トピック

4K TVで4K放送を見るために必要な「HDCP 2.2」とは? 各社対応まとめ

4K放送開始で注目を集めた「HDCP 2.2」ってなに?

 4Kテレビの販売も好調で、テレビ市場の回復が伝えられているが、6月2日には4K試験放送がスタートした。衛星放送を使って全国で4Kを放送受信可能になるのは世界初で、放送業界/機器メーカーが連携して4Kの本格普及を推進している。シャープの4K試験放送チューナ「TU-UD1000」も先週後半から店頭に並び始め、いよいよ4K放送の視聴が可能になった。

 しかし、4K放送を見るためのハードルはまだ低くはない。まだ単体で4K放送を受信できるテレビはなく、4Kテレビに加え、4Kチューナ、アンテナなどが必要となるためだ。

シャープの4Kチューナ「TU-UD1000」とHDMI 2.0/HDCP 2.2対応のテレビを接続

 そして、4K放送が始まったことで注目をあつめるようになったキーワードが「HDCP 2.2」だ。HDCPはHDMIなどで映像伝送するときに用いられる著作権保護規格だが、その最新バージョンがHDCP 2.2だ。

 HDCP 2.2は、ハリウッドメジャー6社が4K映像などの「プレミアムコンテンツ」に対応するデジタル機器のプラットフォームとして採用必須である、と'13年秋に要求。その理由は前バージョンのHDCP 1.4が破られたためで、4Kのような高品位なコンテンツを供給するにあたり、より強固な保護を求める、というものだ。

 こうした流れもあり、日本の4K試験放送でも、4K放送チューナからテレビにHDMIで映像信号を入力するためにHDCP 2.2の対応が必須となった。4Kチューナから4KテレビにHDMIで映像入力するためには、HDMI 2.0の4K/60p入力と、HDCP 2.2の2つの条件を満たす必要があるのだ。

Silicon ImageのHDCP 2.2、MHL 3.0/HDMI 2.0対応レシーバIC「SiI9679」

 といっても、2014年春以降に発表された4Kテレビは、ほぼ全てがHDCP 2.2に対応している。BRAVIA X9500B/X9200B/8500B、REGZA Z9X/J9X、AQUOS UD20、VIERA AX800/AX800F、LG Smart TV 55LA9650のいずれも4K/60pとHDCP 2.2サポートだ。

BRAVIA「KD-85X9500B」。X9500B/X9200B/X8500Bシリーズなど'14年モデルは出荷時からHDMI 4K/60pとHDCP 2.2対応
VIERA「TH-65AX800」
REGZA「58Z9X」

 では、どんなテレビでHDCP 2.2対応が問題になるのか? それは主に「4K元年」とも言われた2013年に発売された4K対応テレビだ。AV Watchを熱心にお読みいただいている方は、最近「4Kテレビの基板交換」という記事を多く目にしていないだろうか? その目的がHDCP 2.2対応なのだ。そしてほとんどのメーカーが無償での対応を実施/予告している。

 つまり、これから最新の4Kテレビを購入しようという人は、HDCP 2.2をそれほど意識する必要はない。関係があるのは2013年モデルを購入した人だ。ここでは各社の4Kテレビ/プロジェクタにおけるHDCP 2.2対応状況、および周辺機器での注意点などをまとめた。

4Kテレビ各社の対応

シャープの4Kチューナ「TU-UD1000」とHDMI 2.0/HDCP 2.2対応の「LC-52UD20」をHDMI接続

 2013年モデルのHDCP 2.2に関しては、各社が基板交換での対応を予定/実施している。というのも、HDCP 2.2対応のためには、鍵情報などLSI側のサポートが必要で、ソフトウェアのバージョンアップだけでは対応できないためだ。

 ソニーのBRAVIA X9200Aシリーズは、初期の出荷製品は基板交換だが、後期のものはソフトウェアだけで対応可能になっている。どうやらHDCP 2.2対応が必須と見込み、後期出荷製品からHDMIのレシーバチップなどを変更しているようだ。それ以外のほとんどの機種は、基板交換という大掛かりな対応が必要となる。ただし、現時点ではほとんどの基板交換が無償対応となっているのは、消費者としてはありがたいところだ。

 各社の対応状況は以下のとおり。

【ソニー】

 ソニーの液晶テレビBRAVIAでは、2014年5月発売のX9500B/X9200B/X8500BシリーズがHDCP 2.2に対応済み。'13年10月発売のX8500Bシリーズも、HDCP 2.2に対応し、ソフトウェアバージョンアップ(PKG 4.0001 JPA以降)でHDMI 4K/60pに対応する。

 2013年6月発売のX9200AシリーズはソフトウェアバージョンPKG 4.0001 JPA以降で4K/60pに対応。HDCP 2.2対応は出荷時期によって異なり、ソフトウェアアップデートもしくは基板交換(無償)で対応する。

 2012年11月の84型KD-84X9000は、無償基板交換により、4K/60pとHDCP 2.2に対応する。

KD-65X9200A。X9200Aシリーズは、出荷時期によって基板交換の場合も
'13年発売の84型「KD-84X9000」

・NexTV-Fによる4K試験放送開始にあたって(ソニー)

【東芝】

REGZA Z8Xシリーズ

 東芝の4K REGZAは、2014年5月発売のZ9Xシリーズと、6月発売のJ9XシリーズがHDCP 2.2に対応。

 2013年発売のREGZA Z8Xシリーズ(84Z8X/65Z8X/58Z8X)は、今秋に無償の基板交換サービスにより、HDCP 2.2に対応予定。詳細については7月下旬に案内する予定だ。なお、2012年以前に発売の55XS5/X3はHDCP 2.2には対応しない。

【シャープ】

AQUOS UD1シリーズ(LC-60UD1)

 シャープも4K AQUOSの新シリーズAQUOS UD20で、52/60/70型の全モデルがHDCP 2.2に対応している。

 2013年発売のAQUOS UD1シリーズ「LC-70UD1/60UD1」は、6月11日からスタートしたバージョンアップサービスでHDCP 2.2に対応。バージョンアップでは、サービス技術者がユーザー宅に出向き、無償で基板の交換を行なう。

 なお、AQUOS UD1でUSB HDD録画した番組は、基板の交換後に録画番組のコンテンツ保護情報がリセットされるため、視聴できなくなってしまう。そのため、シャープではネットワークダビング(ムーブ)により、バックアップを取るよう呼びかけている。4Kチューナ「TU-UD1000」もネットワークダビング機能に対応している。

フルHD(クアトロンプロで4K相当)のAQUOS XL10シリーズでも4K試験放送を視聴可能に(4K/30p)

 なお、'13年2月発売のICC PURIOS LC-60HQ10はHDCP 2.2対応については、「検討中」としている。

 また、クアトロンプロ採用のフルHDモデル「AQUOS XL10シリーズ」についても、4K/30pでの対応となるが、4K放送チューナ「TU-UD1000」の接続が可能となっている。

【パナソニック】

4K VIERAの'13年モデル「TH-L65WT600」はHDCP 2.2未対応。アップグレードを検討中

 2014年5月より発売した「VIERA AX800シリーズ」は、HDCP 2.2に対応済みで、50型「TH-50AX800/AX800F」、58型「TH-58AX800/AX800F」、65型「TH-65AX800」の5モデルを展開。

 2013年に発売のWT600シリーズ「TH-L65WT600」は、HDCP2.2に未対応で、「対応アップグレードを2014年末までに実施する方向で検討中」としている。

FAQ:4K試験放送について(パナソニック)

【LG】

 2014年5月に発売した4K対応LG Smart TV「55LA9650」はHDCP 2.2に対応済み。

 2013年モデルのLA9700シリーズは、65型「65LA9700」と55型「55LA9700」のいずれも無償アップグレードサービスにより、HDCP 2.2に対応する。アップグレードサービスでは、LA9700を引取修理を行ない、その間はユーザーに代替機を貸出する。

LG Smart TV「LA9700」シリーズはHDCP 2.2にアップグレードを実施
'14年発売「55LA9650」はHDCP 2.2対応済み

プロジェクタやAVアンプの対応状況

 4K放送のためにHDCP 2.2対応が必要なのは、テレビだけではない。プロジェクタにおいても、4K放送を含むHDCP 2.2コンテンツ表示のためには、HDCP 2.2対応が必要となる。

 ソニーの4KプロジェクタもHDCP 2.2に対応。'13年12月発売VPL-VW1100ESと、同11月発売のVPL-VW500ESはHDCP 2.2に対応済みだ。

 なお、'11年12月発売の「VPL-VW1000ES」は有償アップグレードサービス(10万円)で、HDMI 4K/60pとHDCP 2.2に対応する。HDCP 2.2の導入が全く予想されていなかった'11年発売の製品で、あわせて(おそらくこちらのほうが重要な)4K/60p対応も行なわれるので、有償とはいえ購入者には嬉しいサービスといえるだろう。

VPL-VW500ESはHDCP 2.2に対応
'11年発売「VPL-VW1000ES」は、有償アップグレードで最新のVW1100ES相当に

 JVCの4K対応プロジェクタ「DLA-X700」、「DLA-X500」は、HDCP 2.2には非対応。今後のアップデートについても「未定」としている。また、現時点では、パソコン用の4Kディスプレイでは、HDCP 2.2対応を謳う製品は登場していない。

オンキヨーのHDCP 2.2対応AVアンプ「TX-NR636」

 テレビやプロジェクタのような「ディスプレイ」機器だけでなく、AVアンプでもHDCP 2.2対応機器が発売されている。

 6月19日時点ではオンキヨー「TX-NR838」や「TX-NR636」が対応済みだ。AVアンプがHDCP 2.2に対応していない場合は、AVアンプを介さずチューナを直接ディスプレイにHDMI接続しなければいけない。HDCP 2.2対応することで、チューナとテレビの間にAVアンプを挟んで、音はAVアンプから映像はテレビから出力可能になる。細かなことだが、ホームシアターでの利用には重要なポイントといえる。こちらもAVアンプ各社の対応を期待したい。

2013年モデルの“救済”を評価したい

 4Kについては、将来的にはネットワーク(Ethernet)経由での対応も重要になるだろう。すでに北米のNetflixなどが4K対応を進めているほか、日本でも「ひかりTV」が10月の4Kビデオ配信のスタートを予定している。多くの4KテレビでHEVCデコーダを内蔵したのも、そうした状況を予測してのこと。

 だが、現時点での4Kコンテンツ視聴という点では、HDMIの4K/60pとHDCP 2.2対応が重要で、4K放送を見るための必須の要件。4Kテレビをお持ちで、4K放送も見たいという方は、ぜひ各社の対応状況を参考にしてほしい。将来の対応が見込まれる4K Blu-rayやSTBなどでも、HDMIの4K/60pとHDCP 2.2の対応が必要になると思われる。

 4Kなど「プレミアムコンテンツ」におけるHDCP 2.2対応というトピックは、AV Watchでも昨秋から何度か記事にもしていたが、4K試験放送という具体的な用途が生まれたことで、日本においてその重要度が急速に増した。

 おそらくメーカーにとっても、4K放送の導入の早さは予想以上だったであろう。コストをかけて4Kに先行投資をしたユーザーに対応する、という点で、多くのメーカーが無償の基板交換などしっかりした救済策を用意したことは、評価したい。

(臼田勤哉)