ミニレビュー

音にこだわった多機能BTスピーカー「Sound Blaster Roar 2」。PCや車載にも

 スマートフォンやオーディオプレーヤーがBluetooth機能を搭載していることがほぼ当たり前になった今、家電量販店には多種多様なBluetoothスピーカーが並べられ、Bluetoothで音楽を聞くのはごく普通のことになったように感じられる。筆者もBluetoothスピーカーを一台使っているが、どちらかといえば「音楽をしっかり楽しむ」というよりも、何か作業をしているときに薄く音楽を流しておく程度の使い方で、音質など細かいことはこれまで気にしてこなかった。

 そこへ、クリエイティブメディアの「Sound Blaster Roar 2」(以下、Roar 2)が、6月中旬に登場した。スピーカーグリルがどこかクラシカルな雰囲気で、カラーはブラックとホワイトの2色。直販価格は19,800円。音域ごとに複数のドライバを載せてバイアンプ構成とするなど、かなり音にこだわったモデルのようだ。音質強化の「Roar」機能や、USBスピーカー、ボイスレコーダなど多機能であるところも注目ポイント。ホワイトモデルを借りる機会を得たので、室内だけでなくクルマの中にも持ち込んで、実際の音や使い勝手をチェックしてみた。

Sound Blaster Roar 2

5ドライバ×バイアンプを収めズッシリとした筐体

 Roar 2の外形寸法は188×109×51mm(幅×奥行き×高さ)で、バッテリを内蔵し、重量は1kg。片手で持ち運ぶのはちょっと辛い。クリエイティブでは筐体の大きさを「辞書サイズ」と謳っており、手持ちの英和辞典と比較してみると、確かにほぼ同じようなサイズ感。いつも持ち歩くモデルというよりは、置く場所をきちんと決めて使うイメージだ。防水仕様ではないので、屋外での使用には注意が必要となる。

縦置きで正面から見たところ
辞書と並べてみたところ
厚みはほぼ同じくらい
奥行きは辞書よりも短い

 本体を寝かせて平置きしたり、省スペースな縦置きにしたりでき、設置スペースに合わせて使い分けられる。設置スペースといってもさほど場所はとらないが、この重さのものを落とすと、故障するだけでなく床面にも結構なダメージを与えてしまうことは想像に難くない。テーブルの上やテレビ/液晶ディスプレイの下など安定した場所で使うのが良いだろう。グリル面の反対側には横長のゴム足が2本貼り付けられており、基本は平置きで使うことを想定しているようだ。縦置き用で側面に貼る短いゴム足も2本付属する。

両側面にパッシブラジエータを備える

 本体には計5つのドライバを搭載。Bluetoothスピーカーにしてはかなりズッシリしている理由がここにある。ドライバはスピーカーグリルで見えないが、中低音域×1の両脇に高音域用×2を配し、高音域と中低音域のドライバを別々のアンプで駆動するバイアンプ構成。残りの2つは両側面のパッシブラジエータで、低音強化を図っている。

 本体の電源ボタンをオンにすると、重低音を効かせた「ヴォオオオン」という音が流れる。Macの起動音のようなものだが、オフにはできない。電源オンのたびにこれを聞かされるのは少し気になった。ペアリングや機器接続の際に、落ち着いた女性の声で英語のアナウンスがかかるのは海外製品らしい特徴だが、これもくっきりとした大きめの音声で、使いはじめのうちはいちいちびっくりする。こちらは電源が入った状態で、本体のボリュームダウンボタンとマルチファンクションボタン(BTマークと受話器マークが入っているもの)の同時押しでオフにできる。ボリュームアップボタンとマルチファンクションボタンを同時押しすれば、オンに戻すことも可能だ。

 Bluetoothの仕様はVer. 3.0準拠で、プロファイルはA2DP、HFP、HSPに対応。コーデックはaptX、AACとSBCをサポートしている。NFC対応スマートフォンとのワンタッチペアリングにも対応し、手持ちのXperia A(SO-04E)のNFC機能をオンにして近づけるとすぐにペアリング完了した。最大8台のデバイス登録と、2台の同時接続に対応。ステレオミニの音声入力も備え、Bluetooth非対応のオーディオプレーヤーなどと有線接続できる。本体前面にバッテリ残量を示すLEDを備えるが、Bluetooth Low Energy対応のスマホやオーディオプレーヤー側にもRoar 2の大体のバッテリ残量が表示される。地味だがありがたい機能だ。

 今回は第5世代iPod touchを主な再生機器として使用した。aptXを使った再生では、対応するノートPCを用いている。音声遅延が少ないaptXを用いると、映像を観ているときに人の口の動きとセリフがずれて違和感を感じるということはほぼ無かった。

Xperia Aとペアリング。NFC対応でタッチするだけでスムーズに認識された
iPod touchを接続すると画面右上のBTマークの隣にRoar 2のバッテリ残量が小さく表示される
専用ACアダプタとUSBケーブルが付属

 内蔵バッテリの容量は6,000mAhで、付属の専用ACアダプタで充電できるほか、USB充電にも対応。連続再生時間は約8時間だが、音質強化の「Roar」機能をオンにして音楽を流しっぱなしにしてみたところ、約6時間半で電源が切れた。"いろいろ喋ってくれる"製品なのだが、残量がなくなると何のアナウンスもなく電源オフになるのはちょっとさみしいところだ。

「Roar」オンで高音から低音までしっかり響くサウンド

 まずiPod touchで、「グリーン・デイ/インターナショナル・スーパーヒッツ」から「マイノリティ」をかけてみる。3分未満と比較的短いがリズミカルで元気な曲で、イントロのアコースティックギターの旋律が鮮やかに立ち上がってくる。一聴するとやや低音が足りないものの、この曲の持ち味であるパワフルさが十分感じられる音質だ。ノートPCでaptXを使った再生でもこの傾向は同じだった。

 再生楽曲は「インターナショナル・スーパーヒッツ」のCDをそのまま44.1kHz/16bitのWAVファイルにリッピングしたもの。同じファイルをさきほどNFCペアリングで使ったXperia Aから再生すると、SBCコーデックのみ対応ということもあり、音が少し細くなってしまう。「マイノリティ」はアコースティックギターのイントロに始まり、アコースティックギターのアウトロで締める曲なのだが、この箇所に差し掛かると特に音の細りが目立つ。

ROARボタンを上部に搭載

 再生機器をiPod touchに戻して、次に音質強化「Roar」機能を試してみた。上部のROARボタンを1回押すとTeraBassがオンになり、インジケーターのLEDが緑に点灯。もう1回押すとRoarがオンになり、LED色が白に変わる。さらにもう1回押すとLEDが無点灯になり、オフになる。まず、TeraBassオンの状態で「マイノリティ」を流すと、さきほどと打って変わって低音がよく出るようになり、ベースラインの躍動感やドラムの勢いが感じられるようになったが、代わりにボーカルがやや引っ込む印象だ。ここでRoarをオンにするとボーカル付近の中音域が戻ってきて、高音から低音までまんべんなくしっかり聴かせるように音質が変化した。

 クラシックやJ-Popなど、さまざまなジャンルの音楽も流してみたが、基本的にRoarは常にオンで使うのが良いだろう。ヤナーチェクの管弦楽「シンフォニエッタ JW VI/18 - 第1楽章」でRoarのオン/オフを試すと、金管楽器のファンファーレやティンパニの打音などはオンのほうがよく響いて聴こえ、宇多田ヒカルの「SAKURAドロップス」ではオフだと"鳴っているだけ"と感じられた歌声の印象が、オンにすることで生っぽく感じられるようになった。

 説明書を読むと、TeraBassは音量を絞ったときでも低音が聴こえやすいようにはたらき、RoarはこのTeraBassの音に広がりをもたせ、高音から低音まで全体的に音量ブーストをする仕組みのようだ。ただし、電源を切るとTeraBass/Roarもオフになってしまうので、使いたいときにROARボタンを2回押すのは若干手間だと感じる。せっかくバッテリーも内蔵しているので、電源を切っても設定を記憶してもらえるとうれしい。なお、付属のACアダプタを使えばさらに音量アップできるようだが、8畳くらいの部屋では結構な音量まで上がって周囲への影響も気になるので、バッテリ駆動だけでも十分だろう。

 また、本体の置き方で音の印象も当然ながらだいぶ変わる。立てて自分に向けて置くと音がダイレクトにこちらに伝わり、音量を上げればバランスの良い音を一身に浴びるような感じでリスニングが楽しめるが、原稿を書いたり調べ物をしたりしながら使っていると、ややうるさく感じてしまうこともあった。一方、横置きにすると、ある程度音量があっても天井まで響かせる形になるので、部屋全体が音楽で満たされるような感じになり、うるさく感じることはなくなった。

 深夜など音を絞らなくてはならないが、部屋で音楽を流しておきたいときにはTeraBassをオンにして縦置きで使い、スマホとRoar 2で音量を上げつつ音楽を楽しみたいときはRoarオンで横置きにして使うと良い。今回使った再生機器では、音量をコントロールしてもRoar 2の音量設定と同期しなかったので、それぞれ調整してちょうどよい大きさに変更できた。

縦置きしたところ
横置きしたところ
JBL PULSEと並べたところ。幅の長さはほぼ同じ

 Bluetoothスピーカー同士で音を比較するため、手持ちのBluetoothスピーカー「JBL PULSE」も一緒に使ってみた。こちらはドライバ2基を内蔵し、対応コーデックはSBCのみ。円筒形で形状は異なるものの、幅の長さは同じだ。こちらもさまざまなジャンルの音楽を聴いてみたところ、JBL PULSEはクリアで伸びやかな高音域を聴かせてくれるのだが、低音のパワーが不足しがち。プレーヤーのアプリ側のイコライザを調整しても良い結果は得られなかった。Bluetoothスピーカーでも芯のある音の響きや低音を重視したい人には、Roar 2がオススメだ。

クルマでRoar 2。カーオーディオ代わりにも?

 好印象のRoar機能だが、この機能はもともと「パーティや人数が多い集会など、音量や音の広がりが欲しい場所で使う」ことを想定しているという。日本ではそうした場で使う機会はなかなか無いと思うが、ワイヤレスで持ち運びできるBluetoothスピーカーの特性を生かさず、部屋に置きっぱなしで使うのはもったいない。「Roar(吠える)」という単語を製品名に冠しているだけあって相当の大音量で鳴らすことも可能だ。試しに音を上げていっても筐体からビビリ音はせず、それどころか室内の家具と共振してしまうほどだった。そこで大音量でも使えるRoar 2の実力を活かす方法として、クルマに持ち込んでカーオーディオ代わりに使うことを考えてみた。

「Sound Blaster Central」(iOS版)

 家族の協力を得て、実際に車内(トヨタ ヴィッツ)でRoarをオンにして鳴らしてみると、思っていたよりも良い音で音楽を楽しめることがわかった。車載専用に作られたオーディオシステムにはさすがにかなわないが、さまざまなジャンルの音楽を鳴らしてみると、狭く密閉性の高い車内では高音や低音だけでなくボーカルなどの中音域も良く響く。Roar 2対応を謳ってはいないが、iOS用アプリ「Sound Blaster Central」を使って楽曲の再生/停止や音量調整などの操作も行なえた。ワイヤレス再生でスマホなどのバッテリ残量が心許なくなってきたら、Roar 2の内蔵バッテリを使って、モバイルブースターのようにUSB経由で給電することも可能だ。

 1kgという重さがここではプラスにはたらき、助手席のシートにぽんと置くだけでも比較的安定して設置できる。とはいえ、万一急ブレーキをかけるなどして飛んでしまっては危険なので、グローブボックスに入れて使ってフタを開けた状態で使うことにした。これだと中で反射して音が車内全体に届くようになる。置き場所としてはここがベストで、カーオーディオが搭載されていないクルマに乗る状況などで重宝するだろう。ただしメーカーが想定している使用方法ではないので、実際に使用する際は注意して欲しい。

助手席に置いたところ。クルマの振動でずれることも
グローブボックスだと収まりも音も良くなる

パソコンのUSBスピーカーに。スピーカーフォンで通話録音も

 Roar 2には、このほかにもさまざまな機能を搭載している。パソコンに接続するとUSBスピーカーとして使うことができ、専用ソフト「Sound Blaster コントロールパネル」をインストールすれば、独自の「SBX Pro Sound」による細かい音質調整も行なえる。対応OSはWindows 7/8/8.1とMac OS X 10.6以降。

USBスピーカーとして動作

 ワイヤレスならではの取り回しの良さは損なわれるが、さらに良い音が楽しめ、好みの音質に変えることもできて便利だ。パソコンの液晶ディスプレイの下などに横置きにして動画を再生することで、サウンドバーのような使い方をするのもアリだろう。USBスピーカーモードではUSB給電が停止し、気づかないうちにバッテリ切れでRoar 2の電源が落ちることがあるので、ACアダプタを繋いで使うと良い。

 再生楽曲にはFLAC形式のハイレゾデータを用いてみた。Roar 2自体は最大48kHz/16bitまでの対応だが、ソフトウェア側でコンバートすることで出力できる。用意したのは、e-onkyo musicで配信されている、梶浦由記が手がけるFictionJunctionのライブベスト盤、FictionJunction 2010-2013 The BEST of Yuki Kajiura LIVE 2(48kHz/24bit)と、山崎まさよし/Yamazaki Masayoshi String Quartet "HARVEST" in 東京(192kHz/24bit)。

 梶浦由記の曲はNHKの朝ドラ「花子とアン」や「歴史秘話ヒストリア」の中で多用されているほか、アニメやゲームの劇伴なども数多く、一度は耳にしたことがある人も多いだろう。「FictionJunction 2010-2013 The BEST of Yuki Kajiura LIVE 2」のリリース告知CMで耳にして印象に残っていた「Sweet Song(LIVE#10)」や「hepatica(LIVE#6)」はPS2用のSF作品「ゼノサーガ」シリーズで使われた楽曲。Roarオフのままだと打ち込みの低音や弦楽器の高音部の響きが物足りなく感じられるが、オンにして流してみると、哀愁を帯びつつも伸びやかで張りのある女性ボーカルが耳に心地よく響く。

 次に、山崎まさよしのしっとりとした「One more time, One more chance」や、明るく元気なサウンドの「セロリ」をRoarオンで流してみた。アコースティックギターを爪弾く繊細な音や、バックで演奏している弦楽四重奏の楽器ひとつひとつが奏でる音の箱鳴り感がRoarオフのときと比べると明瞭になり、やはりオンにしたときの音のほうが好ましく感じられた。

 インストールしておいた「Sound Blaster コントロールパネル」を開くと、Roar 2からの再生音をくぐもった感じにする「ウォームサウンド」や、音の広がりを強調できる「サラウンド」などのプリセットモードが用意されていて、各モードの音質をベースにサラウンド効果や低音の強弱、音の明瞭化など、より詳細な音質のカスタマイズが楽しめる。サラウンドモードを選択してRoarをオンにするといった使い方も可能で、さきほどのライブ音源をこの組み合わせで鳴らすと、特に臨場感が高まって効果的だと感じた。

Sound Blaster コントロールパネルの画面
サラウンド効果や音の明瞭化、低音などを細かく調整できる
microSDカードを挿入したところ

 このほか、内蔵マイクを使って、スマホなどのスピーカーフォンとして使うこともできる。microSDカードを挿入しておけば、通話時に録音ボタンを押すことで通話録音も行なえるところが特徴で、大事な通話内容を記録しておきたいときに使えるかもしれない。ボイスレコーダとして使用することもでき、いずれも録音形式はWAVだった。さらに、パソコンにUSB接続したまま上部のスイッチをマスストレージモードに切り替えると、挿入したmicroSDカードのカードリーダーとしても使える。カードに音楽データ(MP3/WMA/WAV)を保存して、単体で再生することも可能だ。本体のボタンで再生/停止などが行なえる。

音にこだわったRoar 2は屋内外で活躍できる逸品

 Sound Blaster Roar 2を使っていて感じたことは、「この大きさでここまで大音量で迫力のある音を出せるのか」という驚きだ。持ち運びやすさを意識したBluetoothスピーカーを多く見かける中、1kgという重さはややポータビリティには欠けるが、ワイヤレス製品ながら音質/音量を重視し、しっかり音楽を楽しむための設計と考えると納得できる。

 多機能ぶりも注目ポイントで、積極的に外に連れ出したい向きにも十分対応できそうだ。これから夏の行楽シーズンを迎えることを考えると、たとえば仲間とバーベキューやキャンプに行く際、クルマでカーオーディオ代わりにしてみたり、屋外で場の雰囲気を盛り上げるために、音量を上げて音楽を流したりといった使い方が考えられる。ただし防水仕様ではないことと、音量の上げ過ぎには注意したい。スマホのバッテリ残量が少なくなったらモバイルブースターとして活用し、イベントの思い出をボイスレコーダ機能を使って音声で残しておく、といった使い方もできるだろう。

 室内やクルマの中でワイヤレスオーディオを気軽に楽しめ、パソコンとUSB接続すれば自分好みの音で、腰を据えて音楽/映像鑑賞に浸ることも可能なRoar 2。「Bluetoothスピーカーが欲しいが、音や機能性で妥協はしたくない」という人にオススメしたい。

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Sound Blaster Roar 2

庄司亮一