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無線給電など先進機能と独自デザイン。ヘッドフォン「Parrot Zik 3」の強みとは

 フランスのParrotによるヘッドフォン「Zik」(ズィク)は、建築/プロダクトデザインなどで知られるフィリップ・スタルク氏による個性的なデザインが目を引くだけでなく、'12年の初代モデルからBluetoothとノイズキャンセリング(NC)に対応し、いち早くNFCも採用するなど、絶えず一歩進んだ新機能をとり入れ続けている。

ParrotのJPAC地域担当バイス・プレジデント兼マネージング・ディレクター クリス・ロバーツ氏

 最新モデルとなる第3世代の「Zik 3」でも、ワイヤレス充電の「Qi」対応や、USBデジタル接続(48kHz/16bit)、Apple Watch連携など、新たな機能を他社に先駆けて導入。同社はヘッドフォンだけでなく、コンシューマ/ビジネス用のドローンや、植物に必要な水分や温度などを管理する“スマート植木鉢”「Parrot Pot」など、多くのユニークな製品を手掛ける企業でもある。

 ヘッドフォン/イヤフォン製品に限らず、あるヒットモデル/ブランドが登場すると、他社からも“何となく似たデザイン”が登場するということは珍しくないが、Zikは3世代に渡って少しずつ形状を変えながらも、ソリッドな質感のヘッドバンド部や、ソフトなハウジングの表面仕上げなど、他社製品とすぐ見分けが付く独自のデザインを継承しているのも特徴。

 最新ヘッドフォンである「Parrot Zik 3」の進化のポイントや、同社の製品開発に対する考え方などを、JPAC地域担当バイス・プレジデント兼マネージング・ディレクターを務めるクリス・ロバーツ氏に聞いた(以下敬称略)。

Parrot Zik 3

NC機能やワイヤレス給電など、第3世代で変わったポイント

――Zikシリーズの特徴と、Zik 3が進化したポイントを教えてください。

ロバーツ:Zikの特徴は、見た目が美しく、豊富な機能が盛り込まれており、直感的に操作できることです。先端のスマートデバイスであるスマートフォン/タブレット/スマートウォッチと連携するよう設計されています。

Zik 3は、新しいヘッドバンドが特徴的です。今までに比べて幅が広く、柔軟性があり、装着時の快適性も上がりました。デザインや肌触りも改善され、クロコダイル調とステッチ柄、レザー調の8種類を用意し、あらゆる好みに対応できる品ぞろえになりました。

改良されたヘッドバンドを採用

独自のデザインとカラーで合計8種類を用意

 もう一つ、新たなイノベーションは「ワイヤレス充電」です。オプションの「Wireless Charger 」(7,500円)をパソコンなどにUSB接続して、Zik 3を上に置くと自動で充電を開始します。

別売の専用パッドにヘッドフォンを置くだけで充電ができる

――ノイズキャンセリング(NC)機能は、どのように変わりましたか?

ロバーツ:第1世代のZikは、単にノイズキャンセリングのON/OFFを選ぶだけでしたが、前モデルのZik 2.0で“適応型”のノイズキャンセリングに進化し、周囲の状況に合わせて「フライト」、「エコ」、「ノーマル」のモードから選べるようになりました。また、NCがONの状態でも周囲の音が聴こえやすくする「ストリートモード」も採用しています。

 さらに、今回のZik 3では「オートモード」に対応しました。適応型のNC機能という点では2.0と同じですが、用意されたモードが周囲の騒音に合わせて自動で適用されるようになりました。実際に自分で使ってみて「全く違う新たなレベルになった」と感じています。

NCがオートで適用される
外の音が聴こえるストリートモードに対応

――「ストリートモード」は、単にNCのレベルを弱めるのとは何が違いますか?

ロバーツ:ストリートモードでは、周囲の音をマイクで拾い、フィルターを通して聴こえるようにしています。そのため、外の音がよりクリーンに入ってくるようになっているのです。

――以前、第1世代モデルを使っていた時、NCの効果は実感しましたが、鼓膜への圧迫感が少し気になることがありました。

ロバーツ:第1世代ではON/OFFの切り替えしかできなかったため、“泡の中に閉じ込められたような圧迫感”があったと思います。それが2.0からは適応型のNCになり、レベルが調整できるようになりました。

――NCが進化した一方で、ドライバユニットには何か変更はありますか?

ロバーツ:ユニットは、ネオジウムマグネットを搭載した40mm径のユニットで変更はありません。オーディオ面の進化のほとんどはソフトウェア/アルゴリズムによる信号処理の部分で、それがParrotの強みとなっています。

――音場の広さを調整できる「コンサートホールエフェクト」や、イコライザの設定など、以前から豊富な機能をアプリに搭載していますが、アプリは、他社との協力などではなく自社で開発しているのですか?

ロバーツ:アプリはZikにとってメインのUIなので、自社で開発しています。ハードウェア/ソフトウェアと同じくらい重要なプロダクトです。

 アプリを使って音質調整などができるといたテクノロジーは重要です。ただ、最先端のイノベーションを採り入れながらも、シンプルに使えることと美しいデザインも大切です。そのため、Zik 3本体のハウジングにはタッチ操作を導入し、ハードウェアのボタンがいくつも並ばないようなデザインに仕上げています。


コンサートホールエフェクトの設定
著名なアーティストなどが設定したEQプリセットを適用できる

イコライザの設定
耳から外すと再生が一時停止する

USBデジタル接続で、家でも使えるヘッドフォンに

――新機能のUSBデジタル接続を使ってみたところ、ヘッドフォンそのものの実力が良く分かる、ワイドレンジな良い音が出たように感じました。今回、USB接続を採用したのはなぜですか?

パソコンとのUSBデジタル接続に対応

ロバーツ:ヘッドフォンは持ち歩いて使う製品ですが、PCやMacで映画やビデオを観たいというニーズに応え、(バーチャル)5.1chに対応するためだったというのが一番の理由です。

 USB接続の話からは離れますが、これまでの製品のユーザーからのフィードバックでは、(スマートフォンなどの)ポータブルデバイスでビデオを観たいというニーズがありました。動画を見たときにもより良い体験を求める人が多かったのです。

――今回のZik 3が、フィリップ・スタルク氏とコラボレーションした5つ目の製品(スピーカーのZikmu/Zikmu Soloや、Zik/Zik 2に続く)とのことですが、その過程で、Parrotにとっての「良い音」の定義は変わりましたか?

ロバーツ:弊社のサウンドエンジニアと、これまで長い時間を掛けて音質を追求してきました。特に信号処理については限界に挑戦し、それがZik 3として結実したと思います。それでも、サウンドエンジニアは絶えず“次の課題”を追い求めています。

――新製品が登場したばかりのタイミングですが、具体的に次の課題が見えているということですか?

ロバーツ:今回、Zik 3という“未来の製品”が登場したわけですが、音やデザイン、機能、使いやすさという基本領域については、常にイノベーションを進める可能性を探しています。

――ヘッドフォンだけでなく、イヤフォンを作るという計画はありますか?

ロバーツ:2015年のCESで「Zik Sport」というコンセプトモデル(心拍センサー内蔵のイヤフォン)を出展しました。スポーツ用の製品というのも進化の可能性の一つです。ただ、今のところZik Sportの発売予定はありません。

コンセプトモデルのZik Sport

「他社のマネをしない、新たな市場を作る」ことが可能な理由

――Parrotという会社は、ヘッドフォンにしても、ドローンにしても、一つのカテゴリにおいて多くのモデルをラインナップするというよりは、一つの製品をより進化させていくことが得意のように見えます。製品の数やバリエーションは意図的に絞っているのでしょうか?

ロバーツ:我々は、コネクテッド製品(ヘッドフォンなどBluetoothでスマホとつながる機器)も、ドローンも、常にイノベーションを導入していくことと同様に、使いやすさ、デザインも重視しています。他社のマネをした製品を出すという考えは全く持っていません。デザインにしても、アプリで聴きたい音をテーラリング(個人の好みに合わせられる)できることにしても、独自のビジョンに基づいて製品を作っています。ですので、何十種類ものヘッドフォンを市場に出すようなアプローチにはなりません。

 我々は「新しいカテゴリ、マーケットを作っていく」というアプローチをとっています。例えばドローンについても、“コンシューマ向けドローン”というカテゴリを新たに作り、AR.Drone、MiniDrone、そしてBebop Droneへと進化してきました。絶えず新しいカテゴリ、新しいマーケット作りにチャレンジしています。

――「他社のマネをしない」とのことですが、それを可能にしている要素は何だと考えていますか? 人材でしょうか? それとも、そういった社風があるのでしょうか?

ロバーツ:両方のコンビネーションだと考えます。グループで従業員は約1,000人いて、その半分が研究開発部門に携わっています。会社としての研究開発投資額は、売上高の23%です。ここまで比率が高い会社は、かなり珍しいのではないでしょうか。

 そして、「会社のDNAの一部に、イノベーションが元から組み込まれている」といっていいと思います。創業者のアンリ・セイドゥもそういったビジョンを持っており、エンジニアも同様です。今までとは違うもの、使いやすく、シンプルでデザインも良いものを作ろうという精神が、会社の隅々まで浸透しているのです。

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(中林暁)