“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

 

第475回:3Dチャットを手軽に? サンコー「3D/2D WEBCAM」

見るだけじゃつまらない、作る3D最初の一歩



■ いつも誰かががんばってくれている

 人間がんばればなんとかなるなどと小さい頃に教えられたものだが、現代の場合は誰かががんばったのをどうやって見つけてくるかがキーになってきているような気がする。以前3D対応PC、富士通のFH550/3AMをレビューしたときに、このカメラ取れないのかと思ったものだが、ついに外付けの3D対応USBカメラが登場した。誰かががんばってくれたおかげである。

 レアモノでおなじみサンコーから発売中の「3D/2D WEBCAM」(以下3DCAM)がそれだ。たぶんそういう製品は出てくるだろうと思っていたが、さっそく現われた格好である。

 直販価格7,980円という3DWEBカメラとは、いったいどういうものだろうか。早速試して見よう。


 

■ 見た目はアレだ

 さてこの3DCAMだが、当然レンズが2つある。それでもサイズとしては、高級タイプのWEBカメラと同じぐらいに収まっている。

 形的にはあきらかに「狙った」感じで、頭部だけ見ると遮光器土偶、全体を見るとスタンド部分がどう見ても手足のように見える。ほとんどの読者は知らないと思うが、1960年代以前に生まれた人は、タカラの「ダッコちゃん」を連想する形である。(わからない人はWikipediaで調べてください)

 左右のレンズは、両方とも別個のマニュアルフォーカスで、鏡筒部を回すことでフォーカスを合わせる仕組み。左右連動していないあたりが、なんとも力づくである。

形的にはなんとなく人型フォーカスは左右別々に鏡筒部を回して調整する

 レンズの画角やF値などのスペックは不明なのだが、撮ってみた感じではそれほど画角は狭くないので、35mm換算で35~40mm程度ではないだろうか。撮像素子の出力解像度は320×240ピクセルだが、ソフトウェアの設定では最大3Mピクセルまで拡大可能。これは単にピクセルの荒いでかいファイルができるだけで、解像度が上がるわけではない。フレームレートは最大15fps。

 頭にちょんまげのような取っ手があるが、ここに赤・青・緑のLEDが仕込まれており、カメラがオンラインになるとこの3色がでたらめに光る。せっかく3つ積んでいるのなら何かステータスを表示すればいいのに、単なるイルミネーションというあたりがなんとも良い具合に腰が砕ける。

 マイクはカメラヘッドの、口に相当する部分に付けられている。音声チャットができる程度の感度はあるようだ。

てっぺんの取っ手部分に3色のLEDが仕込まれているマイクは口のあたり

 スタンド部分は、ノートPCの液晶部分に引っかけるための前足と、自立するための後ろ足の組み合わせになっており、後ろ足部分が可動となっている。カメラヘッド部分は上下左右傾きなど自由に回るようになっており、設置した後でもアングルが変えられる。

 底部には滑り止めのラバーが張ってあるが、実際にはラバーが薄すぎて周囲から凹んでしまっているために、滑り止めとしての役目は果たさない。こういう、最後の最後で詰めが甘いあたりが、いかにもありがちである。

 USBケーブルは長さが1.8mあり、デスクトップPCからの取り回しでも十分な長さだ。

 アナグリフ用のメガネは、6つも付いてくる。コスト的にはいくらもしないものだが、これだけ付いていればチャットしそうな全員に郵便で送りつけても十分な量だ。


底部には滑り止めのラバーが張ってあるが、役に立たないメガネは紙製。同じものが6個付属する


■ 付属ユーティリティで録画も可能


付属ユーティリティで調整

 このカメラ、付属ユーティリティがないと、ただの2Dカメラである。この場合、左側だけが生きるようだ。専用ユーティリティには2Dと3Dの切り替えボタンがあり、これによってUSBのコンフィグレーションを切り替えているようだ。

 まずカメラの調整である。3Dモードにしたのち、右側一番上のアイコンをクリックすると、3D Adjustment、Left Focus、Right Focusのタブが開く。まず左目、右目の順にフォーカスを合わせたあと、付属のアナグリフ用メガネをかけて、3D Adjustmentで立体感を調整する。

 アナグリフとは、赤青のセロファンを張ったメガネで視聴する方式で、3Dの投影方法としては古典的な手法である。実は筆者はこのアナグリフ方式が苦手で、あまり立体に見えたためしがない。左右から別の色が飛び込んで色彩がメチャメチャになった状態で、どうやって立体視するのかよくわかんないのである。そんなわけで、今回のサンプルはうまく3Dになっているかどうか、今ひとつ自信がない。

 このユーティリティでは、静止画と動画の撮影ができる。撮影の設定は、その下の設定アイコンをクリックする。静止画はSnapshotタブで設定するわけだが、ここで解像度が300kから3.0Mまで設定できる。そもそもCMOSの解像度がQVGAなので、あまり上げても意味がなさそうだ。


左右のカメラ個別にフォーカス調整を行なう静止画の設定。解像度は3.0Mピクセルまで上げられるが、あまり意味はない3Mピクセルで撮影した静止画。ファイルはでかいが解像度は低い


Continious ShotでGIFアニメが撮影できる

 Delay Shotは、画面下の静止画ボタンを押して実際に撮影されるまで、3秒間のカウントダウンを行なうというもの。Continious Shotは、Photo Timeで指定した秒数を、Frame Numberで指定したフレーム数でGIFアニメを作ってくれるというもの。元々普通の静止画もGIFで記録されるので、その拡張版といったところだろうか。

 動画設定は、特に設定らしいものはない。カメラとマイクを選択するぐらいのものである。Timeタブは、現在時間をスーパーインポーズするための設定だ。

 


【動画サンプル】


sample.mpg(3.6MB)

アナグリフ方式で3D動画撮影してみた
編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

 

 せっかくケーブル長があるので、ノートPCにつないで外で花でも撮ってみようと思ったのだが、なんと屋外では光量が多すぎて、画面が真っ白に飛んでしまってどうにもならない。センサーの感度が室内向けに会わせてあるのだろう。せっかくフレキシブルなカメラなのに、室内でしか使えないというのは残念である。しょうがないので、サンプルはおっさんの顔で我慢していただきたい。

 操作は簡単で、静止画はカメラアイコン、動画は中央の●をクリックするだけである。撮影される動画は、640×480ピクセルの6Mbps MPEG-2で、音声はMPEG-1 Layer2の44.1kHz、224kbpsとなっている。



■ 遊べるエフェクト各種あるのだが……

 付属ユーティリティは、かなり凝った作りになっている。よくあるチャットツールのように、フレームやアニメーションエフェクトが豊富にそろっているのだが、全部3Dに対応している。基本的にどう使って良いのか、おっさんには意味がわからないエフェクト目白押しだが、これが楽しいという人もあるかもしれない。

 まあ3D対応とは言ってもそんなに難しいことをやっているわけではなく、単に左右をずらしただけなので、はめ込まれる絵の方でうまく3Dの奥行きを調整してやらないと、3D的な矛盾を起こしてしまう。このあたりは、意外にちゃんと3Dで見せるためにノウハウがいる部分である。

 フリーハンドで落書きができるツールもある。顔に落書きしてもいいが、案外顔出しでチャットしながら図を書いて打ち合わせするなどの用途にも使えるのかもしれない。まだ個人的にそういうことをやったことがないのだが、電話で打ち合わせするぐらいなら、Skypeで顔出しで打ち合わせするのも面白そうだ。

正体のよくわからないアニメやエフェクトがたくさん入っている落書きもできるが、ペン先は3Dにはならない

 ちなみにSkypeで3Dの状態の映像を送るには、付属ユーティリティを起動して3D状態にしておかなければならない。ユーティリティを立ち上げない場合、普通の2Dのカメラと同じになる。



■ 総論

 ビデオチャットというのは、どれぐらい使われているものなのだろうか。一度そういう習慣になってしまうと躊躇がなくなるという意見も聞くのだが、そもそも双方に同じ環境がないとできないので、意外にビデオで会話したい、たとえば東京と実家といった関係では、実家の方を誰がセットアップして、オペレーションするのかといったジレンマもあるのではないだろうか。

 3DのWEBカメラも、実は階段を一段違えて同じようなジレンマがある。出す側は勝手に出すだけだが、相手が2Dだと、そもそも自分だけ3Dでやる意味がない。こういうものは、相手があってこそである。

 さらに問題は、お互いが3Dで見るためには、へんてこなセロファンのメガネをかけていなければならない。お互いにへんてこなセロファンメガネをかけた顔を立体でみて、それはいいものなのか、という根源的な問いがあるように思える。

 これはたぶんチャットではなく、複数台を用意してUstreamなどのライブ放送で使ったら面白いのではないだろうか。出演する側はべつに3Dでモニターする必要もなく、視聴者が3Dで見られればそれでいいわけである。問題はこのカメラが複数台、同じPCに接続してちゃんと動くのか、という点であるが、そればかりはやってみないとわからない。

 しかしまあ、USBカメラで3Dをやるという試みの第一歩は踏み出せたかと思う。個人的にはアナグリフ方式は好きではないので、なにか別のフォーマットでやれるカメラが出ることを期待したいところである。

(2010年 8月 18日)

= 小寺信良 = テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]