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VJから生まれて「気軽さ」に着地
~GPUを最大活用するビデオ編集ソフト「LoiloScope」の狙い~
Windows 7発売日の10月22日。マイクロソフトが開いたお披露目会見には、Windows 7関連製品を発売する各社が招かれていた。会見の締めは、関係者が檀上に上がっての鏡抜きだ。PC各社、ソフトメーカー、量販店など、多くの人が知る大規模なメーカーのトップや事業部長クラスがずらりと並ぶ。
LoiLo取締役COOの杉山竜太郎氏。画面は、タッチ対応の最新版「LoiLo Touch」 |
その中に、株式会社LoiLo取締役COO(最高執行責任者)である杉山竜太郎氏もいた。だが杉山氏は、「正直、すごく落ち着かなかった」と笑う。「だって、僕らはアルバイトを入れても10人そこそこの会社ですよ。他って数万人規模の企業じゃないですか。ここにいていいのかな、と思いますよね。もっとがんばって、早く大きくなりたいな、と」。
2007年4月に設立されたばかりのLoiLoが、そのような席に招かれたのには、もちろん理由がある。彼らが開発・販売しているビデオ編集ソフト「LoiLoTouch」が、Windows 7のタッチ機能を生かすアプリケーションとして、大きくフィーチャーされていたためだ。
同様に、彼らのソフトは、NVIDIAやAMD(ATI)といった、グラフィックチップベンダーの会見でも、「GPUを生かしたビデオ編集アプリケーション」として紹介されることが多い。国内で作られたPC向けアプリケーションとしては、かなり破格な扱いといっていい。
今回は、国産ビデオ編集ソフトとしてがんばる「LoiLoScope」シリーズを開発する同社・杉山竜太郎氏に話しを聞いた。その成り立ちと狙いからは、PCソフトビジネスと「ビデオ編集」の今が見えてくる。
■ 軽くスムーズな操作性が特徴。秘密は「GPUの活用」にあり
まず最初に、LoiLoScopeシリーズの概要を説明しておこう。このソフトは、すでに述べたように「ビデオ編集ソフト」である。本誌ニュースでも何度も紹介されているし、2008年10月に製品版「Super LoiLoScope」が公開された際には、小寺氏の連載にてレビューが行なわれている。その後1年で機能は大幅に向上している。ハイビジョン編集機能が強化され、プリクラ感覚で派手なエフェクトを、簡単に付加できるソフトに進化している。
LoiLoScopeシリーズの、ビデオ編集ソフトとしての特徴は主に2つある。
デスクトップ全体を編集画面とし、素材を好きな場所において管理する。一般的なビデオ編集ソフトの画面とは大きく異なる |
一つは、非常に特異なユーザーインターフェイスを備えている、ということだ。Windows用ソフトだが、一般的なWindows用ソフトが持つUIコンポーネントはほとんど使われていない。デスクトップ全体が編集素材を管理するための巨大なワークスペースになっており、その上で「どれを使うか」を考えることが基本になっている。他のビデオ編集ソフト的に言えば、素材を入れておくビンがデスクトップになっている、というところだろうか。そのため、編集時に保存するのは「プロジェクト」ではなく「デスクトップ」だ。
さらに違うのは、マウスのクリックやタッチで描く映像素材にズームし、プレビューし、それぞれを直接再生しながらイン点・アウト点を指定して切り出したり、文字や絵などを書き込んだりする点だ。映像同士をつなぐ場合には、他のソフト同様タイムラインを使うが、それはあくまで「一部」に過ぎない。タイムラインも「トラックに整列していく」というよりは、「クリップ素材同士をくっつけると、なんとなく映像がつながる」といった印象。Adobe Premiereなど、カッチリとした作業ルールのあるソフトに慣れた人は、正直相当戸惑うはずだ。実にゆるい感じだが、映像を見ながら加工・編集がしやすく、手軽でライブ感がある。「切る」「つなぐ」よりも「加工する」ことに向いたソフトといえそうだ。
映像のクリップには、自由に手書きで装飾を書き込むことが可能。もちろん、一般的な色替えやモザイク化などの効果もかけられる |
もう一つは、GPUを最大限に活用する、という点である。LoiLo Scopeはとにかく動作が「軽い」。画面中に大量の編集対象となる動画をばらまき、それぞれをズームしながら行き来して編集する、という操作が、非常に軽快に行なえる。しかも、HD解像度の映像を扱っていても、だ。UIの描写にGPUの能力を最大限に活用し、CPUの負荷を分散することで、動作上のボトルネックを減らすと共に、UI遷移のなめらかさで「快適さ」を生み出している。画面デザインなどはまったく異なるのだが、操作時の「感触」が、同様にGPUの能力をUIに生かしている、Mac OS Xの操作感に近いものを感じる。
GPUの演算力はUIだけに使われるわけではない。内部構造の多くもGPUの演算力を使っており、タイムライン処理の高速化なども行なわれている。例えば、各種ビデオエフェクトは、GPU内のピクセルシェーダーを使ってリアルタイムに処理されている。
またエンコードでも、NVIDIAのCUDAに対応し、対応GPU搭載時には、CPUで処理するよりも最低でも数倍は速く処理が終了する。
CUDAによる高速エンコードは他のソフトでも対応しているが、高性能なGPUだけに対応しているわけではないことにも注目だ。多くのパソコンで使われている、俗にいう「オンボードGPU」である「G45 Expressチップセット」にも対応、HD解像度での編集作業が行なえるようになっている。低価格PCでの採用例が増えているNVIDIAのIONでは、快適に動作するだけでなく、CUDA対応なのでエンコードも速くなる。ハード的な要求はかなり下がっているといっていい。
まとめれば、UIの面でもソフト的な面でも、PC上のルールにあまり縛られない、特異なビデオ編集ソフト、といったところだろうか。
■「ライブ感のあるビデオ編集ソフト」が欲しい! ゲーム業界からVJを経て独立
LoiLoScopeがこのようなソフトになった背景には、同社の創業者である杉山竜太郎氏・浩二氏兄弟の経歴が大きく影響している。
LoiLo本社は、慶應藤沢イノベーションビレッジの一室にある。COOである杉山竜太郎氏は手前に、代表取締役でありメインプログラマーである浩二氏は一番奥に座ることが多いという |
社名でおわかりのように、LoiLoはLoiLoScopeを製品化、事業化するために生まれた会社だ。それまで二人は、同じ業界の別々の企業に勤めていたという。その業界とは「ゲーム業界」。兄である竜太郎氏はセガに、弟・浩二氏はナムコ(現バンダイナムコゲームズ)に所属していた。そのためLoiLoScopeは、「ゲーム感覚のUI」と言われることもある。しかし、竜太郎氏に話を聞くと、その理解はかなり浅いものであることが分かる。
同じゲーム業界にいながらも、竜太郎氏と浩二氏は、それぞれ違うジャンルで活躍していた。
竜太郎氏は日本大学芸術学部にてCGを専攻、映像製作にどっぷりつかる生活を送り、その後セガに籍を置いた。社内で手がけていたのも映像製作。ゲームのUIやエフェクトの製作、プロモーション映像などを担当していた。他方で浩二氏は「バリバリのプログラマー」(竜太郎氏)。アーケードゲーム「機動戦士ガンダム 戦場の絆」ではメインプログラマーを務めていた。
他方、会社とは別の場所でも、竜太郎氏は「映像作家」として活躍していた。活躍の場は、ビデオインスタレーションやVJの世界。2003年前後には「MICRON」名義のVJユニットとして、様々なパフォーマンスを行なっていた。
竜太郎氏:ゲームの開発というのは、年の半分が内容を揉む時間、残りが作り込みの時間です。後半は死ぬほど忙しいんですが、前半は意外と時間がある。そこで、夜はVJとして活動していたんです。書道家の武田双雲とコラボしたりもしましたね。
でも当時、VJ用ソフトには不満があったんです。ほとんどのソフトが、320×240ドットくらいでしか出力できなかった。映像を複数重ねて、なんとか640×480ドットくらいで出力できないものか? と思ったんです。そこで、弟の浩二に相談したんです。確か、金曜の夜に電話したんだと思ったんですが。そうしたら、本当にすぐ、そういうソフトを作ってきてくれた。土曜の夜に間に合ったんですよ。そのソフトが、LoiLoScopeの元です。
そのソフトとは、WindowsのDirectX技術を使い、DVカメラの映像をリアルタイムに取り込み、コピーし、タイムストレッチをかけて加工する……といったVJに求められる機能を、高速に実現するものだった。「ecou(回向)」と名付けられたそのソフトは、VJツールとして、竜太郎氏のユニットの活動を支えていった。
その活動の中で、彼の頭にある発想が生まれる。きっかけは仲間の作った一枚のDVDだ。
竜太郎氏:クルーの一人が、イベントに出すためのDVDを作成していた時の事です。彼は、ビデオ編集ソフトではなく、ecouを使って直接作品を作っていました。プレイをそのままDVに直で出して録画し、いい部分だけをつないでDVDにする、という形を採ったんです。
この映像がすごくかっこ良かった。同じことは、After EffectsやInfernoでも出来るはずなのに、なんか違う。計算したものでない、ライブ感が生まれていたんです。
じゃあなんでAfter Effectsでできないのか? と考えた時に、「レンダリングしてからでないと結果が見れない、レスポンスのなさ」にあるんじゃないか、と思ったんです。他方、ecouを見ると、レンダリング過程を経ることなく映像が出てくる。浩二に「これで映像制作ソフトは出来ないの?」と聞いたら、「できる」と言うんです。
実際、ecouを製品化して欲しい、という声もありました。それらのことから、「これをビジネスにできないだろうか」と考え始めたのです。
竜太郎氏の言う「ライブ感」は、筆者にもよく分かる。実は私も2003年頃、VJツールでビデオ編集のプロトタイピングをしていたことがあるからだ。
当たり前のことだが、音楽に合わせてスイッチングや合成を行なうのに、VJツールは向いている。「とりあえずいい感じ」をアナログ的に試行錯誤するには、PremiereよりもVJツールの方が楽だった。できあがったものをプロトタイプとして、より厳密な「合わせ」をPremiereで行なう……というスタイルで、何本か作ってみたが、確かに「なにか」が違った。LoLioScopeに、その時の感覚と似た「ゆるさ」を感じたのも当然のことだったのである。
とはいえ、そこからすぐ商品化、とは進まなかった。ビジネスの立ち上げには不安がともなうし、なにより二人とも、ゲーム開発の現場から抜けられるかどうかも分からなかった。
2005年に竜太郎氏は、慶應大学湘南藤沢キャンパスに併設されたインキュベーション施設「慶應藤沢イノベーションビレッジ」に入居した。現在もLoiLo本社として活用している場所である。当時はあくまでVJユニットのアトリエとしての利用であったが、元々この施設は「インキュベーション」のためのもの。そこで、ecouの「ビデオ作成ソフトとしての製品化」を目指した起業について、関係者に相談を持ちかけることになる。
そこで出てきたのが「未踏」というキーワードだった。「未踏」とは、IPA(独立行政法人・情報処理推進機構)が行なっていた、「未踏ソフトウェア創造事業」(現・未踏IT人材発掘・育成事業)のことである。これまでにないソフトウエアとその作成に関わる人材を発掘するための助成事業であり、IT業界では大きな注目を浴びている。助成金が得られるのはもちろんだが、ビジネス展開・ソフト開発のための貴重な助言も得られる。
そこで、竜太郎氏はまずこの「未踏ソフトウェア創造事業」に応募することとなった。結果、同プロジェクトは2006年度の未踏ソフトウェア創造事業に採択され、起業のための具体的な一歩を踏み出した。
「実は、『未踏』のことは全然知らなかったんですよ」と竜太郎氏は笑う。だが、「未踏」に採択されたことは、竜太郎氏・浩二氏の周囲に大きな反響を呼ぶ。
竜太郎氏:「未踏」に通った、と言ったら、セガ社内での反響がものすごかった。プログラマー達は、「未踏」のことを良く知っていたんです。みんな「すごい! がんばれ!」と応援してくれました。結果、円満退社できたんです。浩二の方も、状況は同じでした。ただ、彼はプロジェクトの中核にいたので、引き継ぎに時間がかかりましたが。
2007年4月、「未踏」の支援を受けながら、LoiLoは起業することになる。ソフトの完成まで時間がかかることもあり、最初のビジネスとしては、After Effectsのプラグイン「Smooth」を選んだ。これは、アニメ制作時に発生する輪郭線でのジャギーを補正するためのもので、浩二氏が個人で手がけていた「KP-Smooth」の有料版だ。
竜太郎氏:初公開から5年経って、突然の有料化だったので、ご批判もあったのも事実です。しかし、「ちゃんとサポートしてほしい」と言うアニメ会社さんもあり、会社として受け持ちたい、という気持ちがありました。
そしていよいよ、本命であるビデオ編集ソフト「LoiLoScope」の開発に着手することになる。何度も、マイクロソフトや各GPUメーカーのあるアメリカに足を運び、密接な関係作りに努めた。
2008年、LoiLoScopeを初お披露目する場も、世界最大のCG関連イベントであるSIGGRAPHのAMDブース。「非常にいい見せ方ができた」と竜太郎氏は話す。
現在も、各種ビデオカードとのバンドル販売が行なわれており、同社にとって大きな収益源となっている。
■ 意外なところにある「編集」「加工」のニーズ。ゲーム動画向けの機能も追加
LoiLoScopeを作る際に狙ったことを、竜太郎氏は2つ説明した。
竜太郎氏:一つ目は「社会の役に立ちたい」ということです。
デジカメやビデオカメラの普及で、一般的な人の手に、動画が撮りたまっている、という認識がありました。間違いなく、ここに市場がある。自分自身もそうなんですが、子供の映像などが撮り溜まっているだけでは、そのままは良くない、と思いつつも、なかなか手が回らない。
また、YouTubeのような動画共有サイトも出てきて、簡単に映像をシェアしたい、という欲求が高まりつつありました。これも満たしたい。まずはこれらのニーズを見たし、社会的なところで役立ちたい、と考えました。
もう一つの狙いは、映像作成を自身が手がけて来た中で生まれた疑問だった。
竜太郎氏:PremiereとAfter Effectsを使っていて思ったのは、「両方統合してくれないのはなんでだろう」ということ。インフェルノやAutodesk Smokeなどの業務用機材は、編集と合成がある程度両方できます。LoiLoScoreはこれだけ動作が速いなら、PremiereとAfter Effectsを合わせたようなものにできないか、と考えたんです。
現在のLoiLoScopeが合成・加工よりになっているのは、このあたりの発想から来るものなのだろう。他方、現在は「プロ向けの機能よりも、簡単に映像をシェアできるようにしたい、という気持ちの方が強くなってきた」とも語る。背景にあるのは、現在の動画編集機能に対する要望の変化だ。
竜太郎氏:一つはブログ向け。主に、お母さんたちの需要です。
「見えていけないもの、出しちゃいけないものを簡単にカットしたい、自分の子供だけにしたいんですが、できませんか?」というお問い合わせが多いんです。
例えば運動会の動画を編集する場合、自分の子供以外は隠さなきゃいけないんです。今は。また、公園などで撮影した映像に、周囲の建物が写っていていいのか、という話もあるんです。
言われて見ればその通りだが、正直筆者は予想していない回答だった。無許可に他人の子供の映像を公開するわけにはいかないし、自宅周囲の建物などが写っていると、プライバシーの問題が発生する。世知辛い話だが、「個人が映像を公開する」場合には、そんなことまで気にしなければいけない時代なのである。
竜太郎氏:YouTubeもいいんですが、「自分の家族や知り合いだけ」と簡単に映像を共有するような、もっとパーソナルな共有サービスが必要かな、とも思います。
個人向け、それも簡易なものへのニーズの高さを竜太郎氏が認識したのは、2008年11月、テレビ東京系のニュース番組「ワールドビジネスサテライト」内の新商品紹介コーナー「トレンドたまご」で紹介された後だ。
竜太郎氏:とにかく反響がすごかった。それまでも、ニュースを重ねる毎に公式サイトのアクセス数・ソフトのダウンロード数が増えていたのですが、一気に爆発して、一週間サーバーが落ちっぱなしになるほどでした。需要自体はすごくある。逆に言えば、ビデオ編集にチャレンジして、結局あきらめた人が多いんだろう、と思いました。
なお、「もう一つの用途」はもうちょっとわかりやすいものだ。
竜太郎氏:ゲームのプレイ画面を編集したい、という要望も多いですね。特定の場所に矢印やコメントを簡単に入れたい、というものです。問い合わせがけっこうあるんですよ。なので、「矢印」を入れるデコペンを作りました。
これは間違いなくニコニコ動画向けだろう。他のビデオ編集ソフトメーカーでも、「ニコ動のゲーム動画向けの機能を望む人が増えた」という話を聞いたことがあるので、もはやかなり普遍的なニーズ、といって良さそうだ。
■パソコンソフトを「今売る」難しさ。海外市場やバンドルビジネスも積極展開
話を冒頭の、Windows 7の件に戻そう。Windows 7発表会にLoiLoが招かれたのは、Windows 7のマルチタッチ機能に対応したソフトとして、「LoiloTouch」がフィーチャーされたからである。だがこのソフトは、なにもWindows 7を「狙い撃ち」にしたものではなかった、と竜太郎氏は話す。
マルチタッチディスプレイを使い、LoiLoTouchを操作している画面。現状では、マイクロソフト以外が開発したWindows 7のマルチタッチ機能対応ソフトはまだ少なく、その点でも目立っている |
竜太郎氏:未踏事業に採択され、今後の方向性を話し合っている段階で、「もうマウスの時代じゃないでしょう」とは言っていました。タッチ・ペンだよね、って。ですから、いつか作ろうと思っていたんです。しかしまさか、Windows 7のメイン・フィーチャーになるとは思ってもみなかったんですが。ただ、開発は大変でした。マイクロソフトのサポートを受けて、ほぼ1カ月半で完成させました。
マイクロソフトに限らず、NVIDIAやAMDなど、様々な企業のイベントで、LoiLoScopeはデモに使われる。見栄えのするUIであるから、という点も大きいだろうが、やはり技術的に高度であり、他に例を見ないものであるからだろう。
他方、「売る」「普及させる」ということに関しては、LoiLoも色々と工夫を必要としている。パソコンソフトの市場は、このところ景気のいい話がほとんどない。ビデオ編集ソフトに限らず、パッケージ版のソフトを「購入する」という人が、パソコンの普及率に比べかなり低いからである。マイクロソフトやソースネクストなどの一部大手以外は、なかなかビジネスが難しい。LoiLoは、無償版・試用版をネットで公開し、そこから「有料版」へと誘導する手法を採用している。
竜太郎氏:これでも、かなり上がってきた方で、最初は0.5%とかそんなもんでしたね。今後はなんとかプレミアム版(有償版)の割合を5%くらいまで持って行きたいです。
海外展開は積極的にやっていきます。米・サンノゼに事務所を作りました。パッケージ販売してくれる会社を探しているところです。すでにロシアではsoktkeyという会社をパートナーとして、ダウンロード販売をやっています。その他、ドイツではすごい人気があるんです。ユーザーがコミュニティを作って支えてくれています。なんとかそちらにも拠点を作りたいです。面白いことに、最初のうちはトルコで話題になったんですよ。どうも、SIGGRAPHに取材に来た記者のレポートから火が付いたようなんですが。
すでにダウンロード版については、各国語版を作成しています。最終的には19カ国語に対応したいと考えています。言語にあまり依存しないソフトなので、ソフトを作るのは簡単なんです。
しかし、iPhoneの「App Store」のビジネスモデルはすばらしいですね。ソフトを集めて売る、エコシステムが出来ています。PC用ソフトのダウンロード販売が流行らないのは、そういうチャネルがないからだと思います。店頭販売はありますが、その形もバラバラで、どこでどう買えばいいのか分かりづらい。マイクロソフトがやらなくてもいいのですが、販売チャンネルとヒット構造が必要なのではないか、と思います。
もちろん、バンドル販売は今後も続けていきます。メーカーとのアライアンスも強化したいところです。
内部では「クラウド化」「サービスモデル化」の話もしています。UIはSliverlight化すれば、ウェブ型でも提供可能です。ただ、動画編集の場合には、素材をまずサーバー上にアップロードしてもらわないといけないので、現実的には難しいですが。
XPに比べ、よりグラフィック性能を必要とするWindows 7の普及は「追い風だ」と竜太郎氏は話す。今後は「編集してもらう」ことと「ソフトにお金を使ってもらうこと」、この2つをいかにクリアーしていくかが、同社のビジネスの今後を支えている、といえそうだ。
(2009年 11月 6日)