トピック
重低音ヘッドフォン注目機種を一気に聴く:前編
【オーテク/beats】。SOLID BASS投入の裏側
(2013/7/2 11:00)
街中で目にする機会が多くなったヘッドフォン。中でも目を引くのは、形状的な無骨さや、鮮やかなカラーリング&大胆なデザインで個性を主張し、サウンド面では特に重低音の再生を重視したヘッドフォン達だ。
例を挙げると、beats by dr.dreの製品や、オーディオテクニカのSOLID BASSシリーズ、まるでタイヤのようなキングサイズのイヤーパッドが話題となったソニーのXB(EXTRA BASS)シリーズ「XB700」、「XB1000」などだろう。
人気がある一方、デザインが個性的で、低価格なモデルが多いこともあり、好き嫌いが別れるジャンルでもある。また、製品が増加する事で、多様性も生まれている。
そこで、各社の重低音ヘッドフォンから、代表的なモデルをチョイス。音質を一挙に紹介すると共に、各社がこうした市場をどのようにとらえているかも調査。“これからの重低音ヘッドフォン”を前後編に分けて探ってみたい。
重低音ヘッドフォン市場の動向
デザインに特徴があり、重低音再生をウリにしたヘッドフォンブームは、日本よりも海外で先行して盛り上がりを見せた。例えば、各国のヘッドフォン・イヤフォン市場において、ヘッドフォンが占める割合は、2010年頃から上昇。ソニーによれば、2012年にはアメリカで約55%、欧州では約62%と、過半数を超えているという。
こうしたムーブメントの原動力となったのが、beats by dr.dreやSOUL by Ludacrisのような、ファッション性が高く、有名ミュージシャンがプロデュースなどを行なっている製品だ。イヤフォンでもカラフルなケーブルを採用するなど、音質だけでなく、ヘッドフォン/イヤフォンをファッションアイテムの1つとして捉えるムーブメントと言い換える事もできるだろう。
beats by dr.dreなどの海外メーカー製品が日本市場にも登場する一方で、オーディオテクニカなどの国内メーカーも、個性的なデザインと、低音再生能力を高めた製品群を投入。デザイン性・音質が磨かれる一方で、価格帯も多岐に渡るようになり、1万円を超える高価なモデルも増加。今年の前半で、ヘッドフォン市場全体における“重低音ヘッドフォン”の割合は、金額ベースで約9%を占める市場に成長している。
製品数が増加し、多様化していく事で、徐々に“重低音ヘッドフォン”と、ひとくくりにしにくい状態にもなっている。例えば、JVCが5月から発売しているヘッドフォン「HA-SZ2000」(オープンプライス/実売35,000円前後)、「HA-SZ1000」(同25,000円前後)は、55mm径の重低音用のユニットと、30mm径の中高音用ユニットの2基をハウジングに内蔵。55mmユニットから重低音だけを取り出す「ライブビートシステム」を搭載しているのが特徴だ。
無骨な外観の大型ヘッドフォンで、重低音再生機能に特徴があるので“重低音ヘッドフォン”とくくりたくなるが、決して重低音再生のみを追求しているのではなく、あくまでハイファイのワイドレンジ再生を追求。そのために必要な機構として、「ライブビートシステム」を導入している。ピュアオーディオ向け高級ヘッドフォンだが、重低音のトレンドも取り入れた製品と捉える事もできるだろう。こうした動きは、市場の成熟を感じさせるものだ。
逆に言えば、各社が考える“重低音ヘッドフォン”というカテゴリ自体に、そのメーカーの考え方やメッセージが含まれるようになってきたとも言えるだろう。
オーディオテクニカに聞く市場の動向
2009年6月に「SOLIDBASS」の第1弾モデルを投入するなど、国内メーカーの中でも、率先して重低音ヘッドフォン/イヤフォンを投入し、このカテゴリを牽引してきたのがオーディオテクニカだ。そこで、SOLID BASSシリーズを投入した経緯や、それによってどのような反響があったのか? そして、このジャンルをどう見ているのか伺った。
【 Q.1:SOLID BASSシリーズを投入した経緯と、その反響】
SOLID BASSを企画した段階では、一部のDJ用ヘッドフォンなどを除いて、まだ市場に重低音ヘッドフォンジャンルは確立されていませんでした。特にインナーイヤー型のイヤフォンは、小型であるという特長故に「低域が弱い」と見なされがちでした。
しかしその頃は、音楽のソース自体が全体的に重低音に寄った作りにシフトしつつある時期でしたから、「『インナーイヤーでも低域が鳴る』製品ができたらニーズがあるのではないか」という声が社内であがり、SOLID BASSシリーズの最初のモデルATH-CKS50/70が誕生することになりました。
実際に製品を市場に投入してみると思った以上の反響があり、同業各社からも「重低音ヘッドフォン」モデルが多く発売され、「重低音ヘッドフォン」は瞬く間に市場の一角を占めるまでになりました。
SOLID BASSシリーズも市場のニーズに合わせて次々とライナップを拡充し、2013年現在では、購入者の属性もより一層多様になっています。当初想定された20代~30代の男性よりも年上・年下はもちろん、女性も増えています。重低音ヘッドフォンは今や、「流行」というよりは「普通に」選ばれるヘッドフォンになりつつあるといっても過言ではないのかもしれません。
当社のヘッドフォンは、100種を超えるラインナップがありますが、SOLID BASSシリーズは、エントリーモデルからフラッグシップまでフルラインでそろっている主力シリーズの1つになります。最近では、スマートフォン対応モデルやBluetoothヘッドセットモデルと、更にバリエーションも豊かになって、様々なニーズに対応しています。
各社の代表的なモデルを試聴
オーディオテクニカ:SOLID BASS
2009年に、重低音再生を掲げて「SOLID BASS」シリーズを展開したオーディオテクニカ。その名の通り、ソリッドな重低音再生と、それを象徴するようなデザインのイヤフォン/ヘッドフォンを継続的に投入。同社の定番シリーズへと成長している。
現在のラインナップは、イヤフォンが「ATH-CKS55X」、「ATH-CKS77X」、「ATH-CKS99」、「ATH-CKS1000」の4モデル。ヘッドフォンが「ATH-WS33X」、「ATH-WS55X」、「ATH-WS77」、「ATH-WS99」の4モデルだ。この中から注目モデルをピックアップする。
なお、再生曲は低域に迫力がある「Yes/Roundabout」などを使用している。
5,040円と、シリーズのイヤフォンの中で最も低価格なモデル。ダイナミック型ユニットの口径も12.5mmで、それほど大口径ではない。複雑な形状のハウジングは、どちらかというと細身だが、通常のハウジングとは別に、突起のようなもう一つの空気室「エクストラチャンバーメカニズム」を設けているのが特徴。これにより、価格やユニット径からは想像できないほど音圧が豊かなイヤフォンだ。
獣の咆哮を連想させるような、中低域の張り出しは強烈の一言。全てを覆い尽くすようなパワー感に満ちあふれている。だが、この中低域のパワーの中でも、高域が埋もれず、キッチリと突き抜けて耳に届いて驚かされる。結果として、若干のこもりは感じられるが、必要な低域、中域、高域はキッチリ聴き取れる、“重低音イヤフォンのお手本”的なサウンドだ。
後述する上位モデルと比べると、低域の絶対的な沈み込みや量感は1歩後退するが、逆にそれが高域とのバランスの良さに寄与しているとも感じる。
重低音イヤフォン選びで難しいのは、試聴しながら「これは派手過ぎる」とか「重低音が主張し過ぎだ」という“冷静な評価”で取捨選択していくと、結局のところ重低音モデルでもなんでもない、普通のイヤフォン/ヘッドフォンに戻ってしまう事だ。
その点、CKS55Xは、低域のパワフルさが“強烈”なレベルで楽しめる一方で、全体としては奇妙なほどにバランスがとれ、“つじつま”が合っているのがユニーク。個人的に一番好みだ。価格が抑えられている事もあり、“いつもと違うイヤフォンが欲しい”、“どうせ重低音イヤフォンを買うなら思い切ってパワフルなものを”というニーズにマッチするモデルだろう。
CKS55Xの上位モデル「CKS77X」 にも、エクストラチャンバーメカニズムが搭載されている。77Xではこの空気室に、無垢のアルミニウムを切削したものを採用。不要振動を抑制している。また、ユニットは12.5mm径で同サイズだが、CKS77Xでは、精密なプレス加工を行なう事で、マグネットの磁束密度を向上させた専用設計のドライバを採用した。
空気室にアルミが使われているので、「55Xよりも低域はタイトで大人しくなるのかな?」と思いきや、むしろよりパワフルになる。同時に、その中低域に負けないよう、高域のエッジが際立ち、華やかで派手目なサウンドになっている。
高域のこもりは55Xよりやや強く、まるで地下のライブハウスで、重い低音を浴びるような気持ちよさがある。このマグマのような中低域から、意地でも抜け出そうと高域が切り込む。まるで取っ組み合いのようなせめぎ合いをしているのに、最終的には高音も中音も低音も耳に届くバランスは維持されているという、ある意味凄いモデルだ。だが、心地は良いものの、長時間聴いているとエッジの効いた高域が耳に残り、若干疲れてくる。
SOLID BASSイヤフォンの最上位。空気室を追加しているのはCKS77X/55Xと同じだが、空気室に低域の特性を改善するアルミニウム素材を2つ配置したDUAL AR(デュアルアコースティックレジスター)機構を備えているのが特徴だ。ユニットは専用設計の13mm径。ユニットの土台となるヨークに純鉄を使用することで効率よく磁気を伝達しているという。
派手なサウンドだったCKS77Xと比べると、非常に興味深いサウンド。パワフルな77Xに、奥行きを加え、立体的な深みを加味したような音作りで、「派手さ」や「強烈さ」は十分あるのだが、その奥にあるものが見え始める。ベースであれば、量感だけでなく、うねりの様子が描写されており、やんちゃぶりだけでなく、大人の余裕も垣間見えるサウンドだ。
中低域の量感も、パワフルさを残しながらも適度に制御され、結果として低域の細かな描写がわかりやすい。高域のエッジ強調も控えられ、再生音に自然さがある。打ち込み系楽曲をキビキビ再生するだけでなく、JAZZのアコースティックベースをゆったり再生できるなど、得意とする楽曲にも幅が出てくる。重低音を楽しみたい時だけでなく、常用できる“懐の深さ”が最上位モデルのウリといえるだろう。
イヤフォンと同様に、専用の空気室を設けて低域拡張する「エクストラチャンバーメカニズム」を採用した、SOLID BASSヘッドフォンのエントリーモデル。専用設計の40mmドライバを搭載しているが、ハウジングは小ぶりで、オンイヤー型と言っていいだろう。折りたたみ可能なスイーベル機構も備えている。
ブラック、レッド、ホワイトの3色展開で、レッドが特にインパクトがある。素材はプラスチックで、ハウジングの中央には光沢仕上げの樹脂製ロゴマークのパーツを配置。デザインはシンプルで上質だが、触れるとプラスチックの質感が伝わるのでやや安っぽく感じる。価格を考えると仕方のない部分だろう。
元気が良く、全体的に明るいサウンド。爽快ではあるが、SOLID BASSを名乗るのであれば、もう少し低音に沈み込みの深さと、量感が欲しいところ。トランジェントは良く、ビートのトストスと切れ込むような感覚が心地良い。圧倒されるような迫力よりも、抜けの良い、軽やかなサウンドを求める人にはマッチするモデルだろう。中高域のエッジは立っているので、音楽の描写も聴き取りやすい。これがキーポイントとなり、低価格なイヤフォンではあるが安っぽい音にはなっていない。
WS33Xと同じく、エクストラチャンバーメカニズムを採用。ユニット口径は53mmになり、カラーはブラックとブラックレッドの2色。ハウジングが大きいアラウンドイヤー型なので装着時の耳への負担は少ない。ハウジングの折りたたみも可能だ。素材はプラスチックだが、ハウジングのエンブレム部分はアルミを使用している。
WS33Xとの価格差は約4,000円だが、ユニットが大型になり、空気室も大きいため、低音の再生能力は大幅に向上。大口径だけあり、凄みのある低域で、ベースの「ズーン」と響くような余韻が心地良い。同時に、エッジの効いた高域も気持よく切り込んで来て、全体としてはウェルバランスにまとまっている。
細かく聴いていくと、高域は綺羅びやかではあるが描写が若干平面的で、しなやかさなど、表現に幅が欲しいと感じる。また、最低音と高域のエッジが目立つ一方で、中低域の量感は乏しく、低域は確かに低い音が出ているのだが、全体の音圧はそれほど高くなく、どこかスカスカした感じもある。ただ、それがある種の“軽やかさ”を生んでおり、低域を美味しく楽しみつつも、スッキリとしたサウンドが楽しめる。1万円を切る価格を考えると、低音に迫力が欲しいというニーズを満たしつつ、完成度の高さも印象に残るモデルだ。
最上位のWS99は、追加の空気室を設け、ユニット口径も53mmとWS55Xと似た仕様だが、流石に価格に倍以上の開きがあるため、音質はかなり異なる。顕著な違いは、音の質感と立体感だ。
下位モデルと比べると表現力があり、例えばエレキベースも単に「ズシーン」、「ヴォーン」と中低域が唸るだけでなく、それを引き起こしている弦のブルンという震えが見えるような細かさがある。これはヴォーカルやコーラスにも共通しており、音像にリアリティがあり、空間の中に存在している立体感も増す。また、音場にそれらの音像が距離を置いて定位し、音像の間に無音の部分もしっかり存在している。空間描写がシッカリしている事で、音楽の立体感も強く感じられるようになる。
低域も、余韻が深く、弾力性があり、味わい深い。WS99を聴いた直後にWS55Xを装着すると“音が軽い”と感じるのが面白い。高域はクリアだが、下位モデルのようにエッジを立たせて強調するというよりも、しなやかさ、質感も描き出して立体感を出す事で、結果として聴き取りやすく、音楽の表情がわかりやすくなっている。
ハウジングには切削アルミニウムを使っており、不要振動を低減。これが、中低域のキレの良さやSNの良さに繋がり、ひいては、余分な響きに邪魔されず、情報量の多い低域描写を実現していると言えそうだ。側圧は下位モデルよりもソフトだ。
このように、価格なりに音質のクオリティは高い。だが、逆に「優等生過ぎる」と感じる人もいるかもしれない。“適度な奔放ぶり“を楽しむなら「WS55X」も魅力的な選択肢だ。
完実電機:beats by dr.dre
ヒップホップ・ミュージックで活躍するアーティスト・プロデューサー、Dr.Dre氏と、レディー・ガガやU2、エミネムなどのトップアーティストが所属するインタースコープレコードの社長、ジミー・アイオヴィン氏が2006年に設立したのがbeats。個性的なbeats シリーズのヒットで、米国を代表するヘッドフォンブランドに成長している。
beats by dr.dreの定番と言えるモデルで、スタリッシュなデザインとコンパクトさが特徴。ブラック、ホワイトもあるが「Product RED」がトレードカラーと言っていいだろう。密閉ダイナミック型で、振動板はチタン加工だ。
コンパクトなだけあり、約186gと軽量。外観はピアノ仕上げで型軽量ヘッドフォンにありがちな“チープさ”は無い。装着すると側圧は強めで、ホールドは強固。このシッカリした耳との接触が低音再生のキモだろう。ハウジングは小型でオンイヤーサイズなので、延々と何時間も装着するタイプではないだろう。
個人的なイメージだが、まさに「beats by dr.dre」というサウンド。中低域の張り出しが強く、ベースがズシンと落ちると言うより、「ヴォーン」と唸りを上げ、空間に充満する。地下の狭いライヴスペースで、大音量で激しい演奏を聴いているような“空間全体のパワー”が凄い。純粋な低音の沈み込みはそれほどでもなく、“重低音を聴かせる”というより“重低音風に感じる中低域が思いっきり張り出す”タイプ。わかりやすいキャラクターだが、音作りは巧みだ。
ピュアオーディオ系ヘッドフォンでの指標となる音場の広がりはあまり無く、強い音が次々と強烈なパンチを繰り出してくるイメージだ。特筆すべきは、これだけ中低域がパワフルなのに、全体としてバランスが崩壊していないところ。チタン化加工された振動板による中高域は、エッジを立たせ、独特の綺羅びやかさがあり、「ヴォーン」と唸る中低域の渦から、負けじと強い高域が飛び出してくる。
これにより、音自体は若干こもりがちではあるが、それを感じさせない爽快感を獲得している。“暴れん坊”のように見せているが、“よく考えられた暴れん坊”だ。3分30秒頃からのギターソロにコーラスやドラム&パーカッションが重なる部分。ギターのマグマのような熱気と、エッジの立ったコーラスが心地良い。厳密な事を言うと、パワフル過ぎて、ドラムやパーカッションが後ろで何をしているのかは見えにくいが「細かい事はどうでもいいや」と言いたくなる心地よさが持ち味だ。
フリップアップ式のハウジングを採用したDJ用ヘッドフォン。'11年より販売されているが、人気ラッパーLil Wayne(リル・ウェイン)のシグネチャーモデルである新色Red Blackが新たに追加された。
プロ向けとして耐久性を重視しているためか、金属パーツが多く使われており、剛性や質感は高い。その結果、重量は約400gと重め。側圧も強く、強固なホールドに安心感があり、アラウンドイヤーなので耳への負担は少ないが、この重さなので長時間使用するタイプの製品ではないだろう。
プロ向けとされるだけあり、独特のキャラクターを持っているsolo HDと比べると、非常に素直なサウンド。低域は量感を追うよりも、沈み込みを重視しており、中高域もクリア。solo HDと比べると、外見とは裏腹にオーソドックスな印象を受けるサウンドだ。
しかし、細かく聴くと、中低域や高域のエッジが強調されているのはsolo HDと同じで、低域のベースラインや、コーラスの高音などの輪郭が極めてわかりやすい。カリカリ描写が心地良く、音量をアップすると独特の高揚感が得られる。DJ用らしく、ビートが聴き取りやすく、切れ味が良い。
音場は広くなく、“必要な音を聴き取りやすく届ける”音作りだと実感できる。簡単に言うと「音が派手目なモニターヘッドフォン」だ。ガツンと来るパワフルさが欲しいけれど、抜けの良い高域や全体の解像度の高さも維持して欲しいというニーズにマッチする。独特の機能として、ケーブルが着脱式で、左右のハウジングにプラグを用意。片方にケーブルを接続すると、反対側は出力に切り替わり、デイジーチェーンで複数のヘッドフォンを接続できる。
ハウジングに設けられたロゴマークのインパクトが強いカナル型イヤフォン。曲線を用い、光沢のあるハウジングにはエレガントさもある。beats by dr.dreの代表的なカナル型イヤフォンが「Tour」だ。カラーはブラックとホワイト。
ダイナミック型のオーソドックスなイヤフォンと言えるが、これがなかなの実力者。デザインだけ見ると「低音ブイブイ言わせるぜ!」という見た目で、確かに低域がパワフルなバランスなのだが、適度に締まりがあり、中低域が不必要に膨らまない。そのため、中高域もクリアで抜けも抜群。さらには解像度の高さまで感じさせてくれる。聴いていると、試聴だという事を忘れてついつい足でリズムを刻んでしまう。「低音だけのイヤフォン」ではまったくなく、確かな実力を備えたイヤフォンだ。ヒップホップやロックなどを“濃い目”に再生できるだけでなく、その他の音楽にも幅広く対応できるだろう。
ハウジングが小ぶりなので、音場は狭目だが、変に空間描写を広げてボワンボワンな音になるより、直接的でクリアなサウンドをストレートに描写する音作りに好感が持てる。普段BAイヤフォンを使っているという人が、厚みのある、ダイナミック型ならではのサウンドを楽しみたいというニーズにもマッチするだろう。ダイナミックの良さをキッチリ生かした優等生モデルだ。