藤本健のDigital Audio Laboratory

第614回

Android 5.0アップデートでついにUSB Audio Class対応

一歩前進も、ハイレゾはネイティブ出力できない?

 11月頭に、Androidの新バージョン、Android 5.0(Lollipop)がリリースされた。以前から、このLollipopでUSBオーディオがサポートされるようになるという情報があったので、気になっていたのだが、筆者の手元にあるNexus 10のOSをアップデートして試してみた。

Android 5.0(Lollipop)
手元のNexus 10をAndroid 5.0へアップデートして試した

 結論からいうと、しっかりと使うことができたのだが、iOSと比較するとまだまだ追いついていないのが実情のようだ。実際どんなものだったのか見ていくことにしよう。

Nexus 10もようやくアップデート。USB再生はできたが……

 当初、Nexus 10用のLollipopは11月3日に登場するという情報があったので、待ち構えていたけれど、何もないまま通り過ぎてしまった。その後11月13日になって、編集部から「既存のNexus用のアップデータが順次登場するというアナウンスがTwitterを通じてGoogleからあった」という連絡をもらったので、17日用の連載記事のネタにしようとアップデータが登場するのをひたすらチェックしていたのだ。

Android 5.0アップデートに言及したGoogleのツイート

 しかし結局、17日朝になっても登場せず。仕方ないので、あきらめて前回は急きょ方針変更でRaspberry Piネタを取り上げたのだった。「ファクトリーイメージを適用することで、強制的にLollipopへアップデートをする」という方法はあったようだが、システムが完全に書き換えられて、初期化されてしまうため、データはもちろん、アカウントの設定やインストール済みのアプリも全部消えてしまうとのこと。そうなるとバックアップやリストアなど、手続きが結構面倒そうだったので、見送ったというのが正直なところではあったのだが……。

 それからしばらくして、ようやくNexus 10用のアップデータが登場したため、それまでのAndroid 4.4.4(KitKat)から5.0へとメジャーアップデートを果たした。

17日時点ではまだアップデータが届かなかった
ようやく更新できるようになったため、4.4.4から5.0にアップデート

 USBオーディオ回りでいうと4.1(Jelly Bean)から4.4.4まで基本的に何も変わっていなかったが、改めて振り返ってみると、これはとても中途半端な対応となっていた。以前の記事「AndroidとUSBオーディオを接続する注目アプリ」でも紹介した通り、Jelly BeanではOSとしてUSBオーディオデバイスを認識することはできたが、制限がかけられていて実際には使えない状況だった。そうした中で、USB Audio Recorder PROというアプリが登場し、これを使うとアプリが直接USBオーディオデバイスへアクセスすることを可能にしていたため、再生はもちろん録音においてもハイレゾ対応での入出力が可能となっていたのだ。その後、ソニーモバイルの「Xperia Z2」以降のモデルもUSB DAC接続でWALKMANアプリからハイレゾ出力が可能になったが、ほかの多くのAndroid端末やアプリでは同様のことはできず、かなりハードルの高いものであった。

従来は、ハイレゾ入出力にはUSB Audio Recorder PROなど一部の対応アプリが必要だった

 それが今回、Lollipopで正式にUSBオーディオ対応となれば、iPadやiPhoneのようにより手軽に高音質なオーディオが楽しめるようになるのでは? と試してみたのだ。さて、どうなるのか……。

用意したOTGケーブル

 AndroidデバイスにUSBオーディオインターフェイスを接続するにははOTGケーブルというものが必要となる。OTGとはUSB On-the-Goの略で、Androidデバイス側をUSBホストとするためのもの。基本的にはiPadやiPhoneにUSBオーディオデバイスを接続する際に必須のLightning-USBカメラアダプタと同じ役割のものだが、Apple製品のように認証チップなどが必要ないため、1,000円以下で購入できる手頃なものだ。これを使ってまず接続してみたのは、先日のRaspberry Piの記事でも利用したオーディオテクニカのUSB DAC「AT-HA40USB」だ。USBケーブルでつなぐとすぐにAT-HA40USBのLEDが点灯。この状態で標準のプレーヤーアプリであるGoogle Play Musicを使って再生してみると、あっさりと音を出すことができた。

 やはりNexus 10のヘッドフォン出力から出す音と比較して圧倒的にキレイな音だし、e-onkyo Musicからダウンロードした96kHz/24bitのサウンドも再生は可能。では、それがPCで再生する場合と比較して同じ音なのかというと、なんとなく違う気もしたので、ちょっとテストを行なってみた。AT-HA40USB自体は96kHz/24bit対応のデバイスではあるのだけど、本当に96kHz/24bitの音が出ているのだろうか……と。

オーディオテクニカのUSB DAC「AT-HA40USB」
USBケーブルでつなぐとAT-HA40USBのLEDが点灯した
Google Play Musicで音が出せた

ハイレゾのネイティブ再生は5.0でも結局できない?

 試しに使ってみたのはe-onkyo musicにおいてハイレゾのサンプル音源として無料配布している「SOUVENIR part II」。96kHz/24bitのFLACのデータではあるが、Google Play Musicでもあっさりと再生できる。その音をライン出力からPCのオーディオインターフェイス、Roland QUAD-CAPTUREへとアナログ接続し、96kHz/24bitでレコーディングしてみたのだ。その結果をefu氏のオーディオ解析ソフト、WaveSpectraで表示してみた結果がこれだ。見かけ上48kHzの音まで出ているが、アナログで接続しているので、なんとも微妙なところ。40kHzあたりの飛び跳ね方を見ると、倍音が出ているのではないか…という気もする。

96kHz/24bitのFLAC「SOUVENIR part II」も、Google Play Musicで再生できた
オーディオ解析ソフトの「WaveSpectra」で表示したところ(Google Play Musicで再生)

 ここで、Androidのプレイヤーアプリとしてハイレゾもキレイに再生できるというNeutronでも結果は同じようだ。ちなみに、オリジナルのFLACをWAVにデジタルエンコードした結果を解析したものも比較のために掲載する。やはりホントにネイティブ再生できているのかは怪しい感じだ。

Neutronでの再生画面
WaveSpectraでの解析結果(Neutronで再生)
元のFLACをWAVに変換して解析した結果
光デジタル出力したところ、96kHz/24bitも、44.1kHzのファイルも48kHzで出力されているようだった

 引き続きの実験として、AT-HA40USBはS/PDIFの光デジタル出力も装備しているので、ここから出ている信号のサンプリングレートをチェックしてみた。方法は前回の記事で行なったのと同じように、Rolandのデジタルミキサー、M-16DXに突っ込んで、入ってきている信号のサンプリングレートをチェックするという方法だ。が、ここでちょっと予想外の結果が出てきた。96kHz/24bitのデータを再生した際に48kHzとして同期できて、そのままデジタルでキレイに再生できてしまっただけでなく、44.1kHzのデータを再生しても48kHzで再生されてしまうのだ。AT-HA40USB自体は44.1kHzでも48kHzでも、オリジナルのクロックにしたがって再生できるデバイスなので、どうもAndroid側が48kHzへと勝手にサンプリングレートコンバートをしてしまっているようなのだ。もしかしたら、AT-HA40USBとの相性の問題なのかもしれないが、いまいち納得のいかないところである。

 では、ほかのUSBオーディオデバイスならどうなのか?ここで前回のRaspberry Piのときにも登場させたラトックのRAL-DSDHA1と接続してみた。これは192kHz/24bitでの再生も可能なUSB Audio Class 2.0対応のデバイスであり、iPadやiPhoneであれば接続可能なもの。しかし、残念ながらOTGケーブルを使って接続しても、うまく動いてくれない。確かにサンプリングレートを示すインジケータは48kHzで点灯はするものの、再生しても音はNexus 10の本体から出てしまって、うまくいかないのだ。そこで、同じUSB Audio Class 2.0対応のオーディオインターフェイスであるPreSonusのAudioBox 44VSL、SteinbergのUR44でも接続してみたが、結果は同様で使うことができない。どうやらLollipopで対応しているのは、USB Audio Class 1.0のデバイスのみであり、48kHz専用となっているようなのだ。ノイズのないキレイな音で再生はできるけれど、ネイティブな再生ができているわけではないようだ。

iPhoneとはUSB Audio Class 2.0接続できるラトックRAL-DSDHA1などのデバイスだが、Android 5.0では動作しなかった

レコーディング機能もチェック

 次に試してみたのはレコーディング機能。いま見た通り、AudioBox 44VSLやUR-44のようなUSB Audio Class 2.0対応製品は一切使えないので、試してみたのは、イタリアIK MultimediaがAndoroid用に出したギター用のオーディオインターフェイス、iRig HD-A。これはギター入力のみを備えた機材で、OTGケーブルを使わなくても付属のケーブルだけで直接接続できるというのが特徴。ただし、対象機材となっているのはSamsung GALAXY Note 4、GALAXY Note Edge、GALAXY S5となっているため、NEXUS 10は対象外。これでうまく動作するのだろうか……と思ったがあっさり動いてしまった。

 PC用のUSBケーブルを使ってWindowsと接続しても、ドライバなしで動作したところを見ると、USB Audio Class 1.0のデバイスのようだから、Lollipopで認識したようなのだ。アプリとして、マイク録音用のHD Audio Rec、iRig Recorderをそれぞれ使ってみたが、どちらでも問題なく使うことができた。

iRig HD-A
OTGケーブルを使わなくても付属のケーブルだけで直接接続できる
HD Audio Rec
iRig Recorder

 といったところまでが、とりあえずNEXUS 10にLollipopを入れてみてのUSBオーディオデバイス対応状況だ。これを見る限り、やはりiOSには2歩も3歩も遅れているというのが実情ではあるが、とりあえずUSB Audio Class 1.0に対応したところまでは歓迎したい。ぜひ、今後はUSB Audio Class 2.0に対応したり、バッファサイズを自由に調整できるようにするなど改善していくよう期待したい。

藤本健

 リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。  著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。またブログ型ニュースサイトDTMステーションを運営するほか、All AboutではDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。Twitterは@kenfujimoto