ニュース
聴く読書「Audible」、湊かなえ最新作11月配信。お笑い、声優などエンタメコンテンツ拡充
2025年10月21日 17:05
Amazonオーディブル(Audible)は10月21日、日本でのサービス開始10周年を記念した配信作品ラインナップを発表した。湊かなえが初めて手掛けた“オーディオファースト作品”となる「暁星(あけぼし)」などをラインナップする。
Amazonが手掛ける”聴く読書”サービスのAudibleは、2015年に日本でのサービスを開始し、今年で10周年の節目。2025年6月にはAmazon Music Unlimited会員向けに月1冊の無料提供をスタートしている。
10周年記念のスペシャルラインナップでは、書籍発売に先駆けてオーディオブックを配信する”オーディオファースト”の作品を強化。Audibleでも人気が高いというミステリー作家・湊かなえがAudibleのために書き下ろした「暁星」を11月11日から独占配信する。21日からプレオーダーを受け付けており、朗読は櫻井孝宏と早見沙織が務める。
作者の湊によれば、今作は「ある事件が起きて、全国高校生総合文化祭の会場で、式典中に大物の政治家が殺されるんですが、それを巡って犯人は手記を書き、現場にいた作家は小説を書く。ひとつの事件をフィクションとノンフィクションから見て、どんな真実が見えてくるか、といった作品」とのこと。湊自身も「この作品に正面から向き合って挑んだところがあって、今回の暁星が最新作にして、一番好きな作品になりました」という。
なお、同作は「The Star at Dawn」として英語版でも世界配信予定。
そのほか林真理子による「80代になるとたいていボケるか死ぬ。70代は神様から与えられた特別な時間』(10月31日配信)や、スコット・アランによる「200 GENTLE HABITS 1日1ページ、人生をひらく 小さな習慣」(12月配信予定)といったオーディオファースト作品を順次配信するほか、作家・中山七里もオーディオファースト作品の執筆を進めているとのこと
また人気作家の新作・名作のオーディオブック化も推進。村上春樹や朝井リョウ、恩田陸などの作品も21日から順次配信する。
村上春樹の作品では長編作「街とその不確かな壁」上巻を、俳優・井浦新の朗読で21日から配信開始。恩田陸の作品は「Q&A」(11月28日配信)など15作品を、村上龍の作品は「イン ザ・ミソスープ」など10作品、朝井リョウの作品では、映画化もされた「桐島、部活やめるってよ」などを順次配信する。
Audibleオリジナルのポッドキャストも強化。小説家・平野啓一郎が監修した「A University」を10月21日から配信開始した。同ポッドキャストには吉本ばななや安藤忠雄、渡辺直美らも出演予定。
さらにエンターテインメント番組として、お笑いコンビ・くりぃむしちゅーの有田哲平によるコント番組「有田哲平 耳笑(みみわらい)」や、くりぃむしちゅーの上田晋也とアンタッチャブルの柴田英嗣による「くりぃむ上田とアンタ柴田の心はいつも半ズボン」、声優・斉藤壮馬がパーソナリティを務める「斉藤壮馬の本心(ほんごころ)」も21日から配信開始した。
そのほか、11月には「エキナカAudible体験」と題したイベントを渋谷駅で11月7日〜9日、梅田駅で11月14日〜16日に開催。期間中は11月11日配信の湊かなえ「暁星」の特別先行試聴ができる。
国内市場は成長の余地あり。日本発のコンテンツは前年比40%増
10月21日には都内で10周年記念プレス発表会が行なわれ、Audibleの逢阪志摩カントリーマネージャーは「(サービス開始)当初はビジネス・自己啓発の作品が聴かれる傾向でしたが、2022年に聴き放題を導入して以来、ジャンルの広がりが加速し、実用書からエンタメまで、幅広いラインナップでみなさまの生活に寄り添うサービスとして発展してきた」と振り返った。
「(ユーザーから)オーディオブックの魅力として多く挙げられた要素は、自分のペースで聴ける、画面を見る必要がないので目が疲れない、リラックスできるなどで、気軽に快適に負担なく楽しめる要素がリスナーから支持されています」
「また、海外との調査比較では興味深い傾向が見られました。オーディオコンテンツの利用割合は、自宅でリラックスしながらという使い方は他国と同様ですが、一方で外出時の利用は35%と、他国平均の45%より低い状況です」
「つまり、日本では移動時間や外出時での活用というオーディオブックならではの利用が十分に認知されていないことが考えられます。これは日本における大きな成長機会を示唆するもので、今後さまざまなライフスタイルに合わせて活用いただき、より多くのお客さまに寄り添えるサービスを目指してまいります」
また逢阪カントリーマネージャーは、2025年は日本での新規コンテンツ制作量が2024年比で約40%増となる見込みであることも明かしている。
プレス発表会では、作家の中山七里、恩田陸の「Q&A」と村上龍「イン ザ・ミソスープ」の朗読を務めた俳優の濱田岳によるトークセッションも行なわれた。
Audibleで朗読に初挑戦したという濱田は「僕たちの場合、(演じる)ひとりの人生を深堀りして、寄り添って映像にしますが、今回の場合はひとりで多くのキャラクターのバックボーンを想像しながら、『なぜこの人はこの瞬間、こういう言葉選びをしたんだろう?』という想像を、ひとりじゃなく、大勢のキャラクターにして寄り添わなきゃいけないと思うので、そこが朗読の難しさだなと思いました」とコメント。
また中山は、今後配信予定のオーディオファースト作品は「火災調査官が主人公」だと紹介。また通常の作品とオーディオファースト作品で、文章の書き方に違いが出るのかを問われると、「読みやすい文章は聴きやすい」と答えた。
「いろいろな作家さんの、いろいろな文章がありますが、読みやすい作家さんの小説は多分朗読に向いていると思う。Audibleがもっともっと広がっていくと、作家さんのなかで“読みやすい文章=朗読しやすい文章”ということを念頭に置いて書かれる人も出てくるんじゃないかと考えています」
「結局、その読みやすい文章というのは、今1番望まれていることです。読みやすくなかったら冒頭にすら入ってくれませんから」