トピック

BD買ってGoogle Play/niconicoで視聴。ディズニーが開始した「MovieNEX」を試す

モンスターズ・ユニバーシティMovieNEX
2013 Disney/Pixar

 11月20日にウォルト・ディズニー・ジャパンから発売されたBD/DVDソフト「モンスターズ・ユニバーシティMovieNEX」は、パッケージソフトとネットでの動画配信を組み合わせた、新しいソフトの形態だ。今後も12月18日発売の「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズや、2014年1月15日発売の「ローン・レンジャー」など、この形態でのソフトが続々と発売される予定だ。

 そこで、実際に「モンスターズ・ユニバーシティMovieNEX」を購入。どのようにネット経由での動画再生を行なうかなどを体験してみた。

MovieNEXとは何か

 “MovieNEX”という名前だけを聴くと、それが何なのかわからないが、パッケージを開けてみるとよくわかる。「モンスターズ・ユニバーシティ」には本編のBlu-rayとDVD、さらに「Magicコード」という文字が書かれた紙が1枚入っている。このコードが、オンラインでの動画配信を利用するために必要となる。

 従来のBD/DVDでは、iPhoneやAndroidスマートフォンなどに転送できる本編ファイルを収録した、デジタルコピー用DVDがオマケとして付属する作品があった。MovieNEXは、そのデジタルコピー部分を、オンラインで行なうようにしたものと考えるとわかりやすいだろう。

 ユニークなのは、商品の種類が基本的には「BD+DVD+Magicコード」という1つにまとめられている事だ。例えば「モンスターズ・ユニバーシティ」の場合、「BD+Magicコード」、「DVD+Magicコード」というバージョンは無い。

 このMovieNEX版に、Blu-ray 3D版のBDと、映画に登場するキッズマイクのぬぐるみやアートブックなどの特典を追加した「モンスターズ・ユニバーシティ コンプリート・ボックス」という商品がオンラインで限定1,000セット販売されているので厳密には2種類の商品があるわけだが、BD版、DVD版などがわかれていた従来の大作タイトルのパッケージと比べると、ギュッと種類が整理・集約された印象がある。

 消費者のメリットについてディズニーは、MovieNEXの発表会において、MovieNEXを用いてオンラインでより豊富かつ、リアルタイム性もある特典コンテンツや情報を提供できる事や、購入時にソフトの種類が大すぎて迷わなくて済む事をアピール。販売店に向けては、複数の商品バリエーションごとに売れ行きを予想し、メーカーに発注しなければならない手間や、在庫管理の負担を軽減できる事。廉価バージョンなどは予定していないため、「欲しいけれど低価格版Blu-rayが出る気がするので待とうかな」という消費者の“買い控え”も防げる事などを挙げている。

MovieNEX CLUBにアクセス

 では実際にパッケージを開封してみよう。前述の通り、本編BDと特典映像を収録したBD、本編DVD、さらにMagicコードが書かれた紙が入っている。このコードを使って、オンラインで提供される各種サービスが利用できるわけだ。

パッケージを開けたところ。本編・特典BD、本編DVD、さらにMagicコードが書かれた紙が入っている

 オンラインの話の前に、特典BDも付属している点に注目。MovieNEXにより、オンラインで本編や特典が提供されても、ディスクに特典映像が収録されないわけではない。ネット環境が無い人や、特典映像を大画面で楽しみたいというニーズにも引き続き対応している。

 Magicコードの書かれた紙には、MovieNEXへのアクセス方法も記載されており、それに添ってPCのブラウザから「http://movienex.jp/mu」にアクセス。まずは、「Disney.jpメンバー」への会員登録が必要。メールアドレスや性別、パスワードなどを入力。登録が完了すると、「MovieNEX CLUB」というページにアクセスできる。

MovieNEXのページから会員登録を行なう

 表示されているのは「マイワールド」というページで、ここにBD/DVDを購入した作品が表示されるようだ。今はまだMagicコードを入力していないので、作品が無い。ウェルカム・プレゼントとして、「さくらんぼの育て方~『ディズニー・フェアリーズ』」という短編作品が用意されており、ブラウザでそのまま再生できる。

「マイワールド」ページ。コードを登録していないのでモンスターズ・ユニバーシティは見られないが、短編作品が用意されていた

 次に、画面の右上に用意された枠に、Magicコードを入力してみる。すると、「以下のMagicコードを登録しました。『モンスターズ・ユニバーシティ MovieNEX』」と表示される。これで、自分のIDに、「モンスターズ・ユニバーシティ MovieNEX」を購入した事が登録されたわけだ。

Magicコードを入力してみる
モンスターズ・ユニバーシティが登録された

 画面を閉じると、自動的に「MovieNEX CLUB」の中にある「モンスターズ・ユニバーシティ」のページが表示される。中には「THEATRE」(シアター)、「SOUVENIR」(スーベニア)というコーナーが設けられており、THEATREではデジタルコピーの本編、ジョン・ラセターさんの特別インタビュー×4本、監督とプロデューサーが来日した際の記者会見Q&A映像、「限定メイキング:モンスターたちの大学生活」、「『モンスターズ・ユニバーシティ』キャンパス・ツアー~マイクを描こう!」、「“ロアー”フロム『モンスターズ・ユニバーシティ』ミュージック・クリップ」が用意されている(11月29日現在)。

「MovieNEX CLUB」にて、様々な特典コンテンツが再生できる

 どうやら特典BDに入っている特典映像と同じものがオンラインにアップされているわけではなく、オンラインだけで楽しめるコンテンツが揃っているようだ。先程のショートムービー同様、これらの特典も、クリックすればブラウザ上で鑑賞できる。

 また、Magicコードの入力を行なった際、「スター」と呼ばれるポイントがIDに1個付与された。これを一定数貯めて使うことで、特別な動画やピクチャーアートなどが取得できるほか、新作映画の鑑賞券プレゼントに応募できるなどの企画も用意されている。

PC・スマホ・タブレットで再生テスト

 ではいよいよ本編のデジタルコピーを再生してみよう。「『モンスターズ・ユニバーシティ』デジタルコピー(クラウド対応)」を選択すると、視聴に利用できるプラットフォームが2つある事が表示される。1つはGoogle Play(YouTube)、もう1つはniconicoだ。ここから、利用したい方のプラットフォームを選択するようだ。

 ここで注意が必要なのは、Google Play(YouTube)とnconico、両方のプラットフォームは選べない事。どちらか1つを選ぶ事になる。つまり、niconicoで本編を見ると決めたら、YouTubeでは見られないという事だ。どちらにすれば良いのか悩ましいところだが、同じページにプラットフォームによる機能差が記載されている。これを参考にすると良さそうだ。

プラットフォーム選択の説明
プラットフォームを選択する画面
プラットフォームiOSMac OSAndroidWindows
Google Playストリーミング
(Google Playで登録後
YouTubeアプリで視聴)
吹き替え版
無線LAN環境が必要
ストリーミング
(Google Playで登録後
ブラウザでYouTube視聴)
吹き替え版
ダウンロード
&
ストリーミング
(Google Playで登録後
Playムービーアプリで視聴
吹き替え版
ストリーミング
(Google Playで登録後
ブラウザでYouTube視聴)

吹き替え版
niconicoストリーミング
(niconicoデジタルコピー
専用アプリniconicoDRMで視聴)
吹き替え版
字幕版
ストリーミング
(ブラウザで視聴)
吹き替え版
字幕版
ストリーミング
(niconicoデジタルコピー
専用アプリniconicoDRMで視聴)
吹き替え版
字幕版
ストリーミング
(ブラウザで視聴)
吹き替え版
字幕版

 かなり複雑だが、ポイントとしてはストリーミング視聴が基本。ダウンロードできるのは、プラットフォームでGoogle Playを選び、Android端末を利用した時のみのようだ。niconicoを選んだ場合は、iOS/Android端末では「niconicoDRM」という専用アプリを使い、ストリーミングで視聴する。配信コンテンツの違いとして、Google Playは全て吹き替え版、niconicoでは吹き替えと字幕が選べる。

 選択できるのが1つのプラットフォームしかないため、悩ましいが、ダウンロードできるのがGoogle Play+Androidのみであるため、今回はGoogle Playを選んでみた。なお、デジタルコピー本編取得の登録期限は、Google Playで2015年11月19日まで、niconicoで2018年11月19日までと注意書きされている。

 本編の取得ボタンを押すと、デジタルコピー用のページに移動。そこでGoogle Playかniconicoを選択する。Google Playを選択すると、ブラウザのタブが新たに開き、Google Playに移動。Google PlayのIDは既に持っていたので、そのIDに対して、モンスターズ・ユニバーシティを紐付けるか? と聞かれる。「今すぐ追加」をすれば、登録完了。後は、Google Playで映画を購入した時のように、「映画&テレビ」の「マイムービー&テレビ」欄に「モンスターズ・ユニバーシティ」が追加された。

Googleのアカウントに、「モンスターズ・ユニバーシティ」が購入した映像コンテンツとして追加された

 あとは「見る」を選べば、そのままブラウザ上でストリーミング再生がスタート。解像度は480pよりはあるようだが、さほど高精細ではなく、PCの24型ディスプレイで全画面表示すると甘さが目立つ。ウインドウ表示が良いだろう。マイクなど、毛がフサフサしたモンスターが登場すると、毛並みがベタッと潰れて、ビットレートや解像度の不足を感じさせるが、それが気になって鑑賞できないというほどではない。デスクトップの片隅に表示させて、“ながら見”するような使い方にはマッチするだろう。

購入済み動画として、ブラウザ上で本編が再生できる

 同じGoogleのアカウントでログインしているスマートフォン(xperia Z1)と、iriverの7型タブレット「ITQ701 WOW」を確認してみると、Google Playの項目に、「モンスターズ・ユニバーシティ」がしっかり追加されていた。どちらもAndroid端末なので、端末へのダウンロードが可能。再生画面の右端にあるピンのようなアイコンを押すと、ダウンロードがスタートする。

同じGoogleアカウントでログインしているスマートフォン、タブレットにも「モンスターズ・ユニバーシティ」が即座に反映された
スマートフォンの再生メニュー画面。見にくいが、右端にあるピンのアイコンを押すと、ダウンロードスタート。赤い印が円を描くように進行していき、赤い円が完成するとダウンロード完了となる

 PCよりは画面の小さなスマートフォン/タブレットで鑑賞すると、PCの時よりはアラが目立たない。どちらかと言うとより画面の小さなスマートフォンの方が綺麗に見える。これだけの画質で楽しめれば、会社の行き帰りなどにリッチな気分で映画が楽しめるだろう。ダウンロードもできるので、オフラインで再生できるのはモバイル端末にとって重要だ。

スマートフォンで再生しているところ
タブレットで再生しているところ

便利だが、複雑さが難点

 Google Playへのデジタルコピー登録を行なった後、再度「MovieNEX CLUB」に戻り、niconicoのプラットフォームを選択してみたが、「認証コードは既に登録されています」という旨のメッセージが表示され、プラットフォームを変更する事はできなかった。

 なお、今回は試せていないが、既報の通りドワンゴによれば、niconicoを選んだ場合、映画の本編にコメントなどは表示されないという。コメント表示はniconicoならではの機能であるため、対応してくれれば、niconicoプラットフォームを選ぶ理由にはなると思うが、現時点ではダウンロード取得がGoogle Playでなければできないため、niconicoを選ぶ動機が乏しいのが残念だ。逆に、将来的にコメント表示にも対応したら、そちらも楽しんでみたいと思うが、既にGoogle Playに登録してしまったので、私の場合はもう1枚BDを買ってこなければならない。技術的に難しいかもしれないが、プラットフォームの変更には対応して欲しいところだ。

 また、現在はAndroidのGoogle Playでのみダウンロードできるという仕様も不便だ。PCやiOSでもダウンロードしたいというニーズもあるだろうし、iTunes経由でiPhoneなどに本編映像を転送できるデジタルコピーDVDが付属していた従来のソフトと比べると、iOS機器ではオフライン再生ができなくなっているという機能の退化が起こっている。これはなんとかして欲しいポイントだ。Google Playを選ぶと、強制的に吹き替え版になるのもよくわからない。プラットフォームと利用する端末で、できること/できない事が異なり、仕様が複雑だ。PCやスマートフォンに詳しい人であれば大丈夫だろうが、BD/DVDを買う人全てがそうではない。特にディズニーのような、子供達も楽しむ作品を手がけているスタジオのサービスだと考えると、もう少し“わかりやすさ”が欲しいと感じる。

 ただ、今回Google PlayとAndroidスマホ/タブレットを使ったケースに関して言えば、デジタルコピー本編の取得を行なった瞬間に、PC、スマートフォン、タブレットの全てで作品のストリーミング再生が可能になるという便利さは確かに味わえた。PCからそれぞれの端末に動画ファイルを転送するというような手間も不要で、さらに言えば、PCが1スピンドルで、デジタルコピー用DVDを読み取るためのドライブが無くても利用できるのも良いポイントだ。

 MovieNEXが掲げる“様々な端末で本編が楽しめる”、“特典映像や作品に関する情報がオンラインならばどんどん更新できる”という、サービス全体の可能性の高さはシッカリと感じられる。今後は対応アプリ/プラットフォームのブラッシュアップにより、誰にも使いやすいサービスに進化して欲しい。

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(山崎健太郎)