[BD]「ハングオーバー!
消えた花ムコと史上最悪の二日酔い」
中年男がハメを外すと大変な事に!?
■ 海外で大ヒットするも、日本では不遇……の予定だった!?
ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い ブルーレイ&DVDセット |
This motion picture: (C)2009 IFP Westcoast Erste GmbH & Co. KG.Story and Screenplay: (C)2009 Warner Bros. Entertainment Inc. and Legendary Pictures. Original Score: (C)2009 Warner-Hollywood Music, LLC |
価格:3,980円 発売日:2010年10月6日 品番:BWBA-Y28423 収録時間:約100分(本編)+35分(特典) 映像フォーマット:VC-1(BD) ディスク:片面2層BD×1枚+DVD×1枚 画面サイズ:シネスコ 1080p 音声:(1)英語 (ドルビーTrue HD 5.1ch) (2)英語 (ドルビーデジタル5.1ch) (3)日本語 (ドルビーデジタル5.1ch) 発売/販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ |
個人的に、アメリカのコメディ映画(特にパロディ系)は苦手で、あまり率先して観る事はない。もっとも、コメディと言っても1つの国の中に様々な形があるので一概には言えないのだが、映画における笑いのセンスというのはよくも悪くも“お国柄”や“文化”の違いが出やすいものだ。そんなわけで、このコーナーでコメディ映画を取り上げる事はあまりなく、振り返ってもマイケル・ジャクソンの「ネバーランディングストーリー」ぐらいだろうか。
苦手なのは私だけではないようで、海外でヒットした作品でも、日本ではさっぱり振るわないという話はよく耳にする。配給会社もそれを踏まえて、直球のコメディ映画の場合、例え大ヒット作品でも、そもそも日本で公開しないということも多い。
今回紹介する「ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い」も、そんな不遇な1本……になるはずだった作品だ。もともとこの作品は、低予算かつ無名の俳優を起用しながら、内容が評価され、2009年度の全米興行収入第6位を記録するヒットとなり、今年度のゴールデングローブ賞まで受賞したという人気作だ。
しかし、日本では映画祭で上映された程度で、通常の劇場公開はされず、そのままBD/DVDが今年の3月に発売される予定だった。だが、作品のファンから、日本公開を求める声が高まったこともあり、7月からの劇場公開が決定。BD/DVDの発売が急遽延期されるというちょっと変わった展開を見せた。
そして今回、10月6日に改めてBD/DVDが発売されることになる。発売、延期、改めての発売と、3回記事で取り上げてきたので、ことさら記憶に残っている1本だ。
そんなこともあり、食わず嫌いの心を入れ替えて、10月6日の発売を前にお借りしてみた。ラインナップはBD+DVDのセットのみで、価格は3,980円。携帯電話やPC/ポータブルプレーヤーなどで視聴できる本編ファイルをダウンロードできる、「DIGITAL COPY」サービスも用意されている。
■ ハメを外すってレベルじゃねえ
結婚式を2日後に控えた新郎のダグは、教師でプレイボーイなフィル、真面目な歯科医のスチュアート(スチュ)の親友2人に、婚約者の弟で変わり者のアランを加えた合計4人で、“独身最後の夜”を満喫するため、ラスベガスへと出かける。待っているのは魅惑のギャンブルに、綺麗な女……。いやがおうにもテンションが上がる4人は、勢いで身の丈に合わない高級ホテルのスイートを借り、スーツに着替えて夜の街へと出撃する。
……そして翌朝。ホテルで酷い二日酔いと共に目覚めたフィル、スチュ、アランの3人が目にしたのは、泥棒が入ったよりも酷い、メチャメチャになったスイートルームの惨状。トイレに何故かトラが居座り、知らない赤ん坊まで泣いている始末。さらに何処を探してもダグの姿が無い。昨晩何があったのか? 思い出そうとする3人だが、どうしてか何も思い出せない。
トラや赤ん坊をなんとかする必要があるが、それ以前に、明日の結婚式までに新郎を探し出さなければならない。かくして、鳴り止まない婚約者からの電話を誤魔化しながら、トラに怯えつつ、赤ん坊を抱えたまま、3人の“記憶”と“新郎”を取り戻す珍道中が始まった……。
海外の映画やドラマでちょくちょく見かける、結婚式の前夜に、悪友達とつるんで独身最後の夜を盛り上がるという「バチュラー・パーティ」(bachelor party)は、日本ではやっているという話はあまり聞かないけれど、趣旨や、その夜の“テンション”は同性として共感できる。特に学生時代からの気心が知れた仲間が集まると、タガが外れてテンションが高くなり、無茶をやってしまうのはよくあることだ。
だが、この映画の4人のハメの外し方は半端ではない。記憶を無くした3人がスイートで目覚める瞬間が映画のスタートみたいなものだが、部屋の惨状がとにかくヒドイ。酒のビンやグラスが散乱し、ソファーは半分燃え、ニワトリが歩きまわり、大画面テレビはぶち壊れ、スチュは歯が1本抜けて血まみれ、フィルの手首には病院のタグ。そしてトイレには本物のトラ。おまけに赤ちゃんも泣いている。
ここまで要素が多く、メチャクチャだと、昨晩何があったのかまったく想像できない。探偵に推理を依頼したら無言で通報されるだろう。二日酔いの3人は、“新郎ダグの捜索”、“赤ん坊の親探し”、“トラの飼い主(?)探し”、“メチャクチャにしたスイートルームの修繕費用”などの難問を解決していかなければならない。
当然、2日酔いの3人が解決できるわけもなく、むしろ奔走する事で問題は倍増。警官はもとより、マフィアやストリッパー、そして超有名人セレブも巻き込んだ、まさに想像を絶する珍道中に発展していく。
“トラがいる理由”など、1つ1つの事象の記憶を遡っていく展開なのだが、“結果”があまりに突飛なので、観ていて“原因”がまったく想像つかない。内容はコメディなのだが、先の読めないサスペンス映画のような感覚で楽しめる。同時に、「明日までに新郎を結婚式場に届けなければならない」という時間制限もあり、終盤にかけての畳み掛けるようなどんでん返しと、一気に収束へと突っ走る疾走感は快感の一言だ。
予想外だったのは、寒いジョークや有名映画からのパロディを散りばめたタイプのコメディ映画とはまったく違う事。状況がおバカなので笑えるのは間違いないのだが、その状況をなんとか乗り越えようとする3人はいたって真面目で、ジョークを飛ばすどころではない。端的に言えば、ハメを外し過ぎたダメ大人が、取り繕おうとして傷口をすごい勢いで広げていく様を笑う作品だ。随所にギャグを挟むのではなく、練られたストーリーと状況で笑わせるタイプの作品であり、あまり“笑いの文化の違い”を意識せずに済む作品とも言えるだろう。どちらかというと腹を抱えて転げまわるのではなく、「バカ過ぎる」と突っ込みを入れながら観るタイプの作品だ。
さらに意外だったのは、独身最後の夜を盛り上げようと計らったり、結婚式に間に合わせるために文字通り命を掛けてダグを探す3人の姿に、大笑いしながらも、終盤になると別の感慨が沸いてきた事だ。おバカではあるが、彼らの言動は基本的に“親友ダグのため”を思ってのことで、損得勘定を抜きに必死になる純粋さは、“男同士の友情”そのものと言える。ご想像の通り、最後は結婚式で締めになる作品なのだが、そんな男同士の絆ならではの、最後の祝福&決断に、ちょっとグッとくる作品にもなっている。
■ 特典でも爆笑
昼間の風景はコントラストが強く、クッキリとした映像で、砂漠に囲まれて湿度の低いラスベガスらしいカラッとした映像になっている。暗い夜の街に浮かび上がるネオンのコントラストもクリアで、幻想的な夢の街の雰囲気がよく伝わってくる。これには、実在するホテルやカジノで撮影されていることも寄与しているだろう。
音声は英語をドルビーTrueHD 5.1ch、日本語をドルビーデジタル 5.1chで収録。劇中のBGM選曲のセンスが良く、テンポよく鑑賞できる。コメディ作品ではテンポも重要な要素なので、字幕を追わなくていい吹き替えで楽しむというのもアリだろう。
なお、劇場公開時の本編は約100分なのだが、BD/DVDにはカットシーンを復活させた約107分の完全版本編が収録されている。当然ノーカット版をメインに鑑賞したのだが、日本語吹き替えは劇場公開版にしか収録されておらず、ノーカット版を再生すると英語音声になってしまう。できればノーカット版でも日本語音声を選べるようにしてほしかった。
特典のメインは「インムービー・エクスペリエンス」(劇場版のみ)。本編映像を再生しながら、右下にPinP(子画面表示)で監督と出演者が登場。再生シーンの舞台裏を語ってくれるというものだ。シーンに合わせて、違うスタッフが登場する形式はよくあるが、この作品では劇場の椅子に監督・出演者が座り、本編を観ながら爆笑したり裏話を語ったりする形式で、“映像付きのオーディオコメンタリ”に近い。
アドリブが多い作品でもあったようで、「あそこで入れたセリフ最高だった」、「ここ! このセリフ最高」など、楽しげに鑑賞している姿が微笑ましい。裏話では、朝起きたら歯が抜けて血まみれだった“スチュ”。役作りのために歯を抜いたのなら凄い役者根性だが、今の時代、CGでもなんとかなりそうではある。本当に抜いたのか、抜いていないのかは、実際に確認して欲しい。
ほかにも、アメリカで人気のコメディアン、ケン・チョンの削除シーンが良い意味でヒドイ。劇中ではキレまくったチャイニーズマフィア役で登場し、強烈なキャラを演じているのだが、採用されたシーン以外にも無数のバリエーションを披露しており、下ネタ満載の罵詈雑言をまくしたてたり、アランにキスをかましてみたりと、“なんとか面白いことをやってやろう”という気概に満ちている。既に米国では成功したコメディアンだというが、勢いは日本の新人芸人に極めて近い。
■ 様々な場所で楽しめる
BDで腰をすえて楽しむのも良いが、DVDや「DIGITAL COPY」の本編ファイルをPCや車内のカーナビなど、空いた時間に手軽に楽しむにもピッタリな作品と言えるだろう。
おそらく男性なら、“あるある、こーゆーノリ”と共感を覚え、女性には“男同士がつるんで遊ぶとこーゆーノリなの?”と、興味深く観てもらえるだろう。ハリウッドでギャンブル&女遊びをしようという映画なので子供向けとは言えないが、反面教師的に楽しむ事もできるかもしれない。
登場人物達がいずれも憎めない面々であり、飲み過ぎの失敗&二日酔いの中での奮闘という、ある意味誰にでも起きうる(?)失敗談でもあるため、多くの人が楽しめるコメディに仕上がっている。先入観を持たずに楽しんで欲しい1本であり、個人的にもこの作品を機に、“食わず嫌い”を改めようと誓った次第だ。
●このBD DVDビデオについて |
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[AV Watch編集部山崎健太郎 ]