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torne 3.0アップデート。レコーダ連携/ライブ強化を語る

SCE、torne開発チームインタビュー


左から渋谷氏、石塚氏、西沢氏

 7月7日、ほぼ半年ぶりに、torneがバージョンアップした。「3.0」となる今回の機能アップでは、機能の面でもビジネスモデルの面でも、非常に興味深い点が多い。

 本連載ではすでにおなじみとなった、torne開発チームへのインタビューをお届けする。御対応いただいたのは、今回も、ソニー・コンピュータエンタテインメント 商品企画部 企画3課課長の渋谷清人氏、ソフトウエアソリューション開発部 2課1グループの石塚健作氏、JAPANスタジオ 制作部ゲームデザイングループ クリエイティブディレクターの西沢学氏の3名だ。


 


■ 有償アップデート「トルネ屋」と「レコ×トルネ」の狙い

 「3.0」の特徴は、これまで同様の「無料アップデート」の他に「有料アップデート」が用意されたことだ。アプリ内ストアにあたる「トルネ屋」から機能を購入していける。機能の詳細は別途解説するが、3.0の「目玉アップデート」は有料の側にあるように見える。

 このような形にした狙いはなんなのだろうか?

PlayStation 3+torneと「レコ×トルネ」対応レコーダ「BDZ-AX2000」 torneのメインメニュー 有償アップデート用のストアである「トルネ屋」。決済にはPlaystation Networkの機能を使う
商品企画部 企画3課課長の渋谷清人氏

渋谷氏:(以下敬称略)去年3月に発売し、昨年6月の「2.0」、12月の「ライブ」とアップデートしてきました。レコーダという目線、ゲームという目線で見ても、無償でここまで広範なアップデートをしてきた例は少ないのでは、と思います。

 もちろん、引き続きtorneというアプリの使い勝手を上げる、という活動は、(開発担当の)石塚や西沢が倒れない限り続けたいです(笑)。しかしそろそろ、無償ですべてのお客様に提供する部分と、限られたお客様に限定で有償でご提供する部分をちゃんと切り分けていきたいと考えています。


SCE JAPANスタジオ制作部ゲームデザイングループ クリエイティブディレクター西沢学氏

西沢:いままではずっと無償で、多くのユーザーが使うであろう機能、を優先して提供してきました。たくさんのご要望をいただくのですが、その中でも特定の機能に対する熱い思いを寄せていただくこともあります。それをどうやってアップデートで対応しようか、と考えた上でのことです。

 一部のお客様に向けた恩恵、という形の機能は、無償でお試しいただいた上で満足いただいたら、最終的には有償で提供する形になります。「試す」という形はありきですので、今後も無償体験は行ないます。

 今回有償で提供されるのは、見栄えを変える「デザインテーマ」が2種類、そしてウォークマン・NAV-Uへの書き出し機能、そして、ソニーのBDレコーダと連携する「レコ×トルネ」機能だ。渋谷氏、西沢氏のコメントを併せて考えると、有償機能の位置付けが非常にはっきりしてくる。

 中でも注目は「レコ×トルネ」。実はこの機能、torneのスタートから準備してきたものである、と石塚氏は明かす。

ソフトウエアソリューション開発部 2課1グループの石塚健作氏

石塚:「レコ×トルネ」は、torneを始めるタイミング、2年くらい前から、ソニーと話していたものです。実は、私が(torneを開発するために)SCEに来た頃から考えていたことなんです。ソニーが持っている豊富な機能のAV機器をバックエンドに、SCEが持っているものをフロントエンドにして、ソニー全体としていい体験ができるのでは、という考えから生まれました。

 現在、ソニーのBDレコーダでは「Chan-Toru」(筆者注:ソニーが提供している、ウェブアプリケーションによるBDレコーダ連携機能。スマートフォン上から、録画予約や番組ランキングなどを確認できる)などの機能が使えるようになっていますよね? 「レコ×トルネ」は、あの上に乗っかった上で、さらにプラスアルファする形で実現しているんです。基本的にはDLNAをベースに、独自拡張を行なって実現しています。

渋谷:ベースはDLNA1.5ですが、それにプラスしています。まだちゃんとしたスタンダードにはなっていませんが、DLNA2.0に入っている予約録画のやりとりなどに似た実装になっています。多少特殊な部分はありますが。torneのサクサク感をなくさないように実現しているんです。

石塚:番組表連携などで、torneならではの部分を加えている、という感じですね。

西沢:「レコ×トルネ」での制限は、(録画番組リストの)サムネイルがつかないこと、番組情報の詳細が消えることくらいでしょうか。再生が始まるまでの待ち時間や、トリックプレイの反応速度などは、LANの環境に依存します。

 レコーダ側に録画予約した場合には、圧縮の設定や録画頻度の設定はレコーダ側の機能に依存しますので、設定項目もtorneで録画した場合とは異なります。torneはシングルチューナーですが、レコーダは二番組同時録画できるものが多いので、1台接続した場合、地デジならば同時に3番組録画できます。「レコ×トルネ」は同時に2台まで接続できますから、最大5番組同時録画できることになります。

レコ×トルネで利用中の番組表。濃いオレンジがトルネ側で、濃いグリーンがレコ×トルネ側で録画されている印。2台のレコーダを繋げば最大5番組まで同時録画できる。

 番組表での番組検索も、もちろん、(torne内の)地デジと(レコーダ側の)BS・CSを通して検索できます。BS/CSの番組表を見て予約録画できるのはもちろんですが、よく見るチャンネルだけを集めて「My番組表」を作ることもできます。

石塚:スピードを重視するため、BS・CSの番組表についても、データベースを作るわけではなく、(地デジと同様に)リアルタイムで検索処理を行なっています。これが結構大変で……。現在のレコーダ側の仕様から、0時と12時にレコーダ側の番組表が作成され、その後できあがったタイミングでtorne側がその情報を取得するようになっています。ですから使い始めのタイミングによっては、なかなかレコーダ側の番組表が取得できないかもしれません。

 BDレコーダ上の番組を見る場合、チャプタの移動ができます。元々は、シーンサーチの利便性が落ちた代わりにチャプターを使っていただこう、という考えなのです。

 3.0ではシーンサーチの速度をかなり高速化しました。これまではアイコンが消えたくらいで再生が始まる、という感じだったのですが、3.0ではシーンを選んだ瞬間に再生が始まるようになりました。

 しかし「レコ×トルネ」の場合、ネットワーク経由で呼び出すためにどうしても反応が遅くなります。ですから、その代わりにチャプター移動を使っていただこう、という発想なのです。

レコ×トルネで録画した番組の再生画面。チャプターはオレンジ色のポイントで表示される

 実際の動作を見ると、石塚氏のいう「SCEの力をフロントエンドで」という発想がよく理解できる。「レコ×トルネ」を使う場合には、ソニーのBDレコーダおよびBRAVIAのうち、最新の「ルームリンク」機能を持つものが必要となる。なお、最新機種ではあるが、14日発表になったBDZ-AT350S/AT750Wはルームリンク非対応なので利用できない。

 DLNAで連携する場合、できるのはあくまで「録画番組の再生」だけであり、レコーダ側に録画予約を行なう場合には、レコーダ側を操作する必要があった。「レコ×トルネ」の場合には、再生はもちろん、番組表を使った録画予約も、番組表の検索も、不要になった番組の削除もtorne側から、torneのUIを使って行なえる。

 動作速度も、再生開始時やトリックプレイ時にほんの少し待たされる程度で、torneらしい速度感を十分に生かしている。まるでtorneがBS/CSチューナ内蔵になったかのような印象を受けるほどだ。実際にはネットワーク内にあるBDレコーダを制御しているわけだが、それを意識するシーンは意外なほど少ない。「見るだけ」ならば、BDレコーダ側の電源を入れ、入力を切り替えて操作する必然性も薄い。

 実は画質も、DLNAによる再生とは異なる。torne専用のものとなる。

石塚:torneからの再生時には、torneの高画質再生機能を使って再生が行なわれます。torneで録画した番組を再生する場合には、番組表のジャンル情報などを使って、再生時にフィルターを適用することで高画質再生を行なうのですが、「レコ×トルネ」でも、番組表情報を使ってできる限り高画質に再生するよう努力しています。ですから、CSのSD解像度のアニメチャンネルを録画したものなども、それなりに良好な画質で見られるはずです。XMBから再生するよりは高画質に感じられるでしょう。

 ただこれは、XMBがどうこうという話ではありません。XMBはどんな機器からの映像も再生対象になる可能性がある機能ですから、相手を決め打ちにできる「レコ×トルネ」とは位置付けが異なると考えてください。

 なお、torne側からBDレコーダ内の映像をダビングしたり、BDレコーダ側の映像は追いかけ再生ができないことなどが主な制限になる。その点は構造を考えればしょうがない。

 面白いのは、torneの特徴の一つである「トルミル」が、BDレコーダ側の番組表、すなわちBS/CS番組についても有効であることだ。

西沢:地デジは(従来通り)都道府県別の集計ですが、BS・CSについては全国集計になっています。まだまだ数は少ないですが……

 番組表検索にも生かせるので「CSで放送される映画のうち、人気が高いもの」といった検索もできる。そのため今回、検索用番組種別に「CS洋画」といったものも追加になっているという。

 ちなみに、トル数の多い番組は、番組表上で「トル情報リボン」が付加されるようになった。この条件はトルの絶対数ではなく「放送種別毎に標準偏差をとって出した値を元にしています。だいたい上位3%くらい」(石塚)が対象になるそうだ。

録画予約数の多い番組には星マークのついたリボンが付く

 


■ 「シンプルに、違和感なく」。torneから見る「ユーザーインターフェース」の工夫

番組リスト。サムネイルがあるのがtorneで録画した、ないのが「レコ×トルネ」で録画したもの。同じようにシリーズでまとめれるので、録画場所を意識する必要はない

 すでに述べたように、「レコ×トルネ」の特徴は、本来1つの地デジチューナしか内蔵していないtorneと、LAN内にあるはずのBDレコーダが「トルネのUI」の中にうまく融合している点にある。

西沢:できる限り保存先を意識しないように作りました。今回のアップデートで、ビデオ一覧のフィルタ(筆者注:番組をソートし直すための設定)を増やしていますが、そこで多くの要望をいただいたフォルダ分けに近い使い方ができる「シリーズ表示」機能を搭載しました。この際にも、ストレージには関係なく、どこで録った番組も同じように表示され、番組名で並びます。

石塚:番組表側でタイトルがよほど大きく変更されていない限りは、一生懸命まとめるよう工夫しています。番組表の内容はテレビ局側が決めるので、結構細かく変わるのです。ユーザーの方には関係ないことですが、特番などでタイトルそのものが変わったり、突然括弧が半角から全角になったり……(笑)。録画番組の名称からだけでなく、過去の番組表も含め存在している番組を見ながら、できる限りまとまるようにしています。


シリーズ表示画面。ここでのシリーズのまとめ方、カーソル挙動にも、開発チームのUIへのこだわりが込められている

 シリーズ表示の導入は、ユーザーの多くから「フォルダ分け機能を導入してほしい」という声に応えたものだ。特に「レコ×トルネ」が導入されると、録画リスト内にはBDレコーダ側で録画された番組も並ぶことになるため、より効率的な整理機能は必須のものとなる。

 だがその導入には色々と苦労があったという。

石塚:番組録画が100個・200個と増えてきた時に見つけにくい、という問題の解決についての要望と、簡単に使えること、既存のフィルター機能のバランスを取ることを目的に開発しました。しかし、シリーズ表示のユーザーインターフェースは、どのくらい試作したかわからないくらい大変でした。作って、触ってみて、気持ちよさを確認して……の繰り返しで。

西沢:操作感は変えちゃいけない、そのままの操作でシリーズ表示になるようにしたい、というのが狙いです。その中で、フォルダを自分で作らせるのは止めよう、と考えました。結局複雑になってしまうからです。

 そこでシリーズ表示のインターフェースは、(シリーズになっているものの中と外が)親子関係になっていても、それを意識せずにコンテンツにたどりつけるようにしました。

 このあたりの話題は、家電のユーザーインターフェース論を語る上で非常に示唆に富んだものとなっている。

 torneでの工夫がどうなっているかは、実際に触ると良く分かるのだが、なんとか文字で解説を試みてみよう。

 torneの録画番組リストは、基本的に「線」だ。上下にカーソルを動かすと、リスト自身が上下に動き、中央が「再生する番組」になる。XMBも含め、多くのメニュー系で採用されている方式に近い。torneの場合には、これまでフォルダなどの「階層」は存在しなかった。

 シリーズ表示の導入で「階層」が生まれることになったが、ここで問題になるのは「階層」をどう移動するかだ。一般にはボタンを押したり、カーソルの「左右」で深い階層へ移動していくものだが、そうするとtorneの持つ「高速性」が失われる可能性がある。

 例えば、階層を開いたのち、階層の「一番下」にカーソルがある時はどうなるだろう? 例えば、フォルダの中に目的の番組がなく、別のフォルダへ移動して探すような場合だ。強い目的をもって番組を探す場合にはそういう操作はしないだろうが、「録画してあるものからなんとなく見たいものを見つける」という時にはありがちな動きである。

 通常は階層を「閉じ」、階層を戻らないと他の階層には移動できない。例えばソニー製BDレコーダのXMBでフォルダ表示を行なった場合には、

[フォルダ一覧>目的のフォルダ内へ移動>フォルダを閉じる>また別のフォルダへ移動する]

という感じになる。

 それに対し、torneでは

[シリーズ一覧を開く>一番下まで移動>そのままシリーズ一覧の「外」にカーソルが移る]

という動作になる。シリーズにまとまってはいるが、操作においては新しい概念を覚える必要がほとんどない。シリーズを開かず「まとめた」ままならば整理した形で見え、開いた時も高速性は変わらない。

 フォルダを作る行為にはもちろん、「自らの制御下で管理できる」というメリットがある。しかし、日常的に多くのフォルダを作るのは面倒だし、多数のフォルダを作るとフォルダそのものの管理も必要になる。そのため多くのビデオレコーダでは、番組名などからフォルダを自動生成したり、録画後に自動で移動するものがほとんどだ。

 torneではあくまで「シリーズ一覧」であり、自動整理のみ。階層化も存在しない。自由度よりも簡単さと速度を重視してのものだろう。他方で、石塚氏の説明の通り、番組名を基本にまとめるため、放送局がどこであろうと、番組名が多少変化していようとまとめるようになっている。ユーザー側は、「どのチューナで録画されたか」をあまり意識しなくても良い。

 「簡単さと速度の追求」については、もうひとつ難しい問題があったという。それが「日付またぎ問題」と西沢氏が言う、番組表に関する工夫だ。

一週間番組表。スクロールさせても背景の番組表が移動するだけで、カーソル位置(すなわち視線の位置)は変わらない

 3.0では、番組表に「一週間表示」が追加された。通常は複数の局を同じ日時で揃えて表示するが、このモードでは1チャンネルに絞って一週間分の情報を表示する。特にCSなどで、同じ時間帯で放映されるドラマなどをチェックする際に便利な機能だ。BDレコーダやテレビでも広く搭載されているものだ。

 もしお手持ちの機材に同様の機能があったら、時間帯をスクロールさせてみてほしい。「日付」をまたぐような時間帯、例えば0時や朝方(例えば、ソニーのBDレコーダでは朝4時だった)に、カーソルは「どこ」にあるだろうか?

 多くの機種では、元々あった位置から次の日の上(隣のカラムの一番上)に移るのではないだろうか。そのままスクロールを続けていくと、どんどんと右へ右へと動いていく。

西沢:(日付またぎで)カーソルが動いてしまうと、視線の位置を大きく移動させないといけなくなり、不自然です。torneでは、日付をまたいでもカーソル位置が変わりません。言葉でいうとわかりにくいんですが、「螺旋状につながっている番組表を平面に投射している」ような構造になっているんです。

 スクロールの速度が遅ければ、カーソル位置が変わっても大きな影響はないかも知れない。しかしtorneのように高速にスクロールする機器でカーソルがジャンプすると、ユーザーが感じる違和感は大きくなる。それを防ぐための措置である。

「こういう苦労ばっかりでtorneの開発は構成されているんですよ」と石塚氏も苦笑する。

一週間番組表をスクロール

 3.0の新機能、特に無償提供されてるものの中で、番組表の改良は大きな部分を占める。新機能でありつつ、利用者に注意が必要な点として、予約録画と番組表取得の関係がある、と石塚氏は解説する。

石塚:長期間torneを使わないでいると、番組表の取得ができない、番組表が穴抜け状態になりやすい、という問題がありました。これを補完するため、予約録画後に番組表を取得するようにしました。これで穴抜け状態になることを、だいぶ解消できたはずです。ただし、番組録画が終わってもしばらくPS3が動き続けることがあります。

 なお、フォルダ作成と共に要望が多いのが「プレイリスト」機能。こちらも自分でプレイリストを作る機能はサポートされなかったが、「簡易的なものでご要望には応えたつもり」と石塚氏は話す。

石塚:選択したタイトルを連続再生できるようになりました。古い順から再生していく、という簡易的な実装ではありますが。「全○○本中○本を再生」といった感じで表示されます。シリーズ分けと併用すると便利です。要望が高かったところですので、ある程度ニーズには答えられたのではないか、と思います。

 



■ ツイッター機能を大幅改善、「R2」ボタンの秘密とは?

 前回の大型アップデートである「2.10 "ライブ"」では、生視聴時にTwitterのタイムラインを表示するようになったことが話題になった。3.0でも、この機能に関する改善が行なわれている。特に大きいのは、タイムラインを画面下に流すことができるようになったことだろう。これによって、番組表示がより広く、ツイートの流れも多くなって「賑わい」が増した。

 ARIBの運用規定には「放送番組及びコンテンツ一意性の確保」という条項があり、テレビ番組の上に「番組と関連のないコンテンツなどを混在提示しないこと」(規定より筆者抜粋)とされている。そのためソニーのような家電メーカーの場合、ニコニコ動画のように「映像上に文字を重ねてしまう」実装はなかなか採れない。その上で見やすくするための改良だ。

新ライブ機能の目玉である「横表示」。TLの盛り上がりを感じやすいものになっている

西沢:この範囲で、文章をギリギリ読めるくらいのスピード、タイミングであわせています。実際のところ、画面下の領域では40字くらいしか入らず、140字びっちり書かれたツイートは読みづらいでしょう。そこで、40文字くらいのツイートをマックスと考えて、インターフェースを構成しています。また、ツイートの中でも新しいモノが前に出るようにしてあります。古いものはそこに遅れて出てくる、といった形で調整しています。

石塚:2ライン表示になっているのも、盛り上がりを見せるための工夫ですね。1ラインとか3ラインとか、色々試してはみたんですが、結局2ラインで落ち着きました。

西沢:ツイートが盛り上がる時は、みんな一斉に「ドーン」と来ますからね。それをなんとか表現できないか、と考えてのものです。

 なお、ツイートの即応性・リアルタイム性を上げるため、新たにTwitterのストリームAPIに対応した。従来はタイムラインへの反映が数分遅れることもあったが、3.0へのアップデート後には大幅に改善していることが確認できた。

石塚:Twitterのアカウントを登録する必要はありますが、これで15秒程度のずれで流れるようになります。やはりストリームAPIに対応しないと、このレベルで流すのは難しいです。混雑時などにTwitter側へ与える影響も測定していますが、現状では大丈夫だろうと判断しています。

 他方で、ライブ表示を行なう場合、標準設定はあくまで従来通りの縦表示になっている。

従来型の表示。IDやハッシュタグ、全文が見られる。ツイートそのものもこちらでのみ行える

西沢:横フル表示の場合、アカウント名やハッシュタグなどは省略してしまいますし、全文表示しているわけでもありません。ツイートやリツイートができるわけでもありません。あくまで「ビューモード」という位置づけです。ですから、メインはやはり縦表示、という扱いなのです。

 だがここで西沢氏は、ちょっとした裏技を教えてくれた。

西沢:「SELECT」ボタンと「R2」ボタンを同時に押すと、一発で横フル表示になります。ショートカットですね。TLの文字サイズも、「R2」ボタンを押しながら「L1」「R1」ボタンを押すことで変更できます。

 torneにおいて、「R2」ボタンはシフトキーのような扱いとしているんです。音量調整が「R2」+上下キーなのも同じ考え方です。

 この「R2」ボタンの考え方は、頭に入れておくと便利そうである。

 これまで、torneからツイートした場合には、独自のハッシュタグとして「#e_????」「#s_?????」といったものが付加されていたが、3.0では廃止された。

西沢:非常に不評なので、とりはずすこととしました。次の機能に対する布石だったのですが、ツイートの流量がまだ少なく、テストするのも難しい状態でした。やはり数の多い(他のクライアントからツイートしている)ユーザーにあわせるべきだ、ということで、仕様を合わせました。

 


■ ダビングは? スマホは? Vitaは? 「今後」の可能性に迫る

 さて、ここまで進化しても、やはり気になるのは「次」だ。

 BDレコーダとの連携を実現した以上、次に欲しくなるのは「ダビング」だ。torneでPS3内/外付けHDDに録画した番組を、DLNA+DTCP-IPの枠組みでBDレコーダに転送し、BDへのダビングができれば……と考える人は少なくないはず。だが、そう簡単な話ではないようだ。

渋谷::その可能性も、議論はしています。

石塚:技術的にはどうにかすればできるだろう、と思うのですが、リーズナブルな機能かというと、難しいですね。工数は相当大変なものになります。アップデートとして提供することを考えると、けっこうハードルが高いのは事実です。

 「おでかけ転送」はどうだろう? 有料でウォークマン、Nav-Uに転送する機能がついたということは、他への対応も可能なのだろうか? 例えばスマートフォンなどはどうだろう? SDカードを使った「SD-Video規格」での書き出しは?

石塚:スマートフォンは、現状難しいです。それは技術的な話ではないです。ARIBの運用規定の中で、スマートフォンへはどう書き出せればいいかが定まっていません。その点をどうクリアするか、メドが立てば……。出したくないわけではないですから。Xperiaで、という話だけではなく、色んな方が広く使っている端末に対応したいです。

渋谷::ご要望としてはあるんですが、(SD-Video規格では)CPRMを利用しているので、それをアップデートで扱うのはなかなか難しいです。色々検討はしていますが……。

 では、年末に出る「Vita」では? SCEの公式の公式見解は「検討中」。しかしイメージとしては、もうちょっと前向きなものであるようだ。

渋谷:おでかけ転送への対応は、元々PSPでした。そこを、他のソニー機器へ有償で広げてきました。ユーザーのことを考えたら、いろんな機器で対応するべきですよね。そのために開発中です。

 3.0に続く新機能については、さすがにまだ教えてもらえる段階にない。だが西沢氏は「ネタはたくさんあります。とりあえず、レコーダとしての底上げはできたと思うので、次はエンタテインメントとしてどう楽しませるかかな、と思います」と話す。石塚氏も「実はこの午前中にも、今後のネタを打ち合わせたところ」と笑う。

 そこで一つ疑問がある。今回は、有償部分と無償部分が同時にアップデートされ、有償部分は「機能の解放」という形で提供された。今後、有償部分のみが「追加ダウンロード」の形で、アップデートとは別に提供されることはあり得るのだろうか?

西沢:基本的には、機能の解除キーを提供する形で考えています。

渋谷:そうでないと、品質保証が大変になるんですよ。アップデートした方、追加機能を組みこんだ方、そうでない方、と組み合わせが大変な量になるので……。

石塚:解除キー方式の方が組み合わせは限定されますからね。効率的な開発のためにも、このような形を採りたいと考えています。

 すなわち今後も、「大規模な機能追加」は有償・無償が同時に行なわれる、と考えて良さそうだ。

(2011年 7月 15日)


= 西田宗千佳 =  1971 年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、PCfan、DIME、日経トレンディなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「メイドインジャパンとiPad、どこが違う?世界で勝てるデジタル家電」(朝日新聞出版)、「知らないとヤバイ!クラウドとプラットフォームでいま何が起きているのか?」(徳間書店、神尾寿氏との共著)、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)などがある。

[Reported by 西田宗千佳]