小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第787回
![Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語](/img/avw/subcornerinfo/000/059/zooma.jpg)
木製BluetoothスピーカーからSuper 8まで、CES2017に見るアメリカントラディショナルの復権
2017年1月11日 08:15
トラディショナルとトレンドを融合させるKlipsh
CESは今年で50周年を迎える。それを記念して、長年CESに通っている来場者には、ネームタグの下に5年以上なら5+、10年以上なら10+、20年以上なら20+といったリボンが貼られている。筆者もバックナンバーを調べてみたところ、初めてCESに来たのが2003年なので、今年で14年目という事になる。めでたく10+Yearsのリボンを頂いたところだ。50年間まじめに来ている方は50のリボンが貼られているはずだが、実際に何人かいらっしゃるようである。
今年はVRやAR、あるいはスマートホームといった最先端技術に注目が集まっているところだが、そんな中で逆にアメリカのトラディショナルな方向に向いた展示が印象に残ったので、ご紹介したい。
オーディオメーカーのKlipshは、最近日本ではイヤフォン/ヘッドフォンブランドとして認知度が高まっているが、元々は劇場用のホーンスピーカーで名を馳せた老舗である。1946年創業というから、昨年70周年だった事になる。
ブースの展示も、古き良きアメリカをイメージしたものになっており、製品も最新技術を取り入れつつ、歴史を感じさせるたたずまいのものが出てきた。
「The One」は、木製キャビネットと銅製のコントロール部のコントラストが美しいBluetoothスピーカーだ。8時間駆動可能なバッテリを内蔵しており、ステレオミニジャックによるアナログオーディオ入力もある。色はウオールナットとブラックアッシュの2色があり、米国での価格は249ドル。
「The Three」は「The One」の上位モデルで、Bluetoothとアナログ入力以外に、Wi-Fiによるマルチルームオーディオ技術である、DTSのPlay-Fiにも対応。さらにUSBオーディオ入力や、レコードプレーヤーが繋げられるフォノイコライザまで備えている。こちらもウオールナットとブラックアッシュの2色があり、米国での価格は399ドル。
さらにその上ということになるのだろうか、セパレート型の「The Sixes」もある。サイズ的にも見た目的にもパッシブのブックシェルフ型スピーカーだが、実際には内部にアンプを搭載するアクティブスピーカーだ。ホーンタイプの1インチ・チタンツイータと、6.5インチのウーファを備えており、下部には入力切り換えやボリュームノブがある。左右の接続は専用マルチケーブルだ。
入力はBluetooth、アナログはステレオミニとRCAのほか、フォノイコライザも備える。デジタル入力はUSBと光デジタルだ。左右セパレート型のアクティブスピーカーは別に珍しくもないが、ワンボックス型から上を見上げて行ってこういう形にたどり着くと、なんだかすごそうな気がする。発売日及び価格は未定。
まだプロトタイプで実際に音を聴くことはできなかったが、さらに大型の「The Fifteens」もある。これは15インチウーファーと1 3/4インチのロードホーンスピーカーを備えた、高さ1mぐらいある本格的なスピーカーだ。
これもパッシブに見えるが、内容的にはこれまでご紹介したモデルの上位機種なので、入力はBluetooth、USB、光、ステレオミニ、RCAのほか、フォノイコライザも備えるアクティブスピーカーである。
左右180Wのパワーアンプを内蔵し、192kHz/24bitのDACを内蔵したハイレゾスピーカーだ。こんな本格的なスピーカーながら、パワーアンプが不要ということでは、確かに設置はスッキリする。発売時期、価格共に未定だが、大型スピーカーの生き残る道として、これはこれでアリだろう。
さてThe One、The Threeがあるんだからその間はないのかという話にもなると思うが、探してみたところ「The Two」というモデルも見つけた。これはThe One、The Threeとはシリーズが違うようで、ボディが台形になっている。背面にはバスレフポートがあるところからも、スピーカーとしての設計もかなり違うようだ。
Bluetooth搭載は当然として、アナログはステレオミニとRCAで、RCAはフォノイコライザとの切り換え。デジタルは光デジタルが1系統あるものの、USBはホスト側の端子しかないところがThe Threeと違うところだ。米国での価格は299ドル。
なおThe Twoの下位モデルで「The DEMI」というモデルもある。これが一番小型で、Bluetoothとステレオミニのアナログ入力のみ。The Oneと違い、バッテリは内蔵しない。米国での価格は199ドル。
本当にアレを作ってしまったKodak
今年CESは50周年だが、昨年はKodakがSuper 8の誕生50周年として、新たにSuper 8カメラのモックアップを展示したのをご記憶の方もあるだろう。当時は2016年秋に発売とされていたものの、結局昨年中には発売されなかった。
映像クリエイターからは開発に関して絶賛されたものの、企画倒れ感が強い製品だと思っていたのだが、今年のCESではついに実動モデルが展示された。実際にフィルムカートリッジを装填して、録画することができる。ただし現像しないと映像の再生ができないので、その場では映像を確認出来ない。
Kodakブースも古き良き映画館テイストのデザインとなっており、シアター風の小部屋では、実際にSuper 8カメラで撮影した映像が再生されていた。今の技術で8mmフィルムを作れば高画質……になるわけでもなく、やっぱり解像感は低くフィルム傷なども当然ある。動画編集ソフトでプラグインを使えば似たような映像にはなるが、これは本物だ。本物でしか出ないノイズ感は、今の風景をタイムマシンのように過去に連れて行ってくれる魅力を持っている。
実際に撮影させてもらったが、カメラとしてはかなりずっしりと重い。モニターとして3.5ガタでスタンダード解像度の液晶モニタを備えており、録画中にもモニタが可能で、ちゃんと赤い丸印が出て記録中であることを示す。メニュー画面もあり、コントロールは、昔のiPodを彷彿とさせるタッチダイヤル式のコントローラを搭載。回転で選択、センターボタンで決定というスタイルだ。
露出計も備えており、絞りとフォーカスはマニュアルで調整する。フィルムはKodakが提供するカートリッジ式で、およそ15分の撮影が可能。なお標準の18fps以外にも24/25/36fpsのバリアブルスピード対応となっており、いわゆるハイスピード撮影もできる。
また同社としては初となるスマートフォン、Kodak 「Ektra」も大量に展示されていた。Androidスマートフォンで背面にはしっかりしたレンズという作りは、パナソニックのDMC-CM1を彷彿とさせる。ただCM1はもう2年前の製品で、後継機も出ていない。
レンズは26.5mm/F2の単焦点で、電源を入れてもせり出さず、平たいままだ。光学手ぶれ補正も備える。センサーは21Mピクセルで、動画は4K撮影も可能だ。パンフォーカスではなく、AFを備えるという。
正直今のKodakにスマートフォンを作る技術があるとは思えないので、どこかのODMだろう。だが、革張りの背面や、カメラっぽさを引き立てるケース、パッケージなど、キッチリしたKodak的な世界観がある。写りはまた機会があればテストして見たいところだが、モノとして欲しいという人は多いだろう。
またKodakは、PIXPROSP360やSP360 4Kといった全天球カメラをリリースしてきた。これらは上半分ドーム状に幅広く撮影するスタイルだったが、今年は全天球360度カメラを展示してきた。
「PIXPRO ORBIT360 4K」という名称で、235度と155度のレンズを搭載する。対になるレンズが同スペックではないというのは珍しい。見た目からすればNikonの「KeyMission 360」とよく似ているが、ボタンの形状や液晶画面などが違っている。
KeyMission 360は2レンズ間の幅が広すぎて、近距離のステッチングが上手く繋がらないという弱点があった。ORBIT360 4Kも構造的には近いので、最終的な仕上がりが気になるところだ。米国での価格は499ドルで、米国では間もなく発売予定。これまでの製品も日本で発売されているので、おそらくこれも発売されるものと期待したいところだ。