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【新製品レビュー】

DLNA/AirPlay/USB DAC全対応。パイオニア「N-50」を聴く

−6万円を切る多機能次世代プレーヤー。2種類の音質


N-50

 PCが音楽を蓄積する役目を担うようになった事から、PCをオーディオ用プレーヤーとしも活用するための機器として、高音質なUSB DACが続々と登場。一方、ネットワークHDDの普及により、そこに音楽を蓄積し、PCレスでネットワーク再生する、ネットワークプレーヤーも盛況。最近では単体のプレーヤーだけでなく、AVアンプやプリアンプなどに内蔵される形も多くなり、CDに代わるプレーヤーの形は様々だ。

 さらに、大容量メモリを備えたスマートフォン/ポータブルプレーヤーの普及により、それ自体がオーディオソース化。iPodからのデジタル出力は、オーディオプレーヤーの1つの形として定着している。また、最近では無線でコンポと接続するAirPlayも登場。コンポに乗せずに音楽を楽しむ、カジュアルな使い方も可能になっている。

 便利になる一方、選択肢が多く、何をどう使えば良いのかよくわからない状況でもある。そんな中、こうした新機能に丸ごと対応した多機能プレーヤーが、パイオニアから11月上旬に発売される。型番は「N-50」。価格は74,800円。発売前だが、ネットの通販サイトでは既に6万円を切る価格で予約を受け付けているところが多いようだ。




■豊富な機能

アンプは備えていないが、高音質なアクティブスピーカーと組み合わせてシンプルなオーディオを構築するというのも面白い。写真はクリプトンのアクティブスピーカー「KS-1HQM」と組み合わせたところ

 N-50には大きく分けて3つの機能がある。1つは「ネットワークプレーヤー機能」。DLNA 1.5に準拠しており、同じLAN内にあるPCや、ネットワークHDDに保存した音楽ファイルをLAN経由で再生できる。インターネットラジオの受信も可能だ。さらに、AirPlayにも対応。LAN内にあるPCのiTunesや、iPhone内の楽曲を再生する事もできる。

 フォーマットはMP3/WMA/AAC/WAV/FLACに対応(DRMファイルは除く)。FLACとWAVでは24bit/192kHzの再生にも対応している。

 もう1つは「USB DAC機能」。PCとUSB接続し、USBオーディオとして動作。PC内の音楽ファイルをU-50側のDACで高音質にアナログ変換し、再生する機能だ。N-50では、USB DACのトレンドとも言える、PCからのデジタル音声信号をアシンクロナス(非同期)転送でき、ジッタの影響の少ない再生を可能にしている。

 最後の1つは「iPodやUSBメモリのデジタル再生機能」。これは単純に、前面に備えたUSB端子にiPodやiPadを接続する事で、内部の音楽をデジタル伝送し、N-50のDACなどを使って高音質再生できる機能だ。接続機器の充電も可能になっている。

 大きく分けて3つと言ったが、別売のBluetoothアダプタ「AS-BT200」を接続する事で、Bluetooth対応プレーヤーにもなる。単に対応携帯電話などの音楽を再生するだけでなく、iPod touch/iPhone/iPadの場合は、無償提供されているアプリ「Air Jam」を使い、最大4台までの同時接続が可能。このアプリを使うと、それぞれのiPhone内にある音楽を選択し、共通のプレイリストを作り、再生する事ができる。友達を家に招いた時などに、それぞれのオススメ曲を持ち寄り、連続再生してBGMにするといった使い方もできる。




■単品コンポ並のサイズで、机の上には大きい

 外形寸法と重量は435×330×99mm(幅×奥行き×高さ)、7.3kg。単品コンポとしては標準的。そのため、PCと一緒に机の上に置くには大きい。PC周辺機器として扱うならば、PCデスクの脇にAVラックを置いたり、デスクの下に設置する必要があるだろう。本格的なピュアオーディオシステム内に組み込む場合は、単品コンポラックに入れ、近くにノートPCを置く……といった使い方になりそうだ。

 出力端子はアナログ音声(RCA)1系統と、光/同軸デジタルを各1系統搭載。さらに入力として、光デジタル、同軸デジタルと、USB DAC機能用のUSB入力を1系統装備。前面にはiPodやUSBメモリなどを接続するためのUSB端子も備えている。

幅は435mm、奥行きは330mm 前面パネルの左側にUSB端子を装備。iPodやUSBメモリなどを接続・再生できる N-50の背面端子部分。光/同軸デジタル入力も備え、単体DACとしても使用できる

 基本的にはDLNAプレーヤーや、iPodとデジタル接続したプレーヤーとしてアナログ出力を行ない、アンプなどと接続するわけだが、光/同軸デジタル入力を備えているため、単体DACとしてCDプレーヤーなどと接続する事も可能だ。PCとのUSB接続も、単体DACとしての使い方の一つと考えるとわかりやすい。

 筐体内ではピュアオーディオとしての高音質化の工夫が施されており、電源トランスを含めてアナログとデジタルの電源は完全分離。デジタル回路とアナログ回路も別筐体で分離されており、回路間の干渉を防いでいる。さらに、同社単品コンポで採用されている、「リジッドアンダーベース」を配置。シャーシを独自の2重構造にする事で、制振性に優れた高剛性化と、低重心化を図っている。

ディスプレイは2.4型のカラー液晶を採用している 付属の電源ケーブル。ケーブルは着脱式だ しっかりしたインシュレーターを採用している


■操作はシンプル

 豊富な機能が特徴だが、使い方は意外に簡単。背面にEthernet端子を備えているため、ルータとLANケーブルを繋げばセットアップは完了。無線LANを利用する場合は、別売のアダプタ「AS-WL300」を接続する。

 DLNAプレーヤー機能を利用する場合は、リモコンや本体のファンクションボタンから「ミュージックサーバー」を選択。2.4型のカラー液晶ディスプレイに、認識されたDLNAサーバーが表示されるので、そこから楽曲を選択する。また、DMR(デジタルメディアレンダラー)にも対応しているため、例えばWindows PCのWindows Media Playerから、再生先としてN-50を指定して音を出す事も可能だ。

前面パネル右側の操作ボタンはシンプル。機能切り替えと、停止、再生/一時停止、曲送り/戻しの5つのみだ 付属のリモコン。機能切り替えは上部に、カーソル移動用のキーは下部に備えている
DLNAサーバーにアクセスし、楽曲を選んでいるところ

 スマートフォンから制御する事もできる。11月上旬の発売に合わせ、操作用アプリ「Pioneer ControlApp」がiPhone/Android向けに無償提供される予定で、このアプリを使ってDLNAサーバー内の楽曲を選択、再生先としてN-50を指定する事で、スマートフォンをリモコンとして使用できる。

 レビュー時にアプリがまだ公開されていないためテストはできなかったが、再生中の楽曲情報やビットレートなども表示可能だ。同様の機能をAVアンプで率先してきたパイオニアなので、このあたりの機能は“お手の物”と言えるだろう。なお、DLNAのコントローラー(DMC)に対応した他のソフトから、N-50を再生させる事も可能だ。

操作用アプリ「Pioneer ControlApp」のイメージ 機能を選択している画面 USBメモリの中の音楽ファイルを表示し、選択 再生中の画面。フォーマットや24bit/192kHzの表示も出ている

 なお、本体の2.4型カラー液晶ディスプレイにもアルバムアート(ファイル形式により表示できないものも有り)やサンプリングレート、ビットレート、タイムバーなどが表示可能。日本語表示にも対応している。

 USB DACとして使う場合も簡単で、PCとUSBケーブルで接続し、USB入力に切り替えるだけだ。注意したい点は、一般的なUSBオーディオ機器とは異なり、Windowsの場合は標準のドライバでは動作しないこと(Macは動作可能)。パイオニアのページで公開されている専用ドライバをインストールする必要がある。パイオニアによる動作確認済OSはWindows XP/7/Vista、Mac OS 10.5.7、10.5.6。

Windowsではパイオニアのホームページで公開されているドライバを使用する Windowsのサウンド設定から、認識されたN-50を選択したところ 再生ソフトの「foobar2000 v1.0.3」から、WASAPIモードで出力設定をしているところ
写真はAirPlayで接続したところ。ジャケット画像がディスプレイにカラー表示される PCとUSB接続したところ USBメモリ内の楽曲を再生しているところ

 

iTunesの出力先としてN-50を選んでいるところ
 iPodのデジタル接続も、前面のUSB端子と接続し、モードを「iPod」に設定するだけ。AirPlay連携も簡単で、N-50とiPhoneが同じLANに接続されていれば、勝手にiPhone側でN-50が認識され、音声の出力先としてN-50が選択できるようになる。これを選べば、N-50がAirPlayモードに切り替わり、音が出るという仕組みだ。PCからAirPlay経由で音を出す時も同様。iTunesの音声出力先に現れるN-50を選ぶだけだ。

 

 余談だが、iPhoneをUSBでデジタル接続をしている最中でも、iPhoneとN-50がLANに接続されていればAirPlayを使う事ができる。iPhone側の出力先を「Dock」にするとUSBケーブルのデジタル接続、「N-50」にするとAirPlayでの接続となる。試用中、深く考えずに「N-50と接続しているからN-50」と選択し、USBデジタル接続をしていると思いながらAirPlayで接続していたという場面があった。




■2種類の音質を楽しむ

 試聴には、ヘッドフォンアンプの「Dr.DAC2」とヘッドフォン(MDR-ZX700)や、AVアンプの「SC-LX81」とブックシェルフスピーカー、シンプルな組み合わせとしてクリプトンのアクティブスピーカー「KS-1HQM」などとも組み合わせている。

 まず、iPhone 3GSとのデジタル接続や、DLNA経由でロスレスの音楽ファイルを再生してみる。全体的に、密度が濃く、押し出しの強いパワフルなサウンドだ。かといって明瞭度が不足していたり、音場の空間表現が雑というわけではなく、音の重なる様や、ギターの弦の描写など、精密さや抜けの良さを併せ持ちながら、押し出しの強いサウンドになっている。

 「藤田恵美/camomile Best Audio」から「Best OF My Love」を聴くと、アコースティックベースの量感が豊かだ。「SC-LX81」との接続では、N-50からのアナログ接続と、同軸デジタル接続(SC-LX81側でアナログ変換)も比べてみたが、フラットでワイドレンジなLX81に対し、N-50のアナログ出力の音は、パワフルさに寄っていると感じられる。

 ハイレゾ音源として「Suara/雪の魔法」の24bit/96kHzのWAVファイルを再生。ヴォーカルの音の輪郭が太くて、シッカリしており、中低域の刻みこむような芯のある描写が心地良い。音場を精密に描き、そこに音像を整然と並べていく方向ではなく、音楽の美味しい中高域をたっぷりと出すタイプで、音量をあまり上げなくて楽しめるのが特徴だ。

 ここまでの音質評価は、何の機能も使わない“素”の状態のものだが、N-50にはさらなる高音質化機能が備わっている。1つは「Hi-bit 32 Audio Processing」だ。N-50に搭載しているDACは、32bit/192kHzまでのデータ処理に対応している。だが、そんな楽曲データは現在のところほとんど存在しない。

 そこで、24bit/192kHzなど、様々な入力信号を32bit/192kHzにまで拡張し、DACに渡してアナログ変換する機能として「Hi-bit 32 Audio Processing」が搭載されている。この機能は、パイオニア独自のアルゴリズムでbit拡張するもので、より滑らかで、自然なアナログ波形に近づけられるという。

 

Bit拡張処理の効果概念図。一番下がHi-Bit 32だ 実際に24bitのままDACで処理した波形(左)と、Bit拡張した後で処理した波形(右)

 

「Hi-bit 32 Audio Processing」機能をONにすると、ランプがつく

 使い方は、リモコンや本体ボタンで「Hi-bit 32 Audio Processing」をONにするだけ。フロントパネルの「Hi-Bit 32」に青いランプが点灯する。

 違いは微細なレベルだが、音の変化は中高域に注目しているとわかりやすい。「Hi-Bit 32」OFF状態では、女性ヴォーカルのサ行、シンバルのハイハットなど、硬くて鋭い音が強すぎて痛いと感じたり、音像が薄っぺらく、音が軽く聴こえる部分が存在する。ONにすると、鋭さが和らぎ、薄かった音像が自然な厚みを持ち、リアルに、滑らかな音になる。

 決して高音の頭が抑えられ、ナローになったわけではなく、音が自然になり、「デジタル的な音のキツさが緩和された」という表現がマッチする。積極的に使っていきたい機能だ。

 もう1つ高音質化機能として、「ピュアオーディオモード」というのがある。これは内部のDSPを通さず、最短経路で音声出力を行なうというもの。これが驚くほど、音の傾向が変化する。

 素の状態は押し出しが強く、中域の主張が強めで、「Hi-Bit 32」をONにしても基本的な方向性は変わらない。だが、「ピュアオーディオ」をONにすると、良い意味で個性や主張が大人しくなり、その反面、レンジが拡大、SN感もグッと良くなる。音場も広く、音像の配置も明瞭だ。音色の色付けも少なく、モード名そのままだが、非常にピュアオーディオライクな音に変化する。低域の見通しも良くなり、アコースティックベースの弦の“震え”も生々しい。まるで別の製品に取り替えたくらい音が変化するので、なんだか得した気分だ。

 悩ましいのは、ピュアオーディオモードとHi-Bit 32モードが排他使用で、同時に使えない事だ(ピュアオーディオモードはDSPをスルーするモードなのだから当然だが)。個人的な感想として、スピーカーで再生しつつも、あまり大きな音が出せない時はHi-Bit 32を、スピーカーで大音量再生できる時や、ヘッドフォンを使う時はピュアオーディオモードを使いたいと感じた。




■USB DACとしても活用

PCとUSBケーブルで接続。ケーブルはクリプトンの「UC-HR」を使っている

 USB DACの音も聴いてみよう。組み合わせとして、Windows 7のPCを用意し、再生ソフトは「foobar2000 v1.0.3」を使用。プラグインを追加し、ロスレスの音楽を中心にOSのカーネルミキサーをバイパスするWASAPIモードで24bit出力している。接続用のUSBケーブルは、クリプトンの「UC-HR」を使っている。

 基本的な音の傾向は、iPodやUSBメモリから再生している時と同様で、PCからの再生でもクリアかつ情報量の多いサウンドだ。USB DAC動作時でもピュアオーディオモードやHi-Bit 32モードは使用できるため、前述のような音の違いを楽しむこともできる。なお、USB DAC動作時はデジタル出力から音は出ない。


ラトックのUSBデジタルオーディオトランスポート「RAL-2496UT1」

 ここで、普段ヘッドフォンの試聴記事で使っている、ラトックのUSBデジタルオーディオトランスポート「RAL-2496UT1」も用意。同じPCに、同じUSBケーブルで付け替え、アナログ出力の音質を聴き比べてみた。

 「雪の魔法」を再生すると、「RAL-2496UT1」はレンジを重視した、フラットなサウンド。音場は爽やかで見通しが良く、個々の音の動きがよく分かるが、低域の量感は乏しい。

 「N-50」(ピュアオーディオ/Hi-Bit 32をどちらもOFF)を接続すると、音像にグッと厚みが出て、低域の量感もアップ。音楽が躍動的に感じられるようになる。反面、「RAL-2496UT1」は中低域の張り出しが少ないため、音場全体の見通しが良く、高域の抜けもさわやか。DACの個性の違いがよくわかる比較だ。

 なお、「RAL-2496UT1」はUSB DAC動作時でもデジタル出力が有効であるため、AVアンプの「SC-LX81」にデジタル入力してみると、両者の中間よりも、どちらかと言うとN-50に近い、中域が芳醇なサウンドが聴こえて面白い。

 最後に「N-50」でピュアオーディオモードをONにすると、レンジが広く、見通しの良い音場に変化。「RAL-2496UT1」の傾向に近い音になる。激変と言って良い違いがあり、「お好みなら、こんな音も出せますよ」という余裕のようなものを感じさせてくれる。




■まとめ

 シンプルな外観・操作性ながら、多機能なプレーヤーであり、音質面のクオリティも高く、音の違いを楽しむ魅力も備えている。DLNAもiPodデジタル再生も、AirPlayも、USB DACも全部対応できて実売約6万円は、かなりお買い得なモデルと言って良いだろう。

 AirPlayで気楽に音楽を楽しんだり、ネットラジオをBGMに流したりする一方で、ネットワークプレーヤーやUSB DACとしてじっくり音楽と向き合う時にも使えるため、一台あると活躍の場が多いモデルと言える。

N-30

 なお、下位モデルとして32bit拡張処理機能を省き、USB DAC機能やデジタル入力(つまり単体DAC機能)を省いた「N-30」も実売4万円程度で発売される。機能差以外に、N-50ではアナログとデジタル回路用の電源トランスを別々にして干渉ノイズを低減したり、シャーシを2重構造にして剛性を高めるなどの工夫もとられている。価格差はそれほど大きくはないので、活用の幅も考慮し、個人的にはN-50をオススメしたい。


【2モデルの主な違い】

型番 N-50 N-30
DAC 32bit/192kHz
(bit拡張処理)
32bit/192kHz
(24bit信号まで)
USBタイプB -
光デジタル入力 -
同軸デジタル入力 -
消費電力 34W 31W
外形寸法 435×330×99mm 435×330×97.5mm
重量 7.3kg 5kg

 序盤にも書いたが、気になるのはN-50のサイズ(435×330×99mm/幅×奥行き×高さ)だ。単品コンポとしては標準的なサイズだが、PCの周辺に置く事を想定した他社のUSB DACや、USB DAC内蔵ヘッドフォンアンプなどと比較すると大きい。サイズが大きいと、それによって使い方や、組み合わせる機器が変化してくるため、もう少しコンパクトなモデルも欲しいと感じる。

 さらに、このプレーヤーと組み合わせるプリメインやスピーカーも欲しいところ。例えばN-50にヘッドフォンアンプや、スピーカードライブ用アンプなども入れた、派生モデルがあっても面白いだろう。ともあれ、価格的にも購入しやすい、次世代プレーヤーの登場を歓迎したい。


(2011年 10月 28日)

[ AV Watch編集部 山崎健太郎 ]