小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第688回:3ch全録も可能なサクサクBDレコ、東芝「DBR-T560」

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第688回:3ch全録も可能なサクサクBDレコ、東芝「DBR-T560」

USB HDDが他機種と共用できる「SeeQVault」も試す

“全部録る”がトレンド?

 ここのところ全天球カメラの話題を2週連続でお送りしたが、どうも世の中的には“全部録ってる”みたいな考え方がユルく浸透してきているのではないかという気がする。テレビのレコーダも、全録モデルはもはや好事家が買うニッチ商品ではなく、かつてのダブルチューナ、トリプルチューナ機ぐらいの価格で買えるようになってきている。一つの方法論としてようやく世間的に認知されてきたようだ。

「DBR-T560」と「DBR-T550」。SeeQVault対応HDD「HD-QB10TK」

 東芝はかなり早くから全録機に取り組んだメーカーだ。REGZAサーバー「D-M」シリーズは、リーズナブルな全録機として人気が高い。一方トリプルチューナーの「DBR-T」シリーズは、昨年末のT460/450から一部全録機能も使えるようになり、ハイブリッドモデルとして注目を集めた。

 今回ご紹介する「DBR-T560」はT460の後継モデルで、やはりトリプルチューナのレコーダ機能に加え、3ch全録機能もサポートしている。もちろん最近流行の宅外リモート視聴にも対応するなど、イマドキの機能も追加された。店頭予想価格は10万円前後となっているが、実売では8万円を割り始めたところである。

 全チャンネル録画機以外をレビューするのは、2012年のDBR-T360以来、なんと2年ぶりとなる。一体どのように進化しているのか、さっそくチェックしてみよう。

ブラックで統一の筐体

 ではまずデザインからだ。東芝では2013年のD-M470ぐらいまで、フロントパネルの一部にシルバーのラインをあしらったデザインを採用していたが、それ以降は全面黒統一のフロントパネルに切り替わったようだ。

シルバーラインをやめて黒で統一されたボディ

 黒とは言っても光沢感のあるハーフミラー風の加工がなされており、反射が強い。ただし、モロにフタだけこの加工なので、取って付けた感は拭えず、若干浮いた感じになっている。よく見ると半透明なのだが、背後に透けるLEDや表示部があるわけでもない。各種ステータスLEDは、天板に近いところの薄い縁のところに小さく付けられており、正面から覗き込まないと確認しづらい。天面にも光が通るような工夫が欲しいところだ。

微妙にミラー感のある塗装

 電源ボタンは以前は正面だったが、天面に移されている。またディスクのイジェクトボタンが真ん中あたりにある。丁度Blu-rayドライブのすぐ右に位置する場所で、操作のわかりやすさを狙ったものだろう。東芝機は以前から、イジェクトボタンはドライブのそばというポリシーで設計されている。これも以前は前面にあったのだが、電源ボタンの配置につられる格好で上に移動してきたのだろう。

電源ボタンは天面に移動
イジェクトボタンが天面の真ん中あたりにあるのは珍しい
真ん中に各種スロットとUSB端子

 B-CASカードは、ミニタイプのものを前面スロットに挿入する。カメラ接続用としてUSB端子、SDカードスロットもある。

 「DBR-T560」のHDD容量は2TBで、容量違いの下位モデルT550は1TB。実売の価格差は4,000円ぐらいしかないので、T560のほうがお得感はある。

 内部はトリプルチューナが搭載されており、どれを全録に割り当てるかは、自由に選択できる。全部予約録画にしてもいいし、1チャンネルだけ、2チャンネルだけ全録、あるいは3チャンネル全部を全録に割り当ててもいい。

 昨年のモデルは、全チャンネルを全録に割り当てるともう予約録画ができなかったが、T560は全録していない時間帯では、予約録画ができるようになった。例えば夜の番組は2チューナで全録しておき、昼間の番組は任意で3チャンネル同時予約録画するという、ハイブリッドな使い方ができる。

 背面に回ってみよう。ボディが薄型なだけに、2段の端子はRFのみで、他は皆1列に並んでいる。アナログAV入力×1、HDMI×1、光音声×1。増設用HDDのUSBは1つ、もう一つのUSB端子は無線LANのモジュール専用となっている。最近のレコーダはだんだん無線LAN内蔵になってきており、未だに外付けは珍しい対応だ。

シンプルな背面端子

 背面ファンは、筐体の高さをほぼいっぱいのものが搭載されているが、ファン音はやや大きめだ。居間に置いておくぶんには気にならない程度ではあるが、寝室など静かな部屋に置くと、ファンノイズが気になるかもしれない。

リモコンはM470と同タイプ

 リモコンも見ておこう。モデルとしては昨年の「D-M470」と同じタイプだ。あちらはBDドライブ無し全録機なのでメディア切り換えボタンがなかったが、本機はメディア切り換えが目立つ場所に配置されている。

 また今回は、同社製のSeeQVault対応HDD「HD-QB10TK」もお借りしてみた。SeeQVaultは、東芝やパナソニック、サムスン電子、ソニーらが共同開発した著作権保護技術だ。テレビ放送をこのHDDにバックアップしておけば、他のSeeQVault対応レコーダに繋いで再生できるというもの。これまではレコーダ用HDDは暗号化しないと利用できなかったため、レコーダ本体と1対1でしか使えなかった。今後のレコーダ買い換え時には、SeeQVault対応のレグザサーバー/レグザブルーレイであれば、番組の引っ越しなどが可能になるという。

 外見は普通の1TBの外付けHDDだが、SeeQVaultのシールが貼ってある。インターフェースは、意外にもUSB 2.0だ。SeeQVaultは全録の拡張には対応しておらず、主にダビング用途であるため、それほどスピードは必要ないという事だろうか。

東芝製SeeQVault対応HDD
SeeQVaultのシールが貼ってある

 今回は本当に他のレコーダで再生できるのか、別途DBR-T550もお借りしている。あとでつなぎ換えてテストしてみよう。

サクサクした動作が気持いい

 では早速設定してみよう。初期設定の段階で、タイムシフトマシン機能の設定が組み込まれている。3チューナのうち、いくつをタイムシフトマシン用にするかを選択し、全録時間帯を設定、その後録画するチャンネルを選ぶという段取りになっている。タイムシフトに割り当てるHDD容量変更も可能だ。

初期設定でタイムマシンチャンネル数を設定する
録画時間帯を設定
チャンネルを選ぶと、番組保持日数がわかる

 今回は地デジのNHK総合と、BSのNHKプレミアムを全録に割り当ててみた。タイムシフトの録画先は、外部のHDDに割り当てることもできる。この場合はSeeQVault対応HDDじゃなくてもいいので、普通の外付けHDDでOKだ。

 タイムシフト用には、3TBのHDDまで対応する。内蔵HDDは通常録画領域とタイムシフト用で分け合う必要があるが、外付けは全容量をフルにタイムシフトにアサインできる。録画時間や画質をアップしたい人は、最初から外付けを検討するのもいいだろう。

 HDD/ディスク管理メニューで、外付けHDDをどんな用途で使用するかを選択できる。用途によってフォーマットの仕方が違うわけだが、利用タイプとフォーマットが混乱しないようにうまく整理されている。SeeQVault HDDを使用する際は、「引越・バックアップ用」から初期化しておく。

SeeQVaultは「引越・バックアップ用」となる

 スタートメニューは3×3のボタンが並ぶ形式で、このページで全部である。普通のレコーダながらタイムシフトもできることがウリなので、「タイムシフト過去番組表」が中央にある。この機能はメニューやリモコンにはタイムシフトと書いてあるが、設定画面ではタイムマシンと呼ばれており、初めて使う人は戸惑うだろう。機能と行為で呼び名を分けているということかもしれないが、使う側にとってはどっちかでいい話である。

シンプルなスタートメニューは健在
簡単モードはタイムシフトと録画番組再生を大きくフィーチャー
番組予約画面。バックアップも同時に設定できる

 まず番組予約システムを見ていこう。番組表から番組を選ぶと、予約画面が出てくる。ここに色々仕掛けがある。さらに、予約画面の中に「バックアップ設定」という項目がある。ここを「する」に設定すると、録画されたあと、電源がOFFの間にSeeQVault HDDにバックアップされる。

 同時録画ではなく、あくまでもダビング10の1回分を消費してのコピーだ。高速ダビングなので、画質は録画したときの画質モードのままである。

 「おまかせ自動録画」では、番組名をキーワードにした自動録画設定が可能だ。スペースでキーワードを区切るとAND検索になり、さらにOR、NOTのキーワードも追加できる。ジャンルも指定でき、自動削除の設定も可能だ。

絞り込み条件を多数設定できるおまかせ自動録画

 次にタイムシフト機能を見てみよう。スタートメニューの「タイムシフト過去番組表」、もしくはリモコンの「タイムシフト」ボタンを押すと、全録された番組表が出てくる。表示されるまで1秒もかからず、一般の番組表と変わらないレスポンスだ。通常の番組表が白バック、過去番組表が黒バックなので、わかりやすい。

タイムシフト過去番組表は黒バックで表示

 過去番組表は、普通はこれを使って番組を探すと考えがちだが、それよりも「ざんまいプレイ」が便利だ。これは全録された番組を様々な切り口で分類したもので、映画、ドラマといったジャンル分け以外にも、「あなたにおすすめ番組」や「いつもの番組」といった、ユーザーの嗜好を反映した分類もある。

多彩な切り口で番組が探せる「ざんまいプレイ」

 興味深いのは、「急上昇ワード」だ。これは番組情報の中に出てきたキーワードのうち、出現頻度が高くなったものをピックアップ、それを全録の中から探してくれる機能だ。今回NHKしか録画していないため、出現キーワードがえらく偏ってしまったが、トレンドを探るにはいい機能だろう。

急上昇ワードでトレンドを把握

 過去番組表は、番組を探してすぐに見るというよりも、番組をどう扱うかのプラットフォームという扱いだ。番組表内で番組を選ぶとすぐには再生されず、番組の操作画面に移行する。ここで通常録画用のHDDへコピーしたり、SeeQVault HDDにバックアップしたりできるという作りだ。またマジックチャプター機能を利用する事もできる。

過去番組表で番組を選択すると、予約録画時と似たような画面が現われる

 では「ざんまいプレイ」で番組を見たあとに保存したくなったら、いちいち過去番組表で該当番組を探さないといけないのか? 実は番組再生中にリモコンの「タイムシフト」ボタンを押すと、過去番組表に移行して、該当番組がすでに選択された状態になっている。あとは決定ボタンで先ほどの画面に行く、という流れだ。あちこちに機能への入り口を作らず、横にスライドさせる形でうまく機能を繋いでいる。

DiXiMに一本化されたリモート視聴

 では次に、宅内宅外でスマートフォンを使ったリモート視聴について試してみる。これまで東芝機でスマホやタブレットを連携させる場合、同社のRZプレーヤーやRZライブといったアプリで視聴するというのが定番であった。本機の取扱説明書にもそのように記載してある。だがこれら東芝製のアプリは、東芝製のスマホやタブレットでしか動作しない。さすがにそれは使える人が限られすぎる。

 だが本機は、NexTV-Fが定めたリモート視聴に対応したため、デジオンが提供する一般的なアプリでリモート視聴が可能になった。具体的には 、iOSでは「DiXiM Digital TV for iOS」、Androidでは「DiXiM Play for REGZA」が対応する。今回はiOS版のDiXiM Digital TVでテストしてみた。1,000円の有償アプリである。

 まずホームネットワーク内でアプリを起動すると、すぐにDLNAサーバとしてT560が見つかる。あとはここからVIDEOへ進むと、HDD、タイムシフトマシン、SeeQVaultの3つの中から番組を選択し、視聴できる。

「DiXiM Digital TV for iOS」のトップ画面
番組再生中の画面。チャプタを使ったジャンプも可能

 一方宅外から視聴する場合は、別途プレミアムアドオンを500円で購入する必要がある。設定の中からアプリ内課金として購入する仕組みだ。これを購入すると、一番下の機能切り替え欄に新しく「持ち出し」と「リモート」が追加される。

番組内課金で宅外視聴機能を購入する
購入後は宅外視聴と持ち出しのメニューが増える
まず宅内環境でペアリングが必要

 宅外からの視聴を行なうには、「リモート」へ移動し、ホームネットワーク内でT560とペアリングを行なう。このペアリングは、宅内視聴の際に自動的に有効期限が更新されるが、宅外だけで使っていると3カ月で期限が切れるので、そのときはまたペアリングが必要になる。

 実際に宅外視聴をテストしてみた。宅外視聴でも、宅内と同じくHDD、タイムシフトマシン、SeeQVaultから番組を選んで再生できる。実際に再生が開始されるまで、およそ15秒。画質的には他社のレコーダとほぼ同等の品質と言えるだろう。宅内視聴ではマジックチャプターで付けられたチャプターにジャンプする機能が使えたが、宅外視聴では使えない。これは次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)の「リモート視聴要件」によるものだ。

 なお、リモート視聴できるのは録画番組のみで、放送中の番組をライブで視聴する事はできない。

 番組の持ち出しは、録画時に持ち出し用録画を指定しておくか、録画後にダビング機能を使って持ち出し用に変換が必要になる。

 では最後に、SeeQVault HDDをT560とT550に付け替えて、保存番組が再生できるか試してみよう。外付けHDDは、アンマウント処理のような手順はない。ただスポッとT560からUSBケーブルを抜いて、T550に付け替えれば認識する。何か登録処理のようなことが必要なのかと思ったが、PCのメディアの付け替えと同様であった。

T560からバックアップしたSeeQVault HDDを……
T550に付け替えてみる
T550上であっさり認識、再生できた

 SeeQVault HDDを付け替えたT550では、USB HDDを選んで番組再生するだけだ。これなら、PCを扱ったことがない人にも簡単である。なお、東芝では共用できるレコーダは「SeeQVault対応のレグザサーバーおよびレグザブルーレイ」としており、「SeeQVault対応機器でもデータの記録フォーマットなどが異なる場合もあり、他社製のSeeQVault対応機器での動作を保証するものではない」と書かれている。今回は同じメーカーの対応機でテストしたが、他社のレコーダでも利用できるのか? 数世代を跨いで本当に再生可能なのかは、これから検証を進めていく。

総論

 最近の東芝は、廉価な全録機に注目が集まっているところもあるが、トリプルチューナ機も着実に進化していた。全録機能とのハイブリッドは、どっちにしようか決められない人には丁度いいマシンだろう。また民放局が少ない県ではチューナーが6つも8つもあっても使わないので、こういったやりくりができるレコーダというのは、ピッタリはまる。

 宅外でのライブ番組視聴は今のところできないが、録画番組持ち出しと宅外視聴は多くのスマートフォンに対応できる形でサポートした。まさに今レコーダは、各社横並びの状態になりつつある。

 操作体系としては全機能がスタートメニューに綺麗にまとまっており、昔のようにサブメニューを出してその中を掘っていくような難解なものではなくなった。もちろん、機能を分類して折り畳んでいるからで、昔のように場当たり的にサブメニューを押してみて機能を探すような操作は必要ない。あれはあれで好きな人もいるだろうが、“東芝のレコーダは難しい”というのは、過去の話である。

 もはやただ番組が録れるだけのシンプルな録画機は、なかなか注目されなくなってきた。ITに振るか全録に振るか、あるいは両方か、そういった複数のイノベーションの最中にある機器ということであろう。

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小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチボックス」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。