ミニレビュー

ツール・ド・フランスのカメラを意のままに?、新配信「J SPORTSオンデマンド」に加入した

 メタボ解消のために、2年ほど前からロードバイクにまたがるようになり、自転車の魅力に開眼。自分で乗るだけでなく、プロ選手の華麗な走りにも魅せられるようになり、サイクルロードレースも観賞するようになった。

 ただ、サイクルロードレースの本場はヨーロッパ。時差の関係で夜にライブ放送される事が多く、観たいレースの時間が仕事の帰り時間と重なったり、まだ仕事をしていたりと、なかなか腰を据えて観る時間がとれない。そこで昨年、スカパー! オンデマンドの「J SPORTS LIVE+オンデマンド」に加入。スマートフォンやタブレット、PCで、いつでも、どこでもサイクルロードレースが楽しめる環境を入手したのはお伝えした通り。

 ツール・ド・フランスやジロ・デ・イタリアなど、熱い戦いを楽しんでいたのだが、この“J SPORTS視聴環境”に7月3日、変化が起きた。J SPORTSが新たに映像配信サービス、「J SPORTSオンデマンド」を開始したのだ。今までと一体何が違うのか? さっそく加入してみたので、その使い勝手をレポートしてみたい。

J SPORTSオンデマンドとは何か?

 視聴環境の変化を言葉で説明すると、「スカパー! オンデマンドのJ SPORTS LIVE+オンデマンドを退会し、J SPORTSオンデマンドに加入した」となる。同じようなサービス名がズラッと並ぶので、ハッキリ言って何がなんだかわからない。

 簡単に言えば、以前加入していたのは「スカパー! オンデマンド」だ。スカパー! で放送されている趣味性の高い様々な番組を、インターネット経由でオンデマンド配信するサービス。「スカパー! オンデマンド」という配信プラットフォームの上に、「Jリーグオンデマンド」や「フジテレビNEXTsmart」など、様々なチャンネルが用意されており、その中の「J SPORTS LIVE+オンデマンド」と契約していた。

 新たに加入した「J SPORTSオンデマンド」は、「スカパー! オンデマンド」とは無関係。J SPORTSというスポーツテレビ局が、自分自身でスタートした配信サービスに加入した、というわけだ。

 ただ、サイクルロードレースを楽しむに限って言えば、「スカパー! オンデマンド」で観ても、「J SPORTSオンデマンド」で観ても、中身としては同じだ。それでも、わざわざスカパー! オンデマンドからJ SPORTSオンデマンドに乗り換えたのには理由がある。

ジャンルを絞れば低価格で楽しめる

 従来契約していた「J SPORTS LIVE+オンデマンド」の月額視聴料は2,469円。テレビ放送のスカパー! で、「プレミアムサービス J SPORTS 1+2+3+4」や「スポーツセレクション」などを契約していると、これが月額1,080円に割引される。逆に言えば、2,469円を支払えば、テレビのスカパー! に契約していなくても、J SPORTSの番組が楽しめるというのがスカパー! オンデマンドのミソだ。

 対して、新しい「J SPORTSオンデマンド」には、“ジャンルパック”というのもが設けられている。例えば「ツール・ド・フランス」などのサイクルロードレースを視聴したい人は「サイクルパック」、プレミアリーグなどを楽しみたいサッカーファンには「サッカーパック」を用意。他にも「ラグビーパック」、「モータースポーツパック」も用意。パックの視聴料は各1,800円だ。

ジャンルパックの詳細

 つまり、サイクルロードレースだけを楽しみたいという場合は、1,800円で済み、スカパー! オンデマンドの2,469円より低価格になるわけだ。これが“乗り換え”を決意した大きな決め手だ。

 なお、様々なスポーツの番組を全部楽しみたいという場合は、サイクルロードレース、サッカー、ラグビー、モータースポーツ、学生スポーツなどの「イベント」、野球、バスケットボール、フィギュアスケート、スキー、バドミントン、ダーツ、フラダンス、柔道、卓球なども含めた番組が全てが楽しめる、2,400円の「総合パック」も用意されている。このパックを選んだ場合は、従来の「J SPORTS LIVE+オンデマンド」(2,469円)とほとんど変わらない価格となる。

マルチアングルシステムで自宅が放送局気分?

 さっそく加入してみよう。会員登録自体は無料。PCのブラウザから行なったが、入力内容はメールアドレス、名前や住所など、一般的な項目ばかり。会員登録後に商品購入として「サイクルパック」を購入。月末に自動更新するタイプを選んだ。

 支払い方法はクレジットカード、キャリア決済(ソフトバンク/au)が選択可能だ。

J SPORTSオンデマンドの紹介ページ
J SPORTSオンデマンドのサービスページ。スポーツのジャンル別にメニューが用意されている
会員登録画面

 なお、ユニークな「U25割」も用意されている。13歳以上、25歳以下であれば、学生証や運転免許証、保険証など氏名・生年月日が確認できる画像を用意し、会員登録する事で、なんと月額視聴料金が半額になる。月額約2,000円の出費は学生にはキツイと思われるので、こうした配慮は嬉しい。

「U25割」も用意されている
支払い方法画面
サイクルロードレースのパックを購入した

 会員登録と視聴権の購入が終われば、後はすぐにPCのWebブラウザから楽しめる。サイクルロードレースの配信ページには開幕したばかりの「ツール・ド・フランス2015」に加え、「全日本自転車競技選手権大会」、「クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ」など、過去のレースが既に登録されており、クリックするとすぐに再生がスタートする。

サイクルロードレースの配信ページ
視聴画面

 ブラウザ内での表示に加え、全画面表示でも可能。ブラウザ内表示時の解像度はツール・ド・フランス2015で約700×340ドット。スカパー! オンデマンドは840×470ドット程度なのでやや小さ目だが、全画面表示もできるので気になるほどではない。ちなみにスカパーオンデマンドの方が、配信が6秒ほど遅い。Twitterと併用しているなど、リアルタイム性にこだわる人は「J SPORTSオンデマンド」の方が有利なようだ。

左が「スカパー! オンデマンド」、右がJ SPORTSオンデマンド。解像度はスカパー! オンデマンドの方が僅かに上のようだが、遅延が大きい

 ビットレートは設定アイコンから1,465kbpsと3,027kbpsが選択可能。主に3,027kbpsで視聴したが、テロップや選手のゼッケンなどは十分解像されている。ツール・ド・フランスの第1ステージをリアルタイムで、自宅の光回線で視聴したが、まったく途切れず、安定した視聴が可能だった。サービスの利用者が増え、レースがさらに終盤になった時にこの快適さがどう変化するかが気になるところではある。

ビットレートは設定アイコンから1,465kbpsと3,027kbpsが選択可能

 なお、PCのブラウザでツール・ド・フランスを観る際は、さらにユニークな視聴方法も用意されている。ツール・ド・フランスでは、先頭を走る選手をカメラが捉えるだけでなく、その後方や中盤など、様々なポジションにバイクカメラが追従。前を走る選手のためにドリンクを届けるサポート選手や、ゴールに向けて体力を温存しているサポートメンバー+エース選手の動向など、様々な場所で繰り広げられるドラマを撮影している。

 そうした、複数のカメラの映像をユーザーが自由に切り替えて楽しめる「マルチアングル映像システム」が配信で楽しめるのだ。通常の放送では、こうしたカメラの映像をテレビ局側が切り替え、「それでは後方の映像も観てみましょう」という感じで使われるものだが、専用の配信ページにアクセスすると、メイン画面の他に、最大6台のバイクカメラの映像が用意され、サブ画面に表示するカメラを自由に選択できるようになっている。

 第1ステージで実際に試してみたが、メイン画面に写る人気選手の走りを見ながら、サブ画面にライバル選手の走りを常時表示したり、ゴール地点の定点カメラを表示させたりと、まるでテレビ局のスイッチャーを自分で扱っているような気分になって非常に面白い。

クリス・フルームとアルベルト・コンタドールの個人タイムトライアル、両者を追う個別のカメラを選択した

 ツール・ド・フランスでは過去の名選手のインタビューや、コースの途中に現れる美しい歴史的建造物などの映像を楽しむのも醍醐味なのだが、応援している選手がどうなっているのか一瞬でも目が離せない時にそうした“オマケ映像”がメインに流れてしまうとイライラする時もある。そんな時に、自分でマルチアングルを選択し、頑張っている選手から目を離さずに応援し続けられるというのは非常に快適だ。

 200km以上走る事もあるサイクルロードレースの場合、3時間、4時間と、番組の時間そのものも長時間になる。それだけ長いと、観ていて気が抜けてしまう事もあるのだが、マルチアングル映像がドバっと目の前に広がっていると、興味のあるカメラを選び続けられるので、飽きにくいという印象も持った。既にテレビ放送のスカパー! でツール・ド・フランスを楽しんでいるというコアなファンも、このマルチアングルのために、このサービスを追加で契約するというのも十分アリだと感じる魅力がある。

選手を追うバイクカメラがまだスタートしていないと、観客の様子が写っていたりと、“よそ見”ができるのも面白い

 次第にスイッチングが面倒になり、マルチアングルページを2つブラウザで開いて、4カメラを同時表示したり、ブラウザのウインドウ1つ1つにカメラを表示して、PCのデュアルディスプレイに敷き詰めたりしてみたが、自宅の光回線では問題なく表示でき、なかなか壮観だった。

複数のカメラウインドウを並べて楽しむ事もできた

 なお、配信翌日に第1ステージのオンデマンド配信をチェックしたところ、サブカメラの映像はオンデマンド配信されていないようだ。あくまでライブ配信時のみのお楽しみという事なのだろう。できればオンデマンドでも、マルチアングル操作を楽しみたいところだ。

スマホやタブレットでの視聴も

 PCだけでなく、スマホやタブレットでも楽しんでみた。執筆している7月5日現在、iOS版のアプリがまだ公開されていないので、既に公開されているAndroid版のアプリを、スマホとタブレットにインストールしてみた。

 スマホ/タブレット版アプリでは前述のマルチアングルは利用できないが、PC版のWebサイトとよく似たデザインのメニューが現れ、迷うことなく配信が楽しめる。端末を横向きにして全画面表示も可能。防水端末を利用し、お風呂やキッチンでレースを応援するというのも、このサービスならではの使い方だろう。

Android版アプリのダウンロード画面
アプリのサービス画面
視聴画質は3モードから選択可能だ
複数の端末からアクセスしようとするとエラーが出た

 なお、同じIDでサインインしたAndroidスマホとタブレットで、同時に視聴しようとしたところ、「同時視聴の数が上限1台に達しているため、これ以上割り当てられません」というエラーがでて、片方しか視聴できなかった。PCで視聴している時も同様で、PC+Android端末での同時利用はできないようだ。

iPadで視聴しているところ
アプリはまだ公開されていないが、ブラウザでiPhoneからも視聴可能
テストしたタイミングでは、iPhone/iPad両方から同時再生できた
Androidタブレットのアプリから視聴しているところ
Androidアプリのスマホとタブレットでは同時視聴できなかった

 アプリはまだ公開されていないが、試しにiPhoneとiPadのブラウザで視聴したところ、ブラウザでは利用可能。こちらは何故か、iPhoneとiPadで同時視聴ができた(同じApple IDの端末)。アプリの方が同時視聴数の制限が厳格という事なのだろうか? 混雑やタイミング的なものかもしれない。

“テレビ番組をネット経由で”を超える魅力を

 スカパーオンデマンド利用時と比べ、視聴できるスポーツジャンルは制限されるが、低価格で楽しめ、なおかつテレビ放送以上にレースがマニアックに楽しめるマルチアングルサービスも用意されているなど、満足度は高い。

 気になるのは、このマルチアングルサービスがツール・ド・フランス以外のレースでも用意されるのかという点だ。ツールのような大規模なレースだと、今後の大会でも楽しめそうだが、それ以外のレースでも幾つか利用できれば、サービスの満足度アップにも貢献するだろう。

 映像配信は、テレビで放送されているものをインターネットを介して、PCやスマホなど、様々な端末で視聴でき、録画しなくてもオンデマンドで楽しめる事が最大の魅力だが、テレビ放送以上の映像を提供するという意味でも興味深いサービスの登場だ。今後もSNSとの連携など、ネット経由ならではの魅力アップに期待したいところだ。

山崎健太郎