日沼諭史の体当たりばったり!

世界よこれが初心者だ! 妻にGoogle HomeとHueでスマートホームを構築してもらう

Google HomeとPhilips Hueのセットアップは簡単?

「ねえグーグル、J-WAVEを聞かせて」。これが最近の日沼家での朝の合言葉だ。

 我が家にGoogle Homeがやってきてからというもの、筆者より妻の方がGoogle Homeを好んで使っている。声に出して機器を操作する、なんていう習慣はこれまでひとつもなかったのに、ちょっと恥ずかしいのは最初の2、3回だけだったらしい。今やいろいろなパターンの音声操作を試しつつ、寝室の照明にしているPhilips Hueの明るさを調整したり、テレビの電源をオンオフしたりと、当たり前のように使いこなしている。

 だから、Google Homeの使い方も、Google Homeを介してスマートホーム機器を操作するのも、とっても簡単なんだな、と思う。まあ、ちょっと複雑なことを命令すると「お役に立てません」とか言ってGoogle Homeはすぐに諦めてしまうんだけれど、そういう弱点を踏まえつつ使う分には、日常生活で十分便利に活用できるのである。

我が家にやってきたGoogle Home

 しかし忘れてはならないのは、どんな機器も最初のセットアップ作業が必要であるということ。スマート機器の「簡単さ」や「便利さ」は、セットアップの難易度も含めて総合的に判断されるべきものではないだろうか!なんて思う今日この頃である。なので今回、Google Homeと、同時に購入したHueは、全て妻にセットアップしてもらうことにした。

 もちろん妻はスマートホームとかスマートホーム機器がどういうものかを具体的には理解していないし、自宅のWi-Fiやネットワーク構成がどうなっているのかも詳しくは知らない。最初にGoogle Homeが音声認識で動作するものであることを教えると「なにそれすごーい」と素直に感動するくらいのレベル感である。

 しかも、筆者のお下がりのスマートフォンを使っている妻が、設定を変えたいというので借りてみたら、長らくアプリをバージョンアップしていなかったせいでradiko.jpが起動しなかった。Google Playすらほとんど使っていないようだ。

 果たして、そんな妻がスムーズに使い始めることができるほど、Google HomeやHueは簡単にセットアップできるアイテムなのだろうか。

 さっそく実験してみたいところだが、「さあ、Google Homeでradiko.jpを再生し、Hueのオンオフをコントロールしてみせよ」といきなり言ったところで、ファミコンを知らない世代の若者がゲーム機本体と「星をみるひと」を手渡され、「ゲームオーバーにならずに最初の街へたどりつけ」と命令されるくらいに意味不明かつ無理ゲーだろう。なので、以下のように段階的な目標と条件を設定することにした。

1. Hueのオンオフをアプリから操作できるようにしてみよう
2. Google Homeを使って声でHueをオンオフしてみよう
3. Google HomeでJ-WAVEを聞こう。さらにJ-WAVEを目覚ましに設定できるかな?

【特典】わからなくなったら筆者に2回だけアドバイスをもらえるぞ!

1. Hueのオンオフをアプリから操作できるようにしてみよう

Philips Hueのパッケージ内容。4点セットのスターターキットをチョイスした

 ということで、まずはHueのセットアップから。購入したのは白色電球のHue 2個、リモコンのディマースイッチ、ネットワークに接続するHueブリッジの4点がセットになっているパッケージだ。Hueは電球単体だと普通のLED電球と何ら変わるところがなく、ソケットに取り付けて部屋の壁面スイッチなどでオンオフできるのみ。ブリッジをネットワークに接続することで、初めて専用のスマートフォンアプリやGoogle HomeからHueを操作できるようになる、という仕組みだ。

 さて、そんなことを知るはずもない妻が、パッケージを開封して真っ先に取りかかったのが、最初に目に入ったLED電球をソケットに取り付けること。手順としては正しいのだが、当然のように説明書は読んでいない。「今すぐに明かりをつけたい」と、はやる気持ちが抑えられなかったようだ。

Hueの説明書
しかし説明書は読まずに即座にライトオン!

 壁面スイッチで電源を入れ、明るくなったのを見て、なぜか「おお」とか言っている。「電球なんだからそりゃ電源がオンになれば明るくなるわな」とは決して言わない。筆者は今回、黙って見守ることしかできないのだ。

 次に手にしたのがスマートフォン。ソケットに取り付けた電球を、すぐにスマートフォンから操作できると思ったのだろうか。事前知識がなければ筆者もそう思ってしまったかもしれないが……。妻はしばらく悩んでいたかと思いきや、ようやくここで説明書の存在に気付き、読み始める。「最初から読めばいいのに」とは口が裂けても言わない、絶対に。

スマートフォンで何かしようとしている妻

 説明書で設置手順をある程度把握できたのか、今度はブリッジを手にもつが、それをどこにどう接続するのかわからずうろうろ。たしかに説明書にも「Wi-FiルーターとブリッジをLANケーブルで接続します」としか書かれておらず、これだと「Wi-Fiルーターとは何か」を知らない妻が「詰む」のも仕方がないところではある……。

 そこで筆者から最初のアドバイスとして、Wi-Fiルーターが何であり、どこにあるかを教えることにする。コネクタ形状からLANケーブルの接続方法はわかったようなので、無事Wi-Fiルーターにつなげることはできた。

 が、説明書にある「ブリッジに同梱のアダプタを挿して電源を入れます」の部分は見逃していたようで、そこでまた右往左往。さらに5分ほどタイムロスしてなんとかACアダプタを接続した。LANケーブルさえ接続すれば給電される、と考えたのかもしれない。まあPoE(Power over Ethernet)っていうLANケーブル経由で給電する規格もあるので、あながち完全に間違いとは言えない……とフォローしておく。

最初のアドバイスでWi-Fiルーターの場所を教える。それです

 しかし、Google Playをほとんど利用したことがないのはやはり裏目に出た。Hue専用アプリのダウンロードのために、なぜかHueをWeb検索し、Hueの公式サイトで情報収集。たっぷり5分は情報収集に励んでいたが、そのうちWebからアプリがダウンロードできないことに気付き、なんとかGoogle Playから探し出してインストールした(公式サイトにはアプリストアへのリンクがあってほしいものだが)。

Hueの公式サイトでアプリを探す。そうじゃないと思うぞ、とは言わない

 その後のアプリからの接続設定については手間取ることなく、スムーズに完了。パッケージの開封からアプリ操作によるHueのオンオフまで、かかった時間はおよそ30分だった。

アプリからライトをオン! 途中子供に妨害されながらも30分で完了した

 というわけで、わずか30分で「Hueを使える状態にできる」と考えれば、十分に「簡単」な部類に入るだろう。「Wi-Fiルーターとは何か」さえ理解しているなら、説明書を読みながら進めるだけで、おそらく誰でも30分かからずにセットアップを終えられるに違いない。

 これとは別に気になったところを挙げるとすれば、アプリからの照明の操作方法だ。UIの問題もあって、調光操作できる部分がないように見える。結局筆者があちこち操作して1〜2分で見つけることができたのだが、簡単そうに見えて意外と複雑なタイマー設定も含め、より親切なインターフェースにならないと、Hueのオンオフ以外の機能を「誰でも」使いこなせるようになるのは難しそうだ。

Philips Hueアプリ。一覧内にある2個の電球のアイコンの下、横長の帯になっている部分が調光操作用のゲージになっている。2つとも100%になっていると操作できるということがわかりにくい
タイマー機能で自動で起床時に明かりをつけたり、就寝時に消したりできる。ただし、例えば「就寝時間の前に明かりをつける」ような場合、どこからどう設定すればいいのかがわかりにくい
ちなみにディマースイッチはクローゼットポールに取り付けてみた。背面に磁石があるので、取り付け・取り外しが簡単だ

2. Google Homeを使って声でHueをオンオフしてみよう

Google Homeをセットアップする

 Hueを操作できるようになったところで、Google Homeのセットアップ。Google HomeはHueよりも最初の設置手順や設定方法ははるかに簡単だ。ACアダプタを忘れずに取り付け、説明書通りにGoogle Homeアプリをダウンロードして画面の指示に従うことで、初期設定はあっという間に終わる。

Google Homeアプリを起動するとすぐにGoogle Homeが見つかる→音声認識を試して→初期設定が完了!
Google Homeをセットアップする

 設定中にスピーカーから再生される音声のデフォルト音量が(深夜に作業していたこともあって)やや大きく、びびっていた妻だが、「しゃべるんだ。かわいい」と、まんざらでもない様子。

 しかし問題が発生したのは初期設定の完了後だった。「ねえグーグル」で反応するように設定したはずなのに「OKグーグル」にしか反応せず、何か命令してみても「Sorry, I can't help with that yet. But I'm trying to learn.」とことごとく英語で返ってくるのみ。初期設定では日本語だったのが、いきなり英語に切り替わってしまったせいで、妻はお手上げ状態である。

 筆者も混乱しつつ、言語設定を英語から日本語に戻す方法を、結局スマートフォンでWeb検索して調べ、事なきを得た。これで筆者からできる2回分のアドバイスを消化。あとは自力でなんとかしてもらうしかない……。

初期設定後に音声が英語になってしまう場合は、ナビゲーションドロワーから「その他の設定」→「Google Home」→「アシスタントの言語」から日本語に切り替えよう

 本当に自力でGoogle HomeからHueをオンオフできるようになるのか。心配する筆者をよそに、まだ何も設定していない状態で「ねえグーグル、明かりを消してみて」と唐突にお願いする妻。「いや、さすがに無理だろう」と思っていたら、なんと「このライトは、まだ設定されていません。Google Homeアプリを開いて、スマートホームからライトを追加してください」とGoogle Homeが返事したではないか!

 言われたとおり、いそいそとGoogle HomeアプリでHueの設定を進め、見事Google HomeからHueをオンオフするのに成功した。おそらく筆者なら、あれこれ設定項目を探してトライ&エラーで進めてしまい、結果的に時間がかかってしまっただろう。しっかりガイド音声を用意しているGoogle Homeもすばらしいが、こういったスマート機器を知らないユーザーだからこそ、うまく設定できた例と言えるかもしれない。

言われたとおりにPhilips Hueをデバイスとして追加。見事Google Homeと連携できるようになった

3. Google HomeでJ-WAVEを聞こう。さらにJ-WAVEを目覚ましに設定できるかな?

 いよいよ最後のステップ、Google Homeでラジオ聴取にチャレンジする。Google Homeの日本での発売からしばらくしてradiko.jpの対応が発表され、ラジオを聞けることはわかっていたが、具体的にどのように話しかければラジオを再生できるのか筆者も把握していなかった。

 そんななか、何の気なしにしゃべりかけた妻の「ねえグーグル、J-WAVEを聞かせて」のセリフであっさりJ-WAVEを受信。Hueの設定もそうだが、スマートスピーカーを使うときは、むしろ難しく考えない方がいいのかもしれない。

「ねえグーグル、J-WAVEを聞かせて」であっさり受信に成功

 ただ、その後いろいろと試行錯誤しながらGoogle Homeに話しかけたものの、ラジオ音声を目覚ましに設定することはついにできなかった。例えば「明日の6時に目覚ましを設定して」としゃべればアラームを設定できるが、「明日の6時にJ-WAVEを聞かせて」などは認識されない。

 「5分後にJ-WAVEを再生して」というような相対時間の指定も無効だ。「5分後にライトを消して」と話しても認識されないので、時刻と連携する機能はかなり限定されていると思われる。

 音声認識について言えば、「明かりをつけて・消して」で複数のHueを一度にオンオフできるのに、「2階の明かりをつけて・消して」だと理解されず、それでいて「2階の電気をつけて・消して」はきちんと認識したりもする。正確な表現ではない「電気」がOKで、より正しい「明かり」が認識されないというのは、いまいち釈然としない。

 また、「明後日の天気は」と聞いたとき、「明後日」の部分が内部的に漢字で認識されると天気を教えてくれるのに、ひらがなで認識されると「わかりません」と返されてしまったりする。こういった「かゆいところに手が届かない」場面に遭遇すると、ちょっとフラストレーションが溜まりがちではある。

苦労の跡が見えるGoogle Homeに話しかけた内容の履歴

1台では足りない? ようこそ「スマートスピーカー沼」へ!

 結論としては、IT機器に詳しくない妻でもわずかなヒントでセットアップでき、「誰でも」かどうかは微妙ながらも、HueやGoogle Homeは多くの人が簡単に使い始められることは間違いない、と言える。

 あとは、Google Homeが今のところごくシンプルな言葉の組み合わせでしか利用できず、用途が限定されるように感じられる点をどう捉えるか。なのだが、こういった戸惑う部分も、しばらくすれば自然に解決する問題かもしれない。Google HomeのエンジンであるGoogle アシスタントはクラウドサービスのため継続的に進化しており、いずれはより複雑な組み合わせの命令も理解して実行できるようになるだろう。

 実際、Google Homeの購入直後は、アシスタントのしゃべる「radiko」のイントネーションが「ラ→ジ→コ→」と棒読みだったのに、最近は「ラ↑ジ↓コ↓」に変わっていたりする。昨日まで当たり前だったことが、翌日には当たり前じゃなくなっていることもあるなんて、なんて未来的なんだろう!

 などと、日々変わっていくGoogle Homeをネタに、家族の間で今までとはちょっと違った会話が生まれるのも面白い。筆者もできるだけ積極的にGoogle Homeとコミュニケーションを図っているが、頻繁に活用するようになってくると、ネックとなるのが自宅に1台しかないこと。自宅のどこにいても操作できるように、比較的安価なGoogle Home Miniを各部屋に置くのもアリかも、などと思い始めている。「スマートスピーカー沼」という言葉ができる未来も、そう遠くないかもしれない。

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、フリーランスのライターとして執筆・編集業を営む。AV機器、モバイル機器、IoT機器のほか、オンラインサービス、エンタープライズ向けソリューション、オートバイを含むオートモーティブ分野から旅行まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「できるGoProスタート→活用 完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS+Androidアプリ 完全大事典」シリーズ(技術評論社)など。Footprint Technologies株式会社 代表取締役。