レビュー

Bluetoothイヤフォンに自由を。「EARIN」がもたらす完全ワイヤレスの魅力

 '15年にクラウドファンディングで開発され、12月に日本でも販売開始された世界最小クラスのBluetoothイヤフォン「EARIN」。特徴はなんといっても、2つのイヤフォンの間を完全ワイヤレス(Bluetooth)化したセパレート型という点だ。

EARIN

 本体サイズ14.5×20mm(直径×奥行き)、重量約3.5gの耳栓のような形の小型ボディは、左耳用、右耳用が独立し、それぞれにドライバや、Bluetoothアンテナ、バッテリなどを内蔵。左右のボディがBluetoothで同期しながら動作する。

 一般的なBluetoothイヤフォンでは、左右のハウジングはケーブルで接続されているが、EARINはそれすらも省いた「完全ワイヤレスイヤフォン」なのだ。なによりケーブルに煩わされない自由が最大の魅力といえる。金属ボディの質感もなかなか高級感があり、充電に利用する“カプセル”も付属。価格も約32,000円となかなか高級感がある。

 12月の発売以降ずっと品薄状態となっていたが、3月に入ってから、ようやくショップ等でも購入しやすくなっているようだ。Bluetoothイヤフォンであれば3,000円程度から購入できるが、EARINは、どのようなユーザー向きで、どんなメリット、デメリットが有るだろうか? 実際に体験してみた。

重量は3.5g。左右完全分離

 パッケージはスマートな縦長のもので、EARIN×2(左耳用、右耳用)のほか、コンプライイヤーチップやシリコンアタッチメント、USBケーブル、充電カプセルが付属。パッケージはマグネットで吸着するアイデアものだ。

パッケージ
パッケージの前後はマグネットで吸着

 EARINの外形寸法は14.5×20mm(直径×奥行き)、重量は約3.5g。耳栓のようなデザインの小型ボディに、バランスアーマチュア(BA)ドライバとBluetoothチップ、アンテナ、60mAhバッテリなどを内蔵する。背面側の[E]のロゴは、充電用の接点となっており、充電カプセルの充電端子にあわせて収納する。

左右が完全分離したEARIN
ロゴ部は充電用の接点になっている
充電カプセルで充電

 イヤーチップは、小型のシリコンタイプが1種類と、コンプライが2種類の合計3種類。ボディが左右独立しているため、落下時には紛失しやすいので、フィット感を優先してイヤーチップを選択しておきたい。個人的にはコンプライ(中)がフィットした。

 また、スポーツ時や落下防止用のシリコンアタッチメントも付属する。確かに落下しにくくなるし、落とした際にも転がりにくくなるのだが、外さないと充電できない(充電カプセルに入れられない)という課題もある。このあたりは、利用シーンに応じて判断したい。

 Bluetoothコーデックは、AAC、aptX、SBCをサポート。ドライバはバランスド・アーマチュア(BA)×1で、周波数特性は20Hz〜20kHz、感度は105dB、インピーダンスは25Ω。バッテリ容量は60mAhで、連続再生時間は約2.5〜3時間。

 充電は付属のカプセルで行ない、充電時には赤く点灯する。充電カプセル自体に600mAhのバッテリを内蔵しているため、電源がない場所でも充電はできる。充電カプセルの充電はUSB経由で行なう。カプセルの外形寸法は21×95mm(直径×厚み)、重量は42g。

充電カプセル
EARINをカプセルに入れて充電

 EARIN自体のバッテリ駆動時間も短めなので、基本的にはEARINと充電カプセルをセットで持ち運ぶという利用スタイルになる。

イヤフォンに自由を。“ケーブルが無い”驚き

 早速、EARINを装着して使ってみよう。最初は耳から落ちないか少し不安ではあったが、イヤーピースのサイズさえしっかり合っていれば、着座して使う分には問題はなさそうだ。

 そして、当たり前ではあるのだが、やはりケーブルが無いという“自由”はなにものにも代えがたい。ケーブルによる煩わしさは皆無で、頭の周りがすっきりして、心なしか音のセパレーションも優れて感じる。

EARIN(左)と一般的なBluetoothイヤフォン(右:Anker SoundBuds Sport)

 3.5gという軽さもこの自由度を実現する重要なファクターだ。すぐに装着していることを忘れてしまうような違和感の無さで、仕事をしながら音楽を聞いていても、首の回転や着座位置の変更時などに、まったくストレスが無い。従来のBluetoothイヤフォンの装着時にストレスを感じていたわけではないのだが、EARINを体感してしまうと、「ケーブルがあったことのストレス」に気づいてしまう。EARINを使うことで新たな感覚を獲得するといったほうがいいかもしれない。この完全ワイヤレスの自由度はなにものにも代えがたく、予想していた以上に魅力的だった。

 一方、歩きながらや、立ちながらの利用には不安が残る。もちろんイヤーピースでしっかり耳に固定しているはずなのだが、落としてしまいそうで怖い。EARIN本体も丸く転がりやすいので、例えば満員電車でEARINを落としてしまったら、拾うのは相当難しそうだ。ケーブルという障害物が心理的な安心感につながっていたのだな、と実感する。そのため、なるべく動きが少ない環境で利用したい。

 落下防止や固定のために、シリコンアタッチメントが付属する。EARINではスポーツ時の利用を推奨している。これをしていると、確かにホールド感は大幅に高まるし、転がりにくくもなる。電車で座れない時や、落下が不安な場合は、こちらを利用してもいいかもしれない。

シリコンアタッチメントで落下防止

 ただし、アタッチメントをつけると、そのまま充電クレードルに入れることができなくなる。EARINのバッテリ駆動時間は約2〜3時間と短く、頻繁に充電が必要なので、その都度アタッチメントを外すのも億劫だ。このあたりの運用については、自分の利用シーンにあうよう工夫してほしい。

アタッチメントをつけたまま充電はできない

 個人的にはアタッチメントを付けずに、電車で座れた時、もしくは自宅やカフェでリラックスして本を読んだり、仕事するといった時にEARINを利用し、混雑した電車などでは他のイヤフォンを使い分けるといった使い分けがしっくりくる。

音質は良好。完全ワイヤレスがもたらす楽しさ

 今回はiPhone 6sを中心に利用したが、利用方法はシンプルで、BluetoothでEARINの左側ボディとペアリングして、音楽再生するだけだ。

 EARINには電源ボタンなどを備えておらず、充電カプセルから出した時が電源ON、しまうとOFFという制御になる。初めて使う時は戸惑うが、一度、ペアリングを完了しておけば、あとはプレーヤーアプリを立ち上げるだけで、音楽やPodcastなどが再生できる。

 左耳用のEARIN(EARIN L)とペアリングするにはわけがある。というのも、EARINでは、左耳側でオーディオデータを受け、右耳側用の信号を分割し、右耳側に伝送することでステレオ再生を実現しているからだ。右側とのペアリングも可能だが、その際はモノラルとなる。

 音楽を聞いてみると、シングルBAらしい中高域の分解能と、広めの音場表現がかなり気持ちいい。Bluetooth接続を感じさせない高音質で、ボーカルのセンター定位もしっかり。左右のセパレーションの良さも印象的だ。マルチウェイの高級イヤフォンやダイナミック型と比べると、低域はやや弱めではあるが、上品でロックでもジャズでもクラシックでもそつなくこなせる。

 低域については、アプリの「EARIN」を使って、低域強調(BASS BOOST)も選択できる。個人的には別段使う必要はないと感じた。また、アプリでは左右のバランス調整も行なえる。

 音質的にはワイヤレスでも全く問題ないが、一旦左ユニットで受信したあと、右ユニットに伝送するという仕組み故か、やや遅延はあるようだ。例えば、iPhoneでボリュームを上下や曲スキップ操作を行なうと、若干遅れて実行される。とはいえ、時間にして0.5〜6秒といったところで、ストレスを感じるほどではなく、意識していなければ気付かないレベルだ。

 気になるのはBluetooth接続の安定性。iPhone 6sだとかなり安定しており、時々右の音が一瞬出なくなる程度だが、Astell & Kern「AK120II」やオンキヨー「DP-X1」や「Nexus 6」などでは、ブツブツ切れたり、右耳との接続が切れてしまうこともあり、やや不安定に感じた。

バッテリ駆動時間は約2.5時間。左耳の減りが早い

アプリの「EARIN」。BASS BOOSTやバッテリ残量を選択
左耳のほうがバッテリ消費が早い

 アプリの「EARIN」はシンプルなもので、前述のBASS BOOST機能が利用できるほか、左右チャンネルのバランス調整、バッテリ確認のみに対応する。基本的にはバッテリ残量確認用といった感じだろうか。

 AndroidとiOSアプリが提供されているが、今春にはWindows Phone用アプリも展開予定とのこと。

 バッテリ駆動時間は公称値で2.5〜3時間。iPhone 6sの音量レベルを80%程度にして連続再生したところ、約2時間40分で再生停止した。特徴的なのは、左耳側のほうが顕著にバッテリが減ること。これは、左耳で受信した後に右耳に伝送しているからだろう。結果的に左が受信できなかった時点で再生は終了する。

充電カプセル
USBで充電

 なお、充電カプセルはバッテリ容量600mAhで、EARINを3回充電できる。充電時間は75分程度なので、2時間半使った後に、1時間充電するといったイメージだ。長時間イヤフォンで音楽を聞きたい場合などは、別のイヤフォンを用意するなどで対応したい。

 また、カプセルの充電はUSB経由で行ない、こちらの充電時間も約75分。2.5時間という利用時間は“案外使える”という印象だ。ただし、充電カプセルにしっかりと固定できずに、右耳だけ充電できていない、というミスも発生した。充電時にはしっかり固定するよう心がけたい。

EARINがもたらす開放

 EARINの最大の魅力は、完全ケーブルレスがもたらす自由、開放感だ。自分がこれまで思っていた以上にケーブルの存在に囚われていたことを実感した。それでいて、案外使いやすいし、音も良い。

 EARINのスペックだけをみると、正直物足りない部分も多いし、ケーブルレスならではの不安もある。ただ、割り切りのパッケージングが絶妙に上手く、当初予想していたより“しっかり使える“というのが率直な感想だ。

 使う前は、紛失への不安やバッテリなどに不満を感じたが、少し自分の考えが変わった。紛失が怖ければ、落とさないシーンでだけ使えばいいし、それであればバッテリ駆動時間にも大きな不安はない。カプセルから外すと電源ON/OFF、という仕様にも驚いたが、慣れてしまえば、なにも考えずに使えるなど、実用上ストレスなく使えるような機能の割り切りがとても上手だ。

 そして、EARINのワイヤレスがもたらす開放感には、確かに「少し先の未来」が感じられる。細かな制約はあるものの、新たな自由を獲得するためには、ある種の不自由も伴うもの。新たな可能性に魅力を感じる人にこそ、EARINを使いこなしてほしいと思う。

(臼田勤哉)