レビュー

PS5の音をサウンドバーで強化、デノン「DHT-S216」でゲームを鳴らす!

PlayStation 5とデノンのサウンドバー「DHT-S216」

ついに登場した次世代ゲーム機「PlayStation 5」。その特徴は大きく3つある。カスタムSSDを活用してロードの待ち時間などを感じさせない“爆速ゲーム体験”、レイトレーシングやハイフレームレートなどの映像美、そしてTempest 3Dオーディオに代表されるサウンドクオリティだ。

AV Watch的にはサウンド面が気になるところだが、一方で大きな問題がある。それは“PS5と接続する薄型テレビの音がイマイチだ”という事。各テレビメーカーの努力で上位機種を中心にテレビ内蔵スピーカーのクオリティもだいぶ向上はしているが、「迫力あるゲームサウンドをしっかり楽しめる音か」と言われると、なかなか難しい場合もある。

そんな時に手っ取り早いのが、音の良いサウンドバーを買ってしまう事。逆に言えば、PS5くらいクオリティの高いゲーム機を手にしたら、映像表示だけでなく、サウンド面にもこだわらないともったいない。……とはいえ、5万円とか10万円みたいなあまり高価なサウンドバーは導入しにくい。

そこで、音質に定評があり、価格も実売23,000円前後と手頃で人気のあるデノンのサウンドバー「DHT-S216」を用意。これをPS5と繋いで、ゲームを体験してみた。結論から言うと、ゲームの楽しさ自体がガラリと変わる体験だった。

デノンのサウンドバー「DHT-S216」

DHT-S216とは?

音を出す前に、DHT-S216について軽くおさらいしよう。このサウンドバー、以前映画や音楽などのソースでレビューもしているが、最大の特徴はなんと言っても、「サウンドマネージャー・山内慎一氏が、開発の初期段階から参加して作り上げた初のサウンドバー」というポイントだ。

サウンドマネージャー・山内慎一氏

山内氏と言えば、2015年にデノンの“音の門番”であるサウンドマネージャーに就任。「Vivid & Spacious」をサウンドフィロソフィーとして掲げ、従来のデノンサウンドを受け継ぎつつも、そのイメージを覆すようなモデルを続々と発表。オーディオ界で話題の人物。そんな山内氏が、「ガチなピュアオーディオスピーカーのつもりで作ったサウンドバー」が「DHT-S216」というわけだ。

そんな生い立ちの製品なので、特徴も面白い。一般的なサウンドバーのウリ文句と言えば、「なんとかバーチャルサラウンド機能で音が広がる」とか「なんとかバスブーストで低音の迫力が」みたいな感じなのだが、DHT-S216は「音の純度にこだわり、バーチャルサラウンドなどの処理を全部すっ飛ばしたPureモードを搭載した事が最大の特徴」と言ってのける。“サウンドバーの異端児”と言っていいだろう。

外からは見えないが、スピーカーユニットは前面の左右端に25mm径のツイーター、45×90mmの楕円形ミッドレンジを各2基。筐体の中央寄りに、下向きに75mm径のサブウーファーを2基搭載している。別筐体のサブウーファーを置く必要はなく、このサウンドバー1つでOKな製品だ。サブウーファープリアウトも1系統備えているので、ウーファーを追加したくなっても対応できる。

25mm径のツイーター
45×90mmの楕円形ミッドレンジ

外形寸法は890×120×66mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は3.5kg。入力端子はHDMI×1、アナログのAUX×1、光デジタル×1。出力としてARC対応のHDMI×1を搭載。ARC対応のテレビとであれば、HDMIケーブル1本で接続できる。今回も、テレビのARC対応HDMI端子にDHT-S216を接続、テレビの別のHDMI端子にPS5を接続するだけでセッティングは完了。余分なHDMIケーブルが必要ないのでスッキリだ。

デコードできるフォーマットは、ドルビーデジタル、DTS、AAC、リニアPCMとなっている。

入力端子部

音が良くなるとかいうレベルではなく、“激変”する

細かい話はこのくらいにして、とりあえずPS5で遊んでみよう。まず、DHT-S216を使わず、テレビ内蔵スピーカーでゲームをしてみる。

「Marvel's Spider-Man:Miles Morales」(以下、スパイダーマン:マイルズ・モラレス)は、プレーヤーがスパイダーマンになって、ビルとビルの隙間を自在に移動できる爽快なゲームだ。蜘蛛の糸を使い、振り子のように高速で飛ぶ快感がやみつきになると同時に、地面に降りると街の人々が生活している様子が細かく作り込まれていて、さすが次世代ゲーム機と関心させられる。

「ふむふむ」という感じでPS5をプレイしていたが、ここでDHT-S216を接続してサウンドバーから音を出すと、思わずむせてしまうほど世界が変わる。簡単に言うと、サウンド的には“カキワリ”みたいだった2次元の世界が、3次元3D映像に変わったくらい激変する。

まず違うのが“音の奥行き”だ。ビルの合間を飛ぶシーンでは、テレビ内蔵スピーカーでは「風の音がしているな」というのがわかったが、DHT-S216で再生すると「ゴーッ」という風の低音と、ビルの下にいる人たちのザワザワという話し声、そしてビルの奥の、もっと奥で走っているパトカーのサイレンのかすかな音など、聞き取れる音が激増する。

「ああ、俺はビルの合間を飛んでいるんだ」という説得力が、音によって増す。なんというか、テレビ内蔵スピーカーでは「キレイな絵を見ている」客観的な感じだったのだが、DHT-S216の音になると、画面の奥に本当に世界があり、そこに自分が放り込まれたような感じで、急にゲームの当事者、スパイダーマンになったような気分だ。

この違いは、オーディオ好きだから感じるとかそういうレベルではなく、誰が聞いても一発で違いがわかる。ぶっちゃけていうと、PS4とPS5のグラフィックの違いより、テレビ内蔵スピーカーとDHT-S216の音の違いの方がわかりやすい。それくらいまったく違う。というか、一度聞いてしまうと、テレビ内蔵スピーカーの音に耐えられない。

『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』ローンチトレーラー

ただ、「サウンドバーなら、どの機種でも同じような音なのか」というと、そうではない。先程“サウンドバーの異端児”と書いたが、DHT-S216はサウンドバーの中でも、音のクリアさ、純度の高さで、トップクラスにある製品だ。

普通のサウンドバーは、HDMIなどから入力された信号を、DSPでサラウンドに変換して再生する。だが、DHT-S216の場合は、入力された2.0chや、5.1chの信号を2.1chにダウンミックスした後、サラウンド化処理をせず、スピーカーをドライブするクラスDアンプにダイレクトに伝送するモードを備えている。それが音の純度の最も高い「Pureモード」。簡単に言えば「デコードした音をいじらず、そのままアンプに突っ込んでユニットを鳴らすだけ」という、超シンプルモードだ。

今、このPureモードで聞いているが、街頭の騒音の1つ1つが非常に細かく聞き取れる。このサウンド面での膨大な情報量が、“街の中にいる”というリアルさを演出している。音の広がりも見事で、テレビ画面の範囲を超えて、サウンドが気持ちよく広がる事で“外の世界を飛び回る気持ち良さ”が味わえる。まさに山内氏が掲げる「Vivid & Spacious」が、ゲームでも実感できる。

この音を実現するためには、“不要な音を発生させない事”を徹底する必要がある。ポイントとしては「定在波の削減」と「ヌケの良さ」が大切だ。

スピーカーの内部で定在波が発生しないように、平らな面をなるべく作らない設計になっているほか、両サイドに大きなバスレフポートを設け、背面にもポートを設けるなど、“ヌケの良さ”を出す工夫も徹底されている。ポートも、単に口が開いているだけではない。形状を工夫して「ボーボー」という風切り音が発生しないよう配慮されている。こうした細かい技術の積み重ねで、Pureモードのダイレクトな音が実現されているわけだ。

側面に備えたポートの形状も、風切り音が発生しないよう工夫されている

サウンドモードも使ってみる

付属のリモコン

Pureモードの音が特徴なのだが、DHT-S216はそれだけでなく、サウンドモードも搭載している。具体的には映画館のような臨場感のあるサウンドにする「MOVIE」、コンサートホールのような臨場感の「MUSIC」、夜間などで音量を控えめに再生する際に、大きな音と小さな音の音量差を圧縮し、小さな音も聴き取りやすくする「NIGHT」の3種類。これらに、天井にスピーカー設置をしなくても、高さ方向を含めたサラウンドを仮想的に再現できるという「DTS Virtual:X」を重ねがけできるため、全部で6通りから選ぶことができる。

さらに、ニュースやナレーション、映画のセリフなど、人の声を明瞭にする「DIALOG ENHANCER」があり、LOW/MED/HIGHの3段階に調整できる。

試しに、スパイダーマンで「MOVIE」モードにしてみると、低域の迫力がアップ。風の音に凄みが増し、音場の奥行きも深く、BGMの重厚さも増す。Pureモードと比べると純度はほんの少し低下するが、ゲームにはやはり低音の迫力がマッチするので、MOVIEモードの方が楽しい。MUSICモードは、MOVIEよりも少しPureモード寄りの音になるので、こちらを選ぶのもアリだ。

カプコンの「Devil May Cry 5 Special Edition(デビル メイ クライ 5 スペシャルエディション)」は、2019年に発売された「デビル メイ クライ 5」を次世代ゲーム機向けに最適化したもの。銃と剣で華麗なコンボを決めていくのが気持ち良いゲームだ。

映像と同じように、サウンドもスタイリッシュで銃撃音などが硬質で心地良い。DHT-S216のPureモードはトランジェントが最高なので、組み合わせると、音がキレッキレで快感だ。

一方で、MOVIEモードを適用すると低音の迫力が増し、フィールドの“おどろおどろしさ”がアップ。デビル メイ クライの世界観にマッチした音になる。音の解像感は維持されているので、キレのあるサウンドの気持ち良さは損なわれない。さらに、DTS Virtual:Xを重ねがけすると、フィールドの広がりがさらに増し、没入感が高まる。ただ、音場の中の細かな音は少しフォーカスが甘くなる。

(C)Sony Interactive Entertainment Inc.

いろいろ試した結果、例えば「モンスターハンターワールド」のような屋外の広大なフィールドを楽しむようなゲームの場合はDTS Virtual:Xの重ねがけが有効。そこまで音場の広さを求めていない場合はDTS Virtual:XをOFFにして、迫力重視のMOVIE、バランス重視のMUSICモードのどちらかを選ぶと良いと個人的には感じた。

ただ、「Demon's Souls」(デモンズソウル)の場合はPureモードが良い。薄暗い城の中を移動している時の、床の反響や、甲冑のカチャカチャした音、剣と盾がぶつかり合う硬い音など、細かな音のリアルさがPureモードではダイレクトに味わえるので、このゲームにはマッチすると感じる。

(C)Sony Interactive Entertainment Inc.

今後“Tempest” 3Dオーディオも利用可能になる?

PS5には、3Dオーディオ技術の“Tempest”が採用されている。現在は、「ヘッドフォンで3Dオーディオを再現するための機能」として搭載されており、純正ヘッドセットの「PULSE 3Dワイヤレスヘッドセット」や、ユーザーが手持ちのヘッドフォンでその効果を実感できる。一方で、ヘッドフォン出力以外では、Tempest 3Dオーディオは有効にできない。つまりサウンドバー×Tempestでは再生できないわけだ。

ただ、この状況は今後変化するだろう。というのも、今後のアップデート情報として、「テレビのスピーカーでもバーチャルサラウンドサウンドを再生する機能が今後実装予定」とアナウンスされているからだ。

テレビだけでなく、音声の出力先を「サウンドバー」にした時もTempestが有効にできるかはまだ不明だが、もし可能だった場合、Tempest 3Dオーディオの音を、DHT-S216で再生するとどんなバーチャルサラウンドが楽しめるのか、期待せずにはいられない。

ゲームの音ってスゴイ

PS5×DHT-S216をプレイしてみて、改めて感じるのは「ゲームの音ってスゴイ」という事。映画作品でサウンドのスゴさを実感する事は多いが、“ゲームの音の作り込み”も決して負けてはいない。DHT-S216のように、スピーカーとしての“素の再生能力”が高いモデルで聴くと、その事がよくわかる。

逆に言えば、一度この音を体験してしまうと、テレビ内蔵スピーカーでプレイするゲームの味気なさに気づいてしまうばかりか、「こんなに頑張ってスゴイ音を入れてくれているのに、10分の1も聞かずにプレイしていてすみません」と謝りたくなってくる。

確かに、ヘッドフォン×Tempestの3Dオーディオでもある程度の音の広がりや移動感は感じられるが、やはり本当に音が広がり、音に包み込まれるサウンドバーの体験にはかなわない。爆発音や巨大な敵が動く重低音なども、ヘッドフォンでは再現が難しい。

そういった部分をしっかり楽しむためにも、次世代ゲーム機はDHT-S216のような実力を備えたサウンドバーと組み合わせて楽しみたいところ。今回はゲームばかり試しているが、普通のテレビ番組や、Netflixなどの映像配信サービスで映画を見る時もスゴイ音で楽しめるわけで、活用シーンの多さを考えると、実売約2万円という価格もかなり魅力的に感じた。

(協力:デノン)

山崎健太郎