レビュー
横断検索最強、GoogleならではのHDMI端末「Chromecast with Google TV」
2020年12月3日 08:10
11月25日、Googleからスティック型のHDMI端末「Chromecast with Google TV」が発売された。価格は7,600円(税込)。スマートフォンで再生している映像などを、Chromecastに転送し、テレビに表示できるほか、Chromecast単体でもYouTubeやNetflixなどのアプリが使える注目製品だ。カラーはSnow、Sunrise、Skyの3色。
外観などは既に「開封の儀」でお伝えしているが、今回はしばらく製品を使ってみて感じたことなどを、もう少し細かくレポートしていく。
あなたのTVをスマートTV化! 「GoogleTV」を搭載
「Chromecast with Google TV」は、「Chromecast」という名称の通り、テレビに接続して使用するデバイスなのは変わらないのだが。以前のChromecastは、特にスマートフォンを使って再生している映像などを、Chromecastに“キャスト”し、テレビに表示するという使い方がメインの機能だった。
が、新モデルでは、そのイメージは一変した。
リモコンが同梱され、「Google TV」と「Googleアシスタント」がChromecastに合体、各種配信サービスのコンテンツをこれ1台で探して、観られるようになったことが特徴だ。
Google TVというのは、内容的にはテレビ向けのAndroid OSである「Android TV」ほぼそのままだ。実際、システム情報には「Android TV バージョン10」と記されている。
Android TVは、UIなどがスマートTV向けに最適化された簡易型Android OSだ。(Android TVプロファイルに対応していれば)アプリのインストール・使用もできる。
ただ、誤解しないで欲しいのは、Chromecast with Google TVは、従来のChromecastに搭載していたスマホとの連携機能はフルに残っている。そのうえで、Android TV機能がプラスされている。要は上位互換なのだ。
Chromecast with Google TVで使える動画&音楽配信サービスだが、デフォルトでは……
- YouTube
- Netflix
の2つが必ずインストールされ、
- Amazon Prime Video
- ABEMA
- Hulu
- dTV
- TVer
- U-NEXT
- FOD
- Paravi
- Rakuten Viki
- WATCHA
- YouTube Music
- Spotify
……が初期設定時にインストールするかどうか選択可能だ(後からインストールも可能)。
なお、Netflix、Amazon Prime Video、ABEMAなどはホーム画面における「あなたへのおすすめ」表示にも対応している。
また、これら以外のサービスとして「GYAO」「dアニメストア」などもGoogle TV(Android TV)用アプリがあり、インストールすることで視聴可能だ。しかし、残念ながら「おすすめ」や、後述の「横断検索」の対象にはならない。
筐体のサイズ的にはこれまでのChromecastとほぼ同じサイズ・重さで、HDMI端子にぶら下がれる程度のコンパクトなサイズながら、スペック的には大きく進化しているようで、操作性はずいぶんと向上している。
内部に使われているSoCもAmLogic製に変わり、ストレージも8GB(うちデフォルトでは4.4GBユーザー使用可能)と高性能化したこともあるのだろう、リモコンなどの操作もサクサクと快適に動くし、サムネイルの再生もだいぶ滑らかだ。とはいえ、3DMARKなどを動かしてみると、スマホの数十分の1の値しか出ないが、まぁ、そこは仕方のないところだろう。
3Dオブジェクトを使っているゲームなども、問題なく動く。
インターフェースとしてはBluetooth対応しているので、キーボードなども接続可能。ゲームパッドなども接続可能なはずだ。
実は筆者の手元のジョイパッドは故障していたため体験できなかったのだが、クラウドゲームサービス「Geforce Now」などもインストールできるので、Bluetooth対応のジョイパッド(と月額1,800円を出せる懐)さえあれば、例えば「Fortnite」や「Apex Legends」も遊べる……のかもしれない。
なお、Chromecast with Google TVではDolby Vision、HDR10、HDR10+と、HDR映像にも対応。解像度は最大4K/HDR/60p、音声形式はDolby Digital、Dolby Digital Plus、Dolby Atmos(パススルー)にも対応している。
リモコンの操作性は抜群。音声誤変換もほとんどなし
Chromecastといえば、これまでは付属リモコンが無く、代わりにスマートフォンでの操作が必要だったのだが、新モデルではリモコンが付属するようになった。やっと他のSTBやAmazonのFire TV Stickなどと同様、リモコンから操作できるようになったわけだ。
リモコンは手のひらにすっぽりと収まる、かなりコンパクトなサイズ。
ホーム・カーソルボタン、GoogleアシスタントやNetflix、YouTubeを一度押すだけで起動するボタンなど、上面には計9個+4方向のボタンが載っている。
側面にはスマートフォンのように音量調整ボタンを搭載。この音量調整と、正面の下2つ「電源/入力切り替え」は、実は、Chromecastではなく、テレビを操作するためのものだ。
設定こそ必要だが、このリモコンだけで、Chromecastの操作だけでなく、テレビの電源ON/OFF、スピーカーの音量調整までできるのだ。対応テレビやスピーカーはメジャーどころからマイナーに至るまで多数のメーカーに対応、よほどのことがない限り、自宅にあるテレビにも対応できるだろう。
Chromecast with Google TVでは、付属リモコンによる操作が可能となったことで、セットアップも、スマホやタブレットではなく、リモコンのみでも可能となった。
とはいえ、Googleアカウントなどをリモコンのソフトキーボードや音声から入れるのはそれなりの労力が必要になるので、手軽に済ませたいのであれば、やはり、スマートフォンを使うことをお勧めする。
それだけではない。操作用にリモコンが加わっただけなのだが、テレビ番組シリーズの視聴などは恐ろしく楽になった。たとえば視聴中には「イントロスキップ」「次のエピソードを見る」といった表示が画面中に出てくることがあるが、このリモコンの「決定ボタン」「←」「→」といったボタンで、ポンポン、と操作できるのだ。この手軽さ。これこそがこれからのテレビに求められていたものなのではないだろうか。
しかも音声リモコンの文字変換も恐ろしく正確なのだ。マイクに向かって話している途中途中はしばしば試行錯誤を繰り返している感じなのだが、最終的には正確な単語になっている。
「きめつのやいば」と話しても「きめつのやいば」としかならないことが多いが「げきじょうばん きめつのやいば」と言うと「劇場版 鬼滅の刃」と変換されるなど単語の前後を観て見合った漢字を当てはめているような気もする。おそらくAI変換の一種なのだろうが、いやはや恐れ入るGoogleの技術力だ。
あるいはYouTubeを観ていてCMをスキップするときにも、ポンとリモコンのボタンを押せばいい。マウスをわざわざスキップカーソルまで移動させるまでもなく、いわんや、従来のChromecastのようにスマホをアンロックさせることも必要ないのだ。快適、愉悦。
ちなみに、番組閲覧中の「早送り早戻し」はリモコンの左右カーソルでできる。これが、このChromecast with Google TVでは、10秒ごとに1コマが表示され、観たい場面を選択できる。場面セレクトも速いので非常に快適だ。
もはや、Chromecast with Google TVのリモコンなしに、NetflixやAmazon Prime Videoといった動画を観るのはツラい・無理とさえ思うほどだ。
従来のChromecastから何かを削ったわけではなく、そこに新たにGoogle TVの機能とGoogleアシスタントを搭載している。この、“上位機能”として搭載されたGoogle TVが便利すぎて、これまでのChromecastシリーズが霞んで見える。もはや後戻りはできない。
なにより便利な配信サイト横断検索
便利なのは、「早送り早戻し」機能だけではない。特筆すべきは、なんと言っても、番組の検索機能だろう。
Chromecast with Google TVは「観たい番組」をタイトル、テーマなどから探し出してきてくれる。
たとえば「ギャングの映画が観たい」といえば、各配信サイトから「ブラッド・スローン」「スノー・ロワイヤル」「ストレイト・アウタ・コンプトン」「HiGH&LOW THE MOVIE」とギャングをテーマにした映画をピックアップ、サムネイル表示してくれる。
あるいは番組名そのままでもいい。「ストライクウィッチーズが観たい」と言えば、アニメ「ストライクウィッチーズ」第1期を探し出してきてくれる。
そして、なにより良いのは、この検索結果が「横断検索」の検索結果である、という点。簡単に言うと、複数のサービスが持っているコンテンツを横串通しで一括してまとめて検索し結果を表示してくれるのだ。
例えば、先程のギャング映画の場合であれば、「ブラッド・スローン」はU-NEXT、「スノー・ロワイヤル」はdTV、「ストレイト・アウタ・コンプトン」はGooglePlay、「HiGH&LOW THE MOVIE」はNetflixで、それぞれ配信されているコンテンツだ。
今まで、何か観たい番組があった場合、そのサービスに入り検索するのが普通だった。複数のサービスに加入している場合は、その中のどれかにあるかもしれない……と、各サービスに一旦入って検索、次のサービスに入って検索……とサービスごとに検索を繰り返すしかなかったのだが、その手間が省けるのだ。
「ストライクウィッチーズ」を検索するとPrime Video、Hulu、U-NEXTと動画が観られるサイト候補が3つ挙げられる。その中で好きなサービス……というか、加入しているサービスがあれば(あるいは無料で加入せずに観られるサービスがあればそれで)観ればよい、というわけだ。
ちなみに、筆者の場合Amazon Prime会員であり、Huluにも入っているのでどちらでも観られる。好きな方で視聴すればいいわけだ。
横断検索を使うかどうかは、Chromecast with Google TVのセットアップ時に設定する。Chromecast with Google TVのセットアップ時に「すべてのテレビアプリを横断的に検索」という表示が出てくるはずだ。デフォルトで「許可」になっていると思うが「許可しない」を設定しないように気をつけたい。
なお、横断検索の対象となるのは、現在のところ
- Netflix
- ABEMA
- Amazon Prime Video
- dTV
- Hulu
- U-NEXT
- GoogleTV(GooglePlay)
となっている。
残念なことにプリインストール可能のサービスでもたとえば「TVer」や「FOD」らは対象になっておらず、また後からGooglePlayでインストールできるサービス、たとえば「GYAO!」「dアニメストア」なども検索対象にはならないようだ。おそらく、検索対象とするにはサービス提供側でなんらかの対応が必要なのだろう。非常に便利な機能なので、できれば、できるだけ多くの配信サービスでこれに対応してほしいと思う。
Google検索の「観たいものリスト」にメモって、帰宅後落ち着いて観る
また、Chromecast with Google TVの良い点に、Google検索との連携が挙げられる。Google検索の「観たいものリスト」にブックマークすることで一元管理ができるのだ。
具体的には、スマートフォンなどで検索した映画や番組などの情報を「見たいモノリスト」に入れておくと、それがChromecast with Google TV内のリストに同期され、帰宅後、テレビでゆっくりを観ることができるわけだ。
たとえば、Google検索で「インターステラー」という映画をGoogle検索したとする。
ちょっと興味が湧いてきたので、ここでGoogleの「観たいものリスト」にチェックを入れる。
と、家に帰ってから、テレビをオンにしてChromecast with Google TVの「ライブラリ」→「観たいものリスト」を選択するとそこに「インターステラー」のサムネイルが表示されている、という具合だ。
ちなみにどこで見られるかを選択すると、Netflix、Prime Videoなど鑑賞方法は7通りも出てくる。横断検索、すごい。
この辺り、Google TVの「検索や他のサービスとの融合」っぷりは、本当にすごい。
ほかにも、Googleアシスタントでたとえば俳優・女優の名前で「米倉涼子」「米倉涼子の番組が観たい」「米倉涼子主演の映画が観たい」とリクエストすると、最初の問は、主な出演番組一覧を列挙、次はYouTubeの関連動画一覧、最後は映画の一覧と提示してくれる。このあたりは本当によくできているな、と感じる。
さすが、Google「ならでは」のデバイスだな、と感じずにはいられない1台だ。