小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第668回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

革命か企画倒れか!? ソニーのウェアラブル「SmartBand SWR10」。4K撮影可能な「Xperia Z2」と連携

CES発表の製品が続々登場

 今年1月に行なわれたCES 2014で、ソニーは数多くの製品を発表した。中でもウェアラブル系で注目を集めたのが、ウェアラブルセンサーの「SmartBand」、テニスラケットに装着して打点などを計測する「Smart Tennis Sensor」、メガネの透過型レンズに情報を投影する「SmartEyeglass」の3つであった。

ウェアラブルセンサーの「SmartBand」と、スマートフォンのXperia Z2
テニスラケットに装着する「Smart Tennis Sensor」
メガネの透過型レンズに情報を投影する「SmartEyeglass」

 あれから半年が経過し、そろそろ実際に製品が出始めている。今回ご紹介するのは、ウェアラブルセンサーのSmartBand 「SWR10」である。

 最初にウェアラブルセンサーを普及させたという功績は、2006年発売の「Nike+iPod スポーツキット」になるだろう。Nike+はその後独自に進化し、iPhone本体をセンサーとして使うアプリとなった。これと同様の技術を使って、最近はスマートフォンのアプリだけでサイクルコンピュータのような機能も実現できるようになっている。

 「スポーツするとき」に限定すれば、スマホを持って行ったり、装着しながら運動することも可能だ。だが1日中センシングするという場合は、もっと小さなウェアラブル機器でセンシングさせる事になる。デジタルヘルスという文脈では、「FitBit」や「Jawbone UP」といったウェアラブルセンサーが人気なのは、すでにご承知かと思う。

 一方ソニーのSmartBandは、デジタルヘルスという方向性ではなく、ライフログ、あるいはスマホのコントローラという形で、もっとエンタテイメント方向に振った作りとなっている。そこで、今回は連携対応機として、5月21日から販売が開始されたソニーモバイルコミュニケーションズのスマートフォン「Xperia Z2」(ドコモ向けSO-03F)もお借りした。4K動画も撮れる、フラッグシップ機である。

 センサーをエンタテイメントに使うと、どういう世界が実現できるのだろうか。さっそく試してみよう。

それほど小さくはないセンサー部

 まずSmartBandだが、製品としては小型センサーと、黒のリストバンドのセットだ。価格はXperia Store直販で9,800円。リストバンドは一見1サイズのように見えるが、大小2つが同梱されている。筆者の腕では、小でも一番外側なら十分留まる程度である。

SmartBand「SWR10」の基本パッケージ
内容物はこんな感じ

 リストバンドは別売で全9色のカラーバリエーションがあるようだが、発売は6月以降となっている。サードパーティからはすでに互換のリストバンドがいくつか発売されている。

 「コア」と呼ばれるセンサーそのものは小さめの「おかき」ぐらいのサイズで、重量約6g。腕のカーブに合わせて少し湾曲している。これをリストバンドの裏側から挿入し、バンドを手首にはめるというわけだ。

これがセンサー部の「コア」
腕のカーブに合わせて湾曲している
お尻に充電用microUSBポート
裏側からバンドに挿入

 コアの側面にはボタンが1つある。ステータスLEDも3つあり、バンドを透過して光っているのが確認出来る。microUSBポートは充電用で、およそ5日間の動作が可能。IPX8の防水、IP5Xの防塵機能を備えている。NFC対応で、対応スマホにくっつけるだけでBluetoothのペアリングが完了する。

腕に装着したところ。表面にはなにもない
ソニーロゴの入った留め具でベルトを留める

 利用を開始するには、まずスマホ側に専用アプリをインストールする必要がある。アプリと言っても単体で起動できるものではなく、Xperiaの「設定」内にある「Xperia接続設定」-「スマートコネクト」-「SmartBand」内からアクセスする、プラグインのようなものである。スマートコネクトは、何らかの機器を接続したときにどういう機能を実行するかを管理する、いわば動作マクロを実行するためのプラットフォームで、以前は「LiveWare Manager」という名前だったものだ。

 SmartBand内部の設定をいくつか見てみよう。「自動夜間モード」は、睡眠時間の計測を行なう“夜間モード”への切換を設定時間で自動的に行なうもの。後述するライフログを取るときに便利だ。「通知」は特定のアプリからのアラートをSmartBandへ転送し、振動させるというものだ。

SmartBandコントロール用のアプリをインストール
SmartBandの設定

 ただあんまりたくさんのアプリから通知が来るように設定すると、一体何からの通知なのか振動だけでは区別できないので、いちいちスマホを見る事になる。本当に必要な通知だけをONにするべきだろう。

 「スマートウェイクアップ」は、スマホ用単体アプリでもいくつか既に存在するが、設定した時間の前30分ぐらいの間で、睡眠サイクル的に目覚めやすいタイミングで起こしてくれる機能だ。実際にはこれもSmartBandの振動で知らせてくれる。

 機能としては、「接続範囲外アラート」は面白い。SmartBandがBluetoothの接続範囲外に出たとき、スマホを置き忘れたのではないかと判断して、振動させる機能だ。普通のアラートと違って少し長めの振動が3回行なわれる。

SmartBand側からこれらのアプリをコントロールできる

 「アプリケーション」は、SmartBandをタップして、アプリに何らかの動作をさせる機能だ。特定の対応アプリだけにはなってしまうが、音楽プレーヤー、カメラなどの簡単なコントロールが可能だ。

 「携帯電話検索」は、SmartBandをタップすることで電話の着信音を鳴らすというもの。スマホがどこにあるのか分からないので、とりあえず別の電話からかけてみて着信音を鳴らすみたいな探し方をした方も多いと思う。ようするにあれを、電話をかけずにSmartBandでやってしまおうというものである。

 ただ残念なことに、SmartBandでコントロールできるアプリは、1つしかセットできない。つまり、普段は音楽プレーヤーでの再生や停止に使っているが、スマホが見当たらなくなったので「携帯電話検索」で呼び出したいと思っても、アプリが「携帯電話検索」にセットされていないので、探せないわけである。いい機能ではあるのだが、勿体ない。

実際に使ってみたが……

WALKMANアプリで音楽再生がスタート

 では簡単な機能から使ってみよう。SmartBandのアプリケーションを「メディアプレーヤー」にセットする。コアの横のボタンを一度押すとLEDが点灯するので、その隙にコアを一度タップすると、標準音楽プレーヤーとなっているWALKMANアプリでの音楽再生が始まる。

 タップしてからアプリの起動が行なわれるので、実際に音楽再生が開始されるまで3秒ほど待たされる。曲やプレイリストをSmartBandで選ぶ事はできず、前回再生中だった曲がスタートするというだけだが、一番気軽に使える機能と言えるだろう。ストップするにはもう一度横のボタンを押してコアをタップする。

SmartBandでコントロール可能なSmart Cameraアプリ

 続いて「Smart Camera」を試してみる。これは同様の操作で、カメラのシャッターを切る機能だ。最初にタップしたときは、まずカメラアプリが起動するのみだ。次のタップから撮影コマンドとなる。

 この機能のポイントは、離れたところからのカメラコントロールであろう。ただ、スマホを手に持っているのなら、画面タッチで撮った方が早い。ということは、どうにかしてスマホを固定しなければならないので、何らかの道具が必要になる。とりあえずXperia Z2付属のクレードルが使えるわけだが、角度が固定されるので、いいアングルを狙おうとしても思うようにいかないかもしれない。

4Kも撮影できる標準のカメラアプリはこちら

 タップして実際に写真が撮られるまで、1秒ぐらいタイムラグがある。瞬間を狙った写真は難しい。一方そのタイムラグを利用して、自分撮りのリモートとしては使える。ただそれも、まずはスマホを固定する道具を入手してからの話である。

 2回タップすると、動画を撮影できる。止めるときも2回タップだ。ただ4K撮影モードでは、このタップによるコントロールはできなかった。そもそも起動しているカメラアプリが違うので、仕方がないだろう。

 動画を撮影して停止したのち、続いてもう一度1タップで静止画を撮ろうとすると、撮影できないというアラートが出る。いったんホーム画面に戻ってもう一度カメラアプリを呼び出し直せば撮れるのだが、まだ何らかの問題があるようだ。

1日を記録する「Lifelog」

活動を記録するLifelog

 ここまでの機能は、言わばハードウェア同士の相互制御である。SmartBandのもう一つの機能としては、センシングしたデータをログとして記録し、スマホで解析して1日の行動を知るという、ライフログとしての用途がある。これを行なうのは、名前そのままの「LifeLog」というアプリだ。

 ライフログということでは、ソニーマーケティングが2008年に静止画や動画、ブックマーク、ブログなど日々収集したデータをWeb上でまとめる「Life-X」というサービスを開始したが、2013年にPlayMemories Onlineへ統合という形で終了した。統合といえば聞こえはいいが、単にそこにアップしていた動画と静止画をクラウドに移動できたというだけのことで、元々のライフログという機能やコンセプトは失われている。そして、ソニーモバイルが新たに展開するのがLifeLogというわけだ。

 LifeLogは、SmartBandからのログを解析して、1日の行動を分析していく。例えば移動の歩数や歩行時間、ランニング時間、睡眠時間、消費カロリーなどだ。

 実は同様の事は、すでに先行するデジタルヘルス製品とアプリ、例えば「FitBit」や「Up」といったものでもやれる。LifeLogは、さらにスマホで何をしたかというデータも乗ってくるのが、ポイントである。写真を撮ったとかコミュニケーションした、音楽を聴いたといったアクションをすべて記録していく。

睡眠時間の計測は「夜間モード」の設定に強く依存する

 3日ほどSmartBandを付けてログを取ってみたが、正直まだ微妙にツッコミどころありといった感じだ。例えば睡眠時間は、寝入った時間は割と正確だが、起床時間が若干早く計測されてしまうようだ。朝起きてトイレに行った後また寝たのだが、そこからはもうずっと起きていることになっている。時間を修正したいのだが、修正機能がない。

 以前FitBitを使った経験があるのだが、これは寝る時に手動で夜間モードに設定する必要があった。設定するのを忘れても、あとからセンサーのログを見ながら手動で睡眠時間の修正ができるので、正確に睡眠時間を把握することができた。まあSmartBandはデジタルヘルス方向には振っていないということではあるのだが、修正機能ぐらいはあってもいいだろう。

 ランニングに関しては、スマホを持たずSmartBandだけでも計測できる。距離や時間は割と正確だ。ジョギングとウォーキングを組み合わせて走った場合、それぞれを別々に記録している。

同じ時間のランニングとウォーキングを正確に分離
お風呂に入ってもランニング?

 ただ、ランニング以外の動作もランニングとして記録してしまう事がある。例えば夜9時半に3分だけ走ったことになっているのは、SmartBandを付けてお風呂に入ったときに、頭や体を洗っている時間だ。

 まあ、走ったに相当する運動量という事なのかもしれないが、腕だけ動かしたのと体全体を動かしたものは、センシングの違いで判別できそうなものである。そういう細かいところを判別するのが、プログラマの腕の見せ所だろう。

4K解像度で手ぶれ補正も

 Xperia Z2(SO-03F)の4K動画撮影機能をチェックしておこう。4K動画が撮影できる機器はコンシューマ向けにもいくつか出てきているが、そこにスマートフォンも加わると、一気に4Kが身近なものに感じられる。

5.2型ディスプレイを持つ注目のXperia Z2
カメラ部は有効画素数約2,070万画素の「Exmor RS for mobile」

 標準カメラアプリから撮影モードで「4Kビデオ」を選択すると、4K/30p撮影ができる。それ以外のモードでも動画撮影は可能だが、フルHD撮影となる。

 また「MovieCreater」というアプリを使えば、簡単なクリップ切り出しも可能だ。ただ複数のクリップを連結するような機能はないので、サンプル動画の編集にはいつものようにEDIUS Pro 7を使っている。

モードで4Kを選択すると、4K動画モードに
4K動画の切り出しも可能
4K動画サンプル。編集てDivX HEVCでエンコードしたもの
sample.mkv(27MB)
※編集部注:「sample.mkv」の再生にはDivX HEVCプラグインが必要です。編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 実際に撮影してみると、4K撮影ながらも手ぶれ補正が使えるので、手持ちでもかなり安定している。ただ画面をタッチしてそこにフォーカスを合わせるタッチAF機能が使えないので、あまり凝った構図だと思ったところにフォーカスがいかない場合がある。HD動画撮影ならタッチAF機能が使えるのだが、そこが残念なところだ。

 動画サンプルで音が1秒単位で途切れているが、どうもEDIUS Pro 7でのクリップ読み込みに問題があるようだ。Xperia内再生および他のPCアプリケーションでの再生では、音の途切れもなく再生される。

ローリングシャッター歪みのテスト
roll.mp4(15MB)

 また撮影開始直後はAFが動くので、画面が安定しない。ローリングシャッター歪みと相まって画面がプルプルするので、編集ツールで撮り始めは切るつもりで撮影した方がいいだろう。

 4Kなので解像感は確かにあると言えるのだが、明るい場所では大胆な白飛びも見られ、ラティチュードはそれほど広くないようだ。また反射部分に偽色も見られる。スマホなんだからまあこんなもんという意見もあるだろう。4Kだったら無条件に高画質というわけにはいかない。

解像感はあるが、白飛びや偽色も多い
狙ったところにフォーカスが設定できないのももどかしい
画面のピンチで見たいところを拡大できる

 撮影した4K動画は、メディアプレーヤーの「ムービー」から再生が可能だ。再生中に画面をピンチアウトすると、任意の場所を拡大して見ることができる。拡大してもスマホの画面上では結構綺麗だ。見たい部分を自由に拡大し、それでもまだHD解像度があるという世界は、ハンディカム「FDR-AX100」でも実現していたが、スマホでも可能になったわけだ。

 さらに新規格MHL 3.0対応のケーブルを使えば、HDMI入力のあるテレビに出力できる。テレビで見た方が、この機能は満足度が高いだろう。もちろん4Kテレビがあれば、そのまま4K出力も可能だ。

 またHD撮影では、クリエイティブエフェクトを使った動画撮影も可能だ。だがこのテスト中、本体が高温になったためにカメラアプリが終了する現象が頻繁に見られた。撮影日は晴天ではあったが、まだ真夏日というわけでもないので、この程度の気温で撮影できなくなるというのは厳しい。

多彩なエフェクトが実現できる「クリエイティブエフェクト」
熱による警告が出て撮影続行不可能に

 ただ4K撮影モードでは同じ条件で何事もなく撮影できるので、撮像素子の熱ではなさそうだ。プロセッサの負荷ならOS全体に影響が出るはずだが、他のアプリは正常に動いている。おそらくリアルタイムエフェクトに関わる画像処理エンジン「BIONZ for mobile」の発熱なのかもしれない。

総論

 これまでウェアラブルセンサーは海外ベンチャーの製品ばかりだったので、SmartBandは期待の製品として国内で注目を集めているわけだが、実際に使ってみると意外な驚きはなかった。先行する製品を使ったことがあるユーザーなら、まあそれぐらいできるだろうなと想定できる範囲である。

 ハードウェアとしても、もう少し細身に作ることはできそうだが、手に巻くバンドとしては結構太い。これだけの面積を取りながら時計機能すらないのに、よほどのモチベーション、つまりダイエットしたいとかいった強い意志もなく、単にログが録れますというだけでこれから何年もこれを手首に填めていることができるだろうか。

 確かにスマホ操作の履歴も含めてログが録れるという点ではユニークなのだが、現時点ではそれが何の役にも立たない。さらにそれを見返して面白いわけでもない。

 ライフログというわりには、収集できる情報がスマホもしくはSmartBandを利用した範囲に限られるからだろう。PCで何文字打ったとか、メシは何を食ったとかトイレに何回行ったとか、もっと多くの情報が収集できれば、見返して面白いモノになるかもしれない。ただ現状は、すべての行動が走った歩いた止まったの3つに分類されるだけなので、なんのこっちゃわけわからないんである。

 移動ルートはスマホごと持ち歩けば取れるようだが、SmartBandにはGPSがないので、これだけ付けて出かけても位置情報が取れない。Xperia Z2はハイエンドモデルで結構大きいので、ジョギングに持って行くには辛い。いやジョギングにこれを持って行くぐらいなら、それでセンシングして計測すればいいので、なんのためにSmartBandをしているのかがわからなくなる。

 ソニーはエンタテイメントの会社なので、センサーの用途もそっちに振ったのだろうが、同時にソニーは医療機器メーカーでもある。むしろベンチャーにはできないような、ガツッと医療や健康に振ったセンサーとアプリもやれるのではないだろうか。

 とにかく現状では、SmartBandの目的も着地点もふんわりしすぎて見えてこないので、どう評していいのかよくわからないというのが正直なところである。まあ道はまだ始まったばかり、という事であろう。

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小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチボックス」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。