PS3を地デジレコーダ化する「torne」を試す

-ネットワーク+高速UIによる新しい録画体験


3月18日発売

標準価格:9,980円


 PlayStation 3に接続し、地上デジタル放送の視聴録画を可能にする地デジレコーダキット「torne」(トルネ/CECH-ZD1J)が18日発売された。

 9,980円と低価格ながら、PS3を“レコーダ”として利用できることや、PS3の演算能力を活かしたユニークなユーザーインターフェイスに注目が集まったこともあり、18日現在かなりの品薄状態が続いており、一部の店頭では行列もできたという。

 基本的な機能については、2月の体験会でレポートしているが、今回発売にあわせてtorneを入手。実際の設置時の注意点や、外部HDDの利用、「トルミル」などユーザー参加型機能などをテストしてみた。

 


■ コンパクトなボディ。外付けHDD利用時にはUSBの数に注意

同梱品

 パッケージは、レコーダと考えるとかなり小型。本体のほか、同梱品として専用アプリを収録したBD-ROMディスクとUSBケーブル、アンテナケーブル、B-CASカードなどが付属する。

 チューナユニット本体の外形寸法は100×112×24mm(幅×奥行き×高さ)。重量は約130g。PC用の地デジチューナなどでよくあるサイズだが、PS3と並べてみるとかなり小さく感じる。

 前面にはLEDを備えており、視聴中は緑に、録画中は赤に点灯する。前面にUSB端子、背面にアンテナ端子を装備。アンテナのスルー出力も備えているので、分配器などを使わずに、テレビやレコーダなど、既存機器の間に接続できる。B-CASカードスロットは底面に備え、背後から挿入する形となる。


torne。上面にPS3とSCEのロゴが刻印されている前面のミニUSB端子でPS3と接続背面。アンテナ入力と出力を装備する
下面にB-CASカードを収納。底面にゴム足を備えている。メーカー推奨の使い方ではないが、HDDの天板などの平滑な面に張り付けることもできたパッケージ

 torneとPS3の接続はUSBを利用。あとは、付属のBD-ROMからtorne用のアプリケーションをインストールするだけで利用準備は完了する。なお、torneのアプリケーションをインストールする際に、PS3のファームウェアをVer.3.16にアップデートする必要がある。現在、ネットワークにアップされている最新版はVer.3.15なので、この新バージョンはtorne対応のものと思われる。

PS3とtorne。デザインイメージは似ているが、サイズはかなり違うUSBでPS3と接続するPS3のシステムソフトウェアもtorneに合わせてバージョンアップ。torneのBD-ROMディスクにソフトウェアが収納されている
torne対応のバッファロー製500GB USB HDD「HD-AV500U2/SC

 録画先はPS3の内蔵HDDのほか、外付けのUSB HDDへの録画にも対応。最大8台までのUSB HDDを登録でき、USBハブを使った同時接続は4台まで。HDDのフォーマットはFAT32。

 今回は、外付けHDDとしてtorne対応を謳うバッファローの「HD-AV500U2/SC」も用意した。容量は500GBで「オフィシャルライセンスプログラムに基づき、SCEの基準を満たす日本で初めてのHDD」としている。HDD残量をLEDライトで示すメーターを搭載していることも特徴。パッケージデザインもtorneにあわせており、ゲーム流通向けに展開し、PS3ゲームユーザーにも外付けHDDの利便性を訴求していくという。

 HD-AV500U2/SC以外でも、バスパワー以外のUSB HDDであれば、基本的には問題なく利用できる。ただし、外付けHDDとtorneを同時利用するとUSBを2ポート占有してしまう。HDMI CEC対応と薄型化が図られた新型PS3(CECH-2000A)では、USBが2ポートしかないので、torne関連でUSBが占有されてしまい、PS3用コントローラの充電ができなかったり、PSPへのダビング時に一度HDDを外すなどの対応が必要になる。

 PS3とtorneだけで利用する分には問題はないと思うが、多くの機器とPS3、torneとの連携を考えている場合は、USBハブを使うなどの対処方法を考える必要はありそうだ。

新PS3(CECH-2000A)とtorneとHD-AV500U2/SCをUSB接続。新型のPS3ではUSBが2ポートのため、これだけでポートが埋まってしまう「HD-AV500U2/SC」のパッケージ(左)。torneのパッケージ(右)とデザインを共通化しているUSB HDDの登録画面

 


■ 圧倒的に高速なEPGやUIが最大の魅力

torneアプリケーションをインストール

 torneの操作に利用できるのはPS3用のコントローラと、別売のBDリモートコントローラ。また、リモートプレイ機能を使って、PSPから無線LAN接続したPS3/torneの操作も可能だ。リモートプレイ利用時には、torneで録画した番組を、離れた場所のPSPで視聴できる。

 torneが専用のBlu-rayレコーダなどと大きく異なっている点は、PS3の“アプリ”として動作するということ。そのため、「番組表の表示」、「録画予約」、「録画した番組の再生」といった操作のためには、PS3を起動した後、torneのアプリも起動する必要がある。

 アプリの起動時間はXMBから、torneのトップメニューが表示されるまでで、22~23秒。それほど待たされるという感じでもなくが、torneの他の操作が圧倒的に高速なので、相対的には遅く感じてしまうことも。

セーフエリア設定(オーバスキャン設定)。薄型テレビであれば基本100%で問題ないだろうチャンネル設定トルミル機能の利用のためには、ユーザーの同意が必要
トップメニュー

 初回起動時に、オーバースキャン設定やチャンネル設定などを実施。torneを起動すると、中央に円形にアイコンが並ぶトップメニューが表示される。メニューには「TV」、「GUIDE」、「VIDEO」、「SEARCH」、「CHART」、「SCHEDULE」、「SETTING」、「CONTROLS」の各項目が現れる。

 テレビ視聴は「TV」から行なう。「GUIDE」はEPGの呼び出しとなっている。動画は体験会のレポートで掲載しているが、とにかくこのEPGの動作が極めてなめらかで、1週間分の番組情報を高速に閲覧できる。コントローラー、もしくはBDリモコンのL1、R1ボタンで表示範囲を切り替えでき、一画面に最大9チャンネル/24時間分表示から、最小3チャンネル/1時間表示の拡大までが可能。拡大/縮小の動作も非常に高速で、まったくストレスを感じさせない。アナログスティックを上下に倒すと1日単位での移動が行なえる。

 EPGで任意の番組を選んでチャンネル視聴、もしくは録画予約が可能。チャンネル切換えは2秒程度で、切り替え時に白バックに放送局名と番組名が書かれたエフェクトが挿入された後、画面が表示される。

EPG。9チャンネル/24時間表示が可能最小の3チャンネル/1時間表示番組を選んで録画予約

 録画方式はMPEG-2 TSのみのシンプルなもので、任意の番組で○ボタンを押すと、予約確認画面が現れる。ここで、録画先のHDDを内蔵か外付けUSBとするかが選べるほか、1回のみ/毎回/毎週などの予約も選択可能となっている。録画予約件数は最大50件で、管理できるビデオは1,800本まで。

予約リスト。最大予約件数は50件一回、毎回などの録画を選択本体HDDと外付けHDDの選択も可能

 

 録画実行中に録画済みの番組を再生することが可能。ただし、録画中番組のいわゆる「追っかけ再生」には対応していない。BD/DVDの再生中でも録画実行は可能で、ゲームプレイ時でも録画できる。例外として、旧型PS3の60GBモデル(CECHA00)、20GBモデル(CECHB00)でPS2用ソフトを使っている場合は、録画機能は働かない。

 録画実行時にはPS3とtorneが起動している必要があるため、録画予約時間になるとPS3とtorneが自動で起動し、録画を実行。録画が終わるとtorneとPS3は自動で電源オフになる。

 内蔵HDDからUSB HDDへのムーブも可能。ダビング10に対応しているが、ダビング10の回数を維持したままムーブされる。一方、後述するPSPについては、ダビング10のコピー回数(1回)を使い、PSP向けに変換/転送し、コピー回数が一回減る。

録画番組の追っかけ再生は非対応録画予約が終わると自動で電源OFFになる録画番組はtorneアプリ上で管理されるため、XMBからは番組として確認することはできない

 現在放送中の番組は、EPGからは録画予約できないが、視聴画面から△ボタンを押すと、放送画面が左側に縮小表示され、サブメニューから録画操作が可能になる。このサブメニューでは、Webのキーワード検索なども呼び出し可能で、放送画面とWebブラウザの2画面表示にも対応する。SCEでは、番組視聴中に気になった情報を、その場でインターネット検索できる「見ながらネット」と名付けている。

 追っかけ再生以外の録画/視聴機能は必要十分で、とにかく操作レスポンスは圧倒的。詳しくは開発者インタビューでも解説しているが、torneのインターフェイスは、1080pかつ毎秒60フレームで描画しており、なめらかな動作と圧倒的な“サクサク感”において、他のどのレコーダも足元に及ばないtorneならではの特徴と言って間違いない。

△ボタンでサブメニューを呼び出して、現在放送中の番組を録画放送とWebブラウザの2画面表示にも対応する

 


■ torneユーザーのリアルタイム情報や嗜好がわかる「トルミル」機能

「ミル」機能。torne番組表で現在視聴率が確認できる。赤いアイコンが多い順で視聴者も多いことを示す。“31トル”の表示は31ユーザーが同番組録画中の意味

 torneの大きな特徴といえるのが、ネットワークサービスの「PlayStation Network」と連携した「トルミル」機能だ。同機能の利用には、PSNのアカウント登録が必要となる。

 PSNのサーバー経由との双方向通信により、現在torneで番組を視聴している人や、録画予約の件数をPSNに集約。これらの情報をtorneのUIに組み込み、現在の人気コンテンツや、torneユーザーに人気の録画番組が確認できるという機能だ。

 「ミル」については、現在視聴中の番組と裏番組における視聴ユーザーの数を、番組枠の下部に人形アイコンで表示する。5つの人形アイコンが用意され、5段階で赤い人形アイコンが多ければ多いほどtorne視聴率が高い番組となる。

 さらに、番組枠の上にカーソルを合わせると、吹き出しで「245トル」、「10トル」といった“トル単位”の数字も表示。これは「その番組を録画予約している人の数」を示したもので、“他のtorne利用者が興味を持っている番組”を把握できるのだ。


「トル」機能。torneユーザーの録画状況が表示され、人気の番組がジャンルや放送局、時間帯などで確認できる

 トル情報は番組検索でも活用できる。EPG画面で□ボタンを押して検索画面に移行、もしくはトップメニューのSEARCHを押すと、録画予約の多い番組を表示してくれる。

 13日21時時点では「アメトーク」が347トルでトップとなっていたが、22時時点には404トルに増加していた。さらに、放送局やジャンル、放送時間ごとの絞り込み検索、キーワード検索などが行なえるので、「深夜」の「スポーツ」における向こう一週間の人気番組や、「テレビ東京」の「バラエティ」における人気番組などを把握できる。

 torneユーザーの反応がわかるのはもちろん、意外な番組の人気が分かるのが面白い。torneではソニーのレコーダのような“おまかせ録画”は備えていないのだが、今後このようなユーザー情報や視聴履歴を組み合わせた新しい録画提案にも期待したい。


ジャンルごとの人気番組を検索放送局での絞り込み表示も可能
チャート機能も装備する

 また、視聴履歴を集計し、よく見る放送局や番組ジャンル、時間帯などをチャート化して表示する機能も搭載。利用1日目のため、情報としてはあまり面白くないが、利用時間が多くなればなるほど、自分の視聴情報などをしっかり把握できるようになるはず。

 また、PS3ゲームと同様にトロフィー機能も搭載。ゲームクリアの証などで提供されるトロフィーだが、torneでも視聴状況に沿っていろいろなトロフィーが提供される予定という。

 録画番組の再生は、1.5倍の早見再生や、10/30/120倍の早送り/戻しなどの操作が可能。PS3コントローラのR1ボタンによる30秒スキップ、L1ボタンで15秒スキップなどが割り当てられているので、CMスキップに利用できる。

 レスポンスは非常によく、まったくストレスなく楽しめる。個人的にはBluetoothリモコンよりPS3コントローラのほうが直感的に操作しやすいと感じた。指定間隔でサムネイル表示を作ってジャンプする「シーンサーチ」も備えている。

再生画面。再生中に△ボタンを押して、字幕切換えやWebページへのアクセスなどが可能シーンサーチも装備する
録画リスト

 録画済みの番組は、PSPへの転送に対応。解像度は480×272ドットで、MPEG-4 AVC H.264 MainProfile。ビットレートは1Mbps、512kbpsから選択できる。変換は録画時ではなくPSP書き出し時に行なう。

 PSPへのダビング操作は、PSPを接続し、録画リストから△ボタンを押して「PSPに転送」を選択するだけ。書き出しはダビング10のルールに沿っており、転送を行なうと9回のコピー可能回数が8回に減る。また、ソニーのBDレコーダなどで採用している「おかえり転送」機能は無く、書き戻してダビング回数は復活することはできない。

 10分番組をPSP用に変換/転送した際は、1Mbpsの場合で約4分30秒、512Mbpsで約4分25秒となり、モードによる変換時間の差はほとんどなさそうだ。なお、変換/転送中にゲームなど、他の機能を使用する事はできない。ただし、複数番組を選択して連続して変換/転送する事は可能だ。

録画リストで番組を選び、「PSPへ書き出す」を選択1Mbpsと512kbpsの2つの画質モードが用意されるダビング10に準拠し、PSP転送を行なうとコピー回数が1回減る

 PSPに転送した動画はマジックゲート形式で保護され、PSPのXMBから再生できる。通常の動画と同じく、スキップ/バックなどのトリックプレイにも対応する。またメモリースティックに録画した番組は、PSPのほかPS3でも再生可能で、録画に利用した以外のPS3でも再生できた。

 PSPはリモートプレイでtorneを操作する事も可能。PSPから番組視聴、録画番組再生、EPG操作など、PS3と同じ機能が利用できる。ただし、インターネットを介したリモートプレイはできない。

PSPに転送して再生リモートプレイで、torneを操作。録画した番組をストリーミング視聴できる

 


■ 高速UI+ネットワークが見せる録画機の新しい可能性

 PS3さえ持っていれば、9,000円程度の出費で地デジ視聴/録画に対応できるというのは非常に魅力的。それほど録画にこだわりのない人、テレビをあまり見ないけれどレコーダはほしいという人であれば、1台目のレコーダとしても機能としては十分で、HDD追加による拡張性も抜群だ。

 欲を言えば、DTCP-IPを使ったLAN HDDへのムーブや、ソニーのBDレコーダへのダビング機能などがほしいところだが、そうした機能を求める人にとっては普通のBDレコーダのほうがフィットするだろう。

 “専用機”ではないので、ヘビーな録画ユーザーにとっては「W録ができない」とか「BS/CSが録画できない」という点はある。だが、スムーズすぎるぐらいのUIの操作感は、従来の“レコーダを使う”という感覚とは違った楽しさがある。この点は、PS3というゲームプラットフォームを活かしたtorneの最大の魅力といえるし、新しい録画機の在り方を感じさせてくれる。

 特にPSNを使った「トルミル」機能は、リアルタイムなユーザーの動向や、人気ランキングの提供により、“録画する楽しさ”をうまく演出してくれているように思う。こうしたネットを活かして、たとえばPSNのフレンド機能などを使った、友人からのお勧め番組とか、いろいろな展開ができそうだと、個人的には期待している。

 また、torneだけでなく、ブルーレイレコーダ専用機でもこうした機能に対応することで、ユーザーベースも広がり、さらなる魅力向上が図れるだろう。ネットワークサービスの強化を経営方針に打ち出しているソニーだからこそ、今後のレコーダ専用機にもこうした機能を追加してほしい。足りない機能はあるのだが、録画機の新しい可能性を感じさせてくれる“楽しい”レコーダだ。


(2010年 3月 18日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]