西川善司の大画面☆マニア

第200回

見えてきた4Kブルーレイ「ULTRA HD BLU-RAY」とは?

4K/HDRによる革新。4Kテレビの本命は2015年モデルか

 2015 International CESではパナソニックが同社ブース内で、次世代4Kブルーレイ規格と呼ばれる「ULTRA HD BLU-RAY」(以下、UHD BLU-RAY)の実動デモを披露した。

 4K試験放送は始まったが、4Kコンテンツはまだ潤沢とはいいがたい状況の中、「店頭に並ぶ4Kコンテンツ」として期待が掛かるUHD BLU-RAYのお披露目は大画面☆マニアとしても見逃せない希望の星である。

 というこで、今回の2015 International CESの取材を通して見えてきたUHD BLU-RAYに関する話題をまとめてみることにしたい。

パナソニックブースのUHD BLU-RAY試作機の実動デモ

 パナソニックブースではUHD BLU-RAY試作機にて、実際に4Kのコンテンツを記録したUHD BLU-RAYディスクを回して再生するデモを披露していた。

 このデモ機は2015年1月時点でのUHD BLU-RAY暫定規格に基づくもので、最終製品ではないが、実際に動作できるデモ機が存在するという点でかなり現実味を帯びてきたといえる。

 パナソニック関係者によれば「製品化時期、価格等については一切未定である」とのことだが、複数の業界関係者に話を聞くと、年内前半までには規格が決定し、実際のUHD BLU-RAY製品は早ければ2015年後半、遅くとも2015年度内には登場する時間感覚でいるようだ。

 展示されていた試作機は4倍速相当のBDXL対応ドライブを搭載したもの(パナソニック関係者)とのこと。

パナソニックブースに展示されていたUHD BLU-RAYプレイヤー試作機。実際にディスクを回しての再生を実動デモ

 BDXLは、2010年に規格化されたもので、現在100GBの3層メディアと128GBの4層メディアが規格化されている。100GBの3層メディアは流通しているが、128GBの4層メディアは未だ、民生向けとしては流通していない。

 ここで「ブルーレイって1層25GB、2層50GBだったはず。なんで3層75GB、4層100GBじゃないの?」という質問を思い浮かべるかも知れない。実は、BDXLはブルーレイディスクのファミリーとはいえ、2層までのBDメディアと3層4層のBDメディアとでは記録層の物理構造が若干変わっている。2層までのBDメディアは1層当たりの容量が25GBなので2層では倍の50GBだったが、BDXLの3層BDメディアでは1層あたりの容量が約33GBとなっており、これで100GBとしているのだ。なのでBDXLは、むしろ新世代BDという理解でいいかもしれない。なお、BDXLメディアは、従来のBDドライブでは読み書きが出来ない。しかし、BDXL対応BDドライブは、2層までの従来BDメディアとBDXLメディアの両方を読み書きが行なえる。

 今回のデモでは、実際にBDXLの3層の100GBメディアにハイダイナミックレンジ(HDR:High Dynamic Range)対応の4Kコンテンツを書き込み、4倍速読み出しを行なって再生をしているとのことであった。BDドライブの等倍速は36Mbpsなので、4倍速といえば概算で144Mbpsということになるが、実際には100Mbps程度での読み出し再生が行なわれていたようだ。

 デモで用いられていたテレビは、2015年春に発売される見込みの液晶VIERAの65型のCX850モデル。

 このCX850シリーズは業界初のUHD BLU-RAY規格のHDR映像表示対応モデルになるとのことで、今回のUHD BLU-RAY再生デモでは、そのHDR再生適応能力のアピールも兼ねていたとみられる。

実際にUHD BLU-RAY再生デモでは、HDRコンテンツの再生が行われていた。表示に使用されていたのは春発売予定の液晶VIERA、CX850シリーズの65型モデル。CX850シリーズはUHD BLU-RAY規格のHDR表現、広色域表現に対応する初の4Kテレビになるとみられる

4Kブルーレイともいわれる「UHD BLU-RAY」規格とは?

 4Kブルーレイ規格とも言われる、「UHD BLU-RAY」とは一体どのようなものなのだろうか。

 ここからはもう少し細かく見ていくことにしたい。

「UHD BLU-RAY」の公開スペック(2014年11月25日時点)

 まず、名称だが、「4Kブルーレイ規格」として策定されながら、正式名から「4K」というキーワードが取れて「UHD BLU-RAY」となっている。これは「現行のフルHD映像規格を超えた新映像規格全般を指す名称」の意味を重視したため。明言はされていないが、将来的には4Kのさらに上の8Kへの対応なども視野に入れているようだ。

 ちなみに、最初の規格では8Kは含まれておらず、解像度的にはフルHD(1,920×1,080ピクセル)と4K(3,840×2,160ピクセル)の2つがサポートされる。フルHDが含まれているのは、後述する「HDR表現」を伴ったフルHD解像度の映像をもUHD BLU-RAYで取り扱えるようにするためである。

 映像コーデックとしてはHEVC(High Efficiency Video Coding:H.265)が標準規格として採用される。H.265は、現行ブルーレイに採用されているH.264よりも2倍の圧縮効率を目標にして開発されたコーデックで、開発目標値として「同一画質でH.264の半分のビットレート」が掲げられていたものになる。

 コーデック上の色深度は10bitが採択された。色解像度はYUV=4:2:0。

 なお、ドルビーが開発を進めてきた独自のHDR映像伝送規格「DOLBY VISION」では色深度12bitが推進されてきたが、UHD BLU-RAY規格ではその採用が見送られたようだ。

DOLBYはハイダイナミックレンジ映像コンテンツの伝送規格として「DOLBY VISION」を提唱しているが、UHD BLU-RAY規格への採用は見送られたようだ

 フレームレートは24fps〜60fpsまでがサポートされる。なお、120fpsはサポートされない。

 3D映像の規格はなし。そう、UHD BLU-RAYでは3D立体視はサポートされないことが確定事項となった。3D立体視は現行ブルーレイ仕様のフルHDまでの対応で十分と判断されたのである。

 映像のダイナミックレンジについての記録仕様詳細は後述するが、ハイダイナミックレンジ(HDR)は最大輝度10,000nitまでの記録再現をサポートし、色空間はBT.2020をサポートする。BT.2020は、現実世界に存在する物体色のほぼ全てを記録したデータベースSOCS(Standard object color spectra)をカバーできる新世代色空間規格のこと。なお、ハイダイナミックレンジでないスタンダードダイナミックレンジ(SDR:Standard Dynamic Range)映像のために、従来のHDTV向け色空間であるBT.709もサポートはされる。

 ディスク規格としては、前述したパナソニックブースのデモ紹介のところでも触れたように、BDXLに相当する3層の100GBメディアまでがサポートされる。BDXLで規格化された4層128GBメディアは最初のUHD BLU-RAY規格には盛り込まれないようである。

 従来のBDメディアである2層50GBもサポートされるが、これ以外に、BDXLの一層当たり約33GB容量を2層にした66GBメディアも規格に追加される見込みとなっている。

 ビットレートは仕様上はピーク128Mbpsまでとなりそうだが、現実的には100Mbpsあたりが最大となるだろうという。いずれにせよ、UHD BLU-RAYにおいては、これまでのBDドライブでいうところの4倍速相当のドライブが標準速となることだろう。

 4K解像度のHDR映画コンテンツを2時間近く記録したタイトルはほとんどのものが容量的に3層100GBになると見込まれている。

UHD BLU-RAYは、フルHD解像度の非HDRとHDR、4K解像度の非HDRとHDRの4タイプが登場することになる。ロゴ等はまだ未定

 それと、インタラクティブメディアとしてのUHD BLU-RAYの仕様は、現行ブルーレイのものがそのまま流用、継承されることとなった。つまり、具体的に言えば、メニューグラフィックや字幕仕様についてはフルHD仕様のままで、UHD BLU-RAY特有の新規格は定められない。なので、UHD BLU-RAYにおけるメニューグラフィックや字幕はフルHD解像度のままということになる。あえて言うならば、映像解像度と比較して字幕の解像度が低いと感じる場面もあるかも知れない。

従来のブルーレイ制作工程で制作したブルーレイマスターをそのまま使用し、映像だけをUHD BLU-RAY仕様に差し替えるだけで簡単にUHD BLU-RAYソフトをオーサリングできるようにした

 これは現行ブルーレイ仕様で制作したメニュー・字幕システムを、映像コンテンツ本体のみをUHD BLU-RAY規格に変更してすぐに販売できるようにするための施策だとのこと。低コストでUHD BLU-RAYソフトを制作してもらう為にはこれが最良の策と判断されたようだ。

 また、サウンドトラック仕様に関しても、現行ブルーレイから変更はない。

UHD BLU-RAY規格におけるハイダイナミックレンジ仕様とその成り立ち

 UHD BLU-RAYにおいては、映像解像度を最大4Kにまで拡張するだけでなく、色と輝度の表現幅を拡張することまでを視野に入れて規格化が進められている。

 表現対象色空間は前述したようにBT.2020にまで対応させる。

 そして輝度についてはハイダイナミックレンジ(HDR)表現に対応させる。

UHD BLU-RAYは映像表現における「解像度」「色」「輝度(HDR)」の三軸を全て拡張する革命的な新映像規格である

 そもそもハイダイナミックレンジとは一体何なのか。

 現実世界は非常に明暗差の激しい世界である。

 月の出ていない夜空の星空が照らす地面の明るさはルミナンス値で100万分の1(lum/m2)であり、太陽が降り注ぐ雪原の明るさは100万(lum/m2)であるとされる。100万は10の6乗なので、100万分の1(lum/m2)と100万(lum/m2)の明暗格差は10の12乗(=一兆)、いわゆるコントラスト比で1兆:1ということになる。

 現行までの映像機器では、こうした膨大な輝度ダイナミックレンジを、非常に狭い明暗差に圧縮してデータ化してしまっていた。

 UHD BLU-RAYでは、ここを大きくジャンプアップさせようということなのだ。

視覚細胞「円錐体」と「桿状態」が感じられる輝度ダイナミックレンジと各数値表現がカバーできるダイナミックレンジの比較。拙著「ゲーム制作者になるための3Dグラフィックス技術」より引用

 これまでの映像規格におけるダイナミックレンジはブラウン管時代に規定されたものを引きずっており、コントラスト値にして「100:1」程度にまで圧縮されてしまっている。

 もともと最初期のブラウン管が100cd/m2(最近ではnitと表記するのが一般化、以下同)程度の輝度性能だったので、この値幅で映像のコントラストを収めるのが必要十分かつ必然だったのだ。

 しかし、最近の液晶テレビは標準的なものでも400nit前後の輝度性能があり、直下型LEDバックライトシステム採用機になると700nit以上の輝度性能を持つ機種も珍しくない。

 実は、映像規格の輝度表現能力よりも映像表示機器の表現性能の方が上回って久しいのである。だからこそ、最近の液晶テレビには「ハイダイナミックレンジ復元」と呼ばれる、失われた輝度表現を推測と信号処理で復活させる高画質化ロジックまでが開発され、採用されてきているのだ。

 UHD BLU-RAYでは、このコントラスト表現幅を最大1万:1にまで拡張する。

UHD BLU-RAYにおけるHDR仕様は最大輝度でも1万nitまでに限定される。現実世界を絶対輝度値で記録再生するための仕様ではなく「映像表現に必要十分なHDR仕様とはどれくらいか」という観点で規格化された

 前述したように、現実世界は輝度絶対値(リニア空間)で比較すると1兆:1もある。

 これをカメラでどの程度正確に記録するかについてはカメラの性能や撮影の仕方に依存する。仮に最大1兆:1の絶対輝度値の世界を正確に記録するとするならば10の12乗分幅の輝度値を記録できる数値表現体系が必要になるのは前述したとおりだ。

 この要求に大枠として適合するのが、SF映画「スターウォーズ」の特殊効果でお馴染みのILM(Industrial Light & Magic)のCG部門ILMが提唱するHDR映像のオープンソース規格「OpenEXR」である。具体的には、OpenEXRとは、1ピクセルあたりが符号1bit、仮数10bit、指数5bitで表現される16bit浮動小数点フォーマットを採用している。ちなみに、16bit浮動小数点は「FP16」と呼ばれたり「16bit Half Float」と呼ばれたりする。

 理想的には、UHD BLU-RAYで、このFP16を取り扱えれば良かったのだが実際には見送られ、10bit整数で表現することとなった。

 そうなったことにはいくつかの理由があるとされる。

 1つは「たしかに現実世界の輝度絶対値は10の12乗幅分があるかもしれないが、そんな真っ暗なシーンや眩しいシーンで構成される映像コンテンツは現実的にはあり得ず、ある程度の常識的な最大輝度までが表現出来れば十分だろう」という考えに基づく。人間は瞳の開閉で網膜に入射させる光を調整しているし、カメラではレンズ内の絞り機構で入射光量を調整していて「人間が見て楽しむための映像」という見地からすると、現実世界の輝度値をそのまま記録することにそれほど大きな意義を見出せない。FP16は現実世界の輝度値を絶対値記録しておくには必要十分ではあるが、人間の視覚メカニズム視点で映像情報を考えるといささかオーバースペックなのだ。

 では「10bit整数で事足りるのか」というと、10bit整数ではルミナンス値で10の3乗程度のダイナミックレンジしか記録できない。これではHDR記録には不十分ではないかという疑問が湧く。

 しかし、人間の感覚メカニズムには「物理量的な変化と人間の感覚としての変化量の対比には一定の法則がある」という「ウェーバーの法則」が成り立つとされ、この法則に則って検討した結果、FP16でないと記録しきれないいくらいの輝度分布(ダイナミックレンジ)の映像も、ある伝達関数を用いて10bit整数に変換してやると、映像としては実用上問題なしという落としどころを見つけることが出来たのである。

 ちなみに「ウェーバーの法則」とは、たとえば「輝度100が110になったとき」と「輝度1000が1100になったとき」が同じ変化量と感じられるような知覚法則が成り立つこと。物理量(絶対値)としての変化量は前者は+10で後者は+100なのだが、人間の感覚としては「10%」として同等の変化量に感じられるというのがこの法則だ。ちなみに「ウェーバーの法則」において、この事例におけるウェーバー比は10%ということになる。

 UHD BLU-RAYの規格策定においては、Peter G.J. Barten氏が2004年にSPIE(The International Society for Optics and Photonics)で発表した論文「Formula for the Contrast Sensitivity of the Human Eye」に基づいた「変換関数」(後述)を用いれば、コントラスト比1万:1をウェーバー比1%で表現するのに10bit整数でいけそう…ということになり、この仕様が採択されることとなったようだ。ちなみにその「変換関数」とは、ディスプレイ機器業界で馴染み深い用語で言うところの、いわゆる階調圧縮に用いる「ガンマ関数」のことである。一般用語では「Optical-Electro Transfer Function」(OETF:光電気伝達関数)という。

 なお、このUHD BLU-RAY規格が採用したOETFは、SMPTE(Society of Motion Picture and Television Engineers)のST.2084規格になる。

 UHD BLU-RAY規格が採用したSMPTE ST.2084のOETFは、感覚的に表現すると、人間の視覚として敏感に反応できる暗部や常識的な明部くらいまでは十分な階調分解能を与え、明るくなればなるほど大ざっぱな階調を割り当てるようなイメージになる。

 UHD BLU-RAYのディスクに記録されるのはOETFで変換された階調圧縮済みの10ビット整数値からなるHEVC動画データストリームになるわけだが、合わせて、このHEVC動画データの最大輝度の値も記録される。

 UHD BLU-RAYの規格上の最大輝度は最大1万nitだが、たとえばオーサリング段階で最大輝度を3,000nitとしたのならば、この3,000nitという値がメタデータとして記録される。ドルビーのDOLBY VISIONでは、この最大輝度値を毎フレーム盛り込めるまでの仕様としているが、UHD BLU-RAYでは、1コンテンツにおいて1つの設定の適用で十分と判断された。

ここまでの解説はこの図の前半(左半分)を見ながら読んでいただくと分かりやすい。次段からの解説は後半(右半分)を見ながら読んでいただきたい

UHD BLU-RAYを再生・表示する側の処理系

 ディスクの再生側としては、最大輝度値を取得し、SMPTE ST.2084規格のOETFで階調圧縮された10bit深度のHEVC動画データを読み出し、"逆"関数の「Elctro-Optical Transfer Function」(EOTF:電気光伝達関数)で変換して絶対輝度値に戻す。

 HDR映像の表示に対応したテレビ側としては、この絶対輝度値に戻された映像の表示を行なう事になる。

 ここで注意したいのは、テレビ側の最大輝度性能で、復元された絶対値輝度値(リニア空間での値)を必ずしも表示できるとは限らない点だ。

 たとえば、最大輝度性能値が700nitの液晶テレビに、最大輝度値3,000nitのHDR映像が入力されたところで、当然のことながら正確な表示は行なえない。

 この場合、最大輝度値3,000nitのHDR映像を、テレビ側の最大輝度700nitで最もリアルに見えるように階調をテレビ側の映像エンジンで再圧縮して表示させることになる。

 最近のテレビには、失われたHDR情報を復元する「ハイダイナミックレンジ復元」機能が搭載されているが、HDR映像対応時代のテレビにはむしろ逆の「HDR情報をテレビ向けの階調に圧縮して表示させる」機能が必要になってくると言うことである。

 2015年以降のHDR対応時代において、映像エンジンの在り方、映像処理の仕方に新発想が求められると言うことである。

パナソニックブースに展示されていた液晶VIERA、AX900型番後継のHDR対応試作機によるHDRコンテンツの表示デモ。UHD BLU-RAY規格では最大輝度1,000nitまでを奨励しているのは、現行の民生向けテレビ製品の最大輝度性能がこのくらいのため
ソニーブースに展示されていた未発表BRAVIA試作機によるHDR映像コンテンツの表示デモ。ソニーのエンジニアは「テレビの輝度性能を超えるほどのHDR映像コンテンツをどのように映像処理してリアルに見せていくか……がHDR時代の新しい高画質化テーマである」と語っていた

UHD BLU-RAYと従来機器との互換性について〜HDMIはどうなる?

 UHD BLU-RAYでは、現在試験放送が始まった4K放送の録画等については特に決まっていない。現在、決まっているのは映画などを記録したROMディスクに関しての規格になる。

 そこで、まず気になるのは既存資産との互換性だろう。

 UHD BLU-RAY規格では現行ブルーレイ規格の50GB二層メディアも取り扱えることになっているが、映像コーデックにHEVCを採用しているため、UHD BLU-RAYソフトの再生は現行のブルーレイプレイヤー等では行なえない。逆にUHD BLU-RAYプレイヤーには、現行ブルーレイとの互換性機能が搭載されるので、従来のブルーレイソフトの再生は可能だ。

UHD BLU-RAY規格の映像コンテンツをフルポテンシャルで表示するためには「4K解像度」「広色域表現」「HDR表現」の3要素全てに対応した4Kテレビが必要になる。2014年以前の4Kテレビでは事実上対応は不可

 では、UHD BLU-RAYプレイヤーで、UHD BLU-RAYソフトを再生した場合、どんなテレビに映し出すことが出来るのか。

 結論から言えば、既存のテレビ製品であってもHDCP2.2相当の著作権保護機構に対応したHDMI端子が搭載されていれば、UHD BLU-RAYソフトの映像は映し出すことが出来る。

 2013年後期から2014年中に発売された4Kテレビのほぼ全て(一部、基板交換によるアップグレードも含む)がHDCP2.2対応のHDMI2.0端子を備えているので、UHD BLU-RAYプレイヤーで再生したUHD BLU-RAYソフトの映像を映し出すことが出来る。

 UHD BLU-RAYプレーヤーが、フルHDダウンコンバート機能を備えている場合、フルHDのテレビでもUHD BLU-RAYソフトを視聴できる。ただし、フルHDテレビ側で4K→フルHDダウンスキャンコンバートを行なって表示する場合(4KのままHDMIで伝送を行なう場合)にはHDCP 2.2に対応している必要がある。

 では、2013年後期から2014年中に発売された4Kテレビは、UHD BLU-RAYソフトの映像ポテンシャルを100%活かした表示が行なえるかというと、残念ながらそうでもない。

 実は、前段で解説した新色空間BT.2020やHDR表現の伝送方式が新しく策定されたHDMI 2.0の拡張仕様に盛り込まれたため、この拡張仕様に対応していない2013年後期から2014年中に発売された4Kテレビは、新色空間やHDR表現を正しく表示できないのだ。

 「正しく表示できない」というのは言いすぎかも知れない。BT.2020の新色空間表現は従来の映像形式のBT.709色空間表現、すなわちsRGB相当に減色され、HDR表現は、これまでの映像形式で採用されてきた標準コントラスト表現とも言うべきSDR表現に圧縮されることになる。

 つまり、2013年後期から2014年中に発売された4Kテレビでは、UHD BLU-RAYソフトの再生映像は、色表現やHDR表現は従来の映像表現方式に据え置かれ、解像度表現だけが4K化されて表示されることになる。

40型サイズ未満などの製品ラインには「フルHD解像度」で「広色域表現」「HDR表現」に対応…というような、UHD BLU-RAY対応テレビも出てくるかも知れない。

 裏を返すと、UHD BLU-RAYソフトの「4K解像度」「広色域表現」「HDR表現」といった新要素を100%楽しむためには、HDMI2.0の拡張仕様に対応したテレビが必要だということだ。

 この「広色域表現」「HDR表現」に対応したHDMI2.0拡張仕様に対応した4Kテレビ製品は、早いメーカーだと2015年の春からの投入を計画しているようだ。本記事冒頭で紹介したパナソニックなどは、UHD BLU-RAY規格推進のリーダー格でもあったのでその「早いメーカー」となる見込みである。

 気になるのは、2013年後期から2014年中に発売された4Kテレビを所有する既存オーナーへの対応だが、これはおそらくアップデート等の対応は行われない可能性が高い。

 メーカーによっては違う対応になる事も考えられるが、そうした4Kテレビは「広色域表現」「HDR表現」に対応できないまでも、UHD BLU-RAYソフトの再生映像は映せるわけなので「UHD BLU-RAY対応済み」と判断できるためだ。まぁ、無理矢理喩えれば、5.1chサラウンド対応のAVアンプ発売後に、6.1chや7.1chのサラウンド方式が発表されたのと同じ構図といえる。つまり「6.1chサラウンドや7.1chサラウンドも、再生チャンネルは削減されるものの5.1ch対応AVアンプでも再生出来るから許してね」…みたいなことである。

 逆に、2015年に4Kテレビの購入を考えている人は、この「広色域表現」「HDR表現」に対応したHDMI2.0拡張仕様に対応したモデルを選びたいところだ。逆に、そこが妥協できるのであれば価格落ちが進む2014年以前の4Kテレビ製品を狙うのもいいかもしれない。

 さて、この「広色域表現」「HDR表現」に対応した新HDMI2.0が、HDMI2.1とならず「拡張仕様」というお茶の濁し方になったのはなぜなのか気になる人もいると思う。

 これについては、HDMIのバージョン番号アップとなると規格策定に多大な時間が掛かってしまうため…という関係者からのコメントを得ている。逆に言うと、HDMI 2.0の仕組みを少し拡張すれば「広色域表現」「HDR表現」は伝送できると言うことでもある。となれば、簡単にアップデートも出来そうなものだが、家電製品の場合は、そうした仕組みの実現は難しいらしい。AVアンプ等では、そうした部分をプログラマブル仕様にしている場合も多いので、ファームウェアアップデートで対応出来る機種もあるかもしれない。

UHD BLU-RAYは普及するか?

 実際に、UHD BLU-RAYは普及するのだろうか。

 ブルーレイという名前が付いているものの、そのポテンシャルをフルに活かすためには「新しいテレビ」「新しいプレイヤー」「新しいソフト」が必要になるという点で、事実上の次世代光ディスク規格の提案に相当するので、短期的な普及はなかなか難しいかもしれない。

 既存のブルーレイ規格の延長線上で組み立てられた3D立体視対応ブルーレイ(Blu-ray 3D)も、家電業界は2010年から普及戦略を仕掛けてきたわけだが、一般ユーザーに認知してもらうまでに2〜3年を要した。現在では、映画のBlu-ray 3Dはそれなりに発売されるようになったが、それでも初回限定生産のような形での提供が多く、メインストリームにはなりきれていない。

 3D立体視は「映像が立体に見える」という「わかりやすさ」があったが、UHD BLU-RAYの「4K解像度」は40インチサイズ程度の液晶テレビが一番売れる日本では一般ユーザーが「高解像度表現」にどの程度魅力を感じてくれるか心配だ。

 「広色域表現」「HDR表現」の新2大要素も、最近の「推測復元型」の高画質化ロジックが優秀になってきているテレビを愛用しているユーザーの目に、果たしてどのくらい「ありがたみ」が届けられるかも心配だ。

 もちろん、筆者のような「映画マニア」「映像マニア」「大画面マニア」の人種にとって、UHD BLU-RAYは、「久々の映像規格“革命”」と理解しているので、普及して欲しいという願いはある。

 少なくともソフトの供給は、今のBlu-ray 3D以上のメインストリーム化を期待してやまない。

トライゼット西川善司

大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。映画DVDのタイトル所持数は1,000を超え、現在はBDのコレクションが増加中。ブログはこちら