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第409回:ローランドの8年ぶりのDTM用ハードシンセ「SD-50」

〜 機能/性能が進化したDTM用の「次世代MIDI音源」〜


 3月27日、ローランドからCakewalkブランドのDTM製品「Mobile Studio Canvas」が発売される。これはオーディオインターフェイス兼MIDI音源の「SD-50」とSONARベースのDAW「MUSIC CREATOR 5」がセットとなったもの。価格はオープンプライスで、店頭予想価格45,000円前後。

 発売前ではあるが、製品を借りることができたので、SD-50を中心にどんな製品なのかを紹介しよう。

「SD-50」 「MUSIC CREATOR 5」

■ 8年ぶりのハードシンセ。“次元の違う音色”へ進化

 一昔前まで、DTMといえばPCにMIDI音源を接続して演奏する形態であった。そのDTM用MIDI音源の代表といえばローランドの「SC-55mkII」や、「SC-88」であり、RolandのMIDI音源規格である「GS」が実質上のデファクトスタンダードであった。

 しかし、CPUの演算処理能力やPC全体のパフォーマンスが向上すると、音源をソフトウェア的に処理するソフトシンセが台頭してくるとともに、そのクオリティーは飛躍的に上がっていった。その結果、現在のDTMシーンではソフトシンセが主流であり、外部MIDI音源を使うのはレアケースとまでなってしまった。

 実際、ローランドもSC(Sound Canvas)シリーズの後継であるSD(Studio Canvas)シリーズとして、「SD-80」および「SD-20」を2002年にリリースして以来、8年間ほどハードウェアとしてのDTM用MIDI音源は出していなかった。「SonicCell」という音源はあったが、価格帯的にも高めで、SCシリーズ、SDシリーズとは明らかに違うジャンルの製品だったように思う。

「SD-50」と初代の「SC-55」(左)

 その2002年で止まっていたDTM用のMIDI音源が、今回8年ぶりに復活した。名称もSD-50であり、確かに従来の流れをくんだ製品のようだ。音源としてのスペック的は、以下の通り。

  • パート数:16
  • 最大同時発音数:128音
  • 内蔵音色数:1,125音色+32ドラムセット
  • ユーザー音色数:3スタジオセット
  • エフェクト:リバーブ、コーラス、マスタリング

 もちろんGS、GM Level2対応となっている。またオーディオインターフェイス機能としてのスペック以下の通り。

  • 入力:1系統(MIC/GUITAR IN:モノ、LINE IN:ステレオ)
  • 出力:1系統(ステレオ)
  • サンプリングレート:44.1kHz
  • 量子化ビット数:16bit/24bit

 いわゆる復刻品とは異なり、完全に現在の仕様の新製品であり、音的にも新しいし、機能・性能的にも大きく進化している。まずは、本体内に収録されているデモ曲を1曲WAVファイル(sound01.wav:16bit/44.1kHz)でレコーディングしたので聴いてみてほしい。

デモ音源

sound01.wav(16MB)

編集部注:編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 音源としてみたとき、やはり最大の進化ポイントは音色だろう。内蔵の1,125音色+32ドラムセットの内訳は、以下のようになる。

  • ソロ音色:3音色
  • GM2音色:250音色+9ドラムセット
  • GS音色:226音色+9ドラムセット
  • プリセット音色:640音色 ほか

 中でも注目なのが、ソロ音色の3つ。具体的には、バイオリン(sound02.wav)、トロンボーン(sound03.wav)、尺八(sound04.wav)のそれぞれだが、その表現力が従来のMIDI音源とはまったく異なる。まずは本体の音色プレビュー機能で演奏された音を16bit/44.1kHzでレコーディングしてみたので、聴いてみてほしい。

バイオリン

トロンボーン

尺八

sound02.wav(3.8MB)

sound03.wav(5.2MB)

sound04.wav(5.3MB)

編集部注:編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

 これら3音色は弱音の繊細な音から、強音の迫力のある音まで、単なる音量変化にとどまらない、その楽器らしい自然な音色変化(ダイナミクス変化)が得られるようになっている。このダイナミクスはNoteON Velocity、Modulation コントローラ(CC01)、Expression (CC11)で、コントロールできるようになっており、Modulationコントローラをダイナミクスに割り当てているため、Vibratoはチャンネル・プレッシャー・メッセージでコントロールできるようにしてある。

 鍵盤を押したあとに、Modulationコントローラ(CC01)もしくはExpression ペダル(CC11)を操作することで、ダイナミクスを連続的にコントロールでき、レガート演奏(NoteOFFする前に、次のNoteをONする奏法)することで、滑らかな音のつながりを再現できるようになっている。

 またNoise Levelを変更することも可能で、管楽器のブレス・ノイズ、弦楽器の弦をこするノイズやピッキングノイズの量を好みの値に調整できるほか、CC17を使ってPlay Stability(演奏の正確さ)も調整可能となっている。さらに管楽器であるトロンボーンと尺八はGrowl Sens(CC18)をコントロールでき、管楽器を強く吹いたときに発生する独特のニュアンス(うなり感)を好みの量に調整できるのだ。

 明らかに従来のMIDI音源とは次元の異なる音色であり、この3音色だけのためにSD-50というかMobile Studio Canvasを購入してもいいのではと思ってしまうほど。上記のようにコントロールチェンジを駆使することで、音源の良さを存分に引き出すことができるため、まさに腕の見せ所といえるだろう。

 ところで、この仕様を見て頭に浮かぶのがローランドの音源技術である「SuperNATURAL」。SD-50にSuperNATURALのロゴはないし、マニュアルなどにもその記載はないが、この技術をなんらかの形で使っているように思える。欲をいえば、3音色にとどまらず、ほかの音色も扱えるような拡張性もほしかったところだが、それこそがSonicCellということなのかもしれない。

 では、それ以外の音色は、どうなのだろうか?  やはり気になるのはピアノ音。おそらく一押し音色と思われる、プリセットの1番目のピアノ音色「Preset1 001 St.Piano 1」(sound05.wav)のプレビューを録ってみたので聴いてみてほしい。かなり表現力豊かなものに仕上がっている。一方、今っぽい音もいろいろ入っているが、「Preset3 098 Trance Synth」(sound06.wav)あたりがなかなか象徴的だと思う。

 ドラムセットのほうも1番目のスタンダードの音「Rythem 001 Standard 1」(sound07.wav)を録ってみた。これらサンプリング系のサウンドを聴いても、やはり従来のSC-55mkIIなどとはまったく違う音源に進化していることがわかるだろう。

Preset1 001 St.Piano 1

Preset3 098 Trance Synth

Rythem 001 Standard 1

sound05.wav(2.6MB)

sound06.wav(1.8MB)

sound07.wav(9.5MB)

編集部注:編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。


■ オーディオI/Fを搭載した「Mobile Studio Canvas」

 このSD-50自体は単体で発売されるわけではなく、DAWであるMUSIC CREATOR 5とセットとなった「Mobile Studio Canvas」としてセット販売されるわけだが、なぜMobileなのだろうか? 実はこれがSD-50の製品コンセプトともいえる部分なのだ。

 ご存知のとおり、いま流行りのネットブックPCはCPU処理速度が低く、ソフトシンセを駆使する最近のDTM用には適さない。とはいえ、ソフトシンセを使わず単にオーディオをレコーディングしたり再生するだけであれば、十分に使え、携帯できて便利だという利点もある。

単3電池駆動など、電源は3タイプを用意

 そこで、ソフトシンセを使わないですむようにMIDI音源を外付けにし、ついでにオーディオインターフェイス機能までも装備したのがMobile Studio Canvasなのだ。さまざまな条件下で利用できるように、電源もACアダプタ、USBバスパワー、そして単3電池6本のバッテリ駆動という3タイプが使用できる。

 オーディオインターフェイスとして見ると、入力はギターとマイクの切り替えで使うPHONEジャックが1つとマイク用のXLRのキャノンジャックが1つ。それにステレオミニでのライン入力が用意されている。一方、出力はRCAピンでのラインアウトとヘッドフォン用のステレオミニが装備されている。個人的にはヘッドフォンは標準ジャックが好きだが、SCシリーズ、SDシリーズとも基本的にはミニステレオジャック仕様なので、仕方ないところだろう。

リアの入出力端子 側面にヘッドフォン出力を装備

 オーディオインターフェイスの音質的には可もなく不可もなくといったところ。最高で24bit/44.1kHz対応といったところを見ても、ある意味オマケ的な機能なのかもしれないが、ギターやマイクのレコーディング用としてみれば、十分な機能を発揮してくれる。なお、RMAA Proでのテストを試みたが、うまく調整できなかったため、今回は掲載は見送った。


■ DAWソフト「MUSIC CREATOR 5」をバンドル

MUSIC CREATOR 5を起動。3つのMIDI入出力が表示

 従来のSD-90などの機能としては、MIDI音源とオーディオインターフェイスといったところまでだが、SD-50はそこに留まらない。バンドルソフトである「MUSIC CREATOR 5」(単体ソフトとして購入可能。オープンプライス/実売7,000円)を起動させると、MIDI入出力として、SD-50本体を表す「SD-50」、外部のMIDI入出力を表す「SD-50 MIDI」、それに「SD-50 CONTROL」という3つが存在している。

 「SD-50 CONTROL」は、SD-50をコントローラとして使うためのMIDI入出力で、これがMackie Control互換となっている。実際、設定してみたところ、SD-50に用意されているトランスポートボタンでDAWをコントロールすることができ、EXITキーを押しながらホイールを回すことで、現在のカーソル位置を自在に動かすことができた。ちなみに、Cubaseでも試した結果、うまく動作してくれた。

MUSIC CREATOR 5を起動。3つのMIDI入出力が表示 Mackie Control互換となっている

 そして、もうひとつの新しい機能が、プレーヤーとしての機能。SD-50にはPCと接続するためのUSB端子があるほか、左サイドにはUSBメモリと接続するための端子がある。ここにデータを入れたUSBメモリを挿すと、SD-50単体で演奏することができる。演奏可能なデータとしてはスタンダードMIDIファイル(Format0およびFormat1)のほか、オーディオファイルとしてMP3、WAV、AIFFのそれぞれを再生できる。

USB端子を搭載し、メモリを接続可能。MP3、WAV、AIFFをサポート

 スタンダードMIDIファイルの場合、マイナスワン演奏機能も装備しており、メニューの設定によって、1チャンネルのみ除いたり、10チャンネルのみ除く設定ができるほか、ドラムである10チャンネルだけを残してすべてをミュートしたり、1と4と5チャンネルをミュートするといったことも可能になっている。

マイナスワン演奏機能も装備。1チャンネルや10チャンネル全てを除く設定などが可能

 もちろんテンポを変更したり、キーを変更するといったことも本体だけでできるようになっていえる。MP3やWAV、AIFFのオーディオデータの場合、そこまで派手なことはできないものの、センターキャンセル機能を装備しているので、インスタントカラオケ生成といったことが可能になっている。

テンポ変更 キー変更 本体で操作可能

プレイリスト・エディタもバンドル

 なお、プレーヤーとして利用する際に再生順を設定できるプレイリスト機能も用意されており、このプレイリストをPCで編集できるプレイリスト・エディタもバンドルされている。

 以上、DTM用の新世代MIDI音源、SD-50について見てきたが、 個人的にも久しぶりに外部音源を使った気がする。やはりCPUパワーを気にすることなく、安定して動く音源というのは安心して使える。しかも本体のみで再生できる機能を装備しているため、ライブ用音源として活用できそうだ。

 今回はほとんど触れなかったが、DAWソフトであるMUSIC CREATOR 5も初心者用ソフトとしてはなかなか優秀だ。もちろん、すでにSONARなどのDAWを持っているのであれば、それとSD-50を接続することで存分に利用することができるので、必要に応じて組み合わせるといいだろう。


(2010年 3月 15日)

= 藤本健 =  リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
 著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。またAll Aboutでは、DTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。Twitterは@kenfujimoto

[Text by 藤本健]