レビュー

首にかけて聴けるウォークマンW「NW-WH303」を試す

単独使用もケーブル接続も可能な新スタイル

ソニー「NW-WH303」

 ソニーが10月19日に発売したウォークマン「NW-WH303」は、3つのスタイルで使える新感覚のヘッドフォンとして話題を集めている製品だ。内蔵メモリに格納した音楽ファイルをスタンドアロンで再生できる「ヘッドフォン型ウォークマン」機能と、首に掛けた際にも音楽を聴くことができる「首かけスピーカー」機能、そしてケーブル接続して一般的な「ヘッドフォン」としても利用できる。

 首かけ使用を標準とした製品は斬新で、どのように活用できるのか、本当に違和感なく使えるのかが気になるところ。実際に試用してみた結果と合わせてレビューしてみたい。

 「NW-WH303」のボディカラーはホワイトとブラックの2色が用意され、ソニーストア価格はいずれも14,800円となっている。

使い勝手にこだわった「首かけ」スタイルヘッドフォン

パッケージ

 一見すると普通の密閉型のオーバーヘッドタイプのヘッドフォンだ。だだし、よく見ると本体にはボリュームや操作ボタン、マイクロUSB端子などが付いている。

 パソコンなどから転送した音楽ファイルを単体で再生するヘッドフォン型ウォークマンとして、あるいはケーブル接続による通常のヘッドフォンとして使えるだけでなく、さらに、ヘッドフォンを耳にかぶせるのではなく、首にかけたスタイルの「首かけスピーカー」にもなる点が最大の特徴となっている。

 ハードウェア面では、CCAWボイスコイルを採用した30mm径のドライバーユニットを搭載し、再生周波数は30Hz〜20kHz、感度は107dB/mW、インピーダンスは30Ω。リチウムイオンバッテリーを内蔵(取り外し不可)しており、ワイヤレスの「ヘッドフォン型ウォークマン」として使用した場合は約20時間、「首かけスピーカー」として使用した場合は約5時間稼働する。充電はマイクロUSB端子にPCや外部ACアダプタなどをケーブル接続して行なえる。

 ライン入力端子も設けられており、同梱のステレオミニケーブルを用いることで通常の「ヘッドフォン」として使用できる。この場合は内蔵バッテリを消費することはなく、電源をオフにしたまま利用可能だ。

全体的にはシンプルなシルエット
30mm径のユニットを採用
ステレオミニケーブルを使えば通常のヘッドフォンに。他のオーディオプレーヤーなどと接続して使える
充電にはUSBケーブルを利用

 「ヘッドフォン型ウォークマン」は、オーディオプレーヤー機能を備えたヘッドフォンとして使えることを意味する。4GBの内蔵メモリにUSB経由でMP3/WMA/AAC/ATRAC/リニアPCMのファイルを転送して、1曲ずつの順次・シャッフル再生、またはフォルダ・プレイリストごとの再生と、後述の「ZAPPIN」と呼ばれる特殊なランダム再生が行なえる。

 再生・停止・早送り・早戻し、再生モードの切り替えなどはすべてハウジングの側面に設けられたスイッチやボタンからコントロールできる。

ヘッドフォン型ウォークマンとして利用
首かけスピーカーとしての利用イメージ
電源をオンにして「OUTPUT」スイッチをスピーカーアイコン側へスライドさせれば、「首かけスピーカー」として使える

 ひとたびスイッチをスライドさせれば、ヘッドフォンから「首かけスピーカー」機能に切り替えることが可能。通常のヘッドフォンのスピーカーからではなく、ハウジングの根元に別途設けられた専用のスピーカーから音が鳴る仕組みだ。

 小さなスピーカーではあるが、VPT(Virtualphones Technology)という独自技術により、自然な音の広がりを再現するとしている。ハウジング部は90度回転させることもでき、首かけ時に顎がハウジングにつかえて窮屈になるのを軽減してくれる。

ハウジングの外側にはボタン、スイッチ、端子類が並ぶ
すべての操作はこれらのボタン、スイッチから行なう。押すだけでなく、スライド、長押しなど操作方法は多彩
右ハウジングにある小さな「SHUFFLE/PLAY LIST」ボタンで順次再生とシャッフル再生の切り替え、プレイリスト再生の切り替えが可能
首かけ時には専用のスピーカーから音が出る
通常はこの状態だが……
首かけ時はこのように90度回転させると顎周りが窮屈にならない
左側のハウジングにある小さな「SOUND/ILLUINATION」ボタンで「サウンドエンハンスメント」機能を切り替えられる

 音質面では、他のウォークマン製品などにも搭載されている「クリアベース」と「クリアフェーズ」を採用。ボタン操作で「サウンドエンハンスメント」機能の切り替えができるようになっており、「オフ・重低音の強調・中高音域の強調」の3タイプを選択して好みの音質で聴くことができる。

 なお、ワイヤレスヘッドフォンとはいえ、あくまでもオーディオプレーヤー機能で内蔵メモリに格納した楽曲を再生する形であり、リモート機器内の音楽を聴けるBluetoothヘッドフォンというわけではない。スマートフォンと連携するような機能もなく、格納した楽曲のうち任意のものを選んで再生するような機能もないため、基本的には曲の順番にあまりこだわらず、シャッフル再生的な使い方がメインになってくるだろう。

ヒットチャート紹介風の「ZAPPIN」が面白い

 本製品のキモとなるのは、あえて他の機器と連携することなく単独で使えるようにしている点。これが目新しさにつながっている。再生は、あらかじめPCなどからUSB経由で転送した楽曲のみ可能。格納している楽曲を順次あるいはシャッフル再生できるほか、ハウジング部に設けられたスライド式ボタンで前後の曲または前後のフォルダ・プレイリストへとスキップすることもできる。

 このオーディオプレーヤー機能では、「ZAPPIN」というランダム再生機能にも注目したい。各楽曲の中の4秒間もしくは15秒間だけを次々に再生していくもので、曲間にワイプ音が挿入され、ヒットチャートを紹介していく音楽番組のような雰囲気を味わえるのが面白い。再生されている間にすかさず再生ボタンを押せば、その曲を最初から再生し始めるようにもなっている。たくさんの楽曲を格納していても、その時の気分に合った曲を半自動で探せる工夫が盛り込まれているというわけだ。

 逆に言うと、本体のプレーヤー機能を使う場合、液晶画面などは無いので、アーティスト/アルバム選択などの細かな選曲操作はほぼ不可能。基本的にはZAPPINやいくつかのプレイリストを切り替える、という使い方になる。

スライド式ボタンで前後の曲やフォルダ・プレイリストにジャンプ。1秒ほど長押しすれば「ZAPPIN」再生が始まる

 4GBという内蔵メモリは少なく思える。しかし、ファイル転送に用いるソフトウェアの使い勝手が良好なため、より多くの楽曲をもっていたとしても、入れ替えにかかる手間はそこまで気にならないだろう。Windowsにはソニーの「Media Go」というメディアプレーヤーソフト、Mac OSには「Content Transfer for Mac」という専用アプリが用意されており、簡単に楽曲の入れ替えが可能になっている。

 ただし、お気に入りの曲などをプレイリスト単位で再生したいような場合、もしくは一部の曲を入れ替えながら使いたい場合は、細かい管理が可能なWindowsの「Media Go」がおすすめ。Mac OSの「Content Transfer」は、ドラッグ&ドロップでファイル転送できるなど使い勝手の面では手軽だが、プレイリストの作成などはできない。Windows/MacともにエクスプローラーやFinder上で音楽ファイルをコピー・削除することも可能なので、慣れたユーザーであればツールなしで管理した方が便利に扱える場面もありそうだ。

Windowsの「Media Go」で転送する音楽ファイルの管理が可能
「NW-WH303」へのファイル転送はほぼワンタッチ
「Media Go」であればプレイリストの管理や転送も行える
MacOS向けにはかなりシンプルな「Content Transfer」が用意される
ドラッグ&ドロップによる転送のほか、特定のフォルダ内にある音楽ファイルを自動転送させることも可能で、手軽に使える
ファイルの個別削除は行えるものの、プレイリスト作成や転送は不可

意外に音漏れが少ない「首かけスピーカー」

 「NW-WH303」をヘッドフォンとして使った場合は、全体的に耳あたりの柔らかい音質。もし物足りなく感じた時は、「サウンドエンハンスメント」を切り替えると、その効果をはっきりと感じ取ることができるだろう。ケーブル接続で聴く場合と、内蔵メモリ内の音楽を再生する場合(サウンドエンハンスメントはオフ)とを比べた場合は、音質の差を感じることはほとんどなかった。一方、「首かけスピーカー」では、ヘッドフォンとして使った時のような重低音の臨場感はさすがに薄くなるものの、中高音域は透明感のある音場でしっかり聴かせてくれる。

 さて、改めて「NW-WH303」で可能な使い方を整理すると、以下の3パターンに絞られる。

3種類の使い方

・電源をオンにしてオーディオプレーヤー機能とともにヘッドフォンとして使う

・電源をオンにしてオーディオプレーヤー機能とともに首かけスピーカーとして使う

・電源をオフにしてケーブル接続し、通常のヘッドフォンとして使う

 逆にできないことを念のため挙げると、以下のとおり。

できないこと

・電源をオフにしてケーブル接続し、首掛けスピーカーとして使う

・電源をオンにしてケーブル接続し、通常のヘッドフォンとして使う

・充電しながらオーディオプレーヤー機能を使う

 ケーブル接続による通常のヘッドフォン機能は電源オフ時にしか使えないため、「首かけスピーカー」や「サウンドエンハンスメント」などの機能は利用できず、あくまでも通常のヘッドフォンとしてしか使えないことに注意しておきたい。さまざまな機能や要素を備えてはいるものの、意外に使い道のバリエーションは多くない、という印象を受ける。ただ、首にかけて使うのは今までありそうでなかった斬新なスタイルだ。

ヘッドフォンの存在感はそれなりにあるが、「首かけスピーカー」で使っていても他人が聞こえるほど音は響いてこない

 実際に「首かけスピーカー」機能を使ってみると、想像以上に臨場感のあるサウンドを聴かせてくれる。人が多くいる屋外で歩きながら使ってみたところでも、さほどボリュームを大きくすることなく十分に聴き取ることができた。当然ながらスピーカーは開放状態のため、静かな部屋の中だとどうしても他の人に聞こえてしまうが、外では周囲の環境ノイズもあり、すぐ横にいても意外に聞こえにくいようだ。複数人に確認してみると、「音は全然聞こえない」という答えしか返ってこなかった。その後ヘッドフォンを相手の首にかけてあげるとしっかり音が聞こえることに驚いていたほどだ。

 このように音楽を聴きながら外を出歩く時や、ウォーキングなど軽い運動をしたい時に活躍するのに加え、自転車に乗りながら使えるのも魅力的。通常の耳を覆うタイプのヘッドフォンや耳穴をふさいでしまうイヤフォンを付けて運転するのは法律的にアウトであることは言うまでもないが、「NW-WH303」であれば、周囲の音が聞こえる音量に抑え、安全に配慮しながら音楽を聴きつつ自転車を運転できるだろう。よほど風が強かったりスピードを出したりしない限り、風切り音で音楽が全然聞こえない、なんていうこともない。ケーブルが運転の妨げになるような問題が起こりえないのもうれしい。

自転車に乗りながら音楽を聴く
スタイリッシュな雰囲気で颯爽と走り去っていく

 周囲の人に聞くと、さすがに「ヘッドフォンを首にかけている姿」は目につきやすいようだ。しかし、街中ではヘッドフォンを首にかけている人も見かけるため、わりと「よくいるタイプ」の人と思われがち(と感じた)。電車内などでは音を出さないようにする必要はあるが、出歩きながら使う時も、外見から想像するほどには、周囲の目線を気しなくても良いと感じた。

「首かけスピーカー」に満足。活用拡大にはBluetooth対応を望む

 ヘッドフォン自体の重さは約292gと、スピーカーが2個追加されてバッテリーも内蔵しているにも関わらず、一般的な密閉型ヘッドフォンと比べても特段重くはなっていない。とはいえ、ハウジング部はあまり大きくないので、耳への圧迫感はそれなりにある。長時間の装着は人によってはつらいかもしれないが、「NW-WH303」の場合はどちらかというと首かけスタイルを積極的に使いたくなるのではないだろうか。部屋でじっくり音楽を聴く用途よりも、外に積極的に出てアクティブに楽しむ、という使い方が似合いそうだ。

 コンセプトとして、内蔵メモリに格納した音楽を気楽に聴けるという点にこだわった製品であることは理解できる。特に首かけスピーカーが思いのほか、実用的なのは発見だった。

 ただし、残念に思ってしまうのは「Bluetooth非対応」ということ。ケーブルのわずらわしさ無しで、通勤・通学などの移動中にスマートフォンの音楽をワイヤレスで聴きたい、というニーズはかなり高いものがある。また、Bluetoothに対応していれば、ZAPPINやプレイリスト再生以外だけでなく、スマートフォンの操作で普通に選曲ができ、より活用の幅が広がると思う。

 「首かけスピーカー」のサウンド体験がかなり満足度の高いものだっただけに、個人的には“あと一押し”の詰めがほしかったところだ。

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NW-WH303

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、現在は株式会社ライターズハイにて執筆・編集業を営む。PC、モバイルや、GoPro等のアクションカムをはじめとするAV分野を中心に、エンタープライズ向けサービス・ソリューション、さらには趣味が高じた二輪車関連まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「GoProスタートガイド」(インプレスジャパン)、「今すぐ使えるかんたんPLUS Androidアプリ大事典」(技術評論社)など。