西川善司の大画面☆マニア

第231回

59,900円のDMM 50型4K液晶は値段以外もいろいろ凄い。HDMI 4K増強!?

DMMの50型4Kディスプレイ「DME-4K50D」

 身近になってきた4Kテレビ。50型台で10万円台前半から購入でき、40型台であれば10万円未満のものもある。ただ、そうはいっても、フルHDのものよりは高価である。

 そして最近、筆者の周囲や読者からもよく聞かれるのが「テレビは見ないからチューナーレスでいい」、「そうはいっても映画やゲームを大画面で楽しみたいから40型~50型の画面サイズが欲しい」、「もちろん価格は安く」といったような声だ。

 「チューナーレス4K」ということであればPC向けモニター製品が該当し、実際、最近では魅力的な4K解像度モデルも増えてきてはいる。ただし、画面サイズは大きくても30型くらいまでで、画面サイズが30型以上になってくると、4Kテレビよりも高価になってきたりする。「なんとか50型クラスで安価なモノはないものか」。そんなユーザーの声を受けて登場してきたのがDMM.comの50インチ4Kディスプレイ「DME-4K50D」である。

 価格は59,900円と、圧倒的に安い。この製品の実力を今回の大画面☆マニアで取り上げることにしたい。ちなみに、同系シリーズの65型モデルは159,900円と、意外と高額商品になっている。

設置性チェック~軽量で狭額縁。低消費電力

 液晶パネルを光沢樹脂製の額縁で覆っただけのシンプルなデザインで、印象としてはオフィス向けのPC向けモニター製品をそのまま50インチに拡大したような感じだ。著名メーカー製テレビ製品のような「見た目の色気」はないが、逆になんというか「好き嫌いの範疇外にある工業製品」といった印象だ。

飾りっ気のないシンプルな見た目
側面は取り立てて薄型でもないが分厚いと言うこともない

 額縁は幅の狭い先進デザインで、左右辺は約13mm、上辺は約11mm、下辺も約23mmだ。いわゆる狭額縁デザインといって差し支えないだろう。

 サイズはスタンド込みで1,125×285×695mm(幅×奥行き×高さ)。ディスプレイのみだと1,125×65×655mm(同)。重量は約13.1kg(スタンド込み)/約12.8kg(ディスプレイ部)。重さは、同画面サイズのテレビよりもだいぶ軽い。今回の設置にあたっては筆者だけでディスプレイ部を2階に上げ、スタンドの組み付けも行なえた。

スタンドはプラスチック製で、ビス止めで画面下の左右端付近に組み付ける方式。設置安定性はまずまずといったところ
背面側には200mm幅のVESAマウント用ネジ穴も開いているので市販の壁掛けマウントや設置アーム取り付けも可能だ

 スペック表には「ノングレア」と記載されているが実際の表示面はハーフグレアといった感じで、暗い映像の表示時には部屋の情景はそこそこ映り込む。相対する場所に窓や照明器具が来ることは避けたい。

 テレビではないが、出力7W+7Wのステレオスピーカーを本体下辺に備えている。音質は、ボーカル領域の中音域が籠もりがちで、低音がパワー不足、高音も抜けが芳しくない。PC向けモニターの内蔵スピーカーよりはマシだが、映画やゲーム、音楽を楽しむのであれば別途スピーカーを用意したい。

 また標準設定では「聴き味」がかなりモノラルチックに聞こえてしまうが、これは「音声設定」-「サラウンド」を「入」とすることである程度改善される。ただ、サラウンドを有効化すると若干リバーブがかかる。この残響特性が気にならなければ、ステレオ感が増強されるので利用してもいいと思う。

 消費電力は定格130W。これは同画面サイズの液晶テレビと比較すると大部小さい。チューナーなどがなく、映像エンジンなどもシンプルなために、ここまで低く抑えられているのだろう。

接続性チェック~“増強”設定で18Gbps HDMIにも対応!

 接続端子は、正面向かって左側側面と左側裏面に備えている。HDMI入力は4系統。背面側がHDMI1、2で側面側がHDMI3、4という割り当てで、その全てがHDMI 2.0とHDCP 2.2に対応。HDMI CECやARCには対応しない。

側面側の接続端子部
背面側の接続端子部

 留意したいのは、工場出荷状態では本機はHDMI2.0 PROFILE Bまでの対応となる点。HDMI 2.0のフルスペック仕様の18Gbpsに対応させるためには、メニューの「各種設定」「HDMI 4K」のところの「増強」に設定する必要がある。

最初は何の設定かと思ったがHDMIレシーバを18Gbps対応にする設定だった「HDMI 4K:増強」設定。わかりにくい(笑)

 HDMI2.0 PROFILE Bのままだと、HDMI1.4までと同じ伝送速度10.2Gbpsまでの対応までとなり、60Hz(60fps)の映像においては、YUV=4:2:0まで、輝度解像度は3,840×2,160ピクセルのリアル4K解像度だが、色解像度は4分の1のフルHD(1,920×1,080ピクセル)相当までとなってしまう。

 これだけ重要な設定のための記述が取扱説明書には一切ないことにも驚かされる。もしかすると相当数のユーザーが10.2Gbpsのまま本機を活用しているかもしれない。

 「HDMI 4K=増強」と設定したあと、筆者のGeForce GTX 1080(18Gbps HDMI対応)搭載PCで接続実験結果が下記になる

信号リフレッシュレートビット深度
4K RGB60Hz8bit
4K YUV44460Hz8bit
4K YUV42260Hz8/10/12bit
4K YUV42060Hz8bit
4K RGB30Hz8bit
4K YUV44430Hz8bit
4K YUV42230Hz8/10/12bit
4K YUV42030Hz×

 価格を考えればまずまずの対応結果だと思う。

 Deep ColorはYUV422の時に限り8bitの他に10bit、12bitが選べる。また「HDMI 4K=ノーマル」設定時のHDMI2.0 PROFILE B設定だと30Hz出力時に限り、YUV422、YUV420の時に、8bitの他に10bit、12bitが映せていた。

PS4 ProでもちゃんとRGBで4K/60Hz接続ができた。HDR非対応が惜しい

 また、DME-4K50DはHDR(High Dynamic Range)に対応していない。ここ最近、4Kの魅力はHDRとセットになって語られることが多くなってきただけに、この点は惜しまれる。必要HDMI帯域的にも対応は問題ないので次期モデルでは対応をお願いしたいものだ。

 オーバースキャンの設定無効化は「映像設定」メニュー内にそのままズバリの「オーバースキャン」設定で行なえる。

 HDMI階調レベルの設定は見当たらない。

 テストの結果わかったのは、DME-4K50DにはHDMI階調の自動認識はなく、固定仕様だと言うこと。入力させる映像信号形式が色差(YUV)信号だとHDMI階調レベルはリミテッド(16-235)に固定化される。逆にRGB信号ではフル(0-255)で固定化する仕様だ。この振る舞いは意外に厄介なのだが、DME-4K50Dの振る舞いをユーザーが把握していればなんとか対処はできる。

 例えばPCは基本RGB/フルでいいだろう。ゲーム機、たとえばPS3/PS4では基本方針としてはゲームプレイ時はRGB/フルと設定し、映像鑑賞時にはYUV/リミテッドと設定すればいいだろう。PS4 ProのHDR出力はYUVが選択されるので厄介な気もするが、幸い(?)、DME-4K50DはHDR非対応なので、前述の基本方針で大方問題はないはずである。まぁ、このあたりの部分もHDR対応の暁にはセットで改善をして欲しい部分ではある。

 アナログビデオ入力にも対応し、Y/Pb/Prのコンポーネントビデオ入力とコンポジットビデオ入力の両方に対応する。といっても兼用の排他仕様で、緑(Y)端子のみに接続したときだけコンポジットビデオ入力として機能する。古めのDVD機器やゲーム機と接続でき、この端子のペアとなるアナログ音声入力も装備。ヘッドフォン端子、光デジタル出力端子も備えている。

 側面にあるUSB端子はUSBメモリなどのストレージデバイスの接続に対応している。ストレージクラスとして扱える機種であればデジカメやビデオカメラも接続可能だろう。

 USBストレージ経由で再生できるのは、JPG/PNGなどの画像ファイル、MP3/WAVなどの音声ファイル、MP4/MOV/AVI/FLVなどの動画ファイルなどで、意外にも対応フォーマットは幅広い。実際にUSBメモリを使って再生テストしたところ、再生互換性は概ね良好だった。日本語のファイル名も正しく表示され、画像、音声、動画といった各メディアファイルごとにサムネイル表示も行なえるなど、ビューワーの機能もなかなか優秀だ。動画はDivXやWMVには対応していないが、主流のMPEG-4 AVCに対応しているので不満はない。

音声ビューワーでは、音像の変化に合わせてビジュアライザーが動く

 写真はスライドショーや拡大縮小回転操作にも対応していたし、動画は特定箇所の反復再生にも対応していることから、PCレスなプレゼンテーション用途にも十分使える。

画像ビューワー。閲覧中の写真の拡大縮小までできる

操作性チェック~リモコンはテレビ用を流用。遅延は約1.0フレーム。

 リモコンは、見慣れたテレビのリモコン的なデザインを踏襲しながらもやや小振りなサイズ感。よく見るとチャンネルの上下操作ボタンやチャンネル切り換え用の数字ボタンがあるが、これらは押してもDME-4K50Dでは反応しない。本機のリモコンは、どうやらテレビ用のリモコンを流用しているようで、[TV]ボタン、ブラウザを起動するための[地球マーク]ボタンなど、機能しないボタンが結構ある。まあコスト削減の一端といったところか。

テレビ用リモコンを流用。押しても反応しないボタンも多い。
リモコン受光部は本体下部に実装されている。

 最上部の再生制御ボタンはHDMI-CEC未対応の本機では無関係のように思えるが、前述したUSBストレージ内コンテンツの再生制御に使うことができた。また[REPEAT]ボタンなどは再生コンテンツの反復制御にも使えた。

基本操作は本体正面左側の側面にある操作パネルからも行なえる

 電源オン操作から実際にHDMI入力の映像が表示されるまでの所要時間は約15.5秒。あまり早くはない。

 入力切換は、[SOURCE]ボタンを押して入力切換メニューを出して上下カーソルボタンを押して選択するか、[SOURCE]ボタンの連続押しで順送り式に入力選択する。選択した入力切換先にカーソルを合わせるだけではダメで、その後[ENTER]を押さなければ切換られないという独特な操作系であった。

 HDMI→HDMIの切換所要時間は約2.5秒。こちらは最近では標準的な早さと言ったところ。USBストレージへの切換はリモコン上の[USB]ボタンでダイレクトに切り換えられ、所要時間は少し速い約2.0秒程度。

 前述したように本製品は、取扱説明書の説明が不足しており、設定メニューの項目リストが紹介されているものの、各機能の解説が全くないのだ。Webサイト上でのオンラインマニュアルの整備もないので、ユーザーは使いこなしに苦労する。

 前出の「HDMI 4K:増強」などは、知っていると知っていないとでは製品の評価を変えてしまうほどクリティカルなものなワケだが、これ以外にも知っておいた方がよいと思うDME-4K50Dの設定項目を以下に紹介しておく。ちなみに、これらも取扱説明書にも公式サイトにも記載のないものである(笑)。

 「映像設定」-「その他の映像設定」-「HDMIモード」の設定は「グラフィック」と「ビデオ」の設定が選べるのだが、DMMに問い合わせたところ「オーバースキャンのオン/オフの切換です」との返答。しかし、「オーバースキャン」の設定は別メニューにあるし、設定を変えても色や階調も変わらないので何の設定がよくわからなかったのだが、実験をしてわかったのは、どうやら入力解像度が4K未満になると意味をなす設定のようだ。

「映像設定」。「画質モード」の調整ができるのは「ユーザーモード」のみ

 4K解像度未満の時、この設定を「グラフィック」と設定するとアスペクトモード(「画面サイズ切換」)の設定を「ドットバイドット」か「フル」の設定が行なえるようになる。「ドットバイドット」設定は、たとえば入力映像がフルHD(1,920×1,080ピクセル)解像度の場合はDME-4K50Dの液晶パネルの中央のフルHD領域に実サイズで表示となる。「フル」はスケーラーを通して全画面表示となる。

「HDMIモード」は「グラフィック」と「ビデオ」が選べるがパッとみ効果の違いが分からない。実はこの設定は……
4K未満解像度入力時に画面中央に「ドットバイドット」表示させることができるのが「グラフィック」設定

 「ビデオ」設定は、720×576ピクセル(PAL:576p)、720×480ピクセル(480p)などのSD解像度入力時に「画面サイズ切換」において「ノーマル」「ワイド」「ズーム」「映画」が選べるようになる。「ノーマル」はアスペクト4:3維持で拡大表示、「ワイド」はパネル全域拡大表示、「ズーム」は4:3アスペクト内のレターボックス表示コンテンツの切り出し拡大表示、「映画」は前出「ズーム」の字幕表示領域も確保して表示するバリエーションモードになる。「ビデオ」設定時は「ノイズ低減」「ダイナミックコントラスト」といった画調パラメータもいじれるようになる。「ノイズ低減」はボカし効果に相当し、「ダイナミックコントラスト」は明暗差強調効果に相当するが、アナログ映像コンテンツ以外には効果は薄い。

 まあ、アナログビデオ入力を活用しない場合、ここは「グラフィック」設定固定でもいいだろう。

 さて、ゲーム用途では重要になる遅延時間についても計測してみた。

 DME-4K50Dは120Hz倍速駆動パネル採用とのことなので、表示メカニズム的に60Hz(60fps)映像表示に際して理論値で0.5フレーム遅延してしまう。

 今回も公称遅延値約3ms、60Hz時0.2フレーム遅延の東芝REGZA「26ZP2」との比較計測を行なったところ、遅延時間は約16msであった。これは約1フレームの遅延という事になる。120Hzパネルであれば、理論値0.5フレームは免れないので、その上で約1フレーム遅延はまずまずといったところか。

画質チェック~ハマルと綺麗だが外れるとややノイジーな表示になる

 液晶パネルは50型/3,840×2,160ドット、広視野角タイプのマルチドメイン垂直配向(MVA)型液晶パネルで、ネイティブコントラストは4,000:1だ。ノーマリーブラック特性からくる黒の締まりはいい。ちなみに、上位機種となる65型「DME-4K65D」はIPS液晶パネルを採用するが、こちらはネイティブコントラストは1,200:1。ネイティブコントラスト性能は、一応50型のほうが65型より3倍以上優れていることになる。

画素の写真

 VA型液晶と言うことで視野角について心配される人もいるかも知れない。

 ということてちょっとしたテストをやってみた。

 人間の視覚メカニズムが最も敏感だといわれる「同じ人の顔の写真」を画面の左右と中央に表示させて画面中央に相対する位置に座り、視距離1mと視距離50cmで肌色の見え方の違いを観察してみたが、視距離1mだとほとんど違いが分からない。しかし視距離50cmだと中央の表示に対して左右側に表示させた顔の肌色の彩度がわずかに下がる(色味が薄くなる)。VA型液晶の40型サイズ以下で同じテストをやってもほとんど分からないのだが、やはり50型くらいになると、モニター的に視距離50cmで使うとこうした問題が出てくるようだ。逆にテレビ的な視距離であれば視野角の問題は気にならない。

 ユニフォミティ(輝度均一性)はまずまずといったところ。単色テストパターンを表示させると画面外周がやや暗いが、通常の映像表示で気になるほどではない。

 さらに一般的なテスト画像で発色や階調をチェックしてみた。

 発色は純色の青がやや淡く、赤が朱色に寄っている印象を受けるが、全体的なバランスは悪くない。sRGB色空間の中でバランスをとって画作りをしている感じで、テレビ画質を見慣れていると味気ない印象を抱くかも知れない。良くも悪くもパソコン向けの液晶モニターっぽい発色だ。明るい肌色も過度な赤味や黄味もなく自然な発色だ。

色温度:低
色温度:中
色温度:高

 前述したような「HDMI階調レベルが固定仕様」というクセは気になるが、ちゃんと合わせてやれば正しく破綻のない階調表現をしてくれる。VA液晶の特性もあって黒の締まりもまずまず。エッジ型バックライトなので「黒が漆黒」ということはないのだが、黒から立ち上がる暗色もちゃんと色味があり頑張っている感じはある。

 続いて動画の視聴評価をしてみた。

 まずはUltra HD Blu-ray(UHD BD)のリアル4Kコンテンツから。プレーヤーはパナソニック「DMP-UB90」を使用。DME-4K50Dは、当然HDRの再生はできないのでダイナミックレンジ変換がなされての表示となるが、DMP-UB90がUHD BDの4K/YUV420コンテンツをクロマアップサンプリングし、4K/YUV422出力した映像も正常に表示できているようだ。

 さて、その品質だが幾つかのUHD BDを見てみたところ「ある傾向」が分かってきた。

 まず、それほど暗部を含まない明るめのビットレートの高い映像、それこそベースバンド映像に近いものはかなり美しく表示してくれる。実写系、CG映画系問わず、明るいシーンではリアル4K解像感がちゃんと感じられる。

 しかし、実写系で暗いシーンになると、途端にノイジーな「ザラザラ」とした見映えになる。実写系映画では撮影時に入るCMOSセンサーの時間方向のランダムノイズだったり、フィルム撮影の場合はフィルムグレインが時間方向のノイズとして入ってくるわけだが、それらがかなり強調されて見えてしまうのだ。また、ややビットレートが低くなると、暗めの映像でオブジェクトの輪郭付近のモスキートノイズも強調されてしまう。

 この傾向は、今回の評価で視聴した実写系映画の「バットマンvsスーパーマン」「ヒットマン」で確認された。なお、ここで言う「暗めの映像」というのは夜景とかのことではなく、日中の室内シーンのような、やや明るめなものも含む。

 ということはこうした中暗部表現全般が苦手なのかと思いきや、「I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE」のようなCG映画を見てみたところ、そうした現象は確認されないのだ。CG映画だと似たような明るさ/暗さのシーンを見てもザラザラ感はなく安定した見映えになっている。

 あくまで筆者の推測だが、どうやら中暗部以下の色値計算で誤差が拡大しているようだ。

 テレビや液晶ディスプレイでは、表示するデジタル映像を構成する画素値(ピクセルカラー)から、実際に表示する液晶パネル上の画素を駆動するためのパラメータに変換するメカニズムが不可欠だ。これは一般的には映像エンジンが担当する。

 映像パネルは各輝度レベルに応じて発色特性が変わってくるクセがあるため、これを吸収する処理が必要なのだ。

 いま「白」を表示するケースを考えるとすると、たとえば高輝度の明るい白は白色のLEDバックライトの特性で赤が弱いのでこれに合わせて緑青を抑えめに駆動したりする必要がある。逆に低輝度な暗い白は白色LEDの強い青を抑え込むために赤緑を強めに駆動する…… といった調整をする場合もある。

 赤緑青で表現されるフルカラー色域を平面にとり、縦軸を明るい暗いの輝度軸にとった立体領域をカラーボリュームというが、ディスプレイ機器ではデジタル画像のピクセル値としてのカラーボリュームと、映像パネルの発色特性としてのカラーボリュームの対応を変換する必要があるのだ。

 どうもDME-4K50Dは、中暗部以下でこの計算の誤差が多い気がする。実写系の映像は、隣接するピクセル同士が前述したようないくつのノイズ要因の影響で、本来発色したい色値からもともとずれている場合がある。カラーボリューム変換の誤差でこのズレが拡大されている印象なのだ。

 では、なぜCG映画ではこうした現象が起きないかといえば、CGでは隣接するピクセル同士が完璧に近い色同士になっているため、カラーボリューム変換で誤差があったとしても、その誤差付きの色自体が隣接するもの同士で近くなるので見た目として顕在化しないのだろう。

映像全体(参考)
REGZA 55Z700Xでの表示。モニターモードでの表示なので、映像エンジンの高画質化処理の介入が最も少ない状態。映像も画面解像度も4K
DME-4K50Dの「ノーマル」画質モードでの表示。映像も画面解像度も4K。実写系映像の中暗部の描写はこのようにざらつき感が強くなる

 続いて、フルHD解像度の通常ブルーレイで、「ダークナイト」の「ちょい暗」気味の裁判シーンを見てみたが同じ傾向でノイズのざらつき感がすごい。同じ映像を私物の東芝のREGZA 55Z700Xで映してみたところ、ザラザラ感がDME-4K50Dとは全然違う(あまり知覚されない)。

 もしやと思いアニメ映画「星を追う子ども」の屋内シーンなどを見てみたら、やはりこちらはノイズのざらざら感はなし。アニメもやはりCGと同じで画素単位のランダムノイズはないため、カラーボリューム変換で誤差があったとしてもそれが知覚されることはないのだろう。

 この仮説を立てた後、静止画でも検証してみたのだが、「暗めの映像」でなおかつ「色味を持ったノイズ」要素を持つものは、同様の表示特性になることを確認した。

 まとめると「明るい映像は実写系でも美しい」「暗い映像の実写系はかなりノイジーに表示されてしまう」「CGやアニメだとこうした特性は表れない」といったところだろうか。

 続いて、パソコンのデスクトップ画面、アプリ画面、あるいはゲーム画面などを映してみたが、これは映像特性的に「CGやアニメ」に近いためか、ノイジーな表示にはならなかった。

 入力解像度が4K未満の時、画面全体にフル表示させると、スケーリング処理を伴う表示となるが、テレビ製品で言うところの超解像処理などは行なわず、ごく基本的なフィルタ処理のみの表示となる。なので、例えばフルHD解像度の映像を全画面表示してた場合、こうした「/」フォントは美しく滑らかな斜め線にはならず、やや階段状のドット表現が残った表示になる。アップスケールの品質にはあまり期待せず、4Kのリアル解像度で活用することを主体としたほうがいいと感じる。

 それと、ノートPCなどに接続し、4K未満の解像度に設定したときに、低いリフレッシュレートでしか映らなくなってしまったことがあったが、この時は前述した「HDMI 4K」をあえて「ノーマル」と設定したらこの問題が解決した。設定した画面モードが「映る/映らない」問題が発生したときはこの設定をいじってみるといい。

プリセット画調モードのインプレッション

ノーマル

基準となる画調。階調のバランスもとれていて万能性が高い。映画を見るならば「映画」よりもこのモードで色温度を「低」にしたほうがいい

スーパー

暗部階調を潰し気味明部階調を飛ばし気味にして明暗差をはっきりさせた画調。肌は赤味をもつ。

映画

暗室で見る事を想定したているためか、全体的に輝度を落としている。やや暗部階調は絞り気味。

いろいろ足りてないが、「分かってる人」にはコスパは高い

 「4K・50型で5万円台」というキャッチコピーから想像していたよりはよくできた製品だった。

 まさか、18Gbps HDMIに対応して4K/60HzをYUV444/RGB888で出せるとは思わなかった。液晶モニターとしてはコストパフォーマンスは高いと思う。

 ただ、価格相応な荒削りな部分があることも事実。

 1つ目はHDRに未対応な点。これは、ダイナミックコントラストへ反映する程度の簡易的でもいいので、対応がなされると製品の評価が高まるだろう。

 2つ目は、中暗部のノイジーなざらつきの問題。これは、もう少し、液晶パネルの特性に合わせた映像処理の最適化を進めるだけで、なんとかできるはずだ。

 3つ目は、取扱説明書の問題。今のままでは、あまりにも不親切だ。「HDMI 4K:増強」設定は知っているか知ってないかでDME-4K50Dの評価自体も変わるだけに、せめてオンラインマニュアルでの対応はしたほうがいいと思う。

 4つ目は、要望というか半分質問に近いことなのだが、DME-4K50Dは、Webサイト上で「120Hz倍速駆動」「補間フレーム挿入機能がある」という風に説明されているのだが、それにまつわる設定がメニュー上にないこと、そして補間フレーム挿入のテストの範囲では、そうした機能が働いている形跡が見当たらなかった。240Hz撮影しても黒挿入やバックライトスキャンの形跡が認められないので、おそらく、オーバードライブ駆動付きで60fps映像の二度振りを行なっているだけと思われる。ここは、正確に機能を説明しないとユーザーに誤解を招きかねない。

 というわけで、そうした荒削りな部分に納得できていれば、DME-4K50Dは悪くない製品だと思う。高価な製品を上回る機能や性能はないが、「この価格」に見合うものは身に付けていると感じる。逆に言えば、使う側が「その機能や性能」を活かせるのであれば、高い評価が与えられるのではないだろうか。

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トライゼット西川善司

大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。大画面マニアで映画マニア。3Dグラフィックスのアーキテクチャや3Dゲームのテクノロジーを常に追い続け、映像機器については技術視点から高画質の秘密を読み解く。3D立体視支持者。ブログはこちら