 12:32)
Jリーグにプロ野球が開幕――ようやくスポーツファンの春がやってきた。
のだが。
春は引っ越しの季節でもある。引っ越すたびに面倒なのが、BS/CSアンテナの設置だ。1月に引っ越しをしたが、アンテナを外して、また持って行き、取り付けをするというのが面倒で、結局は前の家に置いたまま業者に処理を任せてしまった。アンテナの設置場所と受信機器の距離が遠い場合、家の中が配線を這う、という点もマイナスだった。できれば通信側のオンデマンドサービスに一本化できれば、これに越したことはない。
すでに映画や海外ドラマはHuluに頼っており、これを機にサッカーも……という目論見で、アンテナを立てず、オンデマンドサービスだけでやっていけるかどうか、試してみた。
Apple TV対応のいいところ、わるいところ
「Jリーグオンデマンド」はスカパー!が提供するサービスで、Jリーグの全試合の生中継/アーカイブとダイジェスト番組、関連番組をすべて、スマホ/タブレット/PCで観られるサービスだ。この春、Apple TVに対応し、大画面テレビでも観られるようになった。
このサービスを利用するには、3つの方法がある。
1つ目はアンテナを立て、スカパーと放送契約を結ぶ方法。スカパーオンデマンドとスカパーの放送は切り離された別のサービスだが、放送側でJリーグMAXというパックを契約していれば、オンデマンドも無料で利用できるようになっている。
2つ目は、放送契約をせず、オンデマンドのサイトで契約する方法。
3つ目はApple TVからApple IDで決済する方法だ。
2つ目と3つ目は純粋に、サブスクリプション型のVODサービスになっており、アンテナを立てる必要がない。今までまったくスカパーのサービスを使っておらず、Apple TVを持っている人には、3つ目のApple IDで決済するのが方法がもっとも手っ取り早いことになる。
テストがてら、Apple TVからの契約を試してみた。
だが、これまでもスカパーオンデマンドを使っていた私に落とし穴があった。スカパーオンデマンドに登録したメールアドレスと同じものをApple TVからの契約で設定してしまうと、モバイルアプリから放送が観られなくなってしまった。メールアドレスを変えて別途契約し直すと観られたので、ユーザー管理でダブっているためだと思われる。Apple ID側で決済するとメールアドレスが変更できない仕様もどうかと思うが、とりあえずはスカパーオンデマンドですでに登録しているメールアドレスを使うのは避けたほうが良さそうだ。
ちなみに料金面では放送+オンデマンドでも、オンデマンドのみでも月額2,962円(※ただし放送契約の場合は月額421円の基本料もかかる)。コスト面でのオンデマンドのメリットは、基本料を払わなくて良いこと、アンテナを立てなくても良いこと、の2点に集約される。ちなみに、スカパーでは1年の契約継続を条件に5,000円でアンテナ工事ができるキャンペーンを通年、提供している。
HD画質が欲しかった……
放送と比べた場合、一番気になるのは画質と音質だろう。結論から言ってしまうと、やはり放送にはかなわない。HD画質ではないため解像度も足りず、コマ数も放送よりは少ないようで、残像が気になる。音質もネット動画っぽい痩せたもので、CS放送と比べる品質にはない。ただ、iPhoneやiPadで再生しているものを、AirPlayでApple TVに飛ばすより多少、良くなっているのは事実だ。
音質・画質はそういうものだと諦めてしまえば問題ないのだが、実際に使って一番困ったのは、回線トラブルで見られないことが多かったことだ。開幕戦のときは無料開放の影響もあったのだろうか、混雑でほとんど生中継で見られない状況が続いた。スポーツの生中継は、「あとからアーカイブを観ればいい」というものでもない。オンデマンド1本に頼る不安を感じた。今後、優勝の行方が左右されるシーズン後半の試合で同じようなことが起こらないよう、設備の増強を期待したいところだ。
機能面で気になったのは、アーカイブやハイライト番組を観ている際に、見たいシーンに早送り、巻き戻しをするのが難しいこと。本来ならば、タイムバーからカーソルを動かしたときに、着地先の映像を表示して欲しいのだが、それがない。着地先の映像がわからないので、適当に動かしては確かめるのを繰り返さないと目的の映像に辿りつけない。生中継を観るだけなら良いが、ハイライト番組など関連番組をさくさくと早送りしながら観たい場合は、不便を強いられることになるだろう。
ただ、場所を問わずスマホ、タブレット、Apple TVで観られるのはやはり便利だ。スマホやタブレットでは、試合結果、フォーメーション、選手名鑑や審判のデータも見られる。また、マルチデバイス対応を活用し、Apple TVである試合を観つつ、タブレットのセカンドスクリーンで別の試合を観たり、試合データに当たったり、といった使い方も可能だ。
もっとも、アプリの選手年鑑などは、オンデマンドの契約がなくても利用できるので、オンデマンドのみの利点というわけではない。
アンテナを立てられるなら、立てたほうが無難
結論を言ってしまうと、アンテナを立てることに問題がないのなら、アンテナを立てて放送と併用したほうが満足度が高いのは確かだ。アンテナ代と工事費合わせて5,000円、1年間の契約継続、月421円の基本料を上積みする必要があるが、画質と音質にははっきりとした差があるし、技術的なトラブルが起こる可能性も低い。放送を契約していれば、オンデマンドのサービスも受けられる。死角がないのだ。
また、放送契約のほうがキャンペーンが手厚い点も見逃せない。加入料無料キャンペーンもあるし、時たま行なわれる無料放送も受信できる。アンテナ代くらいはすぐに取り戻せてしまう。
……とJリーグオンデマンドには大変厳しい評価となってしまったが、それは「放送に取って代われるか」という視点で見たからこその話。現段階では、Jリーグオンデマンドは放送を補完するサービスまたはどうしてもアンテナが立てられない場合の非常手段、と捉えたほうがフェアだろう。
スポーツのVODサービスとして、お手本になるのはNBAではないだろうか。
マルチデバイスなのはもちろん、解像度はHDで、音質も良好。コンテンツ面でも、生中継はもちろんのこと、全て試合について、フルマッチ動画とハーフタイムなどを除いた編集版、2~3分のダイジェストが用意されるほか、「今週の好プレー」「懐かしのあの試合」など企画動画も豊富。品質、編成で放送に負けないため、まったくオンデマンドオンリーで不自由を感じなくなった。ライトなファンなら、お金を払わなくても無料のアプリをダウンロードするだけで、ある程度の短い動画やデータが観られる点も素晴らしい。
ぜひ、Jリーグオンデマンドもこのレベルに達してくれればなあ、というのが「アンテナ立てづらい民」としての希望だ。