鳥居一豊の「良作×良品」

地デジもBS/CSも。最大9ch全録のレグザサーバー「DBR-M590」

より快適になった録る・見る・残すを体験

 今回の良作は、東芝のBDレコーダ、DBR-M590(実売価格22万円)。デジタル3波チューナを9基内蔵し、地デジ/BS/110度CSの中から最大9chの全録が行なえる「タイムシフトマシン」を備えた同社の最上位モデルだ。

DBR-M590

 最大の特徴は、その気になればBS/110度CSから9チャンネル全録できるということ。このほか、過去のレグザサーバーや、タイムシフトマシン搭載の4Kテレビ「REGZA Z10X」シリーズなどと連携し、2つの全録番組をまとめて表示/再生操作できる「タイムシフトリンク」などの機能が盛り込まれている。

 東芝自身、「最強のタイムシフトマシン」と胸を張るモデルだが、これまで熟成を進めてきた実力に新機能が加わることで、全録レコーダというよりも快適なテレビ生活のための利便性は大きく飛躍したと感じた。まだ発売したてで価格は20万円超と高めだが、筆者も導入を決定している。今回はそんなDBR-M590でテレビ録画の生活がどれだけ快適になるかを、数々のテレビ番組を視聴しながら紹介していきたい。

外観デザインは大きな変化なし。B-CASカードは3つともミニサイズ

 まずは外観から見ていこう。開閉式のフロントパネルの色が明るいシルバーから、グレーに近い配色に変わっているが、基本的なデザインやボディサイズは同じだ。このあたりは新鮮味はあまりない。

DBR-M590。フロントパネルの配色が変わったため印象が異なるが基本的なデザインは前作と変わっていない
フロントパネルの右側にあるミニB-CASスロット。タイムシフトマシン用に2枚、タイムシフトマシン/通常録画用に1枚使用する

 とはいえ、よく見ていくといろいろと違いはある。まず気がつくのは、B-CASカードが3つともミニサイズになっていること。このため、BSや110度CSの有料放送チャンネルを従来のフルサイズのB-CASカードで契約している人は、カードの変更が必要になる。この点は少々面倒だが、有料放送のチャンネルを全録できる価値はとても大きいので、最大3枚のカードで視聴契約を行なうことも含めて検討するといいだろう。

 そして、背面の端子では、USB HDDが2つに増えている。ひとつはタイムシフトマシン専用、もうひとつが通常録画/タイムシフトマシン兼用となっている。通常録画用としては、USB Hubを使って最大4台までの同時接続も可能。ずっと残しておきたい番組を保存する場合でも、録画容量を心配する必要はほとんどないだろう。もちろん、SeeQVaultに対応しているので、将来的な買い換えでも同じ東芝製ならば対応するレコーダで録画済み番組の視聴が可能だ。

 外側から見ると大きな変化は少ないと感じるが、USB HDD用の端子の増加など「タイムシフトマシン」録画のための強化が図られていることがわかる。B-CASカードのサイズが変更されたことから、合計9基のチューナ部分の設計も大きく変わっていることが予想できる。東芝に聞いたところでは、内部的にはDBR-M490とは別物でマザー基板の設計や内蔵する3基のHDDの配置を含めて一新されているとのことだ。

BDドライブのトレイ。ドライブは本体の左側に内蔵されている。
側面。奥行きは336mmと、最近のBDレコーダとしてはやや大柄なサイズだ
背面の端子群。各アンテナ端子や1系統のHDMI出力、ビデオ入力と光デジタル音声出力といった装備は標準的。増設用のUSB端子はどちらもUSB 3.0で2端子ある
左端にある黒い突起は、無線LAN用のアンテナ。ワイヤレスでのLAN接続にも対応している

タイムシフトマシンでたっぷりと番組を「録る」

リモコンは従来のレグザサーバーと同じ。「ざんまいプレイ」などのボタンも備える

 ではさっそく、アンテナなどの接続を済ませて実際に使ってみることにしよう。といっても、配線などは通常のBDレコーダと大きく変わるところはない。地デジ用とBS/110度CS用のアンテナをそれぞれ接続し、テレビなどとの接続はHDMIケーブルだけで完了だ。大きく変わってくるのは、タイムシフトマシン設定などの初期設定。基本的には、これらは「はじめての設定」で一通り行なうことができる。チャンネル設定やネットワーク設定などは特に大きな違いはない。

 ここでは全録のための「タイムシフトマシン設定」について、詳しく紹介しよう。設定する内容は、タイムシフトマシン録画をするチャンネルそして録画先の設定。録画モードの選択、全録を行なう時間帯の選択などがある。チャンネル選択では、従来はBS/110度CSチャンネルの録画数に制約があったが、もはやその制約はなくなっているので、自由に視聴可能なチャンネルを設定できる。

 気をつけたいのは、有料放送チャンネルを登録する場合。9つのチューナは3つごとに1枚のミニB-CASカードで管理されているので、3つのチャンネルが視聴できるWOWOWならば、チューナ1〜3(あるいは4〜6、7〜9)でまとめて登録するようにしないと、複数でのカードで受信契約する必要が出てしまう。110度CSを複数のチャンネルが視聴できる契約をしている人も、このあたりに気を使う必要がある。

 多少気を使うのはこのくらいで、あとは、録画時間や録画モードなどは自由に設定するといい。全録というからには、録画時間は全時間(システムメンテナンス時間があるので、最大23時間)にするのがてっとり早いが、見る番組の少ない時間帯では録画を行なわない設定にすれば、そのぶん番組を蓄積しておける期間が長くなるので、必要に応じて選びたい。

 そして、本来は通常録画のチューナ7〜9でも全録を行なう場合はそちらも設定する。この場合は、通常録画用(番組保存用)とタイムシフトマシン録画用でHDD領域の分割をする必要がある。HDD3も2TBの容量があるので、仮にタイムシフトマシン録画用を75%(1.5TB)としても、通常録画用は500GBあるので一般的な使い方ならば十分。大量の番組を残しておきたいならば、保存用としてUSB HDDを追加するといいだろう。この通常録画用(番組保存用)のHDDはSeeQVault対応のものにしておくと、買い換えなどの場合に便利だ。

 なお、SeeQVault対応USB HDDは、USB HDDへの直接録画ができない(通常のUSB HDDとして登録することもできる)。あくまでもバックアップ用、買い換え時の引っ越し用のHDDとして運用することになる。だから、タイムシフトマシン録画用の増設USB HDDにSeeQVault対応のものを使う必要はない。

本体設定の「タイムシフトマシン設定」。タイムシフトマシン機能を「利用する」にしていると、タイムシフトマシン録画が実行されているため、設定の変更はできない。設定を変える場合は「利用しない」として、録画を中断する必要がある
録画するチャンネルと録画先の設定。チューナごとに対応するミニB-CASカードが表示されており、契約を行ったカードを確認しやすい。録画先は内蔵HDD1または2のほか、増設したUSB HDDを選ぶこともできる
チューナ7〜9は通常録画用だが、3つともタイムシフトマシン用にチャンネルを登録することもできる。その場合、タイムシフトマシン用と通常録画用のHDD領域を分割する。5段階で分割する領域を選択できその場合の録画時間も表示される
録画時間帯の選択画面。時間の変更は自由に選択でき、土日だけは全時間、月〜金はプライムタイムのみといった設定なども可能だ
再生操作ボタンはサイズや形状を変えており、慣れれば手元を見ずに操作ができる。

 肝心の録画モードは、番組そのままのDRモードが理想的ではあるが、番組の蓄積期間が短くなる弱点がある。画質自体のインプレッションは後で行なうが、自分の印象としてはAVC最高画質ならば劣化感はほとんどなし。AVC高画質でもBD保存を考えても十分な画質と感じた。多少ノイズ感が増えるがAVC中画質も十分実用レベルだ。それ以下となると、解像感の甘さやノイズの増加が気になるので、保存などはせず内容がわかれば良いという人が選ぶといいだろう。

 録画モードはチューナ1〜6、チューナ7〜9をそれぞれ設定する。これはチューナ7〜9が通常録画用だからだが、これを利用してチューナ7〜9に特に気に入っている番組やBS放送を登録し、ここだけ録画モードを高画質寄りにしておくという使い方もできる。通常録画用HDD領域があるのでHDD容量的には苦しくなるので、増設用USB HDDが必須となる使い方だが、画質にもなるべくこだわりたい人にはおすすめの方法だ。最終的には、全録するチャンネルと録画先、番組を蓄積しておける期間(視聴可能時間)を確認したら、設定は完了だ。

タイムシフトマシン用の録画モード選択画面。録画モードはチューナ1〜6は共通で、7〜9は別の設定となる
設定内容の確認画面。録画モードをすべてDRとしているため、地デジとBSで視聴可能時間が変わっているのがわかる

 そして、昨年秋のモデルからの新機能である「タイムシフトマシン連携機能」の設定もしておく。これは、従来のレグザサーバーと呼ばれるモデルのタイムシフトマシン録画の情報をネット経由で取得し、合計2台分のタイムシフトマシン番組表をまとめて表示できる機能。自宅には、長く愛用している初代レグザサーバーのDBR-M190(2011年12月発売開始)が現役で稼働しているので、これを選択しておいた。

 詳しい使用感などは後で触れるが、購入からけっこうな時間が経過しているM190でもきちんと対応していたのはありがたい。東芝としてはきちんとアナウンス済みのことなのでできて当然なのだが、たいていの場合、こうした新機能は旧モデルでは切り捨てられることが多いので、実際に動作することがわかると改めて驚く。

「タイムシフトマシン連携機能」の設定画面。「利用する」を選ぶと、連携させたい機器の登録などの画面に切り替わる
タイムシフトマシン連携機器として、DBR-M190を選択した状態。連携機器候補には他社のBDレコーダーが表示されることもあるが、それらを選択することは当然できない
連携する機器側の過去番組表の自動更新設定。切とした場合は手動で番組表の更新を行なう必要がある

 これで、タイムシフトマシン録画のための設定は完了だ。最初の設定に時間がかかるが、これで録画予約の手間がなくなるのだから、トータルではこちらの方が楽だ。僕はDBR-M190で何年もタイムシフトマシン録画を使っているが、番組改編期ごとに始まる新番組を見逃すという痛恨のミスから解放された。そして、とてもじゃないがすべての番組をフォローしきれないワールドカップやオリンピックのような大規模なスポーツイベント、WOWOWの映画だって、すべてが録画済み。だから、見逃せない番組だけを後追いでしっかりチェックできている。すべての番組を見尽くしているわけではなく、事実上ほとんどの番組は見ないままに消去されているのだから、ムダは多い。だが、そのおかげで見たい番組がいつも手元にあるという至福が手に入った。これが、全録レコーダの最大の魅力だろう。

 東芝のBDレコーダ担当の方々と話をしていて興味深かったのは、レグザサーバーのユーザーは僕のようなヘビーな録画マニアが多いだけでなく、意外にも子育て中のお母さんにも人気があるという。特にDBR-M590は、BS/110度CS放送の録画チャンネル数の制約がなくなったため、有料放送を契約しているユーザーの注目を集めているという。有料放送だけに専門性の高さやコンテンツの質も高いので、これを全録できる価値は相対的に大きいのだろう。ちなみに子育て中のお母さんが録りたいチャンネルは、子供向けのアニメ専門チャンネルだとか。子供たちの好きな番組を自分がいちいち録画しておこなくても、たっぷりと貯め込んでおいてくれるのは、忙しいお母さんにはなによりありがたいのだろう。

タイムシフトマシンの過去番組表。DBR-M590の録画番組とDBR-M190の録画番組が一覧表示できる。もちろん、M190側の番組もこの画面から再生可能だ。

アニメや映画、ニュースまで、好きな番組を自由自在に「見る」

 ここからは、数日間ではあるが録り貯めた番組を自由に見ていくことにする。まずは、ニュースなどの情報番組を見てみたが、ここで威力を発揮するのが「ざんまいプレイ」。これは膨大な蓄積番組から目当ての番組を探しやすくするための検索機能で、ジャンル別などでの絞り込みのほか、ジャンルや出演者が共通する関連番組をリストアップする「ほかにもこんな番組」などが便利。ニュースや情報番組なら、同じニュースをいくつかの放送局のものを集めて、同じ話題を異なる視点から立体的に見ることもできるし、グルメ情報などを手軽に見渡すこともできる。

 今や全録レコーダといえば、こうした検索機能の充実は欠かせないものだが、これがあるおかげで、より多くの番組を快適に探して見ることができるようになった。DBR-M190では、過去番組表からの検索では自分がよく見る番組を探すか、ネットで話題になった番組を探す程度で、せっかくの膨大な録画番組をフルに活用できるとは言い難かった。

 DBR-M590を使い始めたばかりのときは、当然蓄積番組がほとんどない状態なので、すでに1週間程度の番組が貯まっているDBR-M190側の番組をいろいろと見たが、使用感がDBR-M590側での録画番組の視聴と変わらないことに感心した。「タイムシフトマシン連携機能」で、DBR-M590側からM190の録画番組を再生するというのは、DLNAによる家庭内LANの番組配信だ。再生開始の待ち時間もごくわずかだし、基本的な早送り/巻き戻しといった機能もすべて問題なく使えるので、ネット越しで別のレコーダーを操っているという感覚はまったくない。

 ちなみに、DBR-M590は最大9チャンネルだが。DBR-M190を連携させることで地デジ6チャンネルを追加しているわけだから、合計15チャンネルの規模で全録を行なっている。これだけのチャンネル数をカバーできれば、首都圏であっても録画チャンネルに頭を悩ます心配はかなり減るだろう。なお、「タイムシフトマシン連携機能」で管理できる最大の放送局数は18チャンネル。DBR-M590を2台運用した場合の数だ。

DBR-M590のスタートメニュー。タイムシフト過去番組表を中心に、録画や予約のための機能が配列されている。シンプルな操作でわかりやすい
「ざんまいプレイ」のほかにもこんな番組。関連する番組をひとまとめにリストアップするので、次に見たい番組探しに役立つ
インターネットでの検索ワードなどの情報から今話題になっている事柄をキーワードとして検索できる「急上昇ワード」

 さて、いよいよBDレコーダで肝心な、画質・音質について紹介していこう。今回はせっかく見るべきコンテンツが膨大にあるので、良作も複数挙げることにした。まず1本目は、ゲームで大ヒットし待望のアニメ化を果たした「艦隊これくしょん-艦これ-」。僕は原作ゲームはプレイしておらず概要くらいしかわかっていない。特に艦娘と呼ばれる膨大なキャラクターは主人公ほかレギュラー級の面々くらいしか区別できない。という状態でレビュー用の良品に選ぶのもどうかと思ったが、アニメ版を視聴しているだけでもなかなか面白い。面白いものを選ぶのが一番なので、ここに挙げた。視聴したのは、BS11での放送だ(地デジ放送は、大画面で見るとさすがにノイズが目立ちすぎる)。

 この作品は、最近のメカ+美少女ものとしては重要度が増している、ある程度史実を盛り込み、荒唐無稽な戦闘アクションにしていないこと。序盤で唐突に撃沈(キャラクターの死亡を意味する)が発生するなど、シビアな面もある。その一方でキャラクターは個性豊かでリアルな戦闘と同じかそれ以上に日常シーンを組み込み、それらの多くがかなり能天気なギャグを交えていることもあり、非常に振れ幅が大きい。そんな二面性が面白さのポイントだと感じている(最終的な落としどころがどうなるのか予想もつかない不安もあるが)。

 そういうわけでキャラクターは生き生きと可愛らしいし、CGを駆使したバトルシーンも動きの迫力などを含めてよく出来ている。感心したのは、艤装と呼ばれる戦闘のための装備などもしっかりとCGで再現した艦娘たちのアクションだけでなく、彼女たちの戦いの舞台となる海面や空などの再現もなかなかこだわっている点だ。海上の戦闘では天候の変化が戦いを左右することが少なくないが、そうした空模様の変化を丁寧に描いているし、波の立つ海面も青から緑へと複雑に変化し、なかなかに深みのある色あいだ。

 DBR-M590は、当然ながらこうした豊かな色を不満無く再現した。快晴の空では微妙に変化する均一な青が縞模様になるカラーバンディングも目立ちにくいし、雨雲の重みのある色もしっかりと出る。CGで複雑に色合いが変化する海面もしっかりと色の変化を再現している。基本的には精細感を重視した映像だが、キャラクターの太い描線もくっきりと描くし、手描きらしい描線のかすれなどもきめ細かく再現できる。

 音は、主題歌である「海空」を聴くと、声はクリアで明快な再現だ。AAC音声ということもあるが、低音は伸びが不足気味でややドラムなどの重量感がたりないところはある。その反面、微小音など細かな音がしっかりと出るのはなかなか優秀。本編のキャラクターの声も鮮明で、声質の違いがよくわかる。この作品ではゲームでキャラクターを担当する声優がそのままアニメ版も担当しているようで、一人の声優が複数のキャラクターを担当することも多い。「この人があれもそれも演じてるの?」と、スタッフロールを見て驚くくらい、声の表現力の幅の広さ、演じ分けの多彩さを発揮している人もいるが、そうした違いもよくわかるのはファンにはうれしいだろう。

 続いては、ちょうどよく放送していた宮崎駿の「風立ちぬ」。アニメばかりで申し訳ないが、良い物を選んだらこうなった。アニメらしい鮮明な色が目立つが、夜の街や暗い室内など、案外アニメらしからぬ重い色調の場面も多い。こうした暗色はBDレコーダにとっては泣き所で、色が抜けてただの暗いグレーに感じてしまいがちになるものが多いが、DBR-M590は暗色の再現もかなり優れているとわかる。冒頭の夢の中での飛行シーンをはじめ、美しい機体が空を行く場面では、動きも鮮明だ。動きを重視した作画ということもあって、緻密に描き込まれたものではないが、その動きの魅力をしっかりと伝える。加えて、暗色のしっかりと出る再現で背景画のタッチまできちんと見える。特に結婚式の場面などは情感たっぷりで、暗い室内に明るい色彩の衣装を着けた花嫁がとても華やかで美しい。このあたりは、作り手が狙った通りの再現と言っていい。

 音はもともとがモノラル音声で、音楽を含めて昭和初期の時代性を意識した中域中心の音ということもあり、低音の不足なども感じなかった。声がクリアに再現される特徴は本作でも見事に発揮され、木訥な主人公のセリフも明瞭。なんといっても飛行機のエンジン音や震災時の鳴動など、あらゆる場面で使われている人の声を加工した効果音がはっきりとそれとわかるのが凄い。さまざまな音に人の声で表現したことは当然ながらその意図があるのだろうが、感情が込められたかのようなエンジン音のうなりを聴いていると、そんな狙いがよく伝わってくる。

 DBR-M590の映像と音は、はっきり言って予想以上に優秀で驚いた。DBR-M590は、システムLSIとして2つのチップを使用し、そのほかにトランスコーダー用のチップなども実装されるなど、全録レコーダだけにかなり大規模なものとなる。だが、使用しているチップの世代は昨年秋発売のDBR-T560と同じ世代のものだという。DBR-T560は標準的なレベルと感じていたので、画質、音質の実力の差が不思議に感じたほどだ。

 東芝に聞いてみたところ、やはり画質・音質のための新技術や特別なチューニングはしていないとのこと。新機能である4Kアップコンバートや、薄型テレビREGZAと連携して高画質化を図る「レグザコンビネーション高画質」などのチューニングが行なわれている程度ということだ。僕が想像するに、チューナを9基、HDDを3基内蔵していること、回路規模が大きくなっているといった基本的な違いが画質・音質にも良い意味で貢献したと思う。それはつまり、ノイズ対策の徹底と電源部の強化だ。ここまでに触れた、暗色の再現や精細感の高さなどはノイズ対策によるS/Nの向上の賜物だろう。放送を受信するチューナは基本的にノイズ源なので、デジタル3波チューナを9基も搭載するDBR-M590では、その対策は厳重に行なっているという。それはこれまでの全録レコーダの開発で培ったものでもあり、一般的な3チューナタイプのものとは作り込みの度合いが違うのだろう。あくまで各チューナの干渉を抑え受信感度を高めることが目的らしいのだが、それが副次的に画質・音質にも役立ったようだ。

 本機は、20万円超の高級機であり、機能やHDD容量6TBという装備を考えれば納得のいく価格ではあるが、やはり高級機ならばそれなりの画質・音質の実力も備えていてほしい。その意味では少々不安もあったが、それが杞憂に終わったのは良い発見だった。

 このほか、実写映画やドキュメント番組などで、画質モードによる画質の違いを確認してみた。今回取材に当たって予約録画を行なったのはこれだけ。よく見るドラマやニュースを通常録画で録画モードを変えて予約した。このほかに画質や音質の確認のためにめぼしい番組を予約していくのだが、これがなかなかに面倒なのだが、本機の場合はそれが必要がなく、番組探しも快適で試聴はとても楽だった。

 AVCでの長時間録画は、2倍相当の「AVC最高画質」、「AVC高画質」(3倍)「AVC中画質」(4倍)、「AVC低画質」(5.5倍)、「AVC最低画質」(12倍)の5つが選べるが、最初に述べた通り、BD保存も含めて実用になるのは「AVC中画質」まで、「AVC最高画質」は劣化感を感じることもなく、地デジで目立ちやすいブロックノイズはむしろ少なくなったと感じるほどだ。「AVC高画質」もほぼそれに準じるもので、違いは細部のディテール感が甘くなる程度だ。「AVC中画質」になると、やや早い動きでのボケ感や全体的な精細感の衰えを感じるが、ノイズはよく抑えられている。「AVC低画質」と「AVC最低画質」はさすがにノイズが目立ってきてしまうし、全体的な精細感もパッと見てすぐに気付くくらいに甘くなる。タイムシフトマシン録画での画質モードの切り替えは、チャンネル変更と違って、1〜6の全放送の蓄積がリセットされるので、画質モードは最初に一通り確かめてから決定するといいだろう。

通常の番組表での録画モード設定。DRモードのほか、HD画質での録画が5段階、標準画質での録画が4段階選択できる。

 最後にBDでの視聴インプレッションも触れておこう。視聴したのは「NY心霊捜査官」。NYで起きた連続的な猟奇事件を追ううちに、その犯人が悪魔憑きであることがわかってくるという筋書きだ。すでに信仰を失ったNY市警の捜査官が、一般的な刑法で裁くのが難しい悪魔憑きという現象を否定しながら、それでも悪魔憑き以外の何物でもないことがわかっていく様子など、ホラーの古典である「エクソシスト」を彷彿とさせる内容を、現代的なホラー演出を加味してより恐怖感の演出もたっぷりと詰め込んで完成した作品と言える。

 ホラー作品ということもあり、暗いシーンばかりの映画だが、実写映像でも暗色の再現性の良さや、精細感の高い画質は同様でかなり見応えがある。特に印象が良かったのは、アニメでも感じた階調性のスムーズさで、肌の質感はもちろんのこと、暗い室内の見通しの良さ、緊迫感を盛り上げる情感の表現などが見事だ。高画質や高音質関連の調整機能などは最小限だが、トータルでの高画質化に貢献する「XDE」とノイズリダクションがある。これは視聴中にサブメニューから選択が可能。「XDE」は取り立てて大きな改善効果があるわけではないが、わずかなチラつきなどが抑えられ、見やすい画質になる。ノイズリダクションは、精細感が鈍るような悪さがなく、モスキートノイズのざわつきが減るのでこちらは常時オンで良さそうだ。

 音の点では、銃撃や殴り合いのような激しい音は低音の重量感がもう少し欲しい感じもあるが、不気味なBGMや象徴的に使われるドアーズの曲などは、ベースやドラムの低音感は十分だ。

 この作品で、4Kアップコンバートの画質を確認してみた。本機の4Kアップコンバートは、1080/24pのソースが対象で基本的にはBDソフトの映画などを4K化して出力できるものと考えていいだろう。映像のディテールを掘り起こすような解像度の高い画質というわけではないが、フルHD表示での精細感の高さをキープしつつ、より滑らかな再現になっている。ディテール感というよりは映像の緻密さ、質感や映像の雰囲気がよく出る表現と言っていいだろう。それだけに、「NY心霊捜査官」のような作品の場合は情感がよく出ていて、より怖くなる。映画のような24pソースのみ対応ということもあって、映画らしさを重視した仕上がりになっているとも感じた。4Kアップコンバート技術は4Kテレビの重要な機能でもあり、各社とも優れた技術を投入しているので、決して必須ではないが、テレビ側とはひと味違った再現になるので、見比べてみると面白いだろう。

本体設定にある「映像設定」。選択項目としては標準的なものとなっている
「HDMI接続設定」の画面。特別な選択項目などはない。4K出力はHDMI解像度設定を「自動」にしておくと、4Kテレビとの接続時は1080/24pソースが自動でアップコンバート出力されるので、特に操作などは必要ない
再生時にサブメニューを呼び出したところ。「ノイズリダクション」と「XDE」の項目がある

大事な番組をしっかりと「残す」。RD時代の編集機能もほぼ完備

 最後は、編集やダビング機能だ。HDD容量の大容量化などでこまめに編集してBDなどに保存するユーザーはかなり減ってしまったようにも感じるが、BDレコーダとしては大事な機能と言える。

 ここで強くアピールしておきたいのは、現行の東芝製BDレコーダは、かつてのRDシリーズと同レベルの高度な編集機能がきちんと盛り込まれていることだ。初代レグザサーバーであるDBR-M190は、基本的に薄型テレビ用に実装されたタイムシフトマシンを使っていることもあり、編集機能もダビング機能も最小限だし、操作の煩雑さなども含めると実用度は低かった。その他のDBR系統のシリーズも初期はチャプター編集や部分消去レベルの機能だけだったので、RDシリーズにファンにはちょっとさびしいものがあった。

 だが、現行モデルでは、チャプター単位の編集はもちろんのこと、プレイリスト編集も備わっている。しかも、RDシリーズを使用していたときに重宝していた「偶数/奇数チャプターの自動プレイリスト化」などの機能もある。本編とCMは基本的に交互になっているので、偶数/奇数を指定するだけで本編のみ、CMのみのチャプター選択がまとめて行えるのだ。一般的なBDレコーダでの編集では、CMなどの不要な部分は削除するしかなく、後からCMを見られないことになる。その点、プレイリスト編集ならば、オリジナルには手を付けないので、CM部分も残しておけるなど、便利な点が多いので、プレイリスト編集の復活は実にありがたい。

 操作画面こそ、シンプルな編集画面となっているが、出来ることに関してはほぼRDシリーズと同等。そして、システムLSIの速度向上で編集もサクサクと行なえる。多少の操作感の違いこそあるが、編集作業として飛躍的に快適になっている。

 タイムシフトマシン録画した番組を残しておきたいという場合は、通常録画用の領域にまずダビングする必要があるが、ここでマジックチャプターを適用できるので、本編とCM部分の分割も自動で行える。これをベースにおまかせプレイで本編のみの再生もできるし、本編だけをBDなどにダビングすることも可能。簡易的な編集から本格的な編集まで一通りこなせるようになっているのは便利だ。

 このほか、ダビング先をディスクメディアだけでなく、LANで接続された対応BDレコーダやスマホやタブレット端末を選ぶこともできる。スマホやタブレットへは持ち出し用の番組として録画レートや解像度を変更しておくことが必要だが、モバイル端末への持ち出しもきちんと行なえるなど、機能的な充実度は申し分ない。RDシリーズには根強いファンがいて、今も現役でRDシリーズを使っている人もいるし、RD型番モデルを復活して欲しいという声もあるようだが、現行機も機能的にはほぼ十分と言える。そろそろDBRシリーズへの移行を検討してみても良さそうだ。

「録る」、「見る」、「残す」がより快適になった、全録レコーダーの最先端

 DBR-M590は、全録レコーダとして大きく進化したことはもちろんだが、快適な視聴のための機能、ダビングや編集といった機能も完備し、大きく完成度を高めたことがわかった。ここでは大きく触れなかったが、当然ながら外出先からインターネット経由で録画番組と放送中番組の視聴ができる「リモート視聴」にも対応。「リモート視聴」でも「ざんまいプレイ」でタイムシフトマシン録画の番組が検索できるので、出先などでも気軽に見たい番組を探せるようになっている。

 また、テレビのREGZAのタイムシフトマシンと比べると、クラウドサービスを利用する「番組シーン検索」がDBR-M590では使えないが、実はスマホ用アプリ「TimeOn 番組シーン検索」(iOS用)を使えば、スマホからの操作で番組シーン検索ができるようになる。また、本体だけでも字幕情報を読み取っておおまかにシーンの移動を可能にする「簡単シーン検索」という機能もある。

 リモート視聴を含めて、BDレコーダの活用はスマホなどの端末と組み合わせて使うのがマストと言えるが、スマホがあれば機能的な差も解消されるのはうれしい。

 録画予約不要でテレビ放送の多くを蓄積でき、見る場所も時間も問わずに自由に視聴が可能。ダビングや編集などの機能も完備と、まさに完成形と言っても良いレベルまでの進化を果たしているのがDBR-M590。誰にでもおすすめできるモデルでは決してないが、テレビ好きだが、いつもテレビの前に居られるわけではないという人はぜひともこの快適さを体験してみてほしい。

 そして、DBR-M190など歴代のレグザサーバーを使っている人ならば、買い換えではなく買い増しで全録チャンネル数の倍増と、より快適な使い勝手が得られるので、もっともおすすめしたいユーザーと言える。

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鳥居一豊

1968年東京生まれの千葉育ち。AV系の専門誌で編集スタッフとして勤務後、フリーのAVライターとして独立。薄型テレビやBDレコーダからヘッドホンやAVアンプ、スピーカーまでAV系のジャンル全般をカバーする。モノ情報誌「GetNavi」(学研パブリッシング)や「特選街」(マキノ出版)、AV専門誌「HiVi」(ステレオサウンド社)のほか、Web系情報サイト「ASCII.jp」などで、AV機器の製品紹介記事や取材記事を執筆。最近、シアター専用の防音室を備える新居への引越が完了し、オーディオ&ビジュアルのための環境がさらに充実した。待望の大型スピーカー(B&W MATRIX801S3)を導入し、幸せな日々を過ごしている(システムに関してはまだまだ発展途上だが)。映画やアニメを愛好し、週に40〜60本程度の番組を録画する生活は相変わらず。深夜でもかなりの大音量で映画を見られるので、むしろ悪化している。