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第472回:PS3でビデオ編集!? Ver3.40の編集機能を試す

〜 そしてtorneもアップデート、3倍モードが標準に 〜




■ 息の長い商品

 ハードウェアという観点から見たゲーム業界というのは、AV機器とはかなり文化が違うようだ。普段からAV機器のペースに慣れていると、新製品リリースは速ければ半年、普通は1年で新モデルにリプレースとなるわけだが、ゲーム機は違う。

 多少のバリエーションモデルは出るが、基本アーキテクチャが数年変わらないまま、というのも珍しくない。もちろん、ゲームソフトを動かすためのプラットフォームであるということを考えれば、早々土台が変わってはおちおち開発もできないという事情もあるだろう。また子供ユーザーも多いため、次々に数万円の新しいハードウェア投入は、市場に馴染まないということもあるかもしれない。

 PlayStation 3(PS3)もその例外ではなく、最初に出たのが2006年というから、もう4年前の機体である。PCの世界で考えるなら、なんとWindows Vistaが出るちょっと前のことである。その後2007年にコストダウンしたモデル、2009年には軽量・薄型化されたモデルが発売されたが、基本アーキテクチャはほぼ同じである。

torne
 PS3が面白いのは、ソフトウェアのアップデートで、ゲーム以外の機能がどんどん増えていくところだ。もはやゲームをしない人でも、便利だから使っているという人もいそうである。このあたりはDVDプレーヤーとしてPS2を買うというムーブメントも彷彿させるが、PS3の場合はもう少し行動原理が深いような気がする。

 さてそんなPS3だが、6月29日に本体と、それからtorne用のソフトウェアが相次いでアップデートされた。今回のアップデートで、動画編集機能と、YouTubeにアップロードする機能が追加されたという。またtorneのほうは従来からの噂通り、ついに録画もAVC圧縮記録対応となる3倍モードを装備した。

 買ってからのお楽しみが次々に増えるPS3、さっそくその新バージョンの威力をテストしてみよう。



■ かなりのフォーマットに対応

 では本体に追加された編集機能から見ていこう。これにはまず最新ファームウェアのアップデートが必要だ。アップデートすると、「ビデオ」のところに「ビデオ編集 & アップデート」という項目が増えている。「新しいビデオの作成」をしてプロジェクトファイルを作り、それを編集しようとするところで、ソフトウェアのダウンロード画面になる。だいたい44MBぐらいのソフトウェアのようだ。

 ダウンロードとインストールが完了すると、編集できるようになっている。まずは素材の追加だが、その前に素材クリップをPS3に転送しておく必要がある。

 転送には直接カメラをUSBで突っ込むという方法もあるが、DLNA対応のメディアサーバーがあれば、サーバの映像を転送することもできる。フォルダごとのコピーもできるほか、ファイル選択によるコピーも可能だ。ただ残念ながらサムネイルがないので、必要な映像だけをこの場だけで選ぶことは困難である。


編集直前にソフトウェアのダウンロードが始まる メディアサーバーの映像クリップもコピーできる

 編集可能なフォーマットは、MPEG-1、MPEG-2(PS/TS)、H.264/MPEG-4 AVC、MPEG-4 SP、Motion JPEG(Linear PCM)、Motion JPEG(μ-Law)、AVCHD(.m2ts)、DivX、VC-1(WMV)となっている。AVCHDカメラで撮影した映像も、もちろん編集可能だ。編集ソフトの中には、厳密にAVCHDのファイルストラクチャがないと素材として読み込めないものもあるが、PS3の場合はファイル単体で対応しているので、特に関係ないようである。

取り込んだ映像のサムネイルが、全部同時に動く

 今回サンプルとして使用してみたのは、Panasonic HDC-TM700で1080/60pで撮影したファイルである。過去にテストした限りでは、同機で撮影した1080/60pのファイルはPS3でも再生できることまでは確認できていたわけだが、特に問題なく編集もできるようである。転送されたファイルは「ビデオ」からすぐに確認できるが、なんとすべてのサムネイルが全部動画で表示される。おそるべきCellパワーである。

 転送されたファイルは、オリジナルのファイル名がそのまま転送される。拡張子は表示されないので、拡張子違いの同名のファイルが混在することもあり、ややこしいことになる。しかし転送したタイミングごとにフォルダ分け表示も可能で、さらにフォルダ名も変更できるため、素材管理としてはまずまずである。

 さて、編集機能に戻って「追加」からファイルを追加してゆく。画面にも注意書きがあるが、画像は追加された順でしか並ばないし、あとで順番を入れ替える方法もない。したがって、追加するときにある程度決心しなければならないということである。

 また、「ビデオ」で一覧を見たときはすべてサムネイルが動画再生されたが、この追加画面ではまったく動かない。中身がわからないので、あらかじめ追加したいクリップ名をメモしておかなければならないというのは、ちょっと前時代的であろう。


まずは素材の追加。ただし追加した順でしか並ばない 映像の追加はひとつずつ。サムネイルも動かない


追加したクリップはサムネイルとタイムラインとして表示される

 またクリップの追加も一つずつしかできないので、長編を作るのはなかなか大変である。最終的なアウトプットがYouTubeだとすると、10分までのコンテンツが作成可能ということになる。普通に編集していったら150カットぐらい入るわけだが、まあこのメソッドではそこまでの編集は無理だ。

 追加されたクリップは、サムネイルとタイムラインという格好で並ぶ。サムネイルを選んで○ボタンを押すと、プレビューするか、削除するかが選択できる。これを見てイメージするのは、なんとなーくDVDレコーダの編集機能と似てるなー、ということである。



■ 可能性を感じさせる編集機能

 「編集」画面に進むと、4つの機能が選択できる。「A-B間消去」では、先ほど追加したクリップ全体を一つの繋がったものと見なして、部分削除を行なう。本来ならばクリップ一つ一つに対して、「使う部分を残す」ほうが効率的であろう。現在の方法では、クリップのつなぎ目をまたぐ格好でガバッと消去することで、結果的に使う部分を残すということになる。しかし、それはなんだかナイフを逆手に持っているような、妙なぎこちなさを感じる。


「編集」ブロックでは、4つの機能をサポート 全体から消去したい部分を複数選択できる

 「再生速度」は、A-B間を指定して、その範囲を2倍速か0.5倍速に変更できる。いいシーンのリプレイをスローで、といった使い方をしたいところだが、クリップの部分コピーなどはできないので、現時点ではまた最初に戻って追加のやり直しが必要となる。途中の思いつきに応えられないというのは、編集ツールとしては辛いものがある。

 「テキスト」は、文字をカットイン、カットアウトで挿入することができる。正直そこまでできるとは思わなかったが、まあできたほうがいいに決まっている。あいにくフォントの種類が選べないが、文字のサイズや位置をジョイスティックで自由に設定でき、シャドウや色の組み合わせもパターンから選ぶことができる。機能的にはまだまだだが、可能性を感じさせる部分だ。


指定範囲を0.5倍速に変更 テキスト入力機能まで装備


sample.mp4(9.77MB)
動画サンプル
編集部注:PS3で編集後、MPEG-4 AVC/H.264で保存したファイルです。編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。
 「BGM」は、映像に音楽を追加できる。あらかじめ16曲がプリセットされており、その中の1曲を選ぶ。音楽が余っても、最後をフェードアウトしてくれる機能はないようだ。現場音とはミックスされるが、音量バランスは設定できない。

 最終的な編集結果は、本体内にAVC/H.264(MP4)として保存するか、YouTube、Facebookにアップロードできる。本体内への保存は、640×480になってしまうのが残念だ。映像ビットレートも2Mbps程度なので、本体で再生してハイビジョン対応テレビで見ると、割とがっかりする画質である。せっかくのハイビジョン素材なのに、最後がVGAサイズにしかならないのは、いかにも残念だ。

 YouTubeへのアップロードは、アカウント設定さえ行なえば簡単である。こちらも最大で480pまでの解像度となる。実際にアップロードしてみた映像は、ここから確認できる。


16曲がプリセットされている 編集結果はそのままYouTubeにアップロード


■ 楽しい「トルミル情報」

 では続いてtorneソフトウェアの新バージョン、2.0の強化ポイントを見てみよう。やはりユーザーとして一番嬉しいのは、AVC変換により3倍録画モードを備えたことだろう。なにせ初代PS3はHDD容量が20GB/60GBしかなかった。ゲームデータにしか使わなかったうちはそれでも足りただろうが、テレビ録画となれば全然足りない。最近のモデルでは320GBが最大容量だが、今どきのレコーダは1TB越えが普通になりつつあることを考えれば、それでも頼りないわけである。

 AVC変換は本体のCellプロセッサではなく、チューナーユニット側のトランスコーダで行なうという。そのため、AVC録画中でもゲームやBD再生が可能となっている。画質的にも納得できるもので、通常の番組視聴では全く問題ないレベルだ。

 新しいソフトウェアの予約録画の画質モードでは、この3倍モードが標準となっている。torneはシングルチューナではあるが、普通にテレビ録画機として使っていけば、当然毎週録画などにより番組がどんどん溜まっていくことになる。録画用外付けHDDはもはや必須だろう。そのような途中からの増設については、「操作方法」のオンラインマニュアルで設定方法が確認できるようになった。これも2.0からの新機能だ。


画質は3倍モードを標準としている オンラインマニュアルも表示可能

 また録画中の追っかけ再生もできるようになった。現在録画中の番組でも、「ビデオ」の中から普通に再生できる。また番組のフィルムロール表示ができるので、見たいところだけ拾って見ながら、今放送中の近くまで追いつく、といったこともできる。ワールドカップの放送では重宝した人も多かっただろう。

 もう一つ個人的に興味深いのは、「トルミル情報表示」である。この表示をONにしておくと、番組表示や検索画面などに、どれぐらいの人が録画予約をしたか、またどれぐらいの人が今視聴しているかということがわかるようになる。表示のONに関しては、別途PlayStation Networkにログインしておく必要がある。ログアウトしていたら、ログインを促す画面が表示されるようになった。

 さてこの表示で面白いのが、現在放送中の番組である。「TV」で放送中の画面にしたのち、コントローラの上下キーで放送中の番組一覧を出すと、そこに予約数である「トル」、視聴中である「ミル」の数字が表示される。見ていると途中で増えたり減ったりするので、そこそこの頻度で更新しているようだ。今の時間、みんな何見てんの? という素朴な疑問に対して調べられる機能としては、なかなか楽しい。


追っかけ再生中もフィルムロール表示が可能 放送中の番組の視聴数がわかる

 さらに先日の選挙特番では、torneユーザー限定ではあるが、視聴率調査のようなことができることがわかった。のちに発表された新聞報道などの順位と比較したりするのもまた、面白い。

 また番組検索画面では、ソート順を「トル」に変更することで、今一番予約されている番組をジャンル別に調べることもできる。今回見た限りではぶっちぎりで「けいおん!!」が予約されており、オマエら予約しすぎというツッコミと共に、ああtorneユーザー層ってそこなのねー、的な勘ぐりもできて、それもまた面白い。

 しかし単にそれだけでなくジャンルごとに見ていくことで、みんなニュースでは何見てんの? とか、おっ今週こんな映画があるのか、といったことが、発見できる。そう言う使い方はいささか他力本願ではあるものの、何の根拠かよくわからないなにかの「おすすめ番組機能」よりも、裏付けがあるように思う。

 ただこれ、「福祉」ジャンルに関して、なぜかテレ朝の関係ない番組が大量に表示されるのは、何かのバグだろうか。正しいジャンルにも同じ番組が表示されるので、EPGデータの間違いではないと思われる。

【2010年7月15日追記】
 「福祉」ジャンルに関してテレ朝の関係ない番組が大量に表示される現象について、株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント広報部より、「テレビ朝日の番組で字幕対応しているものにはすべて福祉のジャンルが付いています。そのため、torne側でも福祉と認識し、福祉ジャンルと直接関係のない番組もセレクトされています。torneのバグではありません」と連絡がありました。

検索画面でトル数順にソートできる なぜか「福祉」に大量のテレ朝の番組が

 またこのトルミル機能に関して、Twitterで@tornevという鳥のキャラクターがいろいろ番組情報をつぶやいているので、フォローしておくと面白い。本日の予約で一番多いものや、全国の総トル数、裏技ショートカット情報など、裏方ならではのデータもつぶやいている。


■ 総論

 PS3の映像編集機能は、どうも実装された機能とできることの現実が噛み合っていないように思える。例えばクリップの入れ替えをしない、できるのは部分削除だけ、といった機能は、DVDレコーダの編集機能である。

 DVDレコーダでは、すでに完成したコンテンツであるテレビ番組を扱っていくため、順番の並び替えなどは必要ない。しかし、自分で撮影した映像を使ってコンテンツを作る編集作業の場合、時系列で並ぶだけでは作品にならない。大昔、まだニュース取材が16mmフィルムだった時代は「順撮り」といって、見せる順番通りに撮影するという手法があったが、今はまったく使われていない。順番が入れ替えられる「編集」という技術の発達により、撮れるところから撮っていくのが、撮影の基本となったのである。これが映像を追加するときにしか操作できないというのは、編集機能としては致命的であり、この点ではiPhone 4用のiMovieにも劣る。

 また部分削除機能は、テレビ番組に対する編集行為としては、不要部分と言えばCMカットぐらいしかないので、「大半が必要部分である」という前提に立つから部分削除機能が有効なのだ。一方自分で撮影した映像の編集という観点では、「大半が不要部分」なのである。逆に、必要な部分だけを選ぶ、という作業がメインになる。

 もしかしてテレビ番組をこの機能を使って編集しろと言うことなのか?と勘ぐったが、録画番組を編集機能に追加する機能はない。わざわざ最終出力をVGAサイズに再エンコードするという仕様といい、この編集機能で一体ユーザーに何をやらせようとしているのか、さっぱりわからない。

 なんかちょっと遊びっぽい感じでちょろっとできればいんじゃない? ということかもしれない。もちろん無料なので、こちらとしても高い機能を求めているわけではない。しかし個人的にはちゃんと筋が通る機能を実装してこそ、機能として使われるし、ユーザーレベルというのは向上するのだと思う。

 torneのアップデートに関しては、現状の機能に制限を加えることもなくプラスアルファを実現した。いずれにしても外付けHDDは必要ではあるが、やはり3倍入るというのは精神衛生上安心できる。

 また「トルミル情報」も結構面白い。同様に予約件数でランキングがわかるシステムは東芝VARDIAなどにも搭載されてはいるが、個別の数字がどんどん動く動的なシステムであるところが面白い。またTwitter上で活躍するキャラクター@tornevも、「企業オフィシャル」としてなかなかうまいところを突いている。従来のオフィシャル広報とは違い、中にちゃんと人がいることがわかる「着ぐるみ感」がある点が重要である。このようなあり方は、以前からTwitter上では散見されたところではあるが、いよいよ定番化してきたように思える。

 もう一歩踏み込むならば、torneから番組を見ながらTweetできる機能があるとさらに面白いだろう。がっつり文字入力するということではなく、単に面白い番組を見つけたら「これおもしろい!」的なテンプレートでもTweetができると、楽しいように思う。

 これまでテレビ録画は、番組自体は楽しいかもしれないが、録画行為やテレビ視聴行為そのものが楽しいというレコーダなど、なかったように思う。torneの取り組みは、新しい家電の方向を示しているのかもしれない。

(2010年 7月 14日)

= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]