レビュー

耳かけは実用的? 別体型ウェアラブルカメラ「HX-A100」

パナソニック提案の新撮影スタイル。Ustream配信も

パナソニック「HX-A100」。ブラックとオレンジの2色を用意

 ウェアラブルカメラやアクションカムなどと呼ばれる最近の小型ビデオカメラは、その多くがレンズと各種デバイスが一体となった形状だった。そこに一石を投じたのが、パナソニックの「HX-A100」。カメラ部とデバイスを搭載している本体部とを分離し、間をケーブルでつなぐことで、カメラ部をより小型にして扱いやすくしたものだ。

 かつては、ソニーの「まめカム HD」(HXR-MC1)のようにやや高価な業務用機器などの例はあったものの、最近のウェアラブルカメラに親しんでいるユーザーにとっては、どのような使い方ができるのかイメージしにくいのではないだろうか。

 主要な国内メーカーからは出揃ってきた感のあるウェアラブルカメラ。一風変わった形状の「HX-A100」は果たしてどんな製品なのか? その性能や使い勝手などを詳しくレビューしてみたい。

 なお、製品の発売は5月上旬で、実売価格は26,000~30,000円ほどとなっている。

イヤーフックを使った固定は意外に安定

HX-A100

 「HX-A100」のパッケージ内容は、カメラ本体のほか、カメラ部を頭に固定するためのイヤーフック、本体部を腕に固定するためのケースとバンド、充電用のUSBケーブル、Windows用ビデオ編集ソフトが収められたCD-ROMとなっている。

 別売オプションとして、カメラ部をヘルメットやゴーグルに取り付けるための「マルチマウント」というアタッチメントも用意されているが、標準パッケージをそのまま利用する限りにおいては、イヤーフックを用いて頭に直接固定するか、カメラ部を手に持って撮影するのが基本的な使い方となる。ボディカラーにブラックとオレンジの2色が用意されているのは、ウェアラブルカメラでは珍しいかもしれない。

HX-A100のパッケージ
その他の同梱物

 イヤーフックは片耳に装着するのではなく、後頭部へ回して両耳に引っかける形で固定する。メガネと一緒に装着しても違和感はない。素材は柔軟なプラスチック製で、側頭部をタイトに押さえつける感じになるため、意外とズレにくい。カメラ部の重さが約30gと軽いこともあり、ジョギング程度の運動ではズレたり、外れたりすることはまずないだろう。カメラ部は小型ではあるものの、実際に頭部に装着してみるとケーブルが見えることもあって、あからさまに撮影していることがわかる雰囲気になる。

カメラ部を固定するイヤーフック
本体部を収納して腕に固定するためのアームバンド

 イヤーフックのサイズは頭の大きさに合わせて調整可能。後頭部にくるアジャスターを伸縮させて微調整できるほか、大小2種類用意されているアジャスター自体を交換してサイズ合わせできる。耳の前に取り付けることになるカメラ部は、ある程度の範囲は上下左右に向きを変えることができ、衝撃でカメラ部だけが傾いてしまわないようにしっかりロック可能だ。

イヤーフックとアームバンドを使用した場合の装着例
イヤーフックは頭の後ろを回して両耳に引っかける
本体部をアームバンドを使って固定したところ
イヤーフックはアジャスターを伸縮させるか、交換することでサイズ調整可能
カメラ部の上下左右への向き変えもOK

基本性能はもちろん補正機能も充実

 カメラ部は、F2.5のレンズと、有効画素数最大280万の裏面照射型MOSセンサーを搭載。モノラルマイクもこのカメラ部に設けられている。サイズは26×66×26.5mm(幅×奥行き×高さ)、重さ約30g。このカメラ部の先端から本体部までは、実測80cm弱のケーブルでつながっている。ケーブルは編み込んだような繊維と透明な樹脂で覆われ、折り曲げだけでなく、塵や水にも強い構造になっている。ケーブルの取り外しはできない。

カメラ部
GoPro HERO3とサイズ比較
ケーブルは樹脂で覆われている

 本体部の重量は約117g。ずっしりというほどの重量感はないが、94×59.5×25mm(縦×横×厚み)というサイズは、少し大きめの印象。一般的なモバイルWi-Fiルータのようなボリューム感と言えばいいだろうか。

 この本体部には、電源ボタン、録画ボタン、静止画撮影ボタン、Wi-Fi機能を使うためのボタンなどのほか、microSD/SDHCカードスロット(最大32GBまで対応)、充電用のMicro USBポートが備わっている。ディスプレイは内蔵していない。カメラ部と本体部のいずれもIP58相当の防水性能とIP5X相当の防塵性能を備えており、1.5mの深さで30分間の水中撮影も可能としている。撮影可能時間は内蔵バッテリで約140分間(1080p 30fps時の目安)。バッテリの取り外しは不可だ。

HX-A100本体部
側面
リセットボタンなど
下部にマイク
GoPro HERO3とHサイズ比較

 ビデオカメラとしての性能を見てみると、画角はWIDE(視野角約160度)とSTANDARD(視野角約117度もしくは104度。後述のブレ補正の有無により異なる)の2種類から選択でき、1080p 60fps(1,920×1080ドット、最大28Mbps)、1080p 30fps(平均15Mbps)、720p 60fps(1,280×720ドット、平均15Mbps)、720p 30fps(平均9Mbps)、480p 30fps(848×480ドット、平均4.5Mbps)という5つのモードに切り替えて撮影可能。

【通常撮影モード】
解像度/
フレームレート
ビットレート
1,920×1080/60p最大28Mbps(VBR)
1,920×1,080/30p平均15Mbps(VBR)
1,280×720/60p平均15Mbps(VBR)
1,280×720/30p平均9Mbps(VBR)
848×480/30p平均4.5Mbps(VBR)

 スローモーション撮影にも対応し、1080pでは60fps、720pでは120fps、480pでは240fps(いずれも再生は30fps)に設定して、2~8倍の高速度撮影ができる。動画フォーマットはMPEG-4 AVC/H.264で、拡張子はMP4。音声はAAC/48kHz/128kbpsの固定ビットレート。スローモーション撮影時は音声は録音されない。

【スローモーションモード】
解像度/
フレームレート
ビットレート
1,920×1,080 60fps/30p平均15Mbps(VBR)
1,280×720 120fps/30p平均9Mbps(VBR)
848×480 240fps/30p平均4.5Mbps(VBR)

 静止画像の撮影も可能で、最大3,072×1,728ドットのJPEG画像を得られる。手動操作で1枚ずつ撮影するだけでなく、3/5/10/30/60秒ごとの自動撮影機能により、いわゆるタイムラプス映像用の連写画像を記録することもできる。

 電子式のブレ補正機能と傾き補正機能も搭載。ただし、30fpsで画角がSTANDARDであり、スローモーション撮影でないこと、といった条件を満たしている必要がある。ブレ補正では映像の細かな振動を目立たなくし、傾き補正では取り付け時にカメラ部がやや傾いていたとしても、撮影開始時に傾きを自動認識して水平方向へ調整してくれる。撮影中の傾きを逐次補正するわけではなく、あくまでも撮影開始時に角度をゼロリセットしてくれるものと考えておけばよいだろう。

 目計測では、15度程度までの傾きであれば自動で水平になるようだ。後述のスマートフォンアプリ上で表示できるプレビュー映像にガイド線を表示する機能もあり、あらかじめカメラを水平近くにセットしやすい仕組みになっているため、補正しきれないほどの傾きで固定してしまうことは防げるはず。

 その他、逆光で暗い部分が見えにくくなってしまうのを防ぐ「逆光補正」や、暗い場所でもくっきり映せるようにする「カラーナイトビュー」、「風音低減」など、シーンに応じて見やすい映像と音声を得られる補正機能が用意されている。

高機能なスマホアプリ「Image App」でコントロール

 「HX-A100」の本体にはディスプレイが搭載されていないため、撮影前の画角確認や設定変更などには、スマートフォン・タブレット向けアプリ「Image App」を使う。Android版とiOS版の2種類が用意されており、撮影前・撮影中の映像プレビュー、記録した映像の確認、解像度や画角の変更、撮影モードの切り替え、各種補正機能のオン・オフなど、すべてをアプリ上で操作できる。

「Image App」は端末の縦置き、横置きいずれにも対応
数々のオプション設定が用意されている
3つのWi-Fi接続モードを使い分ける

 「Image App」でカメラをコントロールするにはWi-Fi(無線LAN)で接続する必要がある。カメラ本体のWi-Fi機能には3つの接続モードがあり、1つはスマートフォンと1対1で接続するWi-Fi Direct、2つ目はWi-Fiアクセスポイントを使ってLAN経由で接続する「アクセスポイントモード」、最後の3つ目はUstreamでのライブ配信を行なう際に使う「ライブ配信モード」となっている。

 スマートフォン側では、Wi-Fi設定からカメラのSSIDとパスワードを入力する接続方法だけでなく、WPS機能による簡単な接続方法も利用できるため、Wi-Fi Directで使い始めるのは難しくない。ただ、オンラインヘルプの参照やライブ配信に関わる操作などにおいてインターネット接続が必要となってくるため、初めのうちにLAN経由で操作できるよう「アクセスポイントモード」を設定しておく方が混乱は少ないだろう。

 LAN経由の「アクセスポイントモード」を利用するには、WPS機能でカメラとアクセスポイントの機器を直接連携するか、いったんスマートフォンからWi-Fi Directでカメラに接続して、アプリ上でアクセスポイントに接続できるよう設定する。

 ちなみに、カメラ本体側にHDMI端子などの映像出力は用意されていないが、「Image App」のDLNA機能を利用すれば、LAN経由で映像をテレビなどに映し出すことができる。同アプリでは、カメラ内の動画や静止画だけでなく、端末内の動画なども閲覧可能。ドラッグ&ドロップ操作で他のアプリと連携して動画のアップロードが行なえる「ピクチャジャンプ」機能や、動画の分割が可能な簡易編集機能などもあって、機能的にもかなり充実している。「HX-A100」を所有していなくても使いどころは多そうだ。

撮影したばかりのカメラ内にある映像だけでなく、端末内の動画なども閲覧可能で、汎用的に使える
ドラッグ&ドロップで他のアプリと連携できる「ピクチャジャンプ」機能

Ustream配信は初期設定が難関か

 カメラ単体でUstreamを使ったライブ配信ができるというのも「HX-A100」のウリだが、このライブ配信の初期設定はやや手間のかかる部分だ。

 まず、あらかじめUstreamのアカウントを用意し、UstreamのWebサイト上で自分の“番組”を1つ以上作っておく。次に「アクセスポイントモード」で操作できるようにし、アプリ画面上で「PicMate設定」となっている箇所からパナソニックの運営するWebサイト「LUMIX CLUB」にユーザー登録する。ユーザー登録が終わったらアプリ上でログインして、さらに「送信先WEBサービス登録」でUstreamを登録し、用意しておいたUstreamのアカウントと連携させる。

 ライブ配信用のWi-Fi接続設定も別途行なっておく。「アクセスポイントモード」と同じような手順で「ライブ配信モード」時のWi-Fi設定をした後、撮影モードが60fpsになっていないこと、スローモーション撮影でないこと、録画中になっていないこと、カメラ本体の日付設定が実際と大きくズレていないことなどを確認してから、カメラ本体のWi-Fiボタンで「ライブ配信モード」に切り替える。しばらくするとUstream上での配信が始まるはずだ。

Ustreamのアカウントを用意した後、「LUMIX CLUB」にユーザー登録
「PicMate設定」を行なう
「送信先WEBサービス登録」でUstreamと連携
「ライブ配信モード」時のWi-Fi接続先を設定
Wi-Fi接続先は3箇所記憶可能。上から順にトライして利用できるアクセスポイントに自動接続してくれる
カメラ本体で「ライブ配信モード」に切り替えてしばらくするとUstreamでの配信がスタート

 以上のような初期設定さえクリアできれば、その後はカメラ本体のWi-Fiボタンでモードを切り替えるだけで、特定のURLでのライブ配信が行なえるようになる。とにかくこの手間のかかる初期設定だけ注意したい。ちなみに、光回線のネットワーク経由ではタイムラグが4、5秒程度、スマートフォンをアクセスポイントに見立ててテザリングでライブ配信した場合は数十秒程度のタイムラグが発生したが、通信環境さえ安定していれば途切れたりすることなく配信可能だった。

動画・静止画像サンプル

 映像サンプルについては、これまで他のアクションカムのレビューでもたびたび行っている自転車に乗車した状態での撮影のほか、スローモーション撮影と、カラーナイトビュー機能の効果がわかりやすい夜間撮影の3種類を用意した。画角のチェックだけでなく、逆光補正やブレ補正、風音低減機能の効果なども合わせてご確認いただきたい。

1080p/60fps/WIDE/風音低減オフ/逆光補正オフ(動画/111MB)
1080p/60fps/WIDE/風音低減オン/逆光補正オン(動画/117MB)

 自転車での撮影は、同梱のイヤーフックを用いている。顔のすぐ横に固定されるカメラ部にマイクが付いていることから、わずかな鼻呼吸の音ですら拾ってしまっているが、風音低減は有効に機能しているようだ。簡単に言えば一定の周波数以下をカットする方式のため、一定以上の周波数になった風音がいきなり立ち上がってくることはあるものの、余計な騒がしさが抑えられているのは確か。

 逆光補正は、少なくともこういった屋外での撮影にはあまり向いていないと思われる。通常の状態で映像が全体的に明るくなるうえに、やや暗い場所に移動するとそれに合わせて全体の明度がさらに持ち上げられるため、もともと明るかった部分がハレーション気味になる。光を遮る形で完全に影になっている人物の顔などを見えるようにしたい、といったシチュエーション以外では、オフにしておくのが賢明だろう。

720p/30fps/STANDARD/ブレ補正オフ/傾き補正オフ/逆光補正オフ(動画/37.2MB)
720p/30fps/STANDARD/ブレ補正オフ/傾き補正オン/逆光補正オフ(動画/36.3MB)
カラーナイトビューオフ(動画/9.91MB)
カラーナイトビューオン(動画/10MB)

 あえて少し左に傾けて固定したところ、傾き補正オンの映像では、見事にほぼ水平に自動調整されている。ブレ補正の効果も高い。

 カラーナイトビュー機能の有無の差も歴然。シャッタースピードをかなり遅くして露光時間を稼いでいるようで、動きのある被写体は苦手ながら、風景はくっきり見える。夜景を撮影する時や、狭い暗がりをのぞき込む時などにはかなり有効な機能だろう。

480p/240fps/WIDE/スローモーション(動画/8.17MB)

 480p 240fpsで撮影したスローモーション動画は、画質がかなり劣化している。8倍の高速度撮影はそれなりに魅力的に感じるが、画質を重視したい場面においては十分な性能とは言い難い。

使い方が想像以上に難しいウェアラブルカメラ

 ウェアラブルカメラといえば、GoProをはじめとする小型カメラを思い浮かべるかもしれないが、モータースポーツなどで使われる業務用のオンボードカメラは、もともと別体型が主流だったように思う。そういう意味では、この「HX-A100」はいわば原点回帰と言えるのかもしれない。

カメラ部の固定方法はよく考えなければならないが、バイクレースのオンボードカメラ風に取り付けるのもアリかも

 とはいえ、同梱のイヤーフックやオプションのマルチマウントを見ると、激しいスポーツなどで活躍するアクションカムというよりは、撮影者視点で撮影するという用途に絞り込み、気軽に身につけて楽しめるようにした、まさしくウェアラブルなカメラと言える。手ぶらで使えることから、登山しながら風景を撮影したり、料理の様子を撮影したり、あるいはアーケードゲームのプレイ動画を写すなど、日常に寄ったシーンや、撮影のための準備に手間をかけたくない、大げさな装備にしたくない、といったシチュエーションとは非常に相性が良さそうだ。

 バイクレースのオンボード風に、バイクのバックカメラとして利用するのも面白そう。ただ、ケーブルの長さの都合上、本体部はタンデムシートの上に固定するか、シート下のスペースにしまうしかなく、電源のオン・オフが難しい。できれば車両の前方まで本体部を引っ張ってきてタンクバッグに収納するなど、必要に応じて電源操作できるようにしたいのだが……。

本体部をシート下のスペースに入れると収まりはいい
スマートフォンでバックミラーのように使ったり、後方を走る車両を撮影するのも簡単。ミラーに固定するのはいろんな意味で賢くないので、できるだけハンドル近くに取り付けたい

 そういうこともあって、80cm弱というケーブルの短さは気になってしまう。イヤーフックを使う場合、使用者の体格によっては本体部をできるだけ肘上までに固定しないと、腕を動かしたときに不意にカメラ部が引っ張られて頭から外れてしまうこともある。同じ理由で、やや重量のある本体部をぶら下げて使うわけにもいかない。今以上にケーブルを長くすると邪魔になったり、映像信号が減衰する原因になるのかもしれないが、せっかくの別体型がケーブルの短さによって活かしにくくなっているように感じる。

 前述の通りわずかな鼻呼吸の音すらマイクで拾ってしまうため、別の意味で生々しさが漂うのももったいない。手で持って撮影する場合でも、かなりの割合でノイズが入り込むことに注意しておきたいところだ。別体型としたことで、これまでのウェアラブルカメラとは違ったスタイルで撮影できるようになったのが特徴とはいえ、逆に使い道を狭めている部分もある、と感じることもあった。

 「HX-100A」は、ウェアラブルカメラとしてこれまで以上にユーザーの使い方に工夫が求められることは間違いない。ユーザーの目的や用途にうまくはまれば、劇的に利便性の高いアイテムになる可能性を秘めているとは感じる。ユーザーの工夫だけではなく、メーカー側も、どのような場面で使いこなせるかという具体的な活用シーンをいかに提示できるかがキモになってきそうだ。

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パナソニック
HX-A100

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、現在は株式会社ライターズハイにて執筆・編集業を営む。PC、モバイルや、GoPro等のアクションカムをはじめとするAV分野を中心に、エンタープライズ向けサービス・ソリューション、さらには趣味が高じた二輪車関連まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「GoProスタートガイド」(インプレスジャパン)、「今すぐ使えるかんたんPLUS Androidアプリ大事典」(技術評論社)など。