シンプルWi-Fiで連携する“スマート”VIERA/DIGA

-ジャンプリンク+もっとTVでスマートAV


スマートDIGA/VIERA

 パナソニックは、薄型テレビ「VIERA」とBlu-rayレコーダ「DIGA」を一新した。VIERAはVT5、GT5、DT5、ET5、E5シリーズの5シリーズ16機種を3月9日より順次発売、DIGAは2月20日より6モデルを発売する。

 VIERAはプラズマ2シリーズや、デザイン一新した液晶新シリーズDT5、パッシブタイプの3Dグラスを採用したET5などをラインナップ。サイズも32型~60型まで用意し、2012年の中核ラインといえる製品構成をそろえてきた。また、DIGAもネットワーク配信の同時動作制限解消や録画機能の強化などを図っている。

 この新VIERA/DIGAでパナソニックが訴求しているのが「スマート」という言葉。ブランドもVIERAは全モデルが「スマートVIERA」に、DIGAも上位3モデルが「スマートDIGA」となるなど、「スマートAVライフ」のための機器と位置づける。

 年初のCESでも、テレビ各社がネットワークサービスやスマートフォンとの連携などを「スマートTV」としてアピールしていたが、それらとパナソニックの考えるスマートは何が違うのだろうか。実機デモを交えながら、パナソニックに聞いた。

スマートVIERAスマートDIGAスマートVIERA/DIGAラインナップ


■ パナソニックの“スマートAV”とは?

 今回のスマートVIERA/DIGAの何が“スマート”なのか? パナソニックによれば、スマートを銘打つ必須条件は、機能的には、無線LANと放送局主体の新VODサービス「もっとTV」に対応している2点とのこと。

 VIERAは16製品すべてが“スマート”、そしてDIGAはDMR-BZT920/BZT820/BZT720の3モデルがスマートDIGA、残りの3モデル(無線LAN非搭載)はブルーレイDIGAというサブブランドになる。

テレビを能動的なディスプレイに

 パナソニックが新製品で提案するのは「スマートAVライフ」。これまでのDIGA/VIERAでもVIERA Linkによるテレビ/レコーダ連携を初め、センサーカメラ、FAX、ドアホンなどさまざまな機器の連携を進めてきた。

 そして、今後の方向性を「テレビをエンターテインメントと生活情報の窓口」と定義。ネットワークの対応によりテレビの役割を“能動的”なディスプレイにしていくことを目指すという。

 テレビを見るという行為自体は受動的なものだが、録画によるタイムシフトが定着した現在では、自分が選択した番組を録画して見るという点において“能動的”な行為になったともいえる。タイムシフトにより「時間からのストレスフリー」を実現できたが、さらに録画していない番組をVODで楽しめるという点で「もっとTV」に対応。時間からのストレスフリーという方向を加速する。

 そして、「場所からのストレスフリー」も追及。家庭内の場所の制約を省くものとしてDTCP-IP/DLNAによる家庭内映像配信「お部屋ジャンプリンク」を提案。これらにより実現され、いつでも(タイムシフト)、どこでも(プレイスシフト)番組を楽しめるという環境を「スマートAVライフ」の第1弾とし、新VIERA/DIGAで訴求する。

タイムシフトに加えて新たな「シフト」が必要タイムシフト+プレイスシフトがスマートAVライフ第1弾Wi-Fiでプレイスシフトを加速。もっとTVがタイムシフトを拡張
Wi-FiがスマートAVの鍵を握る。家中「いつでも」、「どこでも」を実現へ

 “どこでも”のための、キーテクノロジーが“Wi-Fi”。スマートDIGAでは、無線LANで対応VIERAと直接接続できる「シンプルWi-Fi」機能を搭載。DIGAをアクセスポイントとし、簡単にVIERA/DIGAのネットワーク連携を可能にするもので、これにより、無線LANルータを介さずに「お部屋ジャンプリンク(DLNA)」でDIGAの録画番組をVIERAに配信したり、VIERAの録画番組をDIGAにネットワークでダビングすることも可能になる。DIGA側には最大8台までの機器を無線LANクライアントとして登録できる。

 いままでは、無線LANルータの設定などが必要だった「お部屋ジャンプリンク」が、シンプルWi-Fiにより、さらに簡単に実現するというのが最大のポイントだ。

 もちろんAV機器やネットワークに詳しい人にとっては、ネットワーク経由のDIGA/VIERA連携はすでに実現されていたことで、目新しさはないと感じるかもしれない。しかし、実際のユーザーはまだ少なく、店頭でも無線LANとのセット販売なども難しかったという。そこで“VIERA/DIGAを用意するだけ”で、お部屋ジャンプリンクを利用可能にしようというのがシンプルWi-Fiの狙いだ。


■ DIGAはお部屋ジャンプリンクの同時動作制限を大幅緩和

DMR-BZT920DMR-BZT720

 上位モデルのDMR-BZT920/BZT820/BZT720は、無線LANで対応VIERAと直接接続できるシンプルWi-Fi機能を搭載したスマートDIGAで、無線LANルータを介さずに「お部屋ジャンプリンク(DLNA)」でVIERAなどと連携できる。

 全モデル別売のUSB HDDにも対応し、最大8台まで登録可能。操作メニューも新たに「かんたんスタートメニュー」を搭載したほか、録画機能も強化。ネットワーク機能のビエラ・コネクトでは、民放キー局らが中心となり4月にスタート予定のVODサービス「もっとTV」にも対応する。ここではスマートDIGAの新機能を中心に紹介する。


型番HDDチューナシンプル
WiFi
Qi店頭予想価格
DMR-BZT9202TB322万円前後
DMR-BZT8201TB-13万円前後
DMR-BZT720500GB10万円前後
DMR-BWT6201TB2-10万円前後
DMR-BWT520500GB85,000円前後
DMR-BRT22016万円前後

同時動作制限の緩和

 トリプルチューナ搭載のスマートDIGAにおいては、従来から大幅に同時動作制限を解消した。従来モデルでも3チューナ搭載であったが、前世代では「お部屋ジャンプリンク」で録画番組/放送番組を転送する場合には制限があり、例えばBlu-ray再生時には「録画番組」のお部屋ジャンプリンク配信はできなかった。

 しかし、新モデルでは、BDビデオ再生中(Blu-ray 3Dを含む)でも、他のお部屋ジャンプリンク機器に配信できるほか、BDビデオ再生中かつ3番組同時録画中でも配信可能となった。

 DIGAで受信した映像をほぼリアルタイムでVIERAなどに伝送する「放送転送」の同時動作制限も緩和。従来はAVC録画を行なうと、放送転送できなかったが、新モデルでは2番組AVC同時録画中でも放送転送できる。そのため、配信元となるDIGAの利用状況をほとんど考慮することなく、家庭内のさまざまな機器で録画番組を楽しめるようになった。ただし、複数のクライアントへの同時配信には対応していない。

 また、新VIERAだけでなく、フルセグ/防水対応の10型ポータブルVIERA「SV-ME5000」などの新製品も投入し、お部屋ジャンプリンクの世界を広げていく。

DIGAからお部屋ジャンプリンクで別室のVIERAに番組伝送。放送転送にも対応シンプルWi-Fiでルータ無しで無線LAN接続10型のフルセグポータブルVIERA「SV-ME5000」
「家じゅう」のDIGAの録画番組を一覧表示

 既にDIGAを持っているユーザーにうれしい新機能が「まとめて再生」だ。これはホームネットワーク内にある、2008年秋モデル以降のお部屋ジャンプリンク対応DIGAの番組を“まとめて”1台のDIGAで表示するもの。

 これまでも、各DIGA内の番組を連携して再生することはできた。ただし、「寝室のDIGA」、「リビング」など、サーバーとなるDIGAを選択し、録画リストを表示し、再生するという仕組みだった。

 スマートDIGAでは、録画リストの左側に「まとめて」という項目を用意。ここではネットワーク上の各DIGAの録画番組を一覧表示できるため、複数のDIGAを使っていても再生する機器を1台にまとめることができる。運用次第で使い道は広がりそうだ。


家じゅう録画一覧の説明家庭内のDIGAの録画番組を一台のDIGAで一覧表示

・シーン検索に対応

 もちろん、インターネット接続があればさらに充実したサービスが利用できる。そのひとつが、「ミモーラ(Memora)」を使った録画番組検索/シーン頭出しだ。

 ミモーラは、月額315円の有料サービスで、録画番組を出演者やシーンごとに分割し、検索や頭出しができるというWebサービス。これまではPCやスマートフォンで操作するという形だったが、新DIGAでは、DIGAのインターフェイスにこの機能を追加し、番組を選択した際に「シーン一覧」を表示。ミモーラで分割されたシーンを確認できるようになった。

 これにより、ミモーラの会員は、番組の任意のシーンやCMなどを選び、頭だし再生ができる。例えば、野球の試合であれば、バッターやイニングごとにシーン分割されているため、シーン一覧で任意のイニングのバッターの打席を選択し、頭出し再生、といったことが可能だ。なおミモーラが利用可能な地域は関東/関西で、NHKと主要キー局の番組のみが対象。また、番組のシーン分割が利用可能になるのは、放送終了から数時間後となる。

 なお、「シーン一覧」はミモーラの会員でなくても見られるが、「頭だし」はミモーラ有料会員のみが利用可能となる。非会員が任意のシーンを選んで再生開始すると、番組の冒頭から再生される。

シーン一覧シーン一覧(野球)シーン一覧/一発再生の説明

・録画モードも21種類選択可能に

まとめて予約

 レコーダの本分ともいえる録画機能も強化。新機能としては、「まとめて予約」を搭載した。これは、「プロ野球全試合」など、シリーズ番組や番組グループを選んで最大128番組までを丸ごと自動で録画予約できるもので、Roviによる番組情報と、放送局が提供する情報を利用。例えば野球では「阪神戦」といった絞込みや、「競馬」などの関連番組をキーワード入力無しに選択し、関連番組の一括録画予約ができる。

 また、MPEG-4 AVC/H.264録画時の録画モードも大幅に増やし、従来の6から21まで増えた。従来はHEモード、HLモードといった名称だったが、こうした呼称を廃止。DRモード以外は、「3倍」、「5倍」、「15倍」が選択でき、「3、5、15倍の長時間録画ができること」をわかりやすく表示。

 初期状態ではこの3種類だが、設定画面で1.5~15倍まで選択可能になった。これにより、ディスクへのダビング時にディスク残量に合わせた細かいモード選択ができるなど、用途に合わせたビットレート選択が可能になった。

録画モード21のビットレートを用意

 最上位モデルの「DMR-BZT920」は、天板に無接点充電規格「Qi」(チー)対応の充電部を装備。天板にQi対応スマートフォンやバッテリを置くと、天板のサークルが自動で検知し、充電を開始する。なお「エコ待機」、「シアターモード」時はQi使用はできない。

 また、充電中にスマートフォンで撮影した写真のDIGAへの自動取込にも対応予定で、後日Androidスマートフォン用アプリを公開する。

DMR-BZT920は天板にQiの充電機能を搭載Qiの概要
動くアルバムメーカーでMP4対応も

 写真共有サービスの「PicMate」も強化。対応のDIGA間で写真を送受信できるほか、新たにMP4動画の共有にも対応した。また、動くアルバムメーカーで作成したアルバムをMP4に変換し、思い出アルバムを共有できる。



■ スマートVIERAもネットワーク機能を強化

TH-P50VT5

 新VIERAは、VT5/GT5/DT5シリーズが無線LAN内蔵、ET5/E5シリーズもアダプタの追加により無線LANに対応する。さらに、全モデルが「もっとTV」に対応する。

 VT5/GT5シリーズはプラズマ、DT5/ET5/E5シリーズは液晶となり、E5シリーズ以外は3Dに対応。ET5シリーズはパナソニック初のパッシブ型の3Dを採用する。「3Dの画質という点では引き続きアクティブシャッターグラス方式を推していくが、手軽な3Dとして選択していただけるラインナップとした」とのこと。

 なお、米国で先行発表された「VT50シリーズ」は1枚ガラスをイメージした先進的なデザインだったが、国内投入されるVT5シリーズはベゼルとパネルの段差を残した比較的オーソドックスなデザインとなっている。

TH-L55DT5TH-P55GT5

 製品の詳細は各記事を参照してほしいが、ここではネットワーク機能を重点的に紹介する。

シリーズ名VT5GT5DT5ET5E5
サイズ60/55/50型60/55/50/42型55/47/42型55/47/42/
37/32型
42型
タイププラズマ液晶
3Dアクティブパッシブ-
もっとTV
USB HDD
録画
AVC長時間
録画
-
お部屋ジャンプ
リンクサーバー
(録画転送)
お部屋ジャンプ
リンクサーバー
(放送転送)
-

・もっとTVに初対応

テレビ朝日のもっとTVページ

 最大のトピックといえるのが、「もっとTV」の対応だ。

 もっとTVは、民放キー局5局と電通が共同で推進するテレビ向けVODサービス。日テレオンデマンド、テレ朝動画、TBSオンデマンド、テレビ東京オンデマンド、フジテレビOnDemandの民放5局のサービスに加え、NHKオンデマンドも参加予定となっている。

 リモコンのボタンを押すだけで、視聴中のテレビ局のVODサービスにアクセスでき、視聴中の番組の過去の放送や、関連番組などのリストを表示。簡単な操作で購入/視聴できる。もっとTV対応テレビの第1弾が今回のスマートVIERAとなる。


トリックプレイにも対応

 テレビ専用のユーザーインターフェイスを用意し、放送視聴中にリモコンの専用ボタンを押すと、その局のVOD画面に移動。地上波放送を子画面に残した状態で、各放送局のVODコンテンツが選択できる。この画面には視聴中の番組の過去の放送分や、出演者など関連する番組をレコメンドし、見たい番組にすぐにアクセスできる。また、ジャンル検索やワード検索、ランキング機能なども用意する。

 局や番組によっては、「全話パック」などの提供も予定。価格は放送局が設定するため、コンテンツによって異なるという。課金方法はクレジットカードのほか、携帯電話での決済に対応予定。

 今回VIERAで開発中のもっとTVを体験したが、リモコンでの操作もシンプルで、30秒スキップなどのトリックプレイのレスポンスもなかなか良かった。画質は「HDが中心になる」とのこと。もっとTVの詳細については、サービス開始時などにレポートする予定だ。

TBSのもっとTVページもっとTVのトップページ「アニメ」を検索

・VIERAが「サーバー」に

VIERAからお部屋ジャンプリンク

 また、スマートVIERAの特徴として、全モデルでUSB HDD録画に対応するほか、DTCP-IP/DLNAサーバーの「お部屋ジャンプリンクサーバー」も搭載する。USB HDDに録画した番組などを、家庭内のお部屋ジャンプリンク対応のテレビなどに転送し、家中のいろいろな場所で楽しめる。

 さらに、最上位モデルのVT5シリーズでは録画時にMPEG-4 AVC/H.264での長時間録画に対応。「標準」、「長時間1(6Mbps)」、「長時間2(3Mbps)」の3モードを用意し、500GBのHDDの場合最大350時間録画できる。

 このAVCトランスコード技術を生かし、VT5シリーズのみ、スマートフォンでのお部屋ジャンプリンク再生も可能。スマートフォンの対応端末は、NTTドコモの「P-02D」。


VT5シリーズは放送転送にも対応ク

 また、VT5シリーズのみテレビでは業界初という「放送転送」に対応。VIERAのチューナで受信中の番組を、スマートフォンや別のテレビで楽しめるため、BSアンテナが来ていない場所のテレビで、BS視聴なども可能になる。

 スマートフォンとVIERAの連携も強化。スマートフォン向けのアプリとして「ビエラリモート 2.0」を展開予定で、Androidスマートフォン版とiOS版が用意される。ビエラリモート 2.0は、携帯電話やスマートフォン内の写真や動画をVIERAに直接出力できるほか、リモコン機能などを装備する。

 スマートフォン内のJPEG画像のほか、MPO形式の3D写真やMP4動画もVIERAに無線LANで伝送し、再生できる。また、Android版のビエラリモート 2.0では、AACとWAVの音楽ファイルも無線LAN経由で出力し、VIERAのスピーカーで音楽を楽しめる。

 リモコンは、「ディーガ操作ボタン」を装備。ワンボタンで入力切替からDIGA操作までの移行を完了。VIERA/DIGAをシームレスに操作可能とした。番組表はG-GUIDEで、3/5/7/9/11/15/19チャンネルの表示が選択可能な「新ワイドインテリジェントテレビ番組ガイド」に対応。左側の広告枠を撤去し、上部に移行することで、表示枠を広くしている。

新ワイドインテリジェントテレビ番組ガイドビエラリモート

(2012年 2月 17日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]