レビュー

スマートスピーカーにJBLサウンドと“ポータブル”の価値。JBL LINK 20/10

 音声で操作できる「スマートスピーカー」が注目を集めた2017年。AmazonのEchoシリーズ、GoogleのGoogle Home、LINEのClova WAVEなどの製品が発売され、音声対話で情報を探したり、音楽を探して聞くといったライフスタイルが、徐々に根付きつつある。

JBL LINK 20(左)とJBL LINK 10(右)

 スマートスピーカーは、ユーザーが知りたいこと、やりたいことを、音声操作を通じて、クラウドサービス経由で届けてくれる製品だ。音楽もストリーミング配信のクラウドサービス利用が前提となっており、2018年にはAppleもHomePodでスマートスピーカーに参入する。

 音声を通じて、天気予報などを教えてくれる情報サービスや、家電連携などがすでに実現されており、将来的にはさらに多くの場面で音声操作が使われることは間違いなさそうだ。ただし、2017年現在のスマートスピーカーで、もっとも使われている機能はその名の通り“スピーカー”。音楽の再生だ。上記の各社も、それぞれがストリーミング音楽配信サービスを展開している。

 ただし、スピーカーなので、当然オーディオメーカーも関わってくる。Amazon、Google、LINEらがプラットフォームを構築したうえで、各メーカーが対応製品を発売してきている。例えば、例えばAmazonの音声アシスタント「Alexa」はAmazon Echo以外にも、オンキヨーやHarman Kardonなどから搭載スピーカーが発売されているし、Googleの「Googleアシスタント」もソニーやオンキヨー、パナソニックなどがスマートスピーカーを手掛けている。

 その中でもユニークといえる製品が、JBLのGoogleアシスタント対応スマートスピーカー「JBL LINK 20」、「JBL LINK 10」だ。「JBLサウンド」とともに大きな特徴といえるのが、「ポータブル」であるということ。つまり、バッテリを内蔵し、部屋の中や外出先に持ち運べるスマートスピーカーなのだ。

JBL LINK 20
JBL LINK 10

「ポータブル? 普通でしょ?」と思う人も多いかもしれない。

 最近のBluetoothスピーカーの多くは、バッテリを内蔵している。なので、Bluetoothスピーカー=ポータブルと考えている人も多いだろう。

 しかし、スマートスピーカーは常に音声入力を待機しているということもあり、ほとんどの製品が電源(ケーブル)接続が必要だ。バッテリを搭載しているのは、LINEのClova WAVE/Friends程度。Googleアシスタント搭載スピーカーにおける、ポータブル対応は、日本ではこのJBL LINK 20/10が初登場となる。直販価格はLINK 20が19,880円、LINE10が14,880円。この“ポータブルスマートスピーカー”を試した。結論から言うと、スマートスピーカーのポータブル対応はとても魅力的だ。

バッテリを内蔵したスマートスピーカー

 JBL LINK 20/LINK 10は共通のデザインイメージで、最近の360度スピーカーやスマートスピーカーで一般的になった円筒形。大型のLINK 20の外形寸法/重量は93×210mm(直径×高さ)/約950g、LINK 10が86×169mm(同)/約710gだ。

JBL LINK 20
JBL LINK 10
パッケージ

 基本はGoogleアシスタントを使った音声操作だが、本体上部にタッチパネルを備えており、音楽などの再生/停止、スキップ/バックと、Bluetoothのペアリングに対応する。中央のアイコンはGoogleアシスタントの呼び出しボタン。「OK,Google」と呼びかけるだけでなく、ボタンでもGoogleアシスタントを呼び出せるようになっている。

 背面上部には電源ボタンとバッテリ残量を示すLEDインジケータ。その下にはマイクミュートボタンを備えている。

天面の操作ボタン
背面の電源ボタン

 LINK 20は50mm径のフルレンジユニットを2基搭載し、出力は10W×2。LINK 10は45mm径フルレンジで、出力は8W×2。「パワフルで迫力のあるJBLサウンドが楽しめる」という。再生周波数特性はいずれも65Hz~20kHz。

 本体は水深1mで30分間耐えられるというIPX7の防水性能を備えているため、屋外でのレジャーや、キッチン、浴室などで利用可能。「浴室で使えるスマートスピーカー」というのも、現時点ではJBL LINKシリーズのみの特徴だ。

底面も防水仕様

 本体にはリチウムイオンバッテリを搭載し、アウトドアを含め、好きな場所に持ち運んで利用できる。バッテリ駆動時間はLINK 20が約10時間、LINK 10は約5時間。屋外でもインターネット回線があればGoogleアシスタント機能を使用できる。なお、JBL LINK 20にはUSBケーブル接続のACアダプタが付属。LINK 10はUSBケーブルのみが付属し、USBで経由で充電する。

JBL LINK 20のACアダプタ

 手に持ってみると、JBL LINK 20は高さは500mlのペットボトル程度だが、片手で持つにはやや太めなサイズ感だ。とはいえ、家の中で持ち運ぶ分には全く問題ない。JBL LINK 10はより手軽に持ち運べるサイズ/重量となっている。

JBL LINK 10とLINK 20
Google HomeとJBL LINK 20、Clova WAVE

設定はGoogle Homeとほぼ同じ

 設定はアプリ「Google Home」から行なう(リンク)。この点は、Google Homeなどと同じで、JBL LINK 10/20の初期設定にはスマホと無線LANルータが必要。今回は主にJBL LINK 20でテストした。

JBL LINK 20とGoogle Home

 JBL LINK 20を電源に接続し、Google Homeアプリで、右上の[デバイスアイコン]をタップすると、付近のJBL LINK 20を検出し、LINK 20が音声で返答する。あとは名前を付けて、無線LANの設定を行なう。スマホ側で使っている無線LANの設定が利用されるので、ルータのパスワードを調べる必要はない。あとは、現在位置情報や優先的に使用する音楽サービスなどを選ぶだけで、設定完了だ。

 設定や基本的な使い勝手もGoogle Homeとほぼ同じで、スピーカーに向かって「OK Google」と話しかけると、質問に対する回答を対話形式で応えてくれる。天気情報の確認やタイマー設定、交通状況のチェックなどが可能。「今日はなんの日?」とや「(現在地から)新宿までの距離は?」といった質問にも答えてくれる。

JBL LINK 20とLINK 10、Amazon Echo

さすがのJBLサウンドで、出力も大きい。音楽サービス連携が嬉しい

 JBLのスマートスピーカーということで、当然気になるのは音質。

 対応の音楽配信サービスは、Google Play MusicとSpotifyが表示される。いずれかを[デフォルト]に選んでおけば、音声で指示した際に優先して利用するサービスとして扱われる。例えばSpotifyをデフォルトに選ぶと、「OK,Google 音楽をかけて」というと、「Spotifyで音楽を再生します」と応答して、Spotifyから音楽を再生してくれる。デフォルトでSpotifyを選んでいても、「Play Musicで音楽をかけて」といえば、Play Musicからの音楽再生も可能だ。

 「最近のジャズを再生」とかざっくりとしたお願いでも音楽を選んで再生してくれるし、「ドリカムの曲を再生」といったアーティストやアルバムの指定再生にも対応。「次の曲」や「ボリューム上げて」といった音声コントロールも行なえる

 また、Googleアシスタント系のスマートスピーカーが優れているのが、スマホやPCのアプリとの連携。現在再生中の曲をアプリ上で確認できるだけでなく、SpotifyやGoogle Play Musicのアプリ上で自由に選曲できる。

アプリから操作できるのもGoogleアシスタント搭載スマートスピーカーの特徴

 まず「音楽をかけて」でスピーカーから音楽を流して、気分にあったプレイリストや楽曲が出てこないときに、アプリから曲を選べる。Clova WAVEやAmazon Echoは、再生中の曲確認や履歴の確認はできるが、スマホアプリ側からの選曲はできない。だから、自由に曲を選びたい人には、現時点ではGoogle系のスマートスピーカーがおすすめだ。

 音質もよい。ボリュームを上げると相当に大出力で、音の広がりもしっかりしている。バッテリ駆動時でも大音量が出せる。Google Homeはかなり低域寄りだったが、LINK 20はやや低域は強めながらも、ボーカルを際立たせながら、音が広がり、高域の情報量もしっかりしている。グレゴリー・ポーター「Mona Lisa」では、広がりあるストリングスの中に立ち上がってくるボーカルが気持ちよい。ドナルド・フェイゲン「I.G.Y.」の冒頭のベースの重さや乾いたスネアの質感が印象的だ。

 注意したいのはボリューム。JBL LINK 20では、ボリュームを上部の4つのLEDの点灯状態(明るさは多段階)で示すのだが、小音量では少し低域が物足りなく感じる。LEDの点灯が[1]の時は物足りず、[2]がかなり明るくなるボリュームで低域がぐっと出てきて、[3]に入ると本領発揮といった感じだ。上原ひろみ「Voice」では、ボリュームを上げるにつれ、ピアノ、ベース、ドラムが絡みあうドライブ感がぐっと高まってくる。パソコンの脇においてBGM的に作業する時とかでも、ちょっと煩いぐらいのボリュームが欲しくなってしまう。

 360度スピーカーなので、ステレオ感はそれほど期待していなかったのだが、結構ステレオ感があるのも印象的。コーネリアスの「Fit Song」を聞くと、明らかに左右から音がセパレートして聞こえる。Google Homeをはじめ、多くの360度スピーカーは、ステレオ音源をモノミックスした後、360度に音を拡散しているのだが、JBL LINK 20では、よりステレオっぽく聞こえる。ハーマンインターナショナルに確認すると、LINK 20/10はステレオ再生を行なっているとのこと。音にこだわる人は、このあたりも注目してほしい。

 少し気になったのは、音楽再生中などの周囲の騒音が大きな時に、「OK,Google」への応答が今一つということ。Google Homeは、ボヤっと話しかけても結構反応してくれるが、LINK 20は、きちんと「OK,Google」と発音しないと、認識しないことがあった。防滴仕様のためのラバーなどマイク収音には厳しい設計なのかもしれない。

 JBL LINK 20の音質や高出力も気に入ったが、使いやすいと感じたのが、天面のパネル。音声で操作してもいいのだが、手元にLINK 20があるときは、ボタンを押したほうが早い。Google Homeは天板に円を描く、ソニーLF-S50Gは手をかざしてボリューム操作するのだが、JINK 20ではシンプルにボタンを押すだけなので、音量変更がとても楽だ。

【訂正】記事初出時に「Googleアシスタントの応答音量が変更できない」と記しておりましたが誤りでした。Googleアシスタントの応答音声ボリュームは本体ボリュームに連動します。(12月22日追記)

部屋の広さや使用シーンにあわせて使いたい「LINK 10」

 同様に小型のLINK 10も試した。出力は8W×2と、若干小さくなるものの、音質傾向としてはよく似ている。音の広がりはやや弱くなるが、音に勢いがあり、聞きやすく感じることもある。

 特にノートパソコンの脇に置いて、小音量で再生する時は、実はLINK 10のほうが好印象。LINK20は小音量時に低音が薄めなのだが、LINK 10のほうが音を絞っていてもしっかり聞かせてくれ、バランスの良い音を聞かせてくれる。グレゴリー・ポーター「Mona Lisa」のボーカルも気持ちよく、ストリングスの広がりも十分だ。

LINK 10

 ボリュームを3以上に上げていくと、かなりの大音量が出て、迫力あるサウンドを鳴らしてくれる。ダイナミックレンジはLINK 20のほうが上で大音量だと、LINK 20がいいな、とは思うのだが、例えば、上原ひろみ「Voice」を音量を絞った状態で聞くと、LINK 10のほうがバランスよく、迫力もある。あまりボリュームが出せない環境では、LINK 10のほうがマッチすると思う。リビングにはLINK 20、寝室や勉強部屋にはLINK 10といったイメージだ。

 あと、スマートスピーカーは「勉強や仕事のお供」にも結構使える。例えば(英語の)「テンポラリーってどういう意味?」と聞くと「一時的」と返してくれるし、為替レートを調べるといった、ちょっとした調べ物を、手を放さずに教えてくれるので便利だ。

ポータブルという価値。実は便利なBluetooth

 LINK 20/10の特徴であるポータブルについても触れておこう。Google HomeやEchoを使っている限り、別に持ち運べなくてもいいかな? と思っていたが、実際にやってみると、「これはいい」、と思うシーンが多いのだ。

バッテリを内蔵し、ポータブルで利用できる

 LINK 20でradikoをつけて仕事した後に、そのまま寝室に持っていって読書のお供に使うといったこともできる。最近ではSpotifyなどの音楽サービスでもPodcastを聞けるので、勉強部屋に移動して語学学習、といったことも可能だ。

 あとはお風呂。LINK 10を持ち込んで音楽をかけてみると、低音もしっかり出て、音質的にもちょうどよい。声だけで操作できるので、スマホなどを持ち込む必要もないし、気楽だ。ニュースもおすすめだ。Googleアシスタントでは、主にNHKラジオニュースを読み上げてくれるので、今日のニュースを振り返るにはちょうど良い。

 また、お風呂につかりすぎない程度に「タイマー5分」とかセットしておけるのも便利。風呂とスマートスピーカーの相性は結構よいと感じた。お風呂は比較的狭く、音も響くし、サイズ的にもLINK 10が好みだ(風呂のサイズによるが)。お風呂を重視して、LINK 10を選ぶ、というのもありだろう。

JBL LINK 10をお風呂で利用

 また、Bluetoothにも対応しているため、AmazonプライムミュージックやApple Music、LINE MUSICなどのChromecast非対応の音楽配信や、スマートフォン内の楽曲再生ができる。

 ただ、家庭内で音楽用スピーカーとして使うのであれば、LINK 20/10に対応したGoogle Play Musicもしくは、Spotifyのほうが音楽配信サービスとしてはおすすめだ。

 Bluetoothが生きてくるのは外出先だ。GoogleアシスタントやChromecast built-inによるスマホ連携は、常時接続の無線LANにスマホとスピーカーが置かれていることが大前提。しかし、外出先に無線LANがあるとは限らないし、セットアップも面倒だ。その場合は、直接スマホとスピーカーをBluetooth接続して、シンプルにBluetoothスピーカーとして利用できる。

Bluetoothスピーカーとしても動作。iPhoneの楽曲を直接再生

 つまり、家ではスマートスピーカー、外出先ではBluetoothスピーカーと明確に使いわけができる。JBL LINK 10/20は「いままでのポータブルBluetoothスピーカーでできていたこと」が、そのままできるスマートスピーカーだ。

 バッテリ駆動時間はLINK 20が約10時間、LINK 10が約5時間。家の中で持ち運ぶ分には十分だろう。バッテリ残量は、背面電源ボタン上のLEDで確認できる。試しに、「OK,Google、バッテリ残量を教えて」とか話しかけてみたが、声でバッテリ残量は教えてくれず。あと何分なので充電してください、とか教えてくれると格好いいのだが、現時点ではできないとのこと。バッテリ充電時間は4.5時間(LINK 20)、4時間(LINK 10)。

LEDでバッテリ残量を確認

 また、Clova WAVEではバッテリ駆動時でもずっと音声待機状態になっているようで、前日に充電を忘れると、翌朝などに「バッテリ残量がなくなりそう」と喋って驚かされた。だが、LINK 20/10は、約1時間再生や操作が無いと、自動的に待機状態に入る。そのため、気づいたらバッテリがなくなっているということはない。

 ただし、待機状態からの復帰に30秒ほどかかるので、使い終わったら電源につなぐよう心掛けたい。また、バッテリ動作時には、1時間以上のアラーム/タイマーや目覚ましを設定しても、起動してくれないので、この点は注意してほしい。

ポータブルとスマートと両立した「JBL LINK 20/10」

 実売価格はLINK 10が14,980円、LINK 20が19,980円。Google Homeは14,000円だが、音質や防水、ポータブルなど、JBL LINKシリーズならではの特徴が多く、魅力的に感じる。特にBluetoothスピーカーからの買い替えを考えている人にとっては、できることが「増える(音声操作/Cast)」が、「減らない(ポータブル/Bluetooth)」ということが重要だ。

 スマートスピーカーが話題になった2017年だが、ポータブルでの使いやすさにこだわるのであれば、JBL LINK 20/10はまず選択肢にいれたい製品だ。スマートスピーカーというと、GoogleやAmazonなどのプラットフォーマーに目がいくし、実際Googleアシスタントも進化して、音声認識の精度も向上している。しかし、長年ハードウェアやオーディオを手掛けてきたメーカーが作ると、また違った魅力がスマートスピーカーに追加される。JBL LINK 20/10はその好例といえる製品だ。

(協力:ハーマンインターナショナル)

臼田勤哉