“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”
第583回:“Eマウントなのにフルサイズ”の衝撃、ソニー「NEX-VG900」
~久々にソニーSUGEEEE!を体験、本家本元の掟破り~
■ついにカムコーダも35mmの世界に
ハンディカムシリーズとは独自の道を歩むカムコーダ「NEX-VG」シリーズは、ミラーレス一眼の動画機能をビデオカメラ的にカスタマイズしたらどうなるの? という世界観を見せてくれるシリーズだ。価格的にハンディカムよりもちょっとお高いこともあって、主に業務用のサブ機だったり、ビデオ系ハイアマのステップアップ用として使われているようである。
そもそもEマウントという時点で、ビデオカメラ的にはレンズが限られてくるわけだが、トランスルーセントテクノロジー搭載のAマウントアダプタ「LA-EA2」の登場によって、αレンズで高速AFが使えるようになり、色々事情が変わってきた。
そしてこの10月に発売されるVGシリーズのフラッグシップ「NEX-VG900」は、Eマウントなのにフル35mmセンサーを搭載するという、とんでもないモデルである。これまでフル35mmセンサーと言えば、デジタル一眼に搭載されるもので、ミラーレスはおろか、シネマ用を別にすれば業務用カムコーダにも搭載例がない。
そもそもEマウントレンズは、APS-Cサイズで設計されており、世の中に「Eマウントのフル35mm対応レンズ」などは現時点で存在しないのである。普通このような掟破りはサードパーティ的なポジションのメーカーがやるものだが、レンズもないのに本家本元のソニー自らがボディを出しちゃうと言う事態を、掟破りと言わずしてなんと言おうか。
今回は「ちょっと意味わからないですけど」という人も多いと思われるこのVG900を、じっくり解説していこう。
■なぜEマウントで35mmセンサーなのか
まず今回のVG900だが、そもそもぴったり合う標準レンズ的なものがないので、ボディだけの発売である。その代わり、フル35mm対応のAマウントのレンズを取り付けるための変換アダプタ「LA-EA3」が同梱される。発売予定日は10月26日で、市場想定価格は35万円前後となっている。
ボディ全体のテイストは、以前からのVGシリーズを継承しているが、マウント部付近が大きく張り出しているのは、センサーがマウント径ギリギリすぎて、周辺回路が鏡筒部に入らないためだろう。
Eマウントはフランジバックが18mmしかないので、マウント部のすぐ近くまで35mmフルサイズセンサーが迫っているのが見える。うっかり指を突っ込みそうな近さなので、レンズ交換時は慎重に行なうべきだろう。
マウント部が大きく張り出しているのが特徴 | 35mmセンサーにすぐ指が届く距離 |
さて、レンズもないのになぜフルサイズセンサーをEマウントの中に入れたかというと、世の中にある様々な35mmレンズ用のEマウント変換アダプタを使えば、レンズが設計された時点でのオリジナルの画角で撮影できるからである。べつにAマウントでもよかったじゃないか、と思われるかもしれないが、そこはフランジバックが問題になる。
フランジバックとは、マウント面から撮像素子までの長さのことで、これはマウント規格として一定の長さが決まっている。そのマウントに合うレンズは、そのセンサー位置できちんと結像するように設計される。
Aマウントを例に取ると、フランジバックは44.5mmとなっている。これにマウントアダプタを使って別メーカーのレンズを使うとする。例えばニコンFマウントのレンズは、フランジバックが46.5mmで設計されているので、マウントアダプタはその差である2mmで作らなければならない。
キヤノンEFマウントの場合、フランジバックが44mmなので、差が-5mm。-5mmの長さのマウントアダプタなどは作れないので、AマウントにはEFレンズは付けられないことになる。まあ無理して付けても、無限遠のフォーカスが合わない。もちろんフランジバックだけでなく、マウント径も違うという問題もあるのだが。
つまり、マウントアダプタでいろんなレンズを使うなら、フランジバックが短く設計されているマウント規格のほうが有利なのである。その点で、Eマウントやマイクロフォーサーズは有利だったわけだ。
しかしEマウントはAPS-C(23.4×15.6mm)サイズ、マイクロフォーサーズはフォーサーズ(17.3×13mm)サイズの撮像面積を想定しているので、35mmレンズを付けると、本来の画角よりも1.5~2倍ぐらい狭い絵しか撮れなくなってしまう。レンズ自体はもっと広く結像しているものの、センサーが絵の真ん中らへんにしかないからである。
これで困るのが、広角のレンズの選択肢がないことだ。35mmレンズで焦点距離20mmといったら相当に広角で高額なレンズになってしまうが、Eマウントに付ければ35mm、マイクロ4/3に付ければ40mmと、いわゆる標準レンズ相当になってしまう。もちろんそれぞれのマウント専用に設計されたレンズなら広角レンズもあるのだが、わざわざ35mmレンズを使った独特の世界観で撮っている中で、広角だけがやけに最近のレンズというのも、絵の繋がりが悪い。
それならば、フランジバックの短いマウントに、35mmセンサーを付ければ……。誰もが想像はするのだが、ユーザーの努力ではどうにもならないことなので、多くの人は諦めていたわけだ。それを、Eマウント総本山とも言えるソニーが、自社にもダイレクトに着けられるレンズがないにも関わらず出してきた。もう、“マウントアダプタを使うのがデフォルト”というビデオカメラなのである。
NEX-5の撮像素子はAPS-Cサイズ |
そういえば思い出したが、2010年に初めてEマウント規格を搭載したNEX-5が出た時に、センサーサイズがAPS-Cなのになんでこんなにマウント径が大きいのか、と非公式ではあるが開発者に尋ねたことがある。その時は将来的な拡張性を考えてこの径にした、という回答だったが、思えば最初からこのマウントに35mmサイズのセンサーを入れるつもりだったのではないか。だとしたら、当時いろんなレンズをなんとかEOS 5D mkIIに付けて動画を撮っていたムーブメントが将来主流になると見ていたわけで、それだけ先見の明があったということだろう。
そもそもミラーレス一眼のNEXシリーズでもやってないことを、動画専用機であるVGシリーズが先にやってしまうというあたりも、いい意味でチャレンジャーすぎる。
■VG20を継承した作り
マウント径ギリギリにはめ込まれた35mmセンサー |
カメラ本体の話に入る前ですでに原稿の半分ぐらいまで来てるような気がするが、ここからがレビューである。
肝心のイメージセンサーは、2,430万画素、有効2,030万画素の「Exmor フルサイズ HD CMOSセンサー」。裏面照射型ではないが、従来よりも画素受光部を低背化し、集光効率を上げている。また画素1つ1つも、受光部を広く取って感度を上げているという。
モワレや偽色を低減させるローパスフィルターの存在が、解像度を低下させるというのが昨今のデジカメのトレンドだが、ビデオカメラゆえに、ローパスフィルタなしというわけにはいかない。本機で採用されているローパスフィルタは、放送用カメラに採用されている多点分離光学ローパスフィルタである。
ボディデザインは前作初代からの流れを汲んではいるが、今回はデフォルトがレンズ別ということもあり、アイリス、ゲイン、シャッタースピードと露出に関係するボタンが、液晶内部から外に出た。ファインダ撮影時でも容易に変更できるように、というところもあるだろう。
露出系のボタンが外に出て、それぞれがオート/マニュアル切り替えできる | マニュアルボタンとダイヤルは液晶の下 |
ボディ下部にあるダイヤルで各パラメータを制御する。ダイヤル脇のMANUALボタンは、カメラ明るさ、AEシフト、ホワイトバランスといった機能を割り当てることができる。
液晶内部のボタンも機能変更 |
液晶内部のボタンは、ゼブラ表示、ピーキングが新しく割り付けられた。露出やフォーカスがマニュアルになる可能性が格段に高くなったので、その配慮だろう。
液晶モニタは3インチのエクストラファインタッチパネルで、VG20と同じだが、ビューファインダが有機ELになっている。従来のソニー製品で多く採用されているビューファインダには、時分割式のディスプレイが採用されており、視点を素早く動かすとカラーブレーキングが発生していた。これが変な撮影時に違和感を発生させていたが、このモデルでは解消されている。
液晶モニタは3型で変わらず | ビューファインダに有機EL採用 |
マイク部分 | 新設されたマルチインターフェースシューに別売のXLRアダプタキット「XLR-K1M」を取り付ける事で、XLRマイクも使えるようになる |
付属バッテリはNP-FV70で、装着すると格納スペースがかなり余る。最大のNP-FV100を付けてもボディから飛び出すことはないようだ。
グリップ部の大きな変更は、シーソー型のズームレバーが付いたことである。現在このズームには、2倍までのデジタルズーム機能が割り当てられている。電動光学ズームレンズの操作もできるのだが、「NEX-VG30H」という別のEマウントビデオカメラに付属する電動ズームレンズ「E PZ 18-200mm F3.5-6.3 OSS」(SELP18200)しか、現在操作できるレンズが無い。さらにこのレンズ、現時点で単品販売が予定されていない。しかもこのレンズはそもそもAPS-Cサイズ用なので、VG900に付けるとイメージサークルが足りない。よって、デジタルズーム機能を今のところ使うしかないわけだ。なんだー、と思われるかもしれないが、これはこれでメリットがあるので、後述しよう。
バッテリ格納部はかなり奥まっている | 小型ながらシーソー型ズームレバーを搭載 | VG30Hに同梱するレンズ「E PZ 18-200mm F3.5-6.3 OSS」(SELP18200)。現在のところ単品販売の予定は無い |
左がLA-EA3、右がLA-EA2 |
付属のAマウントアダプタLA-EA3は、フル35mm用に大きな口径のマウントアダプタだ。一方、従来のLA-EA1およびLA-EA2は、APS-Cサイズに合わせてあるため、これを使うと35mmセンサーではちょっとケラレる。
なお、残念ながらEA3はトランスルーセントではなく、単なる素通しのマウントアダプタだ。絞りのコントロールはできるが、AFは効かない。
「どうして35mmサイズでトランスルーセント方式のマウントアダプタにしなかったのか」という点に関しては、一応やろうとしたんだけど、アダプタの幅内にフルサイズ用のミラーが斜めに入らなかったこと、下部のAFセンサー部がものすごく大きくなってしまうことを理由に、見送られたという。
このあたりはまた新たな技術開発でトライしていただきたいところだ。
■若干複雑な組み合わせ
今回撮影で使用したレンズは、次のようなものだ。
●Vario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM
ツアイスの超音波モーター採用ズームレンズ。AFの音がほぼ無音なので、動画には最適かと思われる。「Planar T* 85mm F1.4 ZA」もお借りしたが、前回のレビューでAF音がギコギコうるさいのがわかったので、今回は使用しなかった。
Vario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM | 静音モーター採用で、画角的に最も使いやすいズームレンズ |
●MINOLTA AF Zoom 35-105/3.5-4.5
中古屋で購入したAF Zoom 100-300/4.5-5.6(左)とAF Zoom 35-105/3.5-4.5 |
ミノルタの中望遠ズームレンズで1988年製造。過去オールドレンズでも、ミノルタのレンズは評価されていないようなので、使ってみた。Aマウントの元祖なので、マウントアダプタ経由で現行のαレンズと同じように使える。中古屋で1,050円で購入。
●MINOLTA AF Zoom 100-300/4.5-5.6
同じく88年製の望遠ズームレンズ。中古屋で3,675円で購入。
●Voigtlander NOKTON classic 35mm F1.4 MC
コシナによるレンジファインダー用オールドレンズの復刻モデル。VMマウント用レンズなので、EマウントアダプタとしてHawk's Factoryの補助ヘリコイド付きアダプタを用意している。
Voigtlander NOKTON classic 35mm F1.4 MC |
●OLYMPUS OM ZUIKO AUTO-W 21mm/3.5
OM ZUIKO 21mm/3.5 |
以前VG20のレビューでも使用した、手持ちの中ではもっともワイドな単焦点レンズ。
Vario-SonnarとミノルタAFレンズは、付属のLA-EA3がそのまま使える。AFが効かないのが難点だが、その代わり絞りがマニュアルでコントロールできる。もちろん35mmフルサイズ対応なので、レンズそのものの画角で撮影できるのが大きなポイントだ。
LA-EA3使用時の各レンズ | ||
レンズ | ワイド端 | テレ端 |
Vario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM | ||
MINOLTA AF 35-105 | ||
MINOLTA AF 100-300 |
αレンズにはAPS-Cサイズの用レンズ、DTシリーズがあるが、これでEA3を使用すると、四隅がケラレる事になる事になる。Eマウント用レンズを付けた時も同じだ。そこでVG900には、APS-C用レンズを付けた時のために、センサーの読み出し範囲をAPS-Cエリアに変更する機能を備えている。
DTレンズをそのまま付けると、四隅がケラレる | センサー領域は小さくなるが、APS-C互換モードも備えている |
一方で、トランスルーセントテクノロジー搭載で高速AFがウリのLA-EA2を付けたらどうなるのか、テストしてみた。結果からすると、高速AFはそのまま動作することがわかった。
【動画サンプル】 af.mp4(95.3MB) |
Vario-SonnarとMINOLTA AF 35-105でAF撮影。音はうるさいが、24年前のレンズでも正確にAFが効く |
編集部注:動画はEDIUS6.5で編集・出力しています。編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい |
ただしレンズによっては、多少周辺がケラレることになる。これはもちろんEA2のせいなのだが、ケラレ具合はレンズによって異なるようで、Vario-Sonnarとミノルタ100-300は全域でケラレるが、ミノルタ35-105はテレ側はケラレるものの、ワイド端はほんの少し周辺が落ちる程度で、ほぼ使えるようだ。
APS-Cモードにすればケラレはなくなるが、焦点距離が1.5倍になってしまう。そこで、グリップ部にあるデジタルズームを使う技もある。これで1.1倍から1.3倍程度寄っておけば、EA2の高速AFを使いつつ、全域でズームが使えることになる。APS-Cモードに変えるよりも広い領域が使えるので、レンズの能力もかなり引き出せる。ただしAFを使う場合は、絞りのコントロールができず、F3.5固定となる。
MINOLTA AF 100-300とLA-EA2の組み合わせ例 | |
ワイド端 | |
ワイド端+デジタルズーム1.1倍 | |
ワイド端+APC-Sモード | |
テレ端 | |
テレ端+デジタルズーム1.3倍 | |
テレ端+デジタルズーム2倍 |
痛し痒しという部分もあるが、EA2を使うことで、シーンによってはAFが使えるというのは大きなポイントではないだろうか。今回のサンプルでは、ところどころに1.2倍拡大のシーンが入っているが、画質劣化はほとんど気づかないのではないかと思われる。
一方、LA-EA2のような純正マウントアダプタ以外のマウントアダプタと他社レンズを使った場合は、当然絞りもAFもマニュアルにしかならないが、35mm全域が使えるのが魅力である。
NOKTON classic 35mm、F2.8で撮影 | OM ZUIKO 21mm、F3.5開放で撮影 |
■現状では難易度の高いカメラ
撮影された映像は、35mm用のレンズ性能がフルに発揮できることもあって、ワイド側のレンズバリエーションが選び放題なのが魅力である。
ただ、本体記録がAVCHDなので、今回搭載の35mmセンサーの実力がどれほどなのか、正直ポテンシャルがよくわからない。
LA-EA3を使うとデフォルトでマニュアルフォーカスしかないわけだが、正直手こずった。ピーク表示が付いているのであてにしていたのだが、この表示はおおざっぱすぎだ。フォーカスが合っていなくても、高コントラストのところにはピーク表示が出るので、背景が木漏れ日とかに抜けていると、全体が合っているような合っていないような、なんだかよくわからないことになってしまう。結局拡大フォーカス機能を使って、丁寧に見ていくしかないようだ。
【動画サンプル】 sample.mp4(207MB) | 【動画サンプル】 room.mp4(62.8MB) |
1080/60pシネマトーンでの撮影サンプル | 同条件の室内サンプル |
編集部注:動画はEDIUS6.5で編集・出力しています。編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい |
【動画サンプル】 stab.mp4(30.5MB) |
手ブレ補正は今のところ利用できない(Vario-Sonnarで撮影) |
編集部注:動画はEDIUS6.5で編集・出力しています。編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい |
ビデオカメラの機能的なデメリットで言えば、今回使用したレンズでは、どれも手ぶれ補正が効かないことが挙げられる。αシリーズではセンサー側に手ぶれ補正が付いているため、レンズ側に手ぶれ補正が付いていない。
一方で、一部のEマウントレンズには光学手ぶれ補正は付いているものの、これは35mmフルのイメージサークルを持っていない。そんなわけで、35mmフルにこだわると、手ブレに関しては新規レンズの投入待ちということになる。
本体のズームレバーは、今のところデジタルズームでしか使えないのが残念だ。このデジタルズームは2倍で、光学ズームのように時間をかけてゆっくり電子ズームしていく機能も備えている。だが、そもそもパースが変わらないデジタルズームはそんなに使うものでもないので、そのためにわざわざシーソーレバーまで付けるとは思えない。今後の電動ズームの拡充に期待したいところだ。
ソニーではないが、フルサイズEマウント用レンズとして、ドイツのカールツアイスが今年のIBC用に複数のプレスリリースを出している。それによると、35mmフルサイズの「28-80mm/T2.9」と「70-200mm/T2.9」のコンパクトズーム、「25mm/T2.1」のコンパクトプライムレンズを展示するようだ。リリース文を見ると、5つのマウントで出すというが、その中にEマウントも入っている。
これはシネマ用レンズなので、VG900をもってしてもオーバースペックだ。ということは、このマウント規格でCina Altaクラスのカメラも出ると予想してもいいかもしれない。さらにEマウントフルサイズに向けて、ソニーから別のレンズが出る可能性も高いだろう。
記録系としては、本機はAVCHDフォーマットでの記録なので、最高ビットレートは1080/60pの28Mbpsという事になる。それ以上のレートで記録しようとすれば、HDMIの出力を別のレコーダで記録することになる。
そこで気になるのが、AVCHDフォーマットであるが故に、30pの出力が得られない点だ。AVCHD規格では、60i、60p、24pは規定されているが、30pが規格にないために、30pのモードがない。
純粋にコンシューマでは30pで撮影する事は希かと思うが、テレビ前提のフィルム撮影では、昔から30pで撮影するのがお約束なので、現在もテレビCMなどは30p撮影が多い。本機がプロ用のサブ機で使われる場合、30pがないことが、活躍の場を狭めることになるかもしれない。
これらの点を総合して考えると、VG900は今後展開するであろうソニーのフル35mm戦略の先陣的な意味合いを持つのではないかという気がする。
■総論
今回もずいぶん長々と書いてしまったが、フルサイズでEマウントという、あり得ない規格で投入されるVG900は、デジタル一眼で動画を撮ってるホビーユーザーから、デジタルシネマ制作で食ってる人まで、大注目のカメラという事になる。
現時点ではマウントアダプタ縛りが多いものの、可能な限りの事にチャレンジした姿勢は純粋に素晴らしい。値段が値段だけに、ユーザーもある程度絞られることになるかと思うが、この秋もっともホットなカムコーダと言えるのではないだろうか。
もちろん本格的なデジタルシネマ用としては、Log記録ができないこともあって、メインカメラにはなれないだろう。しかしその下に連なる映像コンテンツ産業、特にブライダルやPV制作といったあたりで活躍が期待される。
ただ、価格的にはキヤノン「EOS 5D MarkIII」とガチンコ勝負になりそうで、あちらはあちらで今回大きく動画性能に手を入れてきている。そこに対していつまでAVCHDフォーマットで戦えるのかが、悩ましいところだ。
もちろんVG900は、現時点でストーリーが完結しているわけではなく、本体発表はまだ前哨戦に過ぎない。このカメラの登場によって、将来的なカムコーダのラインナップ戦略もおぼろげながら見えてきた。さらにEマウントレンズのラインナップが今後どうなっていくのかまで含めると、非常に夢がひろがりんぐなシステムが登場したということは、どうやら間違いないようだ。