[BD]「タイタンの戦い BD&DVDセット」

往年の名作が超進化! 神様 vs 人間
10月の3D版に先駆けて2D版を鑑賞


 このコーナーでは注目のDVDや、Blu-rayタイトルを紹介します。コーナータイトルは、取り上げるフォーマットにより、「買っとけ! DVD」、「買っとけ! Blu-ray」と変化します。
 「Blu-ray発売日一覧」と「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。

■ 10月にはBlu-ray 3D版も登場



タイタンの戦い
ブルーレイ&DVDセット
初回限定生産
価格:3,980円
発売日:2010年8月25日
品番:BWBA-Y27609
収録時間:約106分(本編)+特典174分(BD版)
映像フォーマット:VC-1(BD版)
ディスク:片面2層BD×1枚、片面2層DVD×1枚
画面サイズ:シネスコ 1080p
音声:(1)英語
      (DTS-HD Master Audio 5.1ch)
    (2)日本語
      (ドルビーデジタル5.1ch)
発売/販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ

 各社から3Dテレビが続々と発表される中、悩ましいのがコンテンツ不足だ。3D放送や3D VOD配信は一部でスタートしているが、まだ潤沢とは言えない状況。PlayStation 3などの3Dゲームが当面は主要コンテンツになりそうだ。ちなみに、先日発表されたパナソニックの3D撮影対応ビデオカメラの売りは「キラーコンテンツを自分で撮影できる」だそうだ。

 そんな中、待望と言って良い洋画大作のBlu-ray 3Dがワーナーから発表された。「アバター」で大ブレイクした、サム・ワーシントン主演の「タイタンの戦い」である。発売日は10月6日で、Blu-ray 3Dと2D Blu-rayをセットにしたものが4,980円で発売される。Blu-ray 3D市場がいよいよ本格的に立ち上がると考えると待ち遠しい限りだ。

 10月6日より前にタイタンの戦いのBlu-ray 3D版を手にする方法もある。シャープが7月30日から発売している、3D対応テレビ「AQUOS LV3シリーズ」(LC-60/52/46/40LV3)購入者と、3D対応Blu-rayレコーダ「AQUOSブルーレイ」(BD-HDW700/70)の購入者に、先着でBlu-ray 3D版がプレゼントされるキャンペーンが実施されているのだ。詳細は既報の通り。応募後3週間程度でディスクの発送が予定されているので、10月の一般発売よりは早く3D BD版を入手できるというわけだ。

 当然ながら、2D版のソフトも用意される。発売は3D版より早く、8月25日。2D映像収録版のBD+DVDセット(BWBA-Y27609/3,980円)と、DVD単品版(DLVY-26416/3,480円)の2種類が用意されている。なお、2D BD+DVDの価格が3,980円、DVD単品版が3,480円で、価格差は500円しかないため、BD再生環境が無い人も、今後を考えて2D BD+DVD版を選んだほうがいいだろう。

 3D版も気になるところだが、まだまだ再生・表示環境は本格普及前。今回は8月25日に発売の2D版を発売に先駆けてお借りしたので、紹介したい。


■ 神と人間、そして父と子の物語

 舞台は古代ギリシャ世界。神々の王ゼウス(リーアム・ニーソン)を頂点に、様々な神がオリンポスに君臨していた時代。ゼウスは人間を創り、彼らの神への信仰を糧に不老不死を保っていた。だが、不作や天災などに疲弊した人間達は、次第に傲慢な神々に反感を持つようになる。

ペルセウス(左)は、アルゴスの屈強な戦士達と共に、モンスターとの戦いの旅に出る
 一方、海に浮いていた棺の中から、母親の亡骸に抱かれた赤ん坊が漁師に救い出される。彼の名はペルセウス。ゼウスが人間の女性との間にもうけた子供だった。漁師はペルセウスを自分の息子として育て、やがて彼は逞しい若者に成長。母や妹と共に、父の漁を手伝うようになる。

 しかし、漁の途中、運悪く神と人間との戦闘に遭遇。冥界の王ハデスの攻撃に巻き込まれ、自分を除く家族全員を殺されてしまう。ハデスに復讐するため、神と人間のハーフでありながら、あくまで人間として立ち上がるペルセウス。人間の仲間と共に、ハデスが生み出した戦闘モンスター・クラーケンを倒すための旅に出る。

 一方、傲慢になった人間をこらしめる役を買って出たハデスには、ゼウスに隠している真の目的があった。それは、人間を蹂躙し、ハデスが糧とする“人間たちの恐怖”を増大させ、己の力を強化する事。そして人間の信仰を失い、弱まったゼウスを蹴落し、自らが神々の王になるという恐ろしい計画だった……。


スコーピオンやメデューサなど、お馴染みのモンスターが総登場
 有名なギリシャ神話をベースとしているため、神々の戦争に投入された最強のモンスター・クラーケンを皮切りに、巨大なサソリのスコーピオン、髪の毛が蛇で、見たものを石に変えるメデューサなど、神話に詳しくなくても一度は聞いた事があるであろうキャラクター達が登場。いずれも個性的なモンスターで、極めて“映像化に向いた物語”とも言えるだろう。映画用に若干アレンジされているが、大まかなストーリーは神話の通りだ。

 最大の魅力は“神 vs 人間”という壮大な物語の構図だ。また、人間側の代表が神と人間のハーフであるペルセウス、神様側の代表が、その父親ゼウスという構図も面白い。人間と神の物語であると同時に、父と子の物語でもあるというわけだ。戦いの最中でも、ペルセウスは神としての力を使うのをためらったり、神から贈られた武器(聖剣)を使うことを拒んだりと、苦悩する描写がある。またゼウスも「人間に罰を与えなくては」と思う一方で、我が子につい助力してしまう。双方とも良い意味で人間くさいので、神様にもしっかり感情移入できるところが嬉しい。


クラーケンと戦う、ペガサスに乗ったペルセウス。戦うというレベルではないサイズの違いを、どう克服するのか!?
 映像的な見所はやはり、モンスターとのバトルシーン。ちょっとした“丘”くらいのサイズがあるスコーピオンが、凄まじいスピードで尾の毒針を突き立てるなど、迫力満点のシーンが連続。観客に向かって突進するようなシーンも多く、3D映像向きの作品とも言えるだろう。

 圧巻は終盤にかけてのクラーケンとのバトル。丘どころか、完全に“山”サイズで、剣を手にしたペルセウスが虫に見えるくらいの小ささ。倒すとかいうレベルの話ではなく、手に汗握る。バトルの雰囲気は、ゲームに詳しい人なら「ゴッド・オブ・ウォー」を彷彿とさせる戦闘と言えばわかりやすいだろう。

 ほかにも、翼の生えた馬“ペガサス”にまたがっての空中戦など、とにかくアクションシーンのサービス精神が旺盛な映画だ。体感型ジェットコースタームービーそのものであり、2Dで十分迫力があると同時に、Blu-ray 3D版にも期待が高まる内容になっている。


オリジナルの「タイタンの戦い」(1981)も、ワーナーからBlu-ray化されている

 なお、ご存じの方も多いと思うが、この作品はストップモーションアニメの巨匠レイ・ハリーハウゼンが手がけた同名作品('81年)のリメイクでもある。ハリーハウゼンは人形をコマ送りで撮影し、役者と怪物が本当に戦っているような映像を作り出し、映画界に大きな影響を与えた人物だ。

 CGに慣れてしまうと、ストップモーションアニメは正直チープに感じられるが、ミニチュアで作られたモンスターなどは、質感的な実在感や、動きの生々しさなど、今のCGにはない独特の“味”があるのも確かだ。だが、アングルの自由さやスピード感は、やはりリメイク版が圧倒している。オリジナルの映像を思い出しながら鑑賞すると、映画の進歩を改めて実感できる作品にもなっている。

 だが、少々不満な点もある。1つは“冒険の旅の範囲”や“神との戦いに参加する人数”など、スケール的な部分が思ったより大きくないこと。登場する国はアルゴス程度で、地平を埋め尽くすような人間の軍隊が、神々と総力戦を繰り広げるような、ロード・オブ・ザ・リングレベルの大スペクタクルを期待するとちょっと違う。その不足分を、アクションの迫力で補っている印象だ。

 また、ペルセウスと共に旅をする仲間達に個性的なキャラクターが多いのだが、その描き込みがアッサリしている。旅の合間に冗談を言い合ったり、助け合うようなシーンが少なく、もう少し個々のキャラを活かしてほしかった。見せ場のアクションシーンを飛び石のように急いで渡るようなイメージで、本編は106分という標準的な長さだが、ソフト化にあたってもう少し長いバージョンがあっても良かったのでは? などと思ってしまった。



■ スタント好きな主人公

 映像フォーマットはVC-1。グレインは適度で、砂漠や昼間のシーンではほとんど気にならず、森の暗がりや霧のシーンなどで若干目につく程度。総じてキレの良い画質で、精細感があり、木々の葉っぱの輪郭がシャープ。豪華絢爛なアルゴス王の広間も良く見える。アクションシーンでも、巻き上がる砂粒や、スコーピオンの硬い皮の凹凸がシャープだ。ビットレートは20Mbps後半~30Mbps後半にめまぐるしく変化する。

 特徴的なのは音響。音声は英語をDTS-HD Master Audio 5.1ch、日本語はドルビーデジタル5.1chで収録。とにかくサブウーファが大活躍する映画で、怪物の足音だけでなく、雷鳴やBGMなど、普通のシーンでも低音がとにかく豊富。“過多”にも感じるが、派手な映像とのバランスを考えるとこのくらいでもいいのだろう。あまり大きな音が出せない環境では、サブウーファのレベルを若干下げると良い。

 面白いのはメデューサとのバトルシーン。目を合わせたら石になってしまうので、伏し目がちに戦うのだが、それゆえ敵が何処にいるのかわからない。そんなペルセウス達をあざ笑うかのように、メデューサの不気味な笑い声が前後左右のスピーカーから神出鬼没に発せられ、あたかも自分が戦っているかのような気分になった。

 特典映像のメインは「ムービーツアー」。本編を再生しながら、小窓で解説映像が再生され、さらに詳しいコンテンツにジャンプする事もできる。面白かったのは、サム・ワーシントンの人柄について。ハンサムな俳優だとは思うのだが、「アバター」の時に「もう少し表情が欲しいなぁ」と個人的に感じ、次々と大作に起用される理由がイマイチわからなかった。

 しかし、今回の特典で疑問が氷解。スタッフによれば「スタントのためならなんでもする男」だそうで、運動神経が抜群で積極的にスタントをやりたがり、海へ投げ込まれたり、スライムまみれになっても一言も文句を言わないのだとか。「危険なシーンも本人が全て演じているので、(スタントマンを使う場合と比べ)後で編集する必要がなくて楽なんだ」という。ある意味“使いやすい俳優”なのだろう。本人は「ボーン・アイデンティティではマット・デイモンもほとんどのスタントをこなしていた。そんな映画を観て育ったから、僕も自分でやりたいんだ。結構楽しいよ」とこともなげに語っており、今後も彼のアクションを目にする機会は増えそうだ。

 CGで関心したのは“翼が生えた馬”ことペガサス。本編のペガサスが、本物の馬にしか見えないほどリアルで感心したのだが、実は馬の部分はまるまる本物の馬で、後でCGの翼を付け足したという。映画のメイキングで、CG合成用のカラーボールを体中に付けた役者の姿はよくあるが、蛍光色のマークを付けて草を食べている馬の姿はシュールで可愛い。なお、劇場公開時に3D上映もあったが、撮影自体は3Dではなく、後処理で3D化した作品のようだ。

 特典で意外だったのは、ハリーハウゼンのオリジナル版の話があまり登場しない事。監督の話の中でちょっと出てくるだけで、普通だとオリジナル版が映画業界に与えた影響とか、リメイク版との比較などがありそうなものだが、そうしたコンテンツは無い。監督は「オリジナル版の世界観を大切にしたが、新鮮味のある作品にしたかった。そのため、ギリシャ神話は何度も読み返したけど、オリジナルの映画はあまり観なかった」と語っており、オリジナルに“とらわれすぎない事”も、良いリメイクには時として必要なのかもしれない。

 必見は「もうひとつのエンディング」。ボツになった映像が収められているわけだが、これが採用エンディングとあまりに違い、完全にヒロインが別の女性キャラになっていて驚いた。これは本編鑑賞後にぜひ観て欲しい。


■ 3Dでも2Dでも楽しめるサービス満点映画

 3D表示環境が既にある場合は、迷わずBlu-ray 3D版を待つところだが、近々に3Dテレビの導入予定が無いという場合は、2Dでも十分迫力ある映像が楽しめるので、3D環境が整うまで我慢することもないだろう。

 サービス満点のアクション映画として楽しめる以外に、ギリシャ神話の世界観や物語、キャラクターの勉強にもなるという点で面白い作品だ。テンポも良いため、深く考えずに迫力ある映画が楽しみたい時にもオススメできる。モンスターはちょっとグロテスクなので凄く小さな子供には向かないかもしれないが、ラブシーンは皆無なので、夏休みに家族でも楽しめる1枚にもなりそうだ。


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12%

(2010年8月16日)

[AV Watch編集部山崎健太郎 ]