【新製品レビュー】

DIGAの録画番組をカンタン持ち出しできるプレーヤー

無線LAN転送で最新番組更新。パナソニック「SV-MV100」


SV-MV100

 今回取り上げる「SV-MV100」は、3.5型のタッチ液晶を採用し、Android 2.1をベースにしたポータブルAV端末だ。ただし、最近各社から発売されるAndroidタブレットやスマートフォンと違って、Androidを搭載している点を積極的にアピールしているわけではない。DIGAやVIERAの機能を拡張するポータブルデバイスという位置づけの製品だ。

 特徴は、パナソニックの「ブルーレイDIGA」で録画したデジタル放送番組を簡単に転送し、SV-MV100で番組を鑑賞できること。DIGAとの連携が最大のセールスポイントといえる。

 これまでもレコーダとポータブル機器、ケータイの連携機能というのは多くあった。SDカードを介して、携帯電話に転送したり、USB接続したPSPや携帯電話に番組を転送するなど各社が様々なソリューションを用意していたが、今のところ大成功しているとはいいがたい状況だ。日本のデジタル放送のダビング10という制約も自由な利用を妨げる一因とはいえ、「転送」という作業が結構面倒という点が普及が進まない理由の一つだろう。

 そこでSV-MV100では、無線LANを使って、自動的にDIGAから番組を転送する方式を採用。より“カンタン”に番組をもち運べるようにした。加えて、音楽/ビデオプレーヤーやワンセグ端末としても利用可能。無線LAN搭載端末の特徴を生かして、YouTubeやradikoにも対応している。これだけの豊富な機能を持ちながら、直販価格で29,800円と、価格もリーズナブルだ。

 


■ 3.5型タッチ液晶採用。やや厚めのボディ

 付属品はイヤフォンとアンテナケーブル、USBケーブルなど。充電もUSB経由で行なう。

 3.5型/854×480ドットのタッチパネル液晶を搭載し、ほぼすべての操作をタッチパネル経由で行なえる。タッチパネル部は静電容量式。縦位置/横位置の自動切り替えにも対応する。16GBのメモリも内蔵するほか、SDメモリーカードスロット(SDHC/SDXC対応)も装備する。

 外形寸法は119.9×14.7×60.2mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約130g。少し厚みがあるスマートフォンといったところで、iPhone 3GSと比較しても若干厚いが、背面のラウンドが手になじむので持ちやすい。背面にはストラップホールも備えている。

 IEEE 802.11b/g対応の無線LANを搭載。電源は内蔵のリチウムイオンバッテリで、充電時間は約4時間30分。明るさ最少時のバッテリ持続時間は、ビデオ(ワンセグ録画番組)で約12時間、ワンセグ受信で約10時間、ワンセグ録画で約9時間、音楽再生で約50時間、FMラジオで約25時間、YouTube視聴で約8時間。

 なお、Androidマーケットには対応しない。製品発表時には。NECビッグローブの「Andronavi」がSV-MV100に対応して、アプリを提供すると告知されていたものの、こちらも「諸般の事情」により見送られることになってしまったのは残念だ(4月27日付でAndronaviはアプリ提供サイト運営の終了を発表している)。ただし、配布されているAndroidアプリ(.apkファイル)をダウンロードし、SV-MV100にインストールすることはできる。


SV-MV100。3.5型/854×480ドットのタッチパネルを採用する横置きにも対応する側面
SDカードスロットを装備するミニUSBとヘッドフォン出力上部に電源ボタンとボリュームボタン
背面。ストラップホールを装備するiPhone 3GSとの比較

 


■ 豊富なDIGA連携。DIGA録画番組の「簡単自動転送」が最大の魅力

メインメニュー

 起動するとメインメニューが立ち上る。メインメニューには、FMラジオ、写真、YouTube、音楽、ビデオ、ワンセグ、ブラウザ、DIGA、設定の9項目を用意。これらを液晶タッチパネルを使って操作する形だ。

 さらに、右下のサブメニューを呼び出すと、DIGAリモコン、DIMORA、MeMORA、radiko.jp、ネットワークメディアプレーヤー、メール、写真、電卓、連絡先などの機能も利用できるようになる。これらはAndroidの標準アプリに加え、パナソニック独自にカスタマイズしたものだ。


DIGAメニュー

 最大の特徴がDIGAとの連携機能。DIGA連携にはメインメニューで[DIGA]を選択し、「テレビ視聴」、「再生」、「ビデオ転送」、「簡単自動転送」項目が用意される。主な連携機能は以下の通りになる。


【DIGAとSV-MV100の連携機能】

機能概要
テレビ視聴DIGAで受信したデジタル放送を家庭内のMV100に中継して視聴
再生DIGAのHDD内の録画番組や写真をMV100で視聴
ビデオ転送DIGAのHDD内の録画番組をMV100の内蔵メモリやSDカードに転送
かんたん自動転送DIGAのHDD内の録画番組を、転送時間を指定して、自動で無線LAN経由もしくはUSBケーブル経由でMV100に転送
DMR-BZT700

 これらの全機能は、2011年2月発売の新ブルーレイDIGA(DMR-BZT900など5モデル)との組み合わせで使用できる。今回はDMR-BZT700を使ってテストした。なお、2010年秋モデル(DMR-BWT2000など)でも、SDカードでの録画番組持ち出しなどは行なえる。

 最大の特徴はブルーレイDIGAとの連携機能だ。DIGA録画番組からSD解像度の持ち出し用ファイルを生成し、USBやSDカードを経由してポータブルVIERAなどに転送する機能は従来から用意されていた。新たにSV-MV100では、DIGA内のHDD録画番組をMV100の内蔵メモリーに、無線LAN経由で転送できるようになった。これが「かんたん自動転送」機能だ。これにより、録画した「持ち出し番組」を任意の時間に自動的にSV-MV100に転送できるようになる。


DIGAの録画時に持ち出し番組の作成を設定ネットワークを選択

 番組持ち出しのためには、DIGAの番組予約録画時に「持ち出し番組の作成」で、「する」を選択。転送方式として「SD/USB経由」、「ネットワーク経由」の2方式が用意されるが、無線LANで転送する場合はネットワークを選択する。画質は640×480ドット/30fps/1.5MbpsのMPEG-4 AVC/H.264の「VGA(高画質)」のみとなる。

かんたん自動転送の設定

 無線LAN経由の「かんたん自動転送」のために、SV-MV100側の設定としては、まず「ビデオ転送」の項目で転送先として「内蔵メモリー」を選択。また、自動転送をONにして、DIGA内の転送用番組の期間を3日/1週間/2週間/制限なしから選択。さらに、自動転送を行なう時間を設定する。例えば、AM2:00などに設定すれば、持ち出し対象の番組を、毎日AM2時にSV-MV100に転送してくれる。転送時間は1時間番組で約20分としている。

 無線LAN転送に対応したことで、USBケーブルで機器接続したり、転送操作を行なうことなく、任意の時間に“自動的に”番組転送できるようになった。前日に録画した番組を、寝ている間にSV-MV100に転送、朝にSV-MV100を持ち出す際には番組が転送されているという具合だ。一度設定してしまえば、転送作業を意識する必要が無いという点で、魅力的なソリューションといえる。

 実際に使ってみると、感覚としては“勝手に転送されている”という印象。もちろん、実際にはDIGA側で録画時に転送設定しているのだが、その後はSV-MV100の操作を特に行なうことが無いので、何もすることなく新しい番組が追加されている。この感覚は新鮮だ。ただし、録画時に「持ち出し番組の作成」の設定を忘れないようにしたい。

 なお、持ち出し番組転送時には、1回のダビングとカウントするため、ダビング10番組の場合、残りダビング回数が1回減る。また、ダビングした番組をDIGAのHDDに書き戻すことはできない。

 SDカード/USBへの持ち出しの場合は、VGA(高画質)に加え、「QVGA(ワンセグ画質)」も選択できる。SD/USBで録画した番組は、従来通りUSBケーブルやSDカード経由で携帯電話やポータブルVIERAなどに転送する。ただし、この場合はUSBケーブル接続やSDカードの出し入れやDIGA側の操作が必要となる。「ネットワーク」ではこうした手間を省いているのが最大の特徴だ。

【持ち出し番組】

方式ネットワークSDカード/USB
画質高画質(VGA)高画質(VGA)
ワンセグ(QVGA)
接続無線LANSDカードもしくはUSB

 高画質(VGA)というだけあり、画質も良好だ。3.5型/854×480ドットのSV-MV100に適した解像度ということもあるが、解像感や色などの情報量の欠落はほとんど感じられない。フレームレートが15fpsになってしまうワンセグとの画質差は歴然で、ポータブル用として画質に不満を感じることはないだろう。早送り/戻しなどの操作もタッチパネル上で行なえる。

 ただし、DIGAで自動作成されているはずのチャプタ情報を、持ち出し番組に引き継げないのは残念。CMスキップなどができればより便利に感じると思う。また、途中まで再生した番組を、SV-MV100で途中から再生するといった場合のレジューム再生にも対応しない。

 なお、持ち出し用の番組は、DIGAの録画と同時に作成するのではなく、録画終了後の電源OFF時にエンコードされる。ネットワーク転送の場合は、DLNA/DTCP-IPのルールに則った形式で作成し、内蔵メモリに転送する。一方、SDカード/USBではSD-Video形式に準じた形式で作成される。そのため、SD /USB用の番組をネットワーク転送することはできず、ネットワーク転送用の番組もSD/USBに書きだすことはできない。

 また、番組終了後にエンコードされるため、録画終了後しばらくは転送用ファイルが作成されない。例えば、転送時間をAM2:00に設定している場合、1時30分終了の1時間番組などはエンコードが終わらず、その日の同期時には転送されず、翌日に転送されることとなる。この点は注意したい。


任意の番組を選択して転送も可能

 とはいえ、「ビデオ転送」から任意の番組を選択しての転送もできるため、「翌朝起きてSV-MV100に転送」などの操作も可能だ。ただ、転送時に気になるのは転送の進捗や、いつ終わったかがわからないこと。転送中のステータス表示や、終了メッセージなどがほしいと感じた。


DLNAサーバーとなるDIGAを選択

 「テレビ視聴」は、家庭内のDIGAからSV-MV100にライブ動画を中継する機能。SD解像度約1.5Mbpsに再エンコードし、同一ネットワーク内のSV-MV100から視聴できるため、リビングのDIGAで受信している映像を、寝室のSV-MV100で見ることができる。実際の放送に対し、約6秒程度タイムラグがあるが、リビングのDIGAのチューナにアクセスし、寝室のSV-MV100で見るといった使い方もできる。

 地デジだけでなく、BS/110度CSデジタル放送番組をMV100で視聴できる点も魅力的だ。ただし、DIGAの録画中や、録画番組の再生中、BD再生中、ダビング中には同機能を利用できないなど制限は多い。この点で活用シーンがやや限定されてしまう感はある。

 「再生」は、DIGA内の録画番組をDLNA/DTCP-IP経由でSV-MV100で視聴できる機能。パナソニックの「お部屋ジャンプリンク」ですでにおなじみだが、ネットワーク内のDIGAを選択すると、DIGAの録画リストが表示され、録画順や未視聴、スポーツ、音楽などのジャンル順で番組を探して、再生できる。選択した番組は3~4秒程度で再生開始し、早送りや戻しも行なえる。


DLNAサーバーを選択番組を選択数秒のタイムラグがあるがネットワーク経由で再生できる。10秒バックや30秒スキップにも対応

 このほか、DIGA用のリモコンや、録画系のネットワークサービス「Dimora」や、再生系の「Memora」などをSV-MV100から利用するためのランチャーアプリも備えており、DIGAの多くの機能をSV-MV100からコントロールできる。

 


■ ワンセグやオーディオプレーヤー機能も充実

ワンセグチューナも搭載ワンンセグ用アンテナが付属

 ワンセグチューナも内蔵し、ワンセグ視聴/録画に対応。チャンネルは地域選択後にオートスキャンを行なって登録でき、画面に表示される+/-ボタンを使ってチャンネル変更が可能。ワンセグ用のアンテナケーブルも付属する。受信感度も結構高く、他のワンセグ機器の受信状態がよくない東京千代田区の編集部でも、かなりチャンネルが受信できた。

 録画にも対応し、最長で8時間の録画が可能で、SDカードに最大99番組、内蔵メモリに最大4,095番組の録画が可能。ただし、録画する記録メディアは事前に選択しておく必要がある。予約録画番組数は最大12番組。

 最近は停電や、防災用テレビという意味でもワンセグが注目されている。SV-MV100のワンセグにはそれほど特筆すべき機能はないかもしれないが、ちゃんと使えるワンセグが入っていることは魅力的。FMラジオも備えているので緊急時の情報端末としても重宝するだろう。

 DIGA連携以外にもPCなどから転送した動画や音楽、写真の再生に対応。対応ビデオ形式は、MPEG-4 AVC/H.264(Baseline Profile)とMPEG-4、WMV。MPEG-4では解像度は最大720×480ドット、30fpsまでサポートする。

 また、Blu-ray Discにモバイル機器のコンテンツを収め、携帯電話やスマートフォンなどに移して視聴可能にする「e-move」にも対応。e-move対応BDビデオソフトに記録された高画質/ワンセグ画質のコンテンツを、e-move対応DIGA(DMR-BZT900/800/700/600)から転送し、視聴できる。e-move対応BDタイトルは、6月3日に「トロン:レガシー」が発売予定だ。

イヤフォン

 音楽はWindows Media Playerからの転送やドラッグアンドドロップでの転送に対応。MP3、WMA、AACファイルの再生が可能となる。また、同社がかつて展開していたSDカード採用ポータブルオーディオ「D-snap」用のSD-Audioファイルの再生にも対応する。

 音楽再生機能は、音質にもこだわり、圧縮時に失われた高域成分を補間する「リマスター」などの高音質化機能を搭載。クリア、ヘビー、トレインなどの9種類のイコライザも搭載する。ヘッドフォン出力は3mW×2(16Ω)。端子はステレオミニジャックとなっている。280mW出力のモノラルスピーカーも内蔵する。

 音楽プレーヤー機能はシンプル。アルバム/アーティスト/曲名などで検索可能で、再生時にはアルバムアートも表示できる。本体に表示される再生/停止、スキップ/バックボタンをタッチして操作でき、リピート、シャッフル再生も可能。付属のカナル型(耳栓)イヤフォンも、見た目はチープながら、耳穴にしっかりフィットする。

 音質も良好だ。厚みのある中低域が特徴だが、最低域はそれほど深くなく、スピードやキレもさほど無いので、ややもっさりとした印象を受ける。しかし、ベースラインの描写などは輪郭がしっかりし、ボーカルの音像も立体的。情報量は普通だが聞きやすく、音質への不満は感じない。

 ただし、他のオーディオプレーヤーと比較するとレスポンスが鈍い点が気になる。例えば曲スキップ操作をしてから反映されるまで0.2~3秒ぐらい待たされる。実用上大きな問題はないが、最近のプレーヤーでは、ほとんど操作後のタイムラグを感じる製品はないので、この点は改善を求めたい。

 また、ライブ盤などの曲間を詰めて再生する「ギャップレス再生」には対応していないので、曲の間に一秒ほど間隔が開いてしまうのが残念。今回、ローラ・ニーノのライブ盤「Spread Your Wings & Fly: Fillmore East May 30 1971」を聞いてみたが、曲間の拍手が0.5秒ぐらい途切れるのですごく気になる。基本機能は十分で、音質も満足できるが、こうした細かい作りこみの部分で、専用プレーヤーと比較すると不満は残る。

FMチューナを搭載ブラウザも装備YouTube

 


■ 充実の機能と今後のAndroid展開への期待

 機能的には充実したポータブルプレーヤー。特にデジタル放送などの日本固有の事情に対応し、DIGAと組み合わせて利用するという条件のもとでは、「録画したテレビ番組を毎日のように持ち歩いて視聴したい」という人とって最適な選択肢になると思う。

 また、停電や節電目的のワンセグテレビとして購入しても、付加機能として十分な魅力がある。29,800円という価格もリーズナブルだ。これらの点ではSV-MV100は今の時点でも十分に魅力的な製品といえる。

 一方で、一般的なポータブルメディアプレーヤーと比較すると、音楽プレーヤーのレスポンスやギャップレス未対応のように、細かい作りこみでは不満点は残るし、もう少し完成度を高めてほしいと感じる。また、Android端末としての広い展開はパナソニックでは想定しておらず、タブレット端末などと比較すると、Androidマーケット非対応などで拡張性は物足りない。

 とはいえ、Android上で積極的にデジタル放送に対応していく姿勢は積極的に支持したいし、この方向性をどんどん強化していってほしいと感じる。1月のCESではVIERAタブレットも発表していたが、こうした機器やスマートフォンなどで、日本メーカーならではの差別化を盛り込み、使いやすさを向上しててほしい。特に録画機器との連携は今後も大いに強化してほしいところ。これからの製品展開にも期待したい。


(2011年 5月 31日)

[AV Watch編集部臼田勤哉 ]