西川善司の大画面☆マニア
第174回:【CES】シャープの次世代クアトロンや韓国メーカーの有機EL
第174回:【CES】シャープの次世代クアトロンや韓国メーカーの有機EL
LG有機ELの白サブピクセルはなんのため?
(2013/1/17 11:00)
2013 International CES特別編の最終回となる今回は、会場で公開されていた各社の先端映像技術を取り上げることにする。
バックライト輝度をそのままに視覚輝度を1.5倍に高めるシャープの「スーパーブライト技術」
シャープブースで公開していた液晶テレビAQUOSシリーズ2013年モデル向けの新しい高画質化ロジックのうち、プレスカンファレンスでもイチオシとされていた新テクノロジーが「SUPER BRIGHT」(スーパーブライト)だ。
シャープ側の説明では、バックライト輝度自体をそのままに、視覚上は1.5倍の輝度に感じられるテクノロジーだというから興味深い。
「スーパーブライト」はバックライトの輝度変更と映像エンジン処理の組み合わせ技術。現地シャープの担当者からの説明を要約すると、以下のようなアルゴリズムで実現されているという。
【訂正】
記事初出時に「スーパーブライトは映像エンジン側の処理技術」としていましたが、正しくは「バックライトの輝度変更と映像エンジン処理の組み合わせ技術」となります(1月18日追記)
まず、事前に、液晶パネルとバックライトシステムの特性を調べ、ある画素からの出力光が周辺画素に対してどのような影響を及ぼすかを調査してプロファイルデータ化しておく。液晶パネルは表示面側ガラスで出力光が散乱するし、バックライトの光のごく一部は液晶画素の状態によっては迷光として漏れてきてしまう。そうした光学的な影響の相関を事前に調べておくわけだ。
実際の表示時は、入力された映像における各ピクセルから放射状に隣接画素を調査して、どのような色、輝度の画素が存在しているかを把握する。そして、その周辺画素の出力色、出力輝度からの影響に配慮して、当該画素の最終的な出力色、出力輝度を決定する。
具体的な事例を分かりやすく解説すると、例えば、映像データとして、ある画素Aが100の輝度だったとして、すぐ隣の画素Bが50だったとする。仮に、事前に調査したプロファイルで、「隣接する画素間には10%程度の輝度の及ぼし合いがある」とする。
この時、画素Aは画素Bの輝度を10%借りて発光することが想定できることになり、つまり、輝度95で発光しても画素Bの輝度5を借りられるので見た目としては輝度100の明るさが得られることになる。同様に画素Bは40で発光しても輝度50の明るさが得られるわけだ。
まぁ、画素Aを95で光らせたとしたら、画素Bには9.5の影響しか及ぼせなくなるので、計算が合わなくなる。つまり、実際には、話は、ここまで単純ではないが、考え方としてはこんな感じの処理を色や輝度について全方向に行なうイメージになる。また、液晶画素は自発光ではないので、実際の色や輝度制御は液晶画素の開口状態遷移で行なうことになる。
いずれにせよ、こうした処理系により各画素は本来表示したい映像の状態に近づくというわけだ。
なお、先ほどの例を明るい方を基準にして考えれば、画素Aをもともとの輝度100で光らせた時には、画素Bは輝度42(≒100×40÷95)で光らせるだけで、原映像と同じコントラスト感が得られることになる。しかも画素Aは本来の輝度100で光らせたのにもかかわらず、元よりも明るく感じられることにもなる。この例で行けば100÷95で約5%ほど明るく感じられる。
実際のスーパーブライト処理では、映像の平均輝度や最大輝度に応じて制御を変えているそうなので、最終結果として視覚上、+50%も明るい映像が作り出せると言うことらしい。
ブースでの展示を見て面白かったのは、微妙な色あいの組み合わせで表現されている色ディテールが浮かび上がって見える点だ。これは、スーパーブライトの処理系の副次効果なのだという。
また、雪山の中の陰影表現のような、強烈な輝度の白の中に黒の陰影が散見される場合の黒の締まり具合も良好だった。自発光ではない液晶パネルでは、白に囲まれた黒はグレーに浮きがちに見えるものなのだが、ちゃんと黒く見えるのだ。これもスーパーブライトの恩恵に間違いない。
担当者は、黒背景に最大輝度の白色の長方形を表示させて、その白と黒の境界表現の鮮烈さを見せてもくれた。スーパーブライトの直接的な効果としてはこれが一番分かりやすい実験といえるかも知れない。
なお、スーパーブライトテクノロジーは、実は既に2012年末に発売されたAQUOS LX9シリーズに先行搭載されているとのこと。スーパーブライトは3D立体視にも効果的に効くとのことなので、今後のAQUOSシリーズに広く採用が進むことを願いたいものだ。
【訂正】
記事初出時に「スーパーブライトは日本のAQUOS LX9シリーズに先行搭載されている」としていましたが、誤りでした。お詫びして訂正いたします(1月18日追記)
4原色クアトロンの2倍解像度活用法?
シャープの4原色液晶パネルであるQUATTRON(クアトロン)も新世代版へと進化する。
従来のクアトロンでも、RGB+Y(赤緑青+黄)の4サブピクセルで1ピクセル以上の表現を行うサブピクセルレンダリングエンジンがクアトロンのパネルドライブ回路に付加されていたが、新世代クアトロンでは、このパネルドライブ回路が進化するというのだ。
従来クアトロンでも、サブピクセルレンダリングによって、隣接する2ピクセルのRGBY+RGBYのうちGBY、BYR、YRG、RGBの4つの組み合わせでハーフピクセル表現を行なう事ができた。
新クアトロンでは、ピクセルを構成するサブピクセルのRGBYが上下に個別駆動できるようになり、サブピクセルレンダリングを一層、細かく実現出来るようになったのだ。
従来クアトロンのサブピクセルレンダリングは、斜め線のスムージング程度にしか有効でなかったが、新クアトロンのサブピクセルレンダリングは、実質的に縦解像度が向上したことになるので、フルHD映像を4K映像にアップスケールしたのと近い高解像感が得られる……とシャープは主張する。
ブースでは、従来クアトロンと新クアトロンのサブピクセルレンダリングの比較が行なえたが、確かに輪郭表現などは新クアトロンの方がスムーズに見える。
ただ、境界輪郭線の配色の組み合わせによっては、近づいて見たときにその境界付近がややノイジーに見える。ここはさらなる調整が必要かもしれない。
これの原因は、RGBYの4サブピクセル構造では、各サブピクセルが互いに離れすぎている組み合わせが存在するためかもしれない。例えば単色の赤(R)の斜め線を表現したとき、Rで発光した画素に対して、GBY分のスペースを開けた斜め上のRを発光させる必要がある。特定の配色の組み合わせの境界線では、この離散的なサブピクセル構造が裏目に働いてしまい、うまく混色されずに視覚されてしまうのかもしれない。
新クアトロンの新サブピクセルレンダリングは、興味深い機能だが、この潜在的な問題と格闘する必要があるため、作り込みは結構大変そうだ。
LG有機ELテレビの秘密~白色サブピクセルの存在意義とは?
LGエレクトロニクスは昨年のCESプレスカンファレンスで「2012年内の有機ELテレビの発売を目指す」と宣言したのだが、残念ながら実現されず、2013年に持ち越されることとなった。
しかし、LGはまだあきらめておらず、今年のInternational CESのプレスカンファレンスでも、フルHD解像度の55型の有機ELテレビを北米、中南米、欧州、アジアの各地域にて今年の第1四半期より発売を開始すると宣言した。型番は55EM9600となる。
昨年のLGの有機ELテレビの展示は、表示されている映像コンテンツのクオリティが低かったため、有機ELテレビ自身の表示性能が分かりにくかったが、今年は、ハイビットレートの美しいフルHD映像コンテンツを表示させており、その実力がちゃんと推し量れるようになっていた。
黒の沈み込みとコントラスト感は良好で、発色も上々。RGBの各純色のバランスもいい。LGの有機ELパネルは、全てのサブピクセルが白色の有機ELサブピクセルとなっており、これにRGB(赤・緑・青)のカラーフィルターを組み合わせてフルカラー発色を実践する。
ただ、特徴的なのは、1画素を構成するサブピクセルがRGBだけではなく、白(W)も追加されている点だ。そう、LGの有機ELテレビは、RGB+Wの4サブピクセル構成となっているのだ。シャープのクアトロンが、RGB+Y(黄)の4サブピクセル構成となっているのと似ている。
白色有機ELパネル+カラーフィルター方式は、サブピクセルの有機材の積層に際してRGBを蒸着(あるいは塗布)し分けなくていいというコストメリットが存在する。つまり、製造コスト、歩留まり的に優位だというわけだ。
しかし、弱点もある。全てのサブピクセルが白色発光してそれをカラーフィルターで整色するということは、光の利用効率が悪い。
これには、補足説明が必要だろう。具体的に言えば、この方式では、赤サブピクセルでは青と緑の光を捨て、青サブピクセルでは赤と緑の光を捨て、緑サブピクセルでは赤と青の光を捨てる必要があるのだ。つまり、各サブピクセルの発光効率は有機ELから発光された光の1/3しか利用されないわけだ。これは輝度的に不利であり、逆に高輝度を得ようとすれば消費電力的に不利である。
そこで活躍するのが白(W)サブピクセルなのである。
一言で言うならば、Wサブピクセルを使ったサブピクセルレンダリングを実践して、RGBサブピクセルの光量を最適化して消費電力を稼ぐ、あるいは光の利用率を上げるのだ。
例えば(RGB=200,220,180)の色を出したいとする。ここでドライバー回路が、白色発光で補償してやったときに各RGBサブピクセルをどれくらい個別駆動させれば同色に表現出来るのかを計算する。今の例でいけば、例えば白色サブピクセルを170で発光させ、各RGBサブピクセルは(RGB=30,50,10)で発光させるわけだ。なお、これはあくまで概念的な解説と思っていただきたい。
これまた概念的な数値に正確性はないが、光利用率を考えると、カラーフィルター付きのRGBサブピクセルだけでは3倍光らせてやっと200、220、180の輝度か得られるのだから、RGBサブピクセルだけでカラー表現をする場合、各RGBサブピクセルの発光源となる白色有機ELセルを600、660、540で発光させなければならなかった。後者の白色サブピクセルレンダリングを用いた方法ならば白が170、RGBはそれぞれ90、150、30で発光させれば良いことになる。トータルな光利用率の差は歴然だ。逆に言えば「白色有機EL×カラーフィルター方式」には、白色サブピクセルがとても重要なのだと言うことが分かってくる。
LGは、この有機ELテレビの発売を直前に控えている関係で、ブース内にかなりの数の製品試作機を展示していたが、サムスンはブースの隅での展示を行なうに留まっており、有機ELに対する熱意は若干トーンダウンしているように見えた。ただ、サムスンも2013年前半にこの55インチの有機ELテレビの発売を予定している。価格は未定。
なお、サムスンの有機ELテレビはRGBそれぞれで発光する有機材を使ったRGBからなる典型的な3サブピクセル型を採用する。ただし、RGBが縦に並んだ特徴的な配列をしている。
韓国勢は湾曲型有機ELテレビを推す~有機ELは3Dとの相性がいい?
LG、サムスンともにブース内に湾曲した有機ELテレビの試作機を展示。
こうした展示は当初、「有機ELは曲げてもOK」というだけの、何の意味もない技術アピールでしかなかった。しかし、今回はLG、サムスン共に、表示面の全画素位置から視点位置までの距離を等しくした設計で湾曲させ、「この湾曲型こそ、人間にとって自然な視界を再現するディスプレイである」というメッセージを添え、そのデザインに機能的な意味があることを強く訴求しているのがひと味違う。
その主張は「一人でしか見ないパーソナルなディスプレイ用途」では確かにその通りなのだが、これをやってしまうと映像が正しく見える視聴位置が極めて狭くなってしまう。このため、リビング向けテレビのデザインとして採用するには議論すべき余地がありそうではある。
LG、サムスンといった韓国勢は、有機ELテレビに対しての3D立体視対応にも積極的で、両社共に、発売前の試作有機ELテレビで3D立体視のデモを行なっていた。
LGは同社が推進する偏光方式の3D立体視で、対するサムスンは同社が推進するアクティブシャッター方式の3D立体視を採用しており、ここに不思議はないのだが、3D立体視のデモとしてはサムスンの方が面白みがあった。
というのも、有機ELパネルの超高速応答性能と高輝度性能を有効活用し、異なる2つの3D立体視コンテンツを1枚の有機ELテレビ試作機で同時表示するという画期的なデモを実践していたからだ。
ユーザーAとユーザーBはそれぞれ違う毎秒60コマ(60Hz)のフレームレートの3D立体コンテンツを3D眼鏡を掛けることで全画面表示状態にて視聴することができていたのだ。「左右の眼向けにそれぞれ60Hzずつ交互に表示」「それが2人分」ということなので、有機ELパネル側では240Hz表示を行なっていることになる。
実際にユーザーA向け、ユーザーB向けの3D立体視映像を見てみたが、クロストークはほとんどなく、しかもそれでいてそれぞれの3D映像はかなり明るかった。そんな2画面の使い方が実際に浸透するかどうかはともかく、有機ELパネルの超高速応答性能と高輝度性能が分かりやすい形で証明された格好だ。
映像パネルの表示ラインを左右の眼に振り分けるLGの偏光方式では、確かにこの「全画面3D立体視の2セット分表示」は難しい。
「液晶テレビにおける3D立体視」はアクティブシャッター方式推進派の雄だったパナソニックがついに偏光方式採用に踏み切るなど、業界全体で見ればLGが推進してきた偏光方式が主流になりつつあるが、有機ELテレビ時代には、また一波乱くるかもしれない。
東芝の裸眼立体視の今後は?
東芝は4K(3,840×2,160ドット)液晶パネルを採用した裸眼立体視テレビ「55X3」を2011年末に発売。民生向けの55型の裸眼3Dテレビはこの55X3だけで、他社からは登場せず。東芝からも後継機の発表は行なわれていない。
しかし、東芝関係者によれば、55X3は高額な製品にもかかわらず一定数売れており、最近ではセミ業務用用途に引き合いが強いのだそうだ。
そんな状況を踏まえ、大型画面サイズの裸眼立体視3Dテレビは、再びREGZAとしての市場投入を行なうかはともかくとして、研究開発は引き続き進めていくのだという。
その言葉を裏付けるようにして、今回のCESでも、その研究成果の一部が公開されていた。今回展示されていたシステムも、4K液晶パネルにレンチキュラーレンズを用いる構造で基本設計において55X3からの変更はなし。ただし、多視点対応のシステムが進化していた。
55X3では、使用前にユーザーの視聴位置をキャリブレーションする必要があったが、今回展示されていたものでは、リアルタイムにユーザーの顔面トラッキングを行い、室内にいる各々の人の視点から最適に見える多視点立体映像を動的に作り上げるシステムになっていた。
また、55X3では9視差までの対応だったが、今回の展示システムでは、それ以上の視差に対応しているという。55X3は、4K液晶パネルを採用していたこともあってウルトラハイエンドクラスの製品となっていたが、今後、4Kテレビが一般向け製品にまで降りてきたときには、再び、裸眼立体視REGZAを登場させて欲しいものだ。
その際には55X3で気になった、2Dモード時にレンチキュラーレンズのパターンがぎらついて見えるアーティファクトが解消される事を期待したい。
東芝の4K向け映像エンジンはICC PURIOSに勝てるのか?
シャープはウルトラハイエンドクラスの4Kテレビ製品として「ICC PURIOS」を発表した。その「フルHD→4K」変換にはアイキューブド研究所が開発した4K映像創造技術「ICC」(Integrated Cognitive Creation。シャープは「光クリエーション技術」というブランド名を与えている)が採用される。アイキューブド研究所とシャープによれば、この光クリエーション技術は、人間の視覚モデルに適した陰影を再現するという。
その見た目に非常に近い効果を発揮していたデモンストレーションが東芝ブースにあったので紹介しておこう。
それが、東芝が4K液晶パネルを採用した4K REGZAシリーズに搭載予定の新しい高画質化ロジック「4K微細テクスチャー復元」と「4K輝き復元」だ。
「4K微細テクスチャー復元」は元映像から分離した輝度情報に対して超解像処理を適用するもので、「4K輝き復元」は分離した輝度成分に対して、ライティングの結果として現れているハイライトに対して算術的に強度を増強するものだ。「4K輝き復元」はCGで例えるならば、鏡面反射の陰影処理結果に対してその強度を強調するポストエフェクトを与えるもの…といえるかも知れない。
実際のデモを見ると、テクスチャのディテール感が増すだけでなく、陰影にリアリティが増して見えるのだ。
デモと言うこともあってかなりアグレッシブに掛けられていたが、意外に自然に見える。これらを一般のテレビ放送などに掛けた場合にどのように見えるかが楽しみだ。
CESにおけるプロジェクタ関連の話題
今回のCESでは、プロジェクタ関連の話題が少々少なかったのが残念だ。最後にかき集めたプロジェクタ関連の話題で締めくくるとしよう。
JVCケンウッドは、ノースホールのカーオーディオ系メーカーブースが立ち並ぶセクションにブースを移していたが、いちおう、プロジェクタ製品の展示は行なっていた。
基本的には日本で発表済みのDLA-X95R/X75R/X55Rの展示が中心だったが、日本未発表のDLA-X35が展示されていた。担当者によれば、JVCの反射型液晶パネル「D-ILA」プロジェクタは依然として人気が高いものの、エントリークラス製品では値段と明るさだけで選ばれてしまう傾向が強いため、今季は、日本市場でのDLA-X35の導入が見送られたのだという。
日本でも発売された2011年モデルの先代DLA-X30に対するDLA-X35の進化ポイントは「投射レンズの状態を記録しておけるレンズメモリーが3個から5個に増えた」「3D立体視時のクロストークを一層低減した」の2点だという。日本市場でも「エントリー機とはいえ、D-ILA機を選びたい」という声は少なくないはずなので、ぜひともDLA-X35を日本でも発売していただきたい。
LED光源とレーザー光源とを組み合わせたハイブリッド光源を搭載したDLPプロジェクタ製品がパナソニックから登場したことには、筆者は少々驚かされてしまった。
パナソニックのLED&レーザーハイブリッド光源技術には「SOLID SHINE」というブランド名が与えられており、2万時間のランプ寿命を実現しているという。パナソニックとしては「事実上のランプ交換不要のプロジェクタ」として訴求していくのだそうだ。
今回発表されたのは「PT-RW330」「PT-RZ370」の2機種で、PT-RW330が1,366×768ドットのHDモデル、PT-RZ370が1,920×1,080ドットのフルHDモデルとなっている。両モデルとも、北米と日本で1月に発売予定となっており、日本ではオープンプライス。北米での市場想定価格は、PT-RW330が2,500ドル、PT-RZ370が4,000ドルだ。
カシオも、今回のCESでLED&レーザーハイブリッド光源採用のDLPプロジェクタの新製品の展示を行なっていた。
2013年の新製品は、1,280×800ドットの3,500ルーメンモデル「XJ-H2600」を2台用いた6,500ルーメンのスタック投影システム「XJ-SK650」と、1,280×800ドットの3,000ルーメンモデル「XJ-M250」を2台用いた6,000ルーメンのスタック投影システム「XJ-SK650」の2つ。北米地区では2013年1月から、日本では今春からの発売が予定されている。ただし、業務用製品のため価格は非公開だ。
LED&レーザーハイブリッド光源採用のDLPプロジェクタの輝度が単体投射でオーバー3,000ルーメン、機種によっては4,000ルーメンにまで上がったのはなぜか。
従来のLED&レーザーハイブリッド光源では、赤色LEDと青色レーザーの組み合わせで構成され、赤光源は赤色LEDから、青光源は青色レーザーの直接光から取り出し、緑光源は青色レーザーを蛍光体にぶつけて緑色に変換して取り出していた。
近年の高輝度なLED&レーザーハイブリッド光源では、赤色LEDと青色LEDをそれぞれの純色光源として利用し、緑光源だけを青色レーザーから波長変換する仕組みにしている。青色LEDが増えた分だけ単純に輝度が増したというわけだ。もっとも、それだけでなく、実際には、技術革新によって単体LEDの輝度も増し、高輝度LEDの製造コストが下がったためにLEDの数も増やせるようになったことも大きく影響はしている。
なお、相変わらず緑光源を青色レーザーから波長変換して得ているのは、現行の緑色LEDの輝度が低いためだ。
ちなみに、LEDとのハイブリッドではない、レーザーだけを光源にしたプロジェクションシステムを展示していたのはLGエレクトロニクス。
製品名「HECTO」と名付けられたこの製品は、投射距離約55cm(22インチ)で100インチ(16:9)画面を投射できるフロントプロジェクションシステムになる。公称輝度は非公開だが、公称コントラスト値は1千万:1と発表されている。
光源として用いているのは白色レーザー光源だ。この白色光に対し、従来のDLPプロジェクタと同様にRGBに塗り分けられたカラーホイールを回転させてRGBの純色光を得て時分割でDMDチップに照射している。公称光源寿命は25,000時間と発表されている。
面白いのは、LGではこの製品をプロジェクタ製品ではなく、テレビ製品としてカテゴライズしていることだ。
というのも、製品には別体型の10W+10Wのバーチャルサラウンド機能付きのサウンドバー(スピーカーユニット)と、100インチのスクリーンが付属し、プロジェクションシステム側にはデジタル放送対応チューナを内蔵。LGのスマートTVのフルスペックを装備し、ポインティングデバイス型リモコンの「マジックリモコン」まで付属しているのだから、LGはこれを本当にテレビとして売る気なのだ。なお、発売時期と価格は未定である。