西田宗千佳の
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Xperiaは「高性能AVスマートフォン」になれるか

~ドコモの「iPhone対抗馬」の実力は?~


Xperia「SO-01B」

 みなさんもご存じの通り、単機能な音楽プレーヤーはすでに元気がない。他方、今この種のビジネスの主軸が、スマートフォンに移ってきた印象が強い。

 消費者の興味の中心はiPhoneであり、「スマートフォンがブームなのではなく、iPhoneがブームなのだ」という指摘もある。だが、アップル・ソフトバンク以外の企業は、もちろんそれを黙って見ていることはできない。

 というわけで、今回採り上げるのは、NTTドコモとソニーエリクソンのタッグで登場した「Xperia SO-01B」(以下Xperia)だ。iPhoneの対抗馬として活発なプロモーション展開が行なわれているが、その実力はどうなのだろう? 本連載らしく、AV的な視点から、Xperiaの使い勝手をチェックしてみたい。 


■ 高性能なハードにシンプルで良くできたデザイン、タッチの「感触」は疑問も

HT-03A

 さて、まず基本からおさらいしておこう。Xperiaは、OSにAndroid 1.6を採用したスマートフォンだ。Android搭載機という意味では、2009年夏に日本でも登場した「初代Androidケータイ」こと、HTC製「HT-03A」に近い。

 ただし、ハードウエアの構成や、ソニーエリクソンが独自開発したソフトなど、商品としてまとめ上げた中身は、HT-03Aとは相当に異なる。例えば、ディスプレイの解像度は480×854ドットと、ライバルのiPhoneやHT-03Aの320×480ドットよりぐっと高い。

 かといって、「単に解像度が高い」だけではなく、UIやウェブブラウザの表示もきちんと「今風にきれい」になっているのは、やはり非常に魅力的だ。iPhoneに比べると実はちょっと大きいのだが、少々縦長で細身な印象を受けやすく持ちやすいし見やすい、と感じる。もちろん、横に見ればよりワイドな画面になっているため、情報量も多い。

 海外にはストラップをつける文化がほとんどないため、海外生まれのスマートフォンにはストラップホールがない場合が多い。だがXperiaは、実質的な本拠地であるイギリス・開発の中心地であるアメリカに加え、日本のソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ(SEMC)がタッグを組む形で開発が行なわれたので、随所に「日本メーカーらしさ」が見える。底面のストラップホールはその最たるもので、むき出しになりがちなUSB端子などがきちんとカバーされている点も好ましい。

本体はiPhoneとさほど変わりないサイズ、という印象だが、握ってみると細身でより持ちやすい裏面。ドコモやソニー・エリクソンのロゴが目立つ。カメラは中央に配置されているので、被写体を感覚的に捉えやすい上面。ヘッドホン端子・電源・マイクロUSB端子が並ぶ。カバーはプラスチック製で、本体からははずれないような構造になっている
左側面。大きな方の穴はスピーカー穴。小さな穴は、マイク底面。コネクターなどはなく、中央にストラップホールがある。右側面。音量スイッチとカメラのシャッターがある。こちら側には、裏蓋を外すための穴はない
Webブラウザを横位置で表示

 ハードの作りはさすがで、音質もiPhone 3GSよりかなりいい。少々線が細く、低音の出が悪い印象を受けるので、ウォークマンなど、音質で評価の高いミュージックプレーヤーより上とは思えないが、他のスマートフォンに比べるとクリアーで快活、快適な音が出る。付属ヘッドホンのクオリティはさほどでもないが、ヘッドホンを好みのものに変えれば、十分に納得できる音が出る。

 ウェブブラウザなど、基本的なコンポーネントは、「素のAndroid」であるHT-03Aと大差ない。ただし、UI全体はソニーエリクソンなりの修正が加えられており、デザインがHT-03Aよりも洗練された印象を受ける。トップページなどは、もちろん自由にアイコンやガジェットを置いてカスタマイズできるが、このくらいシンプルなのも、一般的な携帯電話のようで悪くない。

Webブラウザ自体は、HT-03Aから大きな変化はない
Xperiaのロック画面。円弧状に指を動かしてロックを外す。ちなみに、この状態で指を左右に動かすと、ロック解除の方向が「反転」する

 操作面の独自性としては、日本語入力にオリジナルの「POBox Touch」を採用している事が挙げられる。これは、同社製携帯電話でおなじみの入力エンジン「POBox」をAndroid向けにカスタマイズしたもので、特にQWERTY表示での日本語入力に特化している。ローマ時入力時に、ほとんど使わない「Q」の字を表示しなかったり、子音入力後には母音+促音入力用の文字をハイライト表示したり、といった工夫が凝らされている。最初はびっくりするが、慣れれば快適だ。

 ただし、キー入力に限らず、タッチセンサーの「タッチ感」があまり良くないのが気にかかる。例えば、ロックがかかった状態から操作可能にするには、他のスマートフォン同様、画面上のスライドスイッチを動かすようになっている。Xperiaの場合には、デザイン重視なのか「円弧状」に動かすのだが、これがどうもなめらかではない。急いでいるとひっかかりがある印象だ。

 文字入力にしても、「タッチし始めの微妙な感覚」が、画面全体で一様ではない印象を受ける。QWERTYキーで高速入力していると、入力に違和感を感じることがあった。

 もちろん、操作に大きな支障があるような性質のものではない。iPhoneだって入力ミスは決して少なくないのだが、iPhoneに比べると、まだまだチューニングが足りず、ダイレクトな快感が不足している、と感じる。

 


■ 行動・コミュニケーションを「時系列」で楽しむ「Timescape」が軸

 Xperiaならではの差別化点の一つが、ソニー・エリクソンが用意したソフトウエアになる。中でも目立つのが「Timescape」と「Mediascape」だ。Xperiaのトップ画面には、中央に四角い「枠」が表示されている。これがTimescapeだ。

 概要を言葉で紹介するよりも、まずは画面を見てもらったほうがわかりやすい。画面では、音楽・TwitterのTimeline・自分宛メールなどが、時系列に順番に並んでいる。ここでは表示していないが、mixiやFacebookの新しい書き込みなども、同様に時系列で並べられる。もちろん、携帯電話による通話も。当然Timescape上のアイコンをタップすれば、該当するサービスを使って、関係する人物に連絡を取ったりレスポンスを返したり、といったことが可能だ。

Xperiaの最大の特徴であるTimescapeは、トップ画面中央の四角い領域に表示される。ここでは再生した音楽が表示されているが、表示されるのは音楽だけではない上から順に、音楽・Twitter・音楽・メール・Twitter……という感じに、その人の「行動履歴」がラインになっていくXperia内の写真だけをTimescapeに並べてみた。同様に、他のサービスだけを抽出して見やすくすることも可能

 要は、Xperiaの中での活動が、音楽再生から写真撮影、自分に対するコミュニケーション系の動きまで、すべて「1つの時間軸で見られる」のがTimescapeの仕組みなのである。もちろん、各要素に分解し、それぞれを並べることもできるが、やはり狙いは「個人の活動を分け隔てなく並べる」という形にあるのだろう。特に海外では、「携帯電話のSNS連携」がキーワードとされることが多い。その文脈で見れば、Timescapeの作りは非常にストレートな戦略といえる。

 話だけを聞くと「なんか面倒臭そう」と感じるが、実際に使ってみると、意外なほど面白い。いわば自分の「ライフログ」的な感覚だ。あの写真を撮った時にこんな曲を聴いていたとか、あのメールを読んだ前後はこんな映像を撮影していた、という記録は、後から見返すと面白い。ただし、一般の携帯電話以上に、Timescapeを表示しているXperiaは人に見られたくないな、と思ったのも事実だ。

 また、Twitterを組みこむとあまりに要素が膨大になりすぎ、表示がごちゃごちゃしやすい。毎日使うなら、メールやmixi程度に抑えておいた方がいい気もする。また、頻繁にメールや電話、メッセージが送られてくる知人は、Xperiaで写真を撮影して登録しておいた方がいい。そうでないと「白いシルエット」になるので、どうも見た目が寂しい感じになる。

 Timescapeが「Xperia全体のブラウザ」に相当するものだとすれば、音楽・映像などのメディアファイルを扱うのが「Mediascape」だ。こちらは、割とシンプルなメディアファイル再生機能といえるかも知れない。最近使ったメディアファイルなどが表示されるようになっているが、再生画面そのものはあまり特徴がない。

Mediascapeのメイン画面。これは音楽再生の場合だが、アルバムがジャケット写真単位で並ぶMediascapeでの音楽再生画面。この種のソフトとしてはシンプルな画面で、操作に迷うことはないだろう。ただし、中央の「∞」マーク(インフィニットボタン)には注目

 ただし、大きく異なるのは「∞」マークの入った「インフィニット」ボタンがあるところだ。これをタップすると、現在再生中のファイルに関するファイルが、Xperia内部から自動的にピックアップされる。例えば音楽ならば、同じアーティストの曲が入ったアルバムがリストアップされるわけだ。

 しかもMediascapeには、YouTubeのビュワーとの連携機能も用意されている。インフィニットボタンを押した後、画面の一番下にあるタブから「SDカード」でなく「YouTube」を選ぶと、同じアーティストの「YouTubeに公開されている映像」がピックアップされるのだ。

 Mediascapeの機能としてもう一つ面白いのは、写真を表示する場合、本体(SDカード)内のアルバムだけでなく、ネット上のウェブアルバム・サービスとも連携し、ウェブブラウザを開くことなく、まるで「本体内にあるかのように」扱ってくれることだ。

 もちろん、毎回写真をダウンロードするので、表示スピードはローカルの場合ほど速くない。しかし、たまにしか見ない写真や、Xperia以外で撮影した写真を見る場合などに、このウェブアルバム連携機能を使うと、とても便利だと感じた。


左がSDカード(Xperia内)を、右がYouTubeを検索した場合の画面。コンテンツに紐づけられたデータ(この場合はアーティスト名)をカギに情報をつなげていくのが「インフィニット」機能の根幹だ写真は、連携するウェブアルバム・サービスとして、GoogleのPicasa Web Albumを選んだ場合。サービス名が小さく、アイコン上に出ているところに注目。表示してしまえば、1枚1枚の表示には少々時間がかかるものの、扱いはローカルもネットワーク上のものも変わりない

 そもそも、Timescapeに並ぶ各要素も、インフィニットボタンを使い、アドレス帳から「人」を呼び出してコミュニケーションしていく、という使い方ができる。Xperiaの「~scape」系機能は、すべて「時系列」「キーワードの連携」を軸に、一つの要素から他の要素・ファイル・サービスをどんどん呼び出して利用する、という使い方を想定している。特に写真の場合には、顔認識機能を使い、「アドレス帳に登録してある人の顔」をベースに、写真に写っている人と同じ人をピックアップする、といったことまで可能になっている。

 これらは、各ソフトがうまく連携して動作するから、可能になっている。逆にいえば、iPhoneやパソコンなど、他のスマートフォンに見られるように、「なにかの作業をする場合には、ユーザーがそのソフトに操作を切り換えて行なう」という意識をしない、という発想の機能、といっていいだろう。

 確かにこの考え方は面白く、使い方に慣れさえすれば、他のスマートフォンとは違う使い勝手が実現できる。

 だが他方で、Timescape、Mediascapeの表示はいまひとつ一覧性に欠け、操作効率の点でマイナスだ。特別な操作よりも、シンプルにアプリケーションを切り換えながら使う方がわかりやすく、日常的に使える、と感じる人がいても不思議ではない。

 XperiaがAndroidで良かった、と思うのは、それら「ソニーエリクソン的なアプローチ」に納得がいかなかった時でも、同様の「代替ソフト」をネットからダウンロードすれば、自分の好きなようにカスタマイズしていける、という点だろう。例えばメディアファイルの再生については、「Meridian」などを使えば、より「普通」の操作方法で使える。

 逆に言えば、ソニー・エリクソンがソフトで独自性を追求できるのも、Androidという比較的自由度の高いプラットフォーム上で展開しているからなのだ。iPhoneの場合、内蔵機能を完全にアプリで代替してしまうのは難しく、操作・機能への違和感=製品への違和感に直結しやすい。

 Timescapeが気に入ろうと気に入るまいと、ハードウエア・商品としての魅力はきちんと味わえるあたりが、Androidの良さといってもいいだろう。

Android用ソフトをダウンロードするための「アンドロイドマーケット」。この他、ドコモがオススメするソフトを配布する「ドコモマーケット」もあるAndroid用のメディアプレーヤーソフト「Meridian」。無償配布されている。機能はシンプルだが、基本に忠実な作りで使いやすく、この種のソフトとしては「定番」になっている

 


■ カメラの機能・画質は一級品、顔認識にも対応

 さて、ハード面にもうすこし注目してみよう。中でもライバルのiPhoneと大きく違うのは、デジカメ機能の性能だ。iPhone 3GSのカメラが320万画素CMOSセンサーであるのに対し、Xperiaのそれは約810万画素。能力がまったく異なる。

 写真の写りも、当然その分違っている。Xperiaは画角を「標準」と「ワイド」から選べるが、それだけでなく、そもそもの画質の精細さや再現性が異なっている。iPhoneの方には、撮影時にシャッターとフォーカス点以外の操作がないが、Xperiaの方は撮影モードなどを様々に変更できる。また、顔認識機能も搭載されている。ビットレート・解像度を、最初からYouTube向けに調整して動画撮影する機能があるのは、いかにもスマートフォンらしいところである。

Xperiaのカメラ機能。一般的なデジカメに近い設定項目が用意されており、きちんと使うと相当にクオリティの高い写真が撮れる。特に露出調整ができるのがうれしい。他方で操作が煩雑になる、という欠点もあるが、「オート」「顔認識」などを使えば、ある程度緩和可能だ

 iPhoneとXperiaには、画質以前に、「シンプルにメモ的に撮る」か、「デジカメとして必要な機能を用意した上で撮影する」のか、というポリシーに、大きな違いが存在している。ハードウエアとしての出来にこだわるならば、当然後者の方が望ましく、Xperiaの写真のクオリティは、それを思わせるものになっている。さすがにデジカメ並、とはいえないが、スマートフォン向けとしては現状、トップクラスの性能といっていいと思う。

【静止画画質比較】

[Xperia] オート、8Mピクセルモード[Xperia] オート、6Mピクセル(16:9)モード[iPhone]

 動画に関していえば、WVGA以外では手ぶれ補正が働くこと、逆光に近い場所でもしっかり撮影できること、カラーバランスがより正しいこと、画質が良いにもかかわらず、ファイルサイズはiPhone 3GSのものに比べて小さいことなどから、Xperiaに軍配を上げたい。また、内蔵マイクの感度も高く、音もくもらない。iPhoneの方は、動画についてはもうすこしがんばって欲しい。

 コーデックは、iPhone 3GSはH.264だが、XperiaはMPEG-4。音声はともにAACで記録されている。

【動画画質比較】

[Xperia]ワイド【動 画】(2.62MB)[Xperia]4:3【動画】(2.4MB)

【動画画質比較】

[Xperia]YouTube【動画】(677KB)[参考]iPhone 3GS【動画】(4.7MB)

 


■ ハードは良くできているがサービスは物足りず。「ドコモ」の価値が選択の決め手

 そろそろ結論に入ろう。

 Xperiaは、ソニー・エリクソンが力を入れて開発しただけあって、とても良くできた端末だと思う。ただ、タッチ精度や動作速度の点で、正直iPhone 3GSに比べ「気持ちよさ」の演出が足りないと思う。もっともっとチューニングは必要だ。GPUの活用が容易になるAndroid 2.0があれば……と、関係者は考えているところだろう。

 Timescapeなどの試みは面白いが、少々「考えオチ」な気もする。利用スタイルとソニー側の思惑がぴったりはまればいいのだが、ずれていると使いにくい。「ネットコミュニケーションに強いケータイ」を求めている人にはいいが、「iPhoneと同じように自由度の高いケータイ」を求めている人にはマッチしないだろう。

 また意外に、Xperiaが「PCとの連携」をあまり重視していない製品である、ということも見えてくる。

 例えば、音楽データの転送は、USB経由で「Media Go」を使って行う。Media Goはシンプルなジュークボックスソフトであり、使い勝手も悪くないものだが、iTunesのように「同期」を前提としたものではなく、あくまで「転送」用だ。実のところ、Xperiaは単に「USBのマスストレージクラスで、内蔵SDカードをPCに認識させる」という形で連携するため、Media Go以外のソフトでも、手動管理でも問題ない。

 しかも、PCにつなぐ場合には、単にケーブルを差し込むのではなく、Xperia側で操作をしないと認識されない。「時々転送する」くらいで、“家に帰ったら毎回同期する”というような使い方はあまり想定していない、ということなのだろう。

Media GoUSB接続してPCとデータをやりとりする場合には、Xperia側で接続作業が必要。取り外す時も同様だ。これはいかにも面倒で、改善して欲しい点だ

 またUSBは電源コネクタとしても使うのだが、本体上部にあるため、いわゆるクレードルは使えない。この点も、使い勝手の点ではマイナス。正直、本体の持ちやすさには似つかわしくない「つかいにくさ」だ。

 もともとAndroidでは、メールやスケジュールの同期はGoogleのクラウドサービスを活用するため、PCとの接続は必須ではない。音楽についても、そういった方針が見える。

レーベルゲートの運営する「mora Touch」。Jポップ楽曲を中心に、AAC 128Kbpsでの音楽や、AVCによるミュージッククリップが配信中。しかし、価格が高い上にサービス制約が強く、競争力があるとは思えない

 日本オリジナルの展開として、音楽配信「mora Touch」が利用できるようになっているが、このサービスも、見た目こそiTuens Store的ではあるが、サービスの内実は「着うた」的。配信価格も、PC向け配信の常識から考えるとびっくりするほど高い「1曲420円」。購入した楽曲はMediaGoに転送できず、パソコンには引き継げない。機種変更時も、他の端末で音楽を聴くことはできない。着うた設定が可能であるとはいえ、PCならば100円から200円で楽曲が買えて、CDレンタルでも同様に安価である現在、特にXperiaを好むようなユーザー層の中に、mora Touchを「純粋な音楽配信」として支持する人がいるとは思えない。

 ネットを活用しよう、PCとの親和性を有効に活用しよう、という意識が見える一方で、mora TouchやMedia Goとの連携のように、どうも「旧態然とした部分」が見え隠れするのが、Xperiaのマイナス点だ。

記事執筆中の画面撮影作業。WindowsでもMacでも、Androidの開発環境をインストールし、USB経由でスクリーンショットを取るのが最も一般的な方法。これでは、普通の人に「アプリや使用シーンを媒介としたコミュニケーション」を取ってもらうのは難しい

 別に、パソコンとの同期を中心に据えなくてもいい。ならば、「もっとネットで完結できる」形を目指すべき。高い金額で売るのではなく、むしろ「がんがんネット経由で買ってもらえる」価格にしておくべきだし、Media Goの側でも楽曲や動画を買い、転送して楽しめるようにすべきだったはずだ。

 また、アプリをダウンロードして楽しむのはいいが、それを「人に伝える」手段が薄いのも気になる。iPhoneではアプリを含めた画像を簡単に撮影し、人に送ることができる。だが、Xperiaを含めたAndroidでは、画面撮影をするために、パソコン側に「開発環境」をセットアップせねばならない。コミュニケーションを活発にしたいなら、「端末の上で起きたこと」はすぐに人に伝えられるようにしてほしい。それができないのは、大きなマイナス点だと感じる。

 そのあたりに隔靴掻痒なものを感じるのが、iTunesとネットを核にエコシステムを構築しているiPhoneとの違いだ。

 Xperiaは、ハードにおいて間違いなくiPhoneの対抗馬であり、iPhoneより優れた部分の方が多い。しかし、サービスまで含んで考えると、まだ差は大きい。「ドコモ」という強いインフラで使える点を評価できないなら、現状ではiPhoneをしのぐとは結論できない。


(2010年 4月 16日)


= 西田宗千佳 = 1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、PCfan、DIME、日経トレンディなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「iPad VS. キンドル日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏」(エンターブレイン)、「iPhone仕事術!ビジネスで役立つ74の方法」(朝日新聞出版)、「クラウドの象徴 セールスフォース」(インプレスジャパン)、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)などがある。

[Reported by 西田宗千佳]