大河原克行のデジタル家電 -最前線-

パナソニック、2016年度中に有機ELテレビを国内投入へ

品田事業部長に聞く、'16年度のテレビ事業戦略

 パナソニック アプライアンス社テレビ事業部の品田正弘事業部長は、2016年度中にも、日本市場に有機ELテレビを投入する考えを明らかにした。さらに、米ラスベガスで開催したCES 2016において発表したUltra HD Premiumテレビ「DX900」も、今年春には国内市場に投入する予定であることも示した。この2つの製品について、品田事業部長は、「パナソニックのテレビのフィロソフィーとはこういうものだ、ということを改めて提示することができる製品」と自信をみせる。

パナソニック アプライアンス社テレビ事業部 品田正弘事業部長

 品田事業部長に、2015年におけるパナソニックのテレビ事業の成果を総括してもらう一方、2016年のテレビ事業の取り組みについても聞いた。

国内4Kテレビ市場でトップシェアを獲得

--2015年のパナソニックのテレビ事業の成果をどう総括しますか。

品田:2015年に重視した取り組みのひとつが、事業部と市場を近づけるということでした。それは、2015年にだいぶ形になってきたといえます。日本、欧州、アジア、中南米というターゲットとする市場において、市場の声を聞いて、それを製品やサービス、そして、事業運営に反映し、市場の変化に対応できるようになりつつあります。

--具体的にはどんな成果が出ていますか。

品田:日本は、もともとボリュームの大きな市場ですから、数量を追うことが宿命となっていたというところもありました。どうしても、フルHDのボリュームゾーンをやらなくてはならないという状況にあった。しかし、ここは乱売になりがちな領域でもあり、これが収益性を悪化させていたわけです。2015年は大胆な販売戦略の変更によって、4Kテレビを中心とした高付加価値製品へとシフトし、それにマッチしたマーケティング施策を展開してきました。

--国内の4Kテレビ市場は、ソニーが先行し、昨年後半からシャープが巻き返したという構図があり、パナソニックの存在感は薄く感じますが。

品田:実は、GfK Japanの調べによると、2015年4月〜12月の累計での国内4Kテレビ市場においては、パナソニックがトップシェアを獲得しています。2015年11月も、3割以上のシェアを獲得し、トップシェアです。とくに、我々が手応えを感じているのが、4Kテレビのなかでもプレミアムゾーンの製品が売れているという点です。現在、パナソニックでは、4Kテレビとして、プレミアムゾーンのCX800シリーズと、普及ゾーンのCX700シリーズを用意していますが、11月の販売データを見ると、CX700シリーズの販売実績を、CX800シリーズが上回りました。「JAPAN PREMIUM」を打ち出したCX800シリーズは、上下左右178度の広い視野角と、高輝度、広色域でくっきりと鮮やかな映像を表現できるIPSパネルの採用しており、これに、高画質エンジン「ヘキサクロマドライブ」を組み合わせたことで実現する、原画に忠実な色再現などが高い評価を得ています。プレミアムモデルの方が売れるというこれまでにない実績は、当社の高付加価値戦略が「ひと皮むけた」と表現してもいいかもしれません。これは、2016年につながる重要な一歩だったと思っています。その点では、2015年の国内テレビ事業は、ひとまずは合格点に達したといっていいでしょう。

-- 一方で、海外市場での成果はどうでしたか。

品田:どの地域においても重視したのが、付加価値戦略と、利益重視の姿勢です。とくに欧州は、プラズマテレビ撤退の影響が最も大きな市場でしたから、それをリカバリーし、パナソニックのテレビはこういうものだということを明確に打ち出した1年でした。2015年9月に、独ベルリンで開催したIFA 2015では、65型4K有機ELテレビ「CZ950」を発表し、欧州市場でのみ販売を開始しましたが、これによって、欧州市場においては、パナソニックが持つテレビの技術の高さを、改めて多くの人に理解をしてもらえたと思っています。パナソニックが持つテレビのフィロソフィーとはこういうものだということを体現するとともに、それをご理解いただいた流通を通じてのみ、販売を行なうことで、その価値を明確に伝えてもらうことができたと思っています。

 今回のCES 2016では、液晶テレビのフラッグシップモデルとして、Ultra HD Premium認定プログラムに準拠した4Kテレビ「DX900」を発表し、有機ELテレビに負けない画質を実現する液晶テレビを投入することができました。これもパナソニックならではのテレビの強みを訴求することにつながるといえます。一方、アジア地域では、APアジアがスタートしたことにより、現地の裁量権を広げ、迅速な決断ができるようになったことが大きな変化です。アジア市場では付加価値戦略といってもフルHDが中心となるため、どうしても価格競争に陥りやすい部分があります。生鮮食料品のような市場において、従来は決断が遅く、結果として在庫が残り、余計な費用が発生するということが繰り返されていましたが、現地での迅速な決断により、これが回避できるようになってきた。その結果、アジアでのテレビ事業も黒字化することに成功しており、ここでも大きな手応えを感じています。


「Ultra HD Premium」ロゴを取得した65型4K液晶テレビ「TX-65DX900」

 2016年は、APアジアを通じて、アジア発の商品を投入します。2015年に収益基盤を確立し、それをベースに、2016年はアジア発の製品で成長させるという体制が整った段階にあります。中南米市場は、残念ながらブラジルの経済環境が悪化するなかで、あまり積極的な手が打てないというのが現状です。テレビ事業の収益は、ブレイクイーブンに留め、我慢の1年となりました。この状況は2016年も続きそうです。ただ、こうした期間は、白物家電、テレビの販路拡大の地盤を作り上げるには最適なタイミングだともいえます。とくに、これからはブラジル市場において白物家電の面展開を進める計画であり、そのなかで、販路を構築する必要がありますから、そこで確立したルートにテレビを乗せていくということが可能になると考えています。

--2015年度は、8年ぶりのテレビ事業の黒字化を目指していますが、現時点での感触はどうですか。

品田:第1四半期が大幅な赤字であり、第2四半期は白字(パナソニック社内でブレイクイーブンか、若干の黒字を指す言葉)、そして第3四半期、第4四半期も白字基調となる見込みです。年間で、第1四半期の赤字をカバーできるかどうかが鍵なりますが、なんとか黒字化を達成したいと考えています。ただ、黒字化に向けた体質へと大きくシフトしていること、ローカルで戦うための体制づくりが進んでいることは、2016年に向けて大きなプラス要素だと考えています。

有機ELテレビ、フラッグシップ液晶テレビの国内投入は?

--ところで、IFA 2015で発表した65型4K有機ELテレビ「CZ950」は、欧州だけで販売しています。日本市場への有機ELテレビの投入は考えていますか。

品田:ぜひ投入したいと考えています。ただ、第1号機となるCZ950は、欧州市場においてだけの展開に留めることになります。第2号機以降で、日本市場への展開を視野に入れています。第2弾の製品は、今年秋のIFAで発表することになると思います。それを2016年度中に、日本市場に投入するというのが、いま想定しているスケジュールです。

65型有機ELテレビ「TX-65CZ950」

--今回のCES 2016で発表した4Kテレビ「DX900」の日本での発売はどうなりますか。

品田:この製品は、パナソニックのテレビの技術を表現する重要な製品ですから、欧州で今年度中に発売するのに続き、日本でも今年春には市場投入する予定です。58型と65型の2機種を用意しています。

--DX900は、Ultra HD Premium認定プログラムに準拠した製品ですが、これをどう打ち出していきますか。

品田:Ultra HD Premium認定プログラムに準拠したテレビは、サムスンやLG電子なども製品化していますし、それ自体がパナソニックのテレビの差別化になるわけではありません。また、正直なところ、Ultra HD Premiumの良さをどう伝えるのかという難しさも感じています。Ultra HD Premiumだからこそ実現する良質なコンテンツはどんなものかということも考え、それをどう流通させていくかということも重要です。HDRというメッセージについても、その良さをどう伝えるかに知恵を絞る必要があります。2016年のトレンドになるのは間違いないと考えていますので、この領域には、しっかりと取り組んでいきたいですね。ただ、Ultra HD Premiumの場合には、パナソニックでは、JAPAN PREMIUMを訴求していますから、プレミアムにプレミアムが乗っかってしまい、わかりにくい状況を生んでしまいそうです(笑)。

2016年はプレミアム製品を5割以上へ

--2016年のパナソニックのテレビ事業はなにがポイントになりますか。

品田:2015年には、テレビ事業が黒字基調に転換しはじめていました。2016年はこれを固める1年になります。さらなる体質強化を図り、高付加価値製品を中心とした成長戦略を描きたいと考えています。

 日本では、プレミアム製品を主軸に販売できる体制が整いましたから、2016年はこれをさらに加速させていきますし、欧州では、国ごとの市場特性を捉えた展開が必要だと考えています。ここでは、いずれも4Kテレビを中心とした販売戦略が中心となります。

 アジアでは、APアジアからアジア発の製品が登場し、やはり付加価値戦略を基本に据えますが、アジアの場合は4Kというよりも、スマートテレビが付加価値戦略の中心になりますので、そこにフォーカスしたマーケティング展開を進めます。

 2016年は、シェアを追求するというよりも、それぞれの市場にあわせたプレミアム製品の構成比をどれだけ高めることができるかが鍵になります。日本では、4Kテレビの構成比が金額ベースで5割を超えていますが、これを6〜7割へと高めたいと考えていますし、グローバルにおいても、プレミアム製品の構成比を、現在の約4割から、5割以上へと高めたいと考えています。2016年は、テレビ事業におけるプレミアム戦略を加速する1年になります。

大河原 克行

'65年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、2001年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。BCN記者、編集長時代を通じて、20年以上に渡り、IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。 現在、ビジネス誌、パソコン誌、ウェブ媒体などで活躍中。PC Watchの「パソコン業界東奔西走」をはじめ、クラウドWatch、家電Watch(以上、ImpressWatch)、日経トレンディネット(日経BP社)、ASCII.jp (アスキー・メディアワークス)、ZDNet(朝日インタラクティブ)などで定期的に記事を執筆。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社)、「松下からパナソニックへ」(アスキー・メディアワークス)など