【新製品レビュー】

いよいよ発売された「iPad 2」を触ってみた

-完成度の向上で、より使いやすいタブレットに


9.7型液晶搭載タブレット端末「iPad 2」

 4月28日から発売が開始された、アップルの9.7型液晶搭載タブレット「iPad 2」。日本では当初3月25日に発売予定だったが、東日本大震災の影響などで延期され、待ちに待ったという人も多いだろう。編集部では28日の午前に、東京・新宿の家電量販店に並び、3G+無線LANの16GBモデル(ブラック)を入手したので、画像と共に紹介する。

 iPad 2の種類は基本的に初代と同様で、メモリ容量は16/32/64GBの3種類。それぞれに無線LANのみのモデルと、無線LAN+3Gのモデルを用意。3Gモデルは月額の支払が必要だが、それをせず、通信料金を前払いして必要な時のみ3G通信を行なうプリペイドプランも用意されている。価格の詳細は昨日の記事、もしくはソフトバンクの料金説明ページ(PDF)を参照して欲しい。なお、機能面の違いでは、3GモデルのみGPSを搭載している。


製品16GB32GB64GB
iPad 2
(無線LAN)
44,800円52,800円60,800円
iPad 2
(無線LAN+3G)
(一括)
56,640円64,800円72,720円


■さっそく開けてみる

 ケースはアップル製品らしいシンプルなデザイン。開けると隙間なく収納されたiPad 2が現れる。それを取り出すと、背後にDockケーブルや説明書、ACアダプタなどが収納されている。無駄が無く、洗練された収納レイアウトはアップル製品お馴染みのものだ。

 ディスプレイは9.7型/1,024×768ドットのIPS液晶で、マルチタッチ操作が可能。視野角は左右178度で、バックライトはLED。視野角が広いため、かなり自由な角度から眺めてもキチンとした表示ができるのがポイント。

「iPad 2」のケースケースを開けたところ。隙間なくiPad 2が登場する本体を取り出すと、説明書やACアダプタが現れる
説明書の下にDockケーブル」付属のUSB-DockケーブルUSB-ACアダプタも付属する

 外形寸法は241.2×185.7×8.8mm(縦×横×厚み)、重量601g(Wi-Fi)/613g(3G+Wi-Fi)で、初代モデル(242.8×189.7×13.4mm、重量680g/730g)より33%薄く、15%軽量になっている。

片手で持ったときの負担もだいぶ軽減された

 数字だけ見るとピンとこないが、片手で持ち比べてみると薄くなった事でより持ちやすくなり、重量そのものも軽くなったことが実感できる。初代は片手だけでホールドすると辛く感じる重さだったが、iPad 2では、もちろん長時間持つと辛くなるが、負担そのものはだいぶ軽減されている。

 背面を見てみると、初代は中心に向かって丘のように盛り上がっていたが、iPad 2は周囲がラウンド加工されているものの、背面自体はほぼフラットになった。そのため、ディスプレイを下に向けて置いて、真横から見ると、厚みの違いはあまり感じない。だが、ディスプレイを上に向けて置くと、背面が盛り上がった初代は、側面がかなり机から浮き上がる形になるため、iPad 2の薄さがより際立って見える。


ディスプレイは9.7型/1,024×768ドットのIPS液晶背面はフラットになっている横から見たところ。厚みは13.4mmから8.8mmに薄型化した
左が初代iPad。正面から見るとほとんど違いはわからないディスプレイを下に向け、厚さを比較したところ。左が初代。あまり厚さの違いがわからないディスプレイを上に向けて比べてみると、大幅にiPad 2が薄く感じる。初代は背面に盛り上がりがあるためだ
初代の背面。中央に向かって盛り上がっていることがわかるiPad 2の背面。フラットになっている
iPhone 3GSとのサイズ比較iPhone 3GSと厚さを比べたところ

 正面から見ると初代とほとんどデザインは変わらない。唯一違うのは、上部中央にFaceTimeなどのビデオ通話や、“自分撮り”用のデジカメを内蔵している事。さらに、背面にもカメラを搭載。外側のカメラは最高720pの動画撮影に対応するほか、静止画撮影にも対応。5倍のデジタルズームに対応する。内側のカメラは最高640×480ドット/30fpsの撮影が可能。これが初代との大きな違いだ。

 向かって右側面には、ミュート/ディスプレイ回転ロックのスライドスイッチと、音量調整ボタンを装備。上部側面には電源/スリープ用ボタンと、ステレオミニの音声出力を装備する。無線LANモデルは上部も含めて背面全体がシルバーだが、3Gモデルは上部のみブラックのパーツが入っている。

iPad 2の正面上部。新たにカメラを内蔵した背面のボタン部分。左下にあるのが電源/スリープ用ボタン、右側にあるのがミュート/ディスプレイ回転ロックのスライドスイッチと、音量調整ボタン。左側背面にある丸い穴は、外向きのカメラだ上部側面にステレオミニの出力を装備している
3G対応モデルは側面にSIMカードスロットを備えている

 



■音質をチェック

 内蔵スピーカーにも違いがあり、初代は下部側面に配置されていたが、iPad 2ではラウンド加工の側面に、斜めに配置されている。音質をうんぬんするスピーカーでもないが、机に置いたまま音を出すと、机に反射した音が耳に入るため、思ったより広がりのある音が楽しめる。低音はほとんど出ないが、中高域の付帯音は少なく、内蔵スピーカーにありがちな「筐体の響きが重なってボワボワした音」ではなく、クリアな中高域が出ている。手に持ったまま音を出しても同様の印象で、聞き取りやすい、ハッキリした音だ。

iPad 2の下部に内蔵されているスピーカーこちらは初代の下部。形状が変化したことがわかる

 イヤフォンからの音を聴いてみると、レンジが広く、比較的ニュートラルなサウンドが展開。「藤田恵美/camomile Best Audio」から「Best of My Love」を再生し、iPhone 3GSと聴き比べてみたが、iPad 2の方が低域のレンジが広く、音場も広く感じる。3GSは個々の音の音圧が高く、わかりやすい音だが、情報量の多さではiPad 2の方が優れていると感じた。いずれも色付けが少なく、偏りも無いので、派手さは無いが、多くの人が必要十分な音質と感じるだろう。

 9.7型ディスプレイは、初代と同じ解像度の1,024×768ドット。発色は良く、IPSならではの広視野角で、横から見ても色の変化は少ない。何人か並んで動画を鑑賞するといった使い方もできるだろう。YouTubeでフルHDの動画を鑑賞してみたが、検索・再生のレスポンスが高速で、無線LANが高速であればサクサクと再生できる。

YouTubeでフルHDの動画も軽快に再生できるWebブラウザも高速だ動画が埋め込まれたWatch Videoのページも快適に閲覧できる

 CPUはApple自社開発/設計のデュアルコアSoC(System On a Chip)「A5」を搭載し、iPadに比べ2倍の高速化と、9倍という高いグラフィック性能を実現している。ホームメニューの移動やWebブラウザの表示など、いずれの動作も高速だ。

 iPhone 3GSで幾つもアプリを起動し、ホーム画面に戻る際に引っかかりを感じるようなシーンでも、iPad 2ではなめらかな動きを維持。通常使用で、動作のストレスを感じる場面は少なそうだ。また、薄型化され、処理能力が高速化していても、バッテリ駆動時間は従来のiPadと同様で、ビデオ再生時で10時間を維持している。

 



■良く出来たSmart Cover

 本体も良く出来た製品だが、同時に購入した専用カバー「Smart Cover」もよく考えられた製品だ。簡単に言えばディスプレイカバーなのだが、片側に磁石を内蔵しており、iPad 2の側面に近づけると勝手にカチッとホールドされ、本のようにめくる形のカバーとして装着できる。

 磁石が固定される位置が、ディスプレイとカバーがジャストフィットする位置になっているため、カバーの位置をユーザーが微調整するような手間もいらない。カバーをめくるとスリープが解除されるという本体との連携も純正オプションならでは。また、カバーをめくってソフトウェアキーボード入力がしやすい体制に固定したり、動画観賞に適した向きに立てるなど、簡易的なスタンドとしても活用できる。

Smart Cover。写真はポリウレタンのグレーで、Apple Store価格は3,980円。革製も用意しており、6,980円となる片側のパーツに磁石を内蔵している
iPad 2に装着したところ。ディスプレイとカバーがズレずに固定されるカバーを開くとスリープ状態から自動的に復帰する
カバーを簡易的なスタンドとしても活用できるのがユニークだ

 



■完成度を高めたタブレット

 タブレットは、思い立った時に気軽に使え、簡単に収納できる事に特化したデバイスであり、高速化・軽量化・薄型化したiPad 2は、初代から極めてスタンダードに進化したモデルと言える。

 一方で、ゲームや動画編集、高解像度動画の再生、DTM用アプリでのクリエイティブな利用など、アプリの充実で活用の幅は初代登場時より大幅に広がっており、処理能力の向上は、複雑・高度化するユーザーの欲求に応えるための進化点だ。操作の快適さ、豊富なアプリによる活用幅の広さといった初代からの特徴をさらに進化させており、ライバルのAndroidタブレットが多数登場する中で、こうした“完成度の高さ”が、iPad 2の武器になるだろう。


(2011年 4月 28日)

[AV Watch編集部山崎健太郎 ]