小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第638回

“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

コンパクトで買いやすい全録、東芝「D-M470」

TVは最近…という人にオススメな10万円を切る1台

BDレコーダを省いた新モデル登場

 全チャンネルを録画して自由にタイムシフト再生を行なう、いわゆる全録機は、東芝からは2011年12月に「レグザサーバー」として「DBR-M190/180」の2モデルが市場投入され、その年の年末・年始には大きな話題となった。ただ当時の店頭予想価格が約20万円と約15万円で、なかなかの高級モデルであった。

 今年6月には1年半ぶりの後継機「DBR-M490」が発売され、BS/CSの全録もサポートされたことで、まさに映画ファン、スポーツファン待望の1台となっている。登場当初の価格も約17万円と下がり(11月5日現在の実売は約13万円)、録画チャンネル数も8chと、十分な機能を備えている。

 そして早くも全録の新しいモデル「D-M470」が10月30日より発売となっている。型番に“BR”が付かないのは、Blu-rayドライブが付いていないからである。その代わり価格がグッと下がって、店頭予想価格は10万円前後。すでにネットの通販サイトでは8万円半ばの価格を付けるところもあるようだ。

 全録をぐっと身近にするD-M470を、早速テストしてみよう。

驚く小型化

片手で持てるサイズと重量

 従来全録機では、複数のチューナやHDDを搭載しなければならないということで、どうしても大型になる傾向があった。だがD-M470はBlu-rayプレーヤー並みのサイズに機能を凝縮した。361×217×50mm(幅×奥行き×高さ)と、AVラックにこだわらずどこにでも置けるサイズが魅力である。上位モデルのDBR-M490と比べると、体積比で約1/3になったという。

 前面はBDドライブがないため、開閉部がない。右側に電源ボタンがあるだけだ。B-CASカードは背面から入れるようになっている。低価格かつシンプルなモデルだが、天板はいかにもプレス機で鉄板曲げました的な加工ではなく、きちんとラウンド型のコーナーに合わせた格好で、綺麗にデザインされている。

フロントパネルは開閉部もなくシンプル
あるのは電源ボタンのみ
先週紹介したソニーのBDレコーダ「BDZ-ET2100」と重ねたところ
小型だが端子類は多い

 背面に回ってみよう。コンパクト機ではあるが、端子類は比較的多い。まず地デジチューナはタイムシフト(全録)用に6、通常録画用に1の、計7つ。BS/CSデジタルチューナは1つで、合計8チューナーとなっている。

 B-CASカードはミニサイズを採用しており、地デジ専用の青カードが1枚、地デジ・BS・CS用の赤カードが1枚付属している。出力はHDMIのほか、アナログAV出力、デジタル音声用の光端子もある。ネットワーク接続は有線と無線の両方に対応。

B-CASカードはミニサイズが2つ
無線LAN用アンテナが出っ張っている
内蔵HDDは最大で1750MBまでタイムシフトに利用できる
リモコンはBlu-rayがないぶん、タイムシフト機能を強化

 内蔵HDDは2TBで、タイムシフト用には最大で1,750GBまで割り当て可能。残りは通常録画用の領域となる。通常録画の方式はDRモードはもちろん、MPEG-4 AVCによる圧縮録画が利用できるが、タイムシフトはMPEG-4 AVC録画のみとなる。増設HDD用のUSBは、タイムシフト用と通常録画用で1つずつあり、タイムシフトマシン録画用に複数台のUSB HDDは使えないが、通常録画用にはUSBハブを使えば4TBまでのHDDが最大4台まで同時接続できる。

 リモコンも見ておこう。シンプルモデルとは言いつつも、リモコンはフル機能のものが付属している。Blu-rayがないので、メディア切り換えに関するキーがタイムシフト機能のショートカットに割り当てられている。機能的に本機は録って見るだけなので、こちらのリモコンのほうが効率的に操作できるだろう。

リソースをとことん使い倒す設計

 では録画チャンネル割り当てである。全録機の醍醐味はほぼここに集約される。

 一番ベーシックな使い方は、地デジ6チャンネルをタイムシフト用として使用し、あとは通常の予約録画用として地デジとBS/CSチューナを各1つずつ利用していくというスタイルだ。すでにタイムシフトもしてるのに地デジを通常予約する意味があるのかと思われるかもしれないが、番組ごとに録画画質を変更できたり、タイムシフト休止時間中の番組を個別に録画予約するなど、色々使い道はある。

 6チャンネルすべてを内蔵HDDに録画する場合、画質モードにより保存できる日数が変わっていく。内蔵HDDの領域を最大にタイムシフト用に割り当てた場合、保存日数の目安としては下記のようになる。AVC圧縮の画質モードは5段階だ。なお、DRモードでタイムシフト録画はできない。

録画モード 6ch割り当て 4ch録画割り当て
AVC最高画質 約2日 約3日
AVC高画質 約3日 約5日
AVC中画質 約4日 約6.5日
AVC低画質 約6.5日 約10日
AVC最低画質 約7.5日 約11日
6チャンネルのタイムシフトはUSB HDDも混在できる

 6チャンネルのうち、2チャンネルまではUSB HDDに録画先を割り当てることが可能だ。そうなると内部HDDは4チャンネルぶんだけ録ればいいので、保存日数が伸びることになる。なおこの録画割り当てのシミュレータも前回同様公開されているので、自分でどんな感じで使いたいかがイメージできるようになっている。

 また録画休止時間を多く取る事で、さらに保存日数を伸ばすことができる。ただ1日のうち1時間だけは、メンテナンス時間として録画できないので、その時間をどこに割り当てるかも重要なポイントであろう。

 さらに、通常予約用として空いているトランスコーダを使って、もう1チャンネルタイムシフトに指定することができる。つまりこの機能を使えば、BSやCSのチャンネルも、1チャンネル分だけはタイムシフトする事ができるわけだ。

 この7チャンネル目の録画は、録画保存先が内蔵HDDに固定されるので、他のタイムシフトチャンネルの保存期間が若干減る事になる。また、レコーダのチューナで現在放送しているテレビを視聴する場合、タイムシフト録画をしているチャンネルから他のチャンネルに変更できなくなるほか、個別の予約録画もできなくなる。つまり本来そこに利用している系統をタイムシフトに回すという事なので、めいっぱい忙しく録画するマシンと化すわけである。

タイムシフト録画の時間割を決められる
7チャンネル目のタイムシフトも設定可能
おまかせ自動録画も魅力的な機能だ
おまかせ自動録画の検索結果は予約一覧に集約される

 一方7チャンネル目の録画を使わなかった場合、通常の予約録画以外に「おまかせ自動録画」が設定できる。これは特定のキーワードやジャンルを指定しておけば、それに引っかかった番組を自動的に録画してくれるという機能だ。

 1日のトータル録画時間も選べるほか、いっぱいになったら自動削除するかどうかも選ぶ事ができる。例えばBSはタイムシフトしなくても、映画だけは可能な限り録画するといった設定も可能だ。おまかせ自動録画用に別途USB HDDを用意しておけば、相当量の録画が可能になる。

 おまかせ自動録画で引っかかった番組は、予約一覧に通常録画予約としてタスクが積み上がっていくので、特定の番組だけ画質モードを変えたり、録画先フォルダを変更したりといった微調整も可能だ。

タイムシフトならではの視聴環境

録画された番組は過去番組表に加えられる

 タイムシフト番組の視聴は、リモコンの「タイムシフト」ボタンからアクセスできる。ここでは過去番組表という形で録画された番組が出てくるので、そこから見たい番組を探す、というスタイルだ。すでに視聴した番組には、チェックマークが付けられる。

 ただこの探し方は、頻繁に番組表にアクセスして、何時から何チャンネルで何の番組をやってる、ということがだいたい頭に入っていないと探せない。全録機を利用し始めると、そもそも予約のためにテレビ番組表など見なくなるので、そういう番組情報が頭に入らなくなる。

 そこで本機では、時間軸、チャンネルといった情報にとらわれない見方として、「ざんまいプレイ」を提供している。これは番組をジャンル別に並べ替えてくれるほか、ユーザー自身が設定したキーワードやジャンルなどで番組を集めてくれる機能だ。録画番組の再生情報を利用して、いつも見ている番組をピックアップする「いつもの番組」や、お勧めをしてくれる「あなたにおすすめ番組」、話題のワードに関連する番組をリストアップする「急上昇ワード」なども搭載している。

 ただ、検索キーワードは、番組名か番組詳細といったEPGデータに語句が含まれないと探せない。昨今のレコーダは番組メタデータから検索できるものが主流になりつつあるが、それには対応していない。

自由な視聴を提供する「ざんまいプレイ」
自分でキーワード設定も可能
タイムシフト録画した番組を個別保存する
番組を持ち出し用に変換すると、ホームネットワークで利用できる

 タイムシフト機能で録画された番組は、個別に切り出して保存することができる。長く残しておきたい番組はこうしておかないと、特定の日数が来たら削除されてしまう。保存にはほぼ実時間が必要だが、バックグラウンド処理されるので、タイムシフト録画が停止する事はない。

 Blu-rayドライブがないのに、別途切り出して保存しておく必要があるのかと思われるかもしれないが、保存しておけば色々と使い道がある。ネットワーク転送/ダビング機能「ネットdeダビングHD」には対応しているので、BDドライブ搭載のレグザリンク・ダビング対応機種やライターがあれば、そこからBDメディアに書き出す事ができる。既に東芝の対応レコーダを持っている人が、全録機能を手軽に追加できる製品と考えても良いだろう。

 また、ダビング機能を使って保存した番組を持ち出し用に変換すれば、対応機器でストリーミング再生したり、番組ダウンロードが可能になる。

 対応機器は現在のところ、東芝の公式アプリであるRZプレーヤー(録画番組を端末で再生)、RZライブ(放送中番組を端末で視聴)、RZポーター(録画番組を端末にダビング)といったアプリがインストール可能な、東芝製スマホ/タブレットが推奨されている。

 それ以外の端末やアプリとして、手持ちのNexus 7(2012年版)のAndroid版Twonky Beamを試したところ、ホームネットワーク内でのストリーミング再生は可能だったが、持ち出しはできなかった。

 一方、第3世代iPadのiOS版Twonky Beamではストリーミング再生できなかったが、「Media Link Player for DTV」では再生と持ち出しが可能だった。

【追記】
 東芝によれば「『持出フォルダ』に入れた番組であれば、Nexus 7とTwonky Beamの最新バージョンで持ち出し可能」とのこと。(11月11日編集部追記)

持ち出し変換した番組はAndroid版Twonky Beamでストリーミングできた
iOSではMedia Link Player for DTVで視聴と持ち出しが可能だった

総論

 全録機は、大きく分けて2つタイプに分かれている。一つは大量のリソースを消費しながら、フルセグで1週間程度のコンテンツを保存するタイプ。もう一つはワンセグを録画して長期間の保存を行なうタイプだ。

 もう一つの切り口は、メタデータを活用してデータ的に番組を見るタイプと、単純に自分で見たい番組を探すような、予約録画代わりタイプだ。

 東芝D-M470は、フルセグタイプながらシンプルなハードウェア構成で、10万円を切る大幅な低価格化を実現した。これにより、かつて存在しなかったフルセグ全録とワンセグ全録の中間ぐらいのレンジが誕生することとなった。

 あいにく番組メタデータには対応しないため、データ的な番組の見方はできないが、テレビは色々楽しみたいものの、10数万も出して全録機を買うのには躊躇するという人に丁度フィットするだろう。

 今回は「AVC中画質」でテストしたが、画質的には十分楽しめた。内蔵HDDが2TBと少ないため、この設定だと4chを保存して1週間弱だが、休止時間を増やしたり、USB HDDを用意するなどして調整すれば、1週間6ch録画はいけるだろう。

 これまで全録機は“高嶺の花”だと思っていた方も多いだろうが、そろそろ買いのマシンが出てきた。年末年始番組対策に、ひとつ検討してみてはいかがだろうか。

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小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチボックス」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。