ミニレビュー

外観よりも中身の進化、M5版iPad Proをチェック

13インチ iPad Pro(M5)

新しい「M5版iPad Pro」のレビューをお届けする。

前モデルであるM4版が出たのは昨年5月のこと。それから1年半ほどで新モデルということになるが、これまでと同じくらいの間隔をあけた、法則通りのリニューアルと言っていい。

サイズ・重量・デザインとも変化なし。主な変更点は「中身」

といっても、前回大幅な刷新が行なわれたため、今回は「中身が中心の変更」である。

ボディデザインはM4版とほぼ同じ。サイズ・重量ともに変化がない。

左(ブラック)がM5版、右(シルバー)がM4版。サイズもデザインも同じ
厚さも変化なし。あいかわらず薄い
裏面
カメラ部。こちらも前モデルから変更はない

今回テストしたのは13インチモデルで、ディスプレイにはタンデム構造の有機ELを使っている。M4版で導入されたもので、画質は非常に良い。見た印象で言えば、同じディスプレイモジュールを使っており、画質などにも変化はない。

ディスプレイは有機EL。発色・コントラストともに良好
上がM5版で、下がM4版。画質傾向は同じ

外観からはわからないが、USB-Cからの充電が「急速充電対応」になっている。60W以上のACアダプターを使った場合、30分で50%まで充電できるという。「なぜいままで採用して来なかったのか」と思うくらいの機能だが、重要であることに変わりはない。

USB-C端子は急速充電対応に

なお、M4版からすでにそうだったのだが、M5版のセルラーモデルも、SIMスロットはなく、eSIM専用だ。今年はiPhone 17シリーズもeSIM専用になったので、「アップル製品の多くがeSIM専用になった」と言って差し支えないだろう。

M5は大幅にパフォーマンスアップ

今回の変更は中身、すなわちプロセッサーの刷新が中心である。M4からM5に変更されたわけだが、当然その分スピードは上がる。

といっても、PCやMacに比べると、iPadのパフォーマンスアップには魅力を感じづらい……という人もいるかもしれない。ウェブを見たり電子書籍を読んだり、映像を見たりといった「ビュワー的用途」だと、差が感じづらいのは事実である。

他方、最近はゲームの負荷が大きくなってきて、高性能なタブレットのニーズが上がっているところもある。『原神』に代表されるハイエンドグラフィックスを使ったゲームを楽しむなら、やはり性能は高い方がいい。

GPUなどの強化はAI性能にも影響する。クリエイティブ系アプリももちろんだが、来年に向けて強化されるApple Intelligenceの処理効率アップにも、AI関連性能の強化は重要だ。

Geekbench 6での性能チェック結果

Geekbench 6で比較すると、CPUもGPUも、M4版に比べかなり性能アップしているのがわかる。

3DMarkの「SolarBay Extreme」をテストした結果。M5での速度アップは顕著

グラフィック性能について3DMarkでチェックしたが、こちらもかなり大幅な向上だ。テストはレイトレーシングを軸としたものを採用したが、M5はレイトレーシング性能が上がっているので、特に大きな差が出た可能性はある。

今後、Mac・iPad両方に提供されるゲームは増えると予想されるが、そこではM5版の性能が重要になってくるだろう。

Geekbench AIでのテスト結果。特にGPUのAI性能向上が大きく、構造の変化がよくわかる

Geekbench AIでのAI性能も、M4からかなりはっきりとした進化が見える。特にGPUは、新たに「Neural Accelerator」を搭載したことから、AI処理効率がGPUの性能向上以上にアップしている。

高価な製品なので、M4版からM5版への買い替えはなかなか大変かもしれない。(編注:最小構成で11インチモデルは168,800円、13インチモデルは218,800円)

しかし、それ以前のiPadやiPad Proを使っている人にはそろそろ買い換えどきと言えるかもしれない。過去に比べても性能アップの度合いは大きい。

特に、256GB版・512GB版では、メインメモリーが8GB(M4版)から12GBに増えている。1TB・2TB版は16GBとさらに大きいが、価格も高くなる。

Apple Intelligenceを使うようになるとメモリー量はさらに重要になるので、量を増やしたという事情はありそうだ。

大規模なアプリケーションも増えてきたので、「iPadだからメモリー量は気にしない」と考えるのではなく、「今までよりも大容量の製品を」と考えるのが良さそうだ。

Apple Music
西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、AERA、週刊東洋経済、週刊現代、GetNavi、モノマガジンなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。 近著に、「生成AIの核心」 (NHK出版新書)、「メタバース×ビジネス革命」( SBクリエイティブ)、「デジタルトランスフォーメーションで何が起きるのか」(講談社)などがある。
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