小寺信良の週刊 Electric Zooma!
[PR特別編]:全画素超解像40倍ズーム、ソニー「HXR-NX3」
“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”
[PR特別編]:全画素超解像40倍ズーム、ソニー「HXR-NX3」
Wi-Fi&LEDライト搭載の業務~ハイアマ向けカメラ
(2014/2/14 10:00)
久々のオールラウンドモデル
1月22日に、ソニーの業務機NXCAMの新モデル、HXR-NX3が発売された。同じ系統の前作HXR-NX5Jが2010年1月発売だったので、実に4年ぶりの新モデルという事になる。
これまでソニーのAVCHDフォーマットの業務用機は、大判センサー搭載でレンズ交換型のNEX-FS/EAシリーズと、レンズ一体型のNXシリーズの2つの流れがある。NXシリーズ内でも、数字2ケタのNX70/NX30は単板式、数字1ケタのNX5は3板式だ。NX5をコンシューマ化したのがハンディカムのHDR-AX2000、という関係になっている。
今回のNX3はNX5の下位モデルに相当するわけだが、さすがに4年も経つと色々進化点も多い。さらに価格も大幅に下がって、希望小売価格 37万8千円、実売32万円弱といったところで、発売当初のNX5(609,000円)から比べると、ざっくり半額近くになっている。50~60万のカメラは業務ユーザーでなければなかなか思い切れないが、このぐらいの価格帯ならハイアマもターゲットに入ってくるだろう。
なおNX5は今後も併売されるという。今回は久々にソニーの業務用機、HXR-NX3をじっくり触ってみよう。
多くの点でスペックアップ
まずスペックを順に見てみよう。レンズはソニーGレンズで、28.8mm~576mm(35mm換算)/F1.6~3.4の光学20倍ズームレンズ。NX5より若干ワイド端は広くなっているが、明るさはそのままだ。
一方NX5の時は1.5倍のデジタルエクステンダーが付いていたが、NX3では2倍の全画素超解像ズームを搭載し、光学ズーム領域から連続で40倍のズームが可能となっている。
撮像素子は1/2.8型の有効画素207万画素Exmor CMOSで3板式。NX5は感度を稼ぐために有効画素数104万画素のクリアビット配列だったが、今回は感度の問題はクリアし、フルHD解像度のセンサーを搭載した。
さらにNX3は、NX5に無かったスロー&クイックモーション機能も搭載した。1/2.5倍のスローから60倍のクイック撮影まで対応する。すでに1080/60pが撮れるカメラでは搭載が増えてきているが、このあたりも4年の歳月の流れを感じさせる。
本体マイクの上には、8球のLEDライトを搭載した。側面のスライドスイッチでON/OFFするのみというシンプルな作りだ。かなり明るいが、強弱の調整はなく、ディフューザーなども付属しないので、ユーザーが色々工夫する必要があるだろう。
液晶モニターは3.2型から3.5型へ、やや大きくなっている。側面のマニュアル操作ボタン配列は、NX5から変更なしである。ボタンの位置などで戸惑うことはないだろう。
背面のメモリーカードスロットは、A側がSD/SDHC/SDXCカードとメモリースティックPROデュオ兼用、B側がSD/SDHC/SDXCカード専用となっている。従来のリレー記録だけでなく、同時に動作するバックアップ記録、さらにABバラバラに録画できる機能を搭載した。グリップ部とハンドル部のRECボタンそれぞれにスロットを割り付け、個別にRECのコントロールができる。
背面端子にあるBNCは、アナログコンポジット出力だ。NX5にあったHD-SDI出力の代わりに、これが付けられることとなった。
またNX3は業務用機にはめずらしく、オートモードに力を入れたモデルだ。一般的な「オート」のほかに自動でシーンを見分けて設定を変える「インテリジェントオート」、インテリジェントオートの中身とも言える「シーンセレクション」を搭載した。これらはコンシューマ機のハンディカムには乗っている機能だが、今回はそこからアルゴリズムを引っぱってきて、NX3にわざわざ搭載している。
コンシューマ的という点では、Wi-Fi対応も一つのポイントだろう。アクションカムやサイバーショットでお馴染みの、Wi-Fiでスマートフォンと接続し、アプリ「PlayMemories Mobile」でモニタリングや録画開始などを行なう機能を搭載している。またAVCHDと同時に、3.5MbpsのMP4でも記録しておき、そのMP4ファイルをスマートフォンへ転送する機能もある。ただし1080/60p記録時は、MP4の同時記録はできない。
開発者に聞く、NX3のなぜ?
NX3は従来の業務用機の常識からすれば、「ん?」という部分も多いカメラだ。そこでNX3の開発に携わった、ソニー DI事業本部B&C商品企画部プロダクトプランナーの江間 拓郎氏と、ソニービジネスソリューション マーケティング部の後藤 俊氏にお話しを伺うことにした(以下敬称略)。
――まず本機の目玉である、全画素超解像ズームについてお伺いします。これまでデジタルエクステンダーとして、1.5倍程度の拡大機能は搭載してきましたが、画質にうるさい業務用機に対して2倍は結構思い切ったところだと思います。これは何か技術的なブレイクスルーがあったのでしょうか。
江間:これは今回搭載している新LSIの威力ですね。技術的なベースはBRAVIAのX-Reality Proと同じで、HDを4Kにするという技術でした。これは現在の映像が何なのかを判断して、データベースと照合しながら、解像度向上処理を行ないます。単純に補間するよりも、ディテールの再現性やS/N向上に大きく貢献します。
HDの縦横2倍が4Kですから、あまり違和感なく“2倍を目指したい”というところはありました。実際絵を見て本当にいけるのか検証した結果、結構使えるんじゃないかと判断しました。NEX-EA50でも2倍のデジタルズームは搭載していたんですが、それをもう少しブラッシュアップしています。
全画素超解像ズームは2014年のモデルからの新機能で、HDR-PJ800といったハンディカムにも搭載されています。この技術は、これからいろいろなカメラに搭載されてくるでしょう。
――今回、オートモードにシーンセレクションが搭載されてますね。業務用機にこういったコンシューマ的な機能を積んでも、実際使われるのだろうかという疑問もありますが?
後藤:実はこれまでコールセンターには、「花火を綺麗に撮りたいんだけど」というご質問がかなり多かったんですね。これはホワイトバランスやシャッター速度、フォーカスなど色々な要素があるんですが、これらをご説明しておわかりになる方には、設定方法をご案内してきました。
ですがオートで撮れる業務用カメラで何かないかというお問い合わせも、実は多いんですね。これまでそういう業務用機はなかったので、むしろハンディカムの方がいいですよとご案内してきた経緯があります。今回のNX3ではシーンセレクションを使う事で、あまり経験がない方でも業務用機の画質で、難しいシーンを簡単にお撮りいただけるようになると思います。
江間:ただ、全部のシーンは入れられなかったんですね。パラメータやアルゴリズムが民生機とは違うので、「赤ちゃん」モードなど、やむなく落とした設定もあります。
――今回LEDライトが付いたのは、業務用機としてはかなりユニークだと思います。民生機には付いてるモデルもありますが、NX3で付けたというのはどういう理由でしょうか。
江間:このクラスのカメラは、どういう人がどう使うかを限定するのが難しいカメラだと思っています。だからどんな場所でも確実に撮れる、安心できるカメラがいい。
コンシューマ機でのライトのアイデアって、ベースはパパママですよね。カメラのことはわからないが撮り逃したくないから、いろんなアイデアを詰め込んであります。その点では業務用機といっても感覚的には一緒で、絶対撮り逃したくない、「あー暗かったから撮れなかった」というがっかり感は、むしろこっち(業務用機)の方が大きいだろうと考え、これをパワーアップさせてハイエンドのカメラにも入れてあげるのはアリなのかなと思いました。
このLEDライトが受け入れられるのかという心配はありましたが、おそらくユーザーからしたら、何も撮れませんでしたというよりは、最悪これがあってよかったと思って貰えるものになるのかなという期待も込めて、付けてみたというところです。
――ただこのライト、AC駆動の時には使えないんですよね。これはなぜなんでしょう?
江間:実は電源がACの方が弱い、バッテリの方が強いという理由があります。本体の消費電力は6.4~6.9Wなんですが、LEDライトだけで3W程度食うんですね。ただ、バッテリの代わりに取り付ける、サービスパーツとして購入可能な「DK-415」(プレート状のACアダプタ)であれば、LEDライトも駆動できます。
――今回Wi-Fiにも対応しました。PlayMemories Mobileでモニタリングやファイル転送できるというのは、アクションカムやデジカメなどでは有効だとしても、業務用機で使うというイメージがあまり湧かないのですが。
江間:確かにハイエンドになればなるほど、モニターのディレイや操作の遅れが気になるので、すんなりは受け入れていただけないとは思います。一方でライトな遠隔撮影、スタート/ストップ代わりとして、あってもいいのかなと。
本気でやろうとすると、LANCケーブルを用意してモニターラインを引っぱってと、コストと機材が増えてしまいます。それと比べたら、スマートフォンだけでできるという気軽さはあるかと思います。もちろんこれからどんどん進化させていかないといけないと思ってますが、まずは業務ユーザーにご提案してみたいというところが第一ですね。
後藤:結婚式やイベントでマルチカメラで撮りたいけど、カメラマンがそんなにいないという場合、固定で置いといて画角を確認しながら録画できるといった使い方は、12月に製品を発表したときにセミナー等でユーザーさんからお話しをいただいたところです。
江間:NX3にはMP4を同時記録しておいて、それをスマートフォンに送れる機能があるんですね。これはビジネスユースでも、撮ったあとちょこっと編集して、すぐYouTubeなどにアップするというケースがあります。スマホでいち早く発信できるというニーズに応えられると思って搭載しています。
後藤:海外取材やインタビューなど、今日撮った映像を本部にはやく送りたいというニーズもあります。今までだったらメモリーカードからPCにコピーして、ビットレート落としてから送るという処理が必要でしたが、スマートフォンだけで完結するという手軽さがあります。
すぐに使いこなせる柔軟設計
では早速撮影してみよう。あいにく撮影日は関東地方を襲った豪雪の翌日で、周りが雪だらけのためにいつもと同じ場所での撮影ができなかった。その代わり、よく光が回って高コントラストな映像になったと思う。モードの違いなどもわかりやすいのではないだろうか。
まず気になる全画素超解像ズームの画質だが、多くの比較ではカメラ位置は同じままでズームするので、被写体の画角が同じではないため、単純に比べられないケースも多い。そこで今回は、カメラの位置を動かして、被写体が同じ画角に収まるように調整して撮影してみた。
光学20倍ズーム時は、さすがにディテールもしっかりしており、肌のきめや髪の1本1本まで確認できる。一方、超解像による40倍ズームでは、光学ほどのディテール感はないが、画質が荒れてしょうがないという感じもない。拡大しているというよりも、若干フォーカス甘めと感じる程度に収まっている。これでもダメだという人もあるかもしれないが、これぐらいなら十分使えると判断する人もあるだろう。
デジタルエクステンダーは、1.5倍にワイド端もテレ端も拡大してしまうだけだが、全画素超解像は光学のワイド端から連続で40倍までズームできる。この表現もNX3の特徴だろう。
スロー&クイックモーションは、60コマ撮影24p記録によるスロー、1コマ撮影60p記録によるクイックを撮影してみた。いわゆる映像制作系のカメラでは搭載するものも多いが、これを搭載したことでNX3のオールマイティさが際立ってくる。
シーンセレクションでは、7モードを搭載した。自動でシーンを判別するインテリジェントオートでは、手ぶれ補正も「アクティブ」に変更されるため、画角が1段詰まる。
またこの機能とは別に、ピクチャープロファイルも6つのプリセットが用意されている。これも比較してみた。
デュアルRECもテストしてみた。グリップボタンをAスロットに、グリップボタンをBスロットに設定し、Bスロットは回しっぱなしで、Aスロットのみカットを割りながら撮影するという使い方ができる。音だけでも全編拾っておきたいという時にも便利だ。ただ、両方を同時に押すと片方がスタートしないので、片方ずつ押して、録画スタートをきちんと確認する必要がある。
またこの場合、タイムコードがRec Runになっていても、Bスロットの録画に合わせてタイムコードは進んでいくので、Aスロットで個別に録画したシーンとは、タイムコードを使ってシンクロできる。ただ、低ビットレートのMP4録画では、ファイルにタイムコードは記録されない点は注意が必要だ。
LEDライトも、オートモードでの追従性も含めてテストしてみた。まず室内の電球光からの点灯では、およそ2秒でフラットなバランスに移行する。ほぼなにも見えない状態からの点灯でも、およそ2秒でフラットになる。今回フォーカスは固定だが、おそらく真っ暗ではフォーカスが取れていないはずなので、安定にはもう少し時間がかかるだろう。
ハンディで暗い場所に入っていってライト点灯、といったシーンでは、ホワイトバランスや明るさが急激に変わるので、オートモードに任せるほうが理に適っている。
総論
HXR-NX3はグレードからするとNX5の下位モデルだが、4年間の技術進化により、見るポイントによってはこちらのほうが良いという人もあるだろう。最大の違いは、外付けのフラッシュメモリーユニット「HXR-FMU128」が使えないことだが、4年前と違い、SDカードの容量や価格、信頼性も上がってきたことで、デュアルスロットを上手く使ってバックアップすればいいという考え方の変化もある。
HD-SDI出力がなくなった点は残念だが、最近はモニターもHDMI対応のものが増えてきている。ただ端子の抜けやすさの点で不安は残る。BNC端子をアナログコンポジットに割り当てたのは、ワールドワイドではまだまだHDのモニターが用意できない環境も多いということで、低価格モデルなりの配慮のようだ。
昨今はブライダルなどもすっかりデジタル一眼でシネマ風に撮るようになっているようだが、カメラにアクセサリを山のように付けて仕込んで撮るだけでなく、記録としてきちんと撮るという需要がなくなったわけではない。これ1台あればとりあえず「撮れなかった」ということはないカメラ、そういう部分を担うのがNX3だろう。
もちろん業務用途だけでなく、全画素超解像40倍ズームは、野鳥、自然風景といったハイアマの撮影ニーズにも応えられるはずだ。ピクチャープロファイルも多彩で、凝った絵作りにも対応できる。
このクラスのカメラは商品としても息が長いので、また来年新モデルが出てガッカリ、みたいな事が少ないのも一つのポイントである。2月13日~16日まで、パシフィコ横浜で開催される「CP+ 2014」でも出展されるという事なので、お出かけのついでにソニーブースで、画質や使い勝手をご覧になってはいかがだろうか。レビューで触れたポイント以外にも、「撮り手」としての気づきが沢山あるカメラではないかと思う。
(協力:ソニービジネスソリューション)
ソニー HXR-NX3 |
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