レビュー

PS5×4K/8K対応AVアンプで次世代ゲームのサウンドを体験する

試聴室にセットされたPS5とAVアンプ。縦置きのPS5はなかなか存在感がある

11月12日に発売したPS5。発売日の混乱を避けるため、ソニーストアをはじめ多くの販売店で抽選販売が実施され、かなりの競争率を勝ち抜いて手に入れた人は幸いだ。筆者は残念ながらまだ入手できていない。目当てのタイトルである「バイオハザード:ヴィレッジ」などが発売される頃までに入手できれば問題なしと嘯いているが、当然内心はおだやかではない。

パソコンの最新のグラフィックボードなどを別にすれば、一般に発売されているもののなかでは8K出力ができる数少ない機器である。単純に8K映像を見てみたいし、4K/120pもゲーム好きとしてはおおいに気になる。オーディオ・ビジュアル系のライターとしても、最大48Gbpsのウルトラハイスピードを伝送できるHDMIケーブルの検証などを試してみたいなど、興味は尽きない。

そんな折、AV Watch編集部から「PS5と、いち早く8K対応しているデノン/マランツのAVアンプを組み合わせて、最新鋭のゲーム機の映像と音を体験してみませんか?」とのお誘いがあり、即断で引き受けた。PS5の実力がどれほどのものか、じっくりと確認させていだだこう。

AVアンプは4K/120pや8K対応、ただしPS5はまだ8K出力非対応

用意された機材はUHD BDドライブを備えたPlayStation 5。AVアンプはデノン「AVR-X4700H」とマランツの「NR1711」がある。このほか、ディスプレイはサムスンの60型8Kテレビ(海外仕様)、スピーカーは試聴室のリファレンス機器であるB&Wの800シリーズを中心とした6.1.4chのスピーカーを用意していただいた。

UHD BDドライブを備えたPlayStation 5
デノン「AVR-X4700H」
マランツ「NR1711」

縦置きのPS5はさすがに大きく感じられ、独特なデザインもあってゲーム機らしからぬ存在感がある。とはいえ、高さは390mmで横置きにするとフルサイズのAV機器とあまり変わらない。置き場所を心配している人も少なくないと思うが、一般的な横幅430mmのコンポを設置できるラックならば普通に設置できることがわかった。

ではさっそくゲームのサウンドを……といきたいところだが、その前にPS5の映像仕様を確認しよう。というのも、事前に調べたところ、現状ではまだ8K出力に対応していないなど、幾つか注意点がありそうなのだ。まずはそのあたりを整理しよう。

まず8K出力については、今後の対応アップデートがあった後、8K出力対応ソフトで実現できるようだ。4K/120p表示は現在でも可能だが、こちらも対応するソフトでのみ行なえる。現時点ではカプコンの「デビルメイクライ5 スペシャルエディション」のみ対応だという。ソフト持参したので、あとで本当に4K/120p映像が出力されるか試してみよう。

解像度以外のスペックもまとめておくと、HDR方式はHDR10のみの対応。Dolby Atmos、DTS:Xのサラウンド規格には、UHD BD/BD再生時のみ対応(ビットストリーム出力)で、PS5のゲームやネット動画アプリでは、リニアPCM最大7.1chまたはドルビーデジタル、DTSサラウンド出力となる。ディスクドライブはUHD BD/BD/DVDの再生が可能だが、CDの再生には非対応となっている。

このあたりは物足りない部分もある。欲を言えば、PS4用ソフトも含めてアップコンバートで8K出力して欲しいし、パソコンゲームではDolby AtmosやDTS:X音声に対応したタイトルもあるのだから、ゲーム音声やネット動画アプリもAtmos、DTS:Xへ対応して欲しい。PS5ではNETFLIXやYouTubeだけでなく、Apple TVも使えるので、Dolby VisionなどのHDR規格への対応も期待したいところ。全部はムリだとしても、ユーザーの要望などに応えて可能なものはアップデートで対応していくと思われる。それくらい期待値の高い新ハードなのだ。

ヌルヌルの4K/120p映像を体験!

まずは4K/120pを「デビルメイクライ5 スペシャルエディション」で体験しよう。その前にAVライターのクセでまずは映像と音声の出力設定を確認。PS5の設定画面に移動すると、映像出力は最大2160p(3,840×2,160)であることがわかった。リフレッシュレートは、4K/SDR、4K/HDRの両方で最大120p。音声はゲームではリニアPCM2ch/5.1ch/7.1chが選べる。

映像出力の設定で、解像度を確認したところ。最大2160pまで選択できることがわかる
映像出力情報を表示したところ。解像度は3,840×2,160でHDR対応。周波数(リフレッシュレート)はSDR、HDRともに120Hzとなっている
サウンドの設定。出力先の機器はテレビやAVアンプ、サウンドバーが選べるようになっている。ヘッドフォンなどを接続した場合はヘッドホンの選択肢も増える
AVアンプを接続した場合は、音声は7.1ch/5.1ch/2chの選択が可能
なんとスピーカーの設置位置(角度)の調整も可能。実際のスピーカーの配置を設定することで、サラウンドの再現性が向上する。AVアンプユーザーはきちんと設定しよう

ではいよいよ「デビルメイクライ5」をプレイする。起動が強烈に速いとは聞いていたが、実際に見ると驚くほど速い。起動のためにシステムディスクをセットし、その後にアイコンをクリックするのだが、体感的には待ち時間ゼロでロゴ画面が表示される。ゲームのスタートも速いし、マップ切り替えやゲームオーバー時の再ロードの時間も速い。PS3時代あたりから、リプレイ時の再ロードはそれなりに待たされることが増えていて、待ち時間の画面では退屈しないように攻略のヒントやTipsが表示されるが、それを読んでいるヒマがないほど速い。それまで1分近く待たされていたのが、数秒で終わってしまうイメージで、ロード画面を用意する必要はないのではと思うほどだ。

あっという間にゲームがスタートするが、ここで設定を確認してみると、ゲームのディスプレイ設定で「ハイフレームレート」の設定を発見。このほかにレンダリング品質に関わる「レイトレーシング」の設定などもある。ハイフレームレートを選ぶと4K/120p出力ができるようになる。ちなみにハイフレームレート選択時でもレイトレーシングも同時に使用できた。

プレイ画面に戻るとすぐ、見え方が違うのがわかる。まさにヌルヌルのなめらかな映像だ。キャラクターを移動させるだけでも実になめらかに動くし、カメラ視点を素早く動かしても映像がパラパラした感じになって見えにくくなることもない、シームレスで素早く動くのだ。美しいグラフィックがより見やすくなったと感じるし、なによりプレイがしやすい。移動中に視点を変えてあたりを探索するときも周囲の物を識別しやすいし、目への負担も少ないと感じる。

試しにハイフレームレートをオフとして、4K/60pでもプレイしてみたが、あきらかに違いがわかる。光の反射をリアルタイムで計算して再現するなど、グラフィックの向上は明らかだが、動き自体は今までのゲームと変わらない印象だ。カメラの視点を素早く動かすとパラパラとページをめくるような感じになってしまうし、動きのなめらかさが違う。8K映像ももちろん楽しみではあるのだが、4K/120pの方がゲームとしては価値があるようにさえ感じてしまう。

ちなみに、現時点で4K/120pに対応しているのは、シャープソニー、LGから発売されている8Kテレビ、それ以外ではLGの4K有機EL/液晶テレビも4K/120p対応となっている。このほか、パソコン用のモニターにも4K/120p対応のものがあるかもしれないが、まだ数は少ないだろう。今後8Kテレビが増えていくのか、4Kテレビが4K/120p対応となっていくのか、来年以降の薄型テレビでの対応が気になるところだ。

同じく、AVアンプでも同様に対応が必要になる。現在発売されているほとんどのAVアンプは4K/60pまでの映像の入出力にしか対応しておらず、8Kはおろか、4K/120pの信号にも非対応だ。現状で対応しているのは、デノンのAVR-X2700H、X4700H、X6700H、AVC-A110、マランツのNR1711、SR6015、SR8015だ。ヤマハの最新モデルもあるが、8Kや4K/120pへの対応は後日のアップデートでの対応となっている。

AVアンプの8K対応はHDMI2.1規格に対応し、認証を受けていれば決して難しいことではないと思いがちだ。さらに、PS5が発売された現在は、これから発売されるモデルはほとんどが8K対応になるのは確かだ。しかし、事実上家庭用機としては初めて8Kや4K/120p出力ができるPS5が発売される前から、きちんと8K対応を果たしていたのは素晴らしい事だ。

こうした混乱は2Kから4Kへの切り替わりの時期にもあったので覚えている人も少なくないだろう。対応しているはずなのに4K信号を認識しない、ある機器では4K信号を受けるのに、他の機器だと4K信号を受け付けないなど、初期にはトラブルが付きものなのだ。

しかし、今回試したデノンのAVR-X4700Hは、PS5の4K/120p信号を問題なく受け取り、ディスプレイにそのまま4K/120pでパススルー出力できた。これは立派なことだ。8Kや4K/120p対応の環境を整えるためには、薄型テレビとAVアンプの買い換えが必要になるが、デノンとマランツの最新モデルならば準備は万端。「今すぐ欲しい」という人のニーズにきちんと応えることができている。

今回試したAVR-X4700H。ゲームではリニアPCMの7.1ch音声をドルビーサラウンドで6.1.4ch化して再生した

そしてサウンドも凄い。魔界を思わせるおどろおどろしい場所にふさわしい不気味な雰囲気が周囲を包み込み、プレイヤーの操るキャラの足音やかけ声などもクリアに再現される。倒すべきモンスターの蠢く感じの音も実体感があって不気味だし、背後からその気配が迫る様子も実体感たっぷりで、アクション性の強いゲームとはいえ怖い雰囲気もたっぷりだ。

また、ボス戦が始まるとハードなロックサウンドが鳴り響く。テンションの高いパワフルな音楽が前方いっぱいに広がる。それらの音が実に明瞭だ。ボスモンスターの咆吼やアクションに伴う音、プレイヤーキャラクターの声や動作音、攻撃のエフェクト音などがたっぷりと前方や四方から聴こえるが、それらの音も混濁せずにクリアに再現され、アクションゲームとしての迫力満点でプレイできた。

PS5の音の実力はなかなかのものと思えるが、空間の広さ感やさまざまな音が四方から粒立ちよく再現されること、プレイヤーキャラクターの声の実体感、なにより迫力ある低音の鳴りっぷりの良さはAVアンプの実力が出ていると思う。AVR-X4700Hはミドルクラスのモデルだが、B&W 800シリーズをしっかりと鳴らしていることにも感心した。

ちなみに、PS5とAVアンプを接続するHDMIケーブルも重要だ。一般的なHDMIケーブルは転送速度18Gbpsまでのハイスピード規格のものだが、4K/120pや8K信号は最大48Gbpsのウルトラハイスピード規格のものが必要になる。要するにHDMIケーブルも8K対応のものが必要になる。高級なHDMIケーブルではそれらの対応も進んでいるが、まだまだ高価なものが多いのは事実。しかし、ディーアンドエムホールディングスが輸入しているAudioQuestのHDMIケーブルには、8K対応のHDMIケーブルも幅広く揃っている。

取材で使ったのは、AudioQuestの「Cinnamon48」(1万6,000円/1m)で、1m/2m/3mが発売されている。もちろんHDMI認証を受けたもの。このケーブルだけでなく、最も低価格な「Pearl48」(5,300円/1m)も48Gbps対応だ。安価とは言えないかもしれないが、手が届かない価格ではないため、PS5用のHDMIケーブルとしては最有力候補と言えるだろう。

取材で使用したAudioQuestのHDMIケーブル。8K・10Kの文字が頼もしい
Cinnamon48のパッケージ。製品ごとに端子やケーブルの配色を変えている

ちなみに、筆者が自宅で試用しているHDMIケーブルも試してみた。スープラの光HDMIケーブル「SUPRA HDMI 2.1 AOC」(10m)で、HDMI2.1の信号をきちんと送受信できるかを確かめてみたかったのだ。光HDMIケーブルは10mを超えるような長さでも光伝送のため信号の劣化が少ない特徴があり、長尺のHDMIケーブルでは注目されている。価格は高価になるがプロジェクターを使っている環境だと長尺のHDMIケーブルが必要になることが多い。ただし、現状のHDMIフォーラムでは光HDMIケーブルの認証を行なっておらず、発売メーカーは独自の測定や検証によってHDMI2.1対応を保証している状態だ。

そのあたり、実際に使えるかどうかはユーザー自身が試す側面もある。AudioQuestのようなメタル素材のHDMIケーブルならば認証済みのものがあり信頼性は高いが、AudioQuestの8K対応製品では最長5mまでとなる。いろいろなメーカーに聞くと、メタル線では3mを超えると最大48Gbpsの伝送が難しくなり、5mくらいが限界と言われている。長尺のHDMIケーブルを使う場合の悩みどころだ。

結論から言うと、SUPRA HDMI 2.1 AOC(10m)はきちんと4K/120pの信号伝送が行なえた。現状、8K入力ができるプロジェクターは家庭用では存在しないので、まだまだ心配する必要はないが、長尺ケーブルが必要な人は参考にしてほしい。

4K/60p HDR信号をやりとりしている状態での伝送信号の詳細をAVアンプで確認。4K/60pといえどもHDR/RGB伝送となると、HDMI2.1規格のFRL(Fixed Rate Link)で動作していることがわかる。4K/60p HDRで使う人もHDMIケーブルの変更を検討しよう

4K/120pのテストは満足できるもので、多くのソフトがハイフレームレートに対応して欲しい。また、パッケージなどでハイフレームレート対応が明記されていないことも気になった。4K/120pのソフトを探している人には不親切だ。好意的に見れば、将来的にPS5用ソフトのほとんどはハイフレームレート対応になるため、特別な表記をしていないのかもしれない。そうであればうれしい。対応する薄型テレビやAVアンプの普及も含めて現実的にはもう少し先の話かもしれないが、4K/120pはゲーム好きには大きな魅力があると実感できた。

今度はPS4ソフトゲームをプレイ

PS5は4K/120pも素晴らしいが、PS4ソフト互換という点も大きな魅力だ。PS5の優れたグラフィック性能があれば、PS4ソフトは単に互換性があるだけではなく、グラフィック品質もより良くなるのではないか。そう思って、今度はPS4ソフトの「モンスターハンター:ワールド アイスボーン」をプレイしてみた。やはりここで起動やロードの高速さに驚かされた。ちなみに筆者は自宅ではPS4proで同作をプレイしており、クエスト開始前のロード時間の長さにうんざりして、外付けでSSDを追加し、ゲームのデータなどをSSDに保存するようにしてロード時間の短縮をしている。その環境でプレイしていても、PS5のロード時間の短さに驚いた。PS5は本当に速い。

具体例を挙げると、クエストを登録すると、待ち時間が発生する。これは他のプレーヤーがクエストに参加する受付時間でもあるが、オフラインモードでプレイしているのでその時間は発生しない。いずれにしてもロードの待ち時間があるので、その間にステータスをアップする食事をしたり、装備の変更や確認をするのが、PS4でのプレイでは普通のスタイルだと思う。同じ感覚でクエストを登録し、食事をしようと思ったら、料理を作るデモが始まってすぐにクエストに出発する準備が整ったとの報せが入ってびっくりした。メシを喰うヒマもないほど速い! 素材集めのための周回プレイでうんざりしている人はPS5を手に入れると幸せになれるだろう。

そしてクエストに出発したが、グラフィックの品質も明らかに違うと感じた。4K/60pでHDR表示としているので、PS4proとスペック上は同じだが、あきらかに動きがスムーズだ。カメラで視点を動かしてみるとよくわかる。映像のパラパラとした感じが改善されていることがわかる。4K/120pのヌルヌルとまではいかないが、かなりスムーズな印象だ。これに理由があって、PS4proは4K/60pの信号出力をしているが、画面にたくさんのオブジェクトがあったり、描画の負荷が大きいとコマ落ちが生じてしまう。これはパソコンなどでも同様で、シーンによっては実効レートが下がって60コマ表示に満たないことが少なくない。PS5ではそれがあまり生じていないと思われる。安定して60コマ表示ができているので、PS4proでのプレイよりも動きがスムーズに感じるのだろう。

音質の良さは歴然と言ってもいい。デノンのAVR-X4700Hの実力もミドルクラスとはいえかなり優秀だし、組み合わせているスピーカーはハイエンド級だから当然だ。しかし、それ以上の差を感じた。PS5自体がかなり音質的に優れていると思われる。さんざんプレイした「モンスターハンターワールド」だけに、微妙な音質差もよくわかるというもの。

各地にロケへ行って本物の自然の音を収録するなど、映画かそれ以上に本格的なサウンドを目指した本作の音の良さがよくわかる。広い空間を感じさせる音の響き、背後や後ろから聴こえる鳥や小動物の鳴き声などが定位もよいし、実にクリアな再現だ。このあたりの空間表現の巧みさはAVアンプの実力だろう。

森の中にある滝に近づくと前方から水音が聴こえてきて、その音が実にリアル。そしてそこで周囲を見回すと滝の音が画面の移動に従って横から後ろへと移動していく。チャンネル間のつながりもよいし、後方の音の定位感もしっかりとしている。

今のゲームはこうしたサラウンド音声は当たり前で、プレイに臨場感を与えるだけでなく、背後から迫る敵を知らせるなどゲームのプレイに欠かせない要素でもある。ゲームのおける音の重要度はかなり高いのだ。PS5もそれに対応してサウンド周りの設計もしっかりとやっているし、AVアンプを使った本格的なサラウンドだと、その臨場感はかなりのものになる。個人的に興味もあって、ゲームでもホラー系のタイトルをプレイすることが増えているのだが、PS5のタイトルならばプレイに支障が出るレベルで怖い音が楽しめそうだ。

夢中になってプレイに興じる筆者。こんな恵まれた環境でPS5を満喫できたのは貴重な体験だった

UHD BD再生でも実力の高さを発揮。AV機器としても見逃せない存在だ

最後にUHD BDも再生してみた。タイトルは「1917 命をかけた伝令」。4K/24pでHDR方式はHDR10、音声は英語がDolby Atmos、日本語がドルビーデジタル5.1ch。PS5でもそのままの映像・音声で再生できた。4Kらしい精細感もしっかりと出て、暗部の再現性も十分だ。UHD BD対応のプレーヤーは実売2万円くらいから発売されているが、それらだと細部のディテールの甘さや映像の立体感、暗部の階調のつぶれが気になることがあるが、PS5ではそれらはほとんど気にならなかった。優れたグラフィック性能や高速処理などの恩恵は十分にあると感じる。

そして音はさらに立派だ。デノンのAVR-X4700Hの実力もあるが、空間の広がりが豊かで、細かな音までしっかりと出る。爆発や銃撃の迫力もしっかりと伝わるし、ダイアローグが明瞭でニュアンス豊かな再現だ。優れたシステムで実力の劣るプレーヤーを組み合わせると、その貧弱さが目立つこともあるがそれらが気にならない。AVR-X4700Hとの組み合わせならばビットストリーム出力でDolby Atmosの迫力ある音も存分に楽しめる。

マランツのNR1711なら、狭いスペースにも置きやすいサイズで価格も9万円と手頃。Atmosにも対応するなど基本性能は十分。これらを組み合わせれば、PS5の真価を発揮できるのは間違いないはず。

「1917 命をかけた伝令」のタイトル画面。音声はDolby Atmosだ
AVR-X4700Hの表示。ちょっと手間取ったが、Dolby Atmos音声を認識していることがわかる

ちょっと気になったのは、UHD BD再生でドルビーアトモス音声を出力しようとすると、ちょっと面倒な作業が必要になること。ホーム画面の設定で、音声出力を「リニアPCM」から「ビットストリーム(Dolby)」に切り替える必要がある。ゲームをするときはまた「リニアPCM」に戻さないとドルビーデジタル5.1ch出力になってしまうので、AVアンプと組み合わせた場合、この切り替えが面倒だ。さらに、音声出力の設定はPS5のプレーヤーアプリでも行なう必要がある。このあたりは改善を求めたい。

サウンド設定の画面。Atmos音声を出力するには、音声出力にある「音声フォーマット」で「ビットストリーム(Dolby)」を選ぶ
プレーヤーアプリの設定画面。こちらにも音声フォーマットの選択があり、こちらでも「ビットストリーム」を選ぶ

ちなみに、デノンとマランツのAVアンプには、再生しているサウンドをBluetoothで“送信”するユニークな特徴がある。スマホの音楽をAVアンプで“受信”にしてワイヤレス再生するだけでなく、PS5の音声をAVアンプ経由でBluetoothヘッドフォンに送信できるわけだ。

PS5はBluetooth対応だが、それらはコントローラーなどとの接続用で、オーディオ出力はできない。これは音の遅延の影響を気にしたためだと思われる。手持ちのイヤフォン/ヘッドフォンを使う場合は、コントローラーに有線接続するのだが、これがケーブルが邪魔になってあまり使い勝手が良くない。また個人的には音質的にもあまり良くないと感じている。これはコントローラー自体がBluetooth接続のためだろう。小さなコントローラーに振動機能やフィードバック機能も詰め込まれ、音質的には十分な造りでないことも推測できる。

だから、デノンとマランツのAVアンプでワイヤレス再生ができるのは使い勝手も含めてなかなか快適なのだ。Bluetooth接続のため音質的に不利という点では同じかもしれないが、最新のAVアンプの音の実力は極めて優秀だ。今やBluetooth接続の再生でも劣化を感じさせないし、音質の良いワイヤレスイヤホンなどを使えば音質的な不満も解消できるはずだ。

なお、PS5には仮想的にサラウンドを再現する“Tempest”3Dオーディオ技術も搭載されている。現在はヘッドフォンでバーチャルサラウンド再生する機能として使用できる。AVアンプのBluetooth送信でも、このTempestが楽しめれば完璧だったのだが、そうは上手くはいかなかった。「3Dオーディオ」はヘッドフォン接続時だけONにできる機能で、AVアンプと接続した状態では「3Dオーディオ」機能自体をONにできなかった。

そのため、AVR-X4700HのBluetooth機能でワイヤレスヘッドフォンを接続した場合、音声はリニアPCM、またはDolby Atmosのビットストリーム出力しか選べず、ワイヤレスヘッドフォンの再生ではそれらの音声をダウンミックスした2ch再生となる。

サウンド設定の画面。ヘッドフォンの項目には「3Dオーディオを有効にする」がある。コントローラーへの有線ヘッドホンの接続や、純正の「PULSE 3D ワイヤレスヘッドセット」などを接続した状態でないと、この項目はONにできない

それゆえ、ヘッドフォンもワイヤレスで快適にとなると、3D対応の純正ヘッドフォン「PULSE 3D ワイヤレスヘッドセット」を選ぶのが最適解だ。遅延に配慮した独自のデジタルワイヤレス接続で、3Dオーディオも楽しめる。

PULSE 3D ワイヤレスヘッドセット

それに準じた方法としてコントローラーからの有線接続で手持ちのイヤホンによる3Dオーディオを試してみたが、手持ちのイヤホンでも3D感は十分に味わえる。立体的な空間の広がりがあるし、前後の広がりが狭いものの四方の音の定位や移動感もある。音質的には若干の不満はあるが、映画再生時ならばコントローラーを常時持つ必要もないので、なかなか快適。ゲームではケーブルが思った以上にわずらわしいのが悩ましい。

実際のところ、AVアンプを組み合わせたシステムならばサラウンドで楽しむ方が空間の広さや音の迫力、臨場感は増すと思われる。ヘッドフォンを使う場合は、音質を重視するならAVアンプ経由、3Dオーディオを楽しむならばコントローラー経由の有線イヤホンという選択になるだろう。音の遅延はaptXなどのコーデックを使えばかなり解消できるので、このあたりはPS5ももう少し融通をきかせてほしいとも思う。

PS5を存分に楽しむならばAVアンプや8Kテレビなど環境を整えたくなる

鳴り物入りで登場したPS5だが、8K出力対応を含め今後の進化や改善を期待したい部分もある。だが、まだ発売したばかりの製品だ。アップデートによって今後も進化していくのはPS3やPS4の歴史を見ても明かだ。現時点では不満はあるが、それでも期待の新ハードであることは間違いないし、それだけのポテンシャルがあると実感した。

そんなPS5の真価を発揮させ、存分に新世代のゲーム体験をするならば、AVアンプとホームシアターシステムを検討して欲しい。PS5の音の良さはそれだけの価値があるし、コマ落ちのない4K/60p、驚異的にスムーズな4K/120p、そして将来の8Kと映像の実力が高いだけに、音もそれにふさわしいものを揃えると、面白さが倍増するはずだ。

その際は、今回試したデノン/マランツのAVアンプなど、4K/60pや8Kに対応した機器を視野に入れたい。PS5を手に入れるとアレもコレも欲しくなってしまうはず。多くの人をAV沼に誘う“魔性のゲーム機”であることがわかって、ちょっとうれしい気持ちもある。PS5を手に入れることができた幸運な人は、ぜひともAVアンプをはじめとする環境づくりを検討してほしい。

(協力:ディーアンドエムホールディングス)

鳥居一豊

1968年東京生まれの千葉育ち。AV系の専門誌で編集スタッフとして勤務後、フリーのAVライターとして独立。薄型テレビやBDレコーダからヘッドホンやAVアンプ、スピーカーまでAV系のジャンル全般をカバーする。モノ情報誌「GetNavi」(学研パブリッシング)や「特選街」(マキノ出版)、AV専門誌「HiVi」(ステレオサウンド社)のほか、Web系情報サイト「ASCII.jp」などで、AV機器の製品紹介記事や取材記事を執筆。最近、シアター専用の防音室を備える新居への引越が完了し、オーディオ&ビジュアルのための環境がさらに充実した。待望の大型スピーカー(B&W MATRIX801S3)を導入し、幸せな日々を過ごしている(システムに関してはまだまだ発展途上だが)。映画やアニメを愛好し、週に40~60本程度の番組を録画する生活は相変わらず。深夜でもかなりの大音量で映画を見られるので、むしろ悪化している。