DEG、グランプリ受賞BDは「ライフ・オブ・パイ」。ユーザー大賞はももクロのライブ盤

13日に行なわれたDEGジャパン・アワード/ブルーレイ大賞の授賞式

　映像コンテンツメーカーや機器メーカーが加盟するデジタル・エンターテイメント・グループ・ジャパン(DEGジャパン)は、優れたBlu-rayソフトを表彰する第6回「DEGジャパン・アワード/ブルーレイ大賞」の授賞式を13日に都内で開催。グランプリは「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日 4枚組コレクターズ・エディション(特製ブックレット付)」が受賞した。

　2013年1月1日～12月31日の間に国内で発売・販売されたBD作品の中から、高画質や高音質、高機能など、Blu-rayの特徴を活かした映像作品を表彰するもの。審査員は、AV評論家や映画/ビデオソフト専門誌編集長、機器メーカー代表らで構成。審査員による投票以外に、一般ユーザーからのWeb投票で決まる賞も用意する。

アンバサダーを務めた吉本美憂さんと竹中直人さん

　13日の授賞式には、DEGの“アンバサダー”を務める俳優の竹中直人さんと、吉本美憂さんも登場。第13回全日本国民的美少女グランプリを獲得した17歳の吉本さんが、若い世代にBDの魅力を伝える役割を担っていく。

洋画を東宝「ザ・マスター」、邦画をワーナー「許されざる者」が受賞

　「ベスト高画質賞」は、洋画、邦画、テレビドラマ、企画映像、アニメ(洋)、アニメ(邦)、アニメ(TV/その他)の各賞を用意。

　洋画部門は、ポール・トーマス・アンダーソン監督作の「ザ・マスター Blu-ray」(東宝)が受賞。先日、46歳という若さで亡くなったことが報じられたフィリップ・シーモア・ホフマンと、ホアキン・フェニックスが共演。DEGは「セリフではなく映像で語ろうとしている作品。70mmのラージフォーマットのフィルムで撮ることで効果がさらに上がっており、BDかつ大画面で観ることで伝わるものがある」と評している。

　邦画部門は、クリント・イーストウッド監督/主演作品を、李相日監督/渡辺謙主演でリメイクした「許されざる者」(ワーナー エンターテイメント ジャパン)。「舞台となる北海道の空気の冷たさをまざまざと感じ、そこに生きる人々の苦しみを追体験することができる非常に重厚感のある絵に仕上がっている。MGVC(MASTER GRADE VIDEO CODING)対応プレーヤーで再生すると色の艶やフォーカス感が増し、より魅力的な映像を楽しむことができるだろう」と評価した。

　ベスト高画質のTVドラマ部門を受賞したのは、HBO制作の「ゲーム・オブ・スローンズ 第一章：七王国戦記 ブルーレイ コンプリート・ボックス」。DEGは「よく作りこまれた衣装、世界中を舞台にしたロケ、映画並に細かな映像処理が施された仕上げの巧みさは、BD＆大画面で観ればその魅力を存分に味わえる」としている。

ザ・マスター Blu-ray

許されざる者

ゲーム・オブ・スローンズ 第一章：七王国戦記 ブルーレイ コンプリート・ボックス

NHKスペシャル 世界初撮影! 深海の超巨大イカ

　様々なジャンルの作品が競う企画映像部門は、'13年に“巨大イカ”ブームを巻き起こした「NHKスペシャル 世界初撮影! 深海の超巨大イカ」が、BBC制作の「ウォーキング with ダイナソー」や、水樹奈々のライブ映像「NANA MIZUKI LIVE GRACE -OPUSII-×UNION」を抑えて受賞した。「ダイオウイカの姿を生々しくかつ迫力たっぷりに捉えており、この未知の生物を長年追いかけてきた人々のドラマもしっかりと伝わってくる」としている。

テレビアニメ部門を新設。ユーザー大賞はももクロのライブ盤

アニメの海外作品のプレゼンターを務めた吉本美憂さん

　アニメ部門は、海外作品は「クルードさんちのはじめての冒険　2枚組ブルーレイ&DVD」、国内作品は「009 RE:CYBORG」がそれぞれ受賞。神山健治監督の009 RE:CYBORGは、MGVCによる階調の高さも特徴で、「作品の魅力を余すことなくパッケージに収めている」とした。

　アニメの海外作品のプレゼンターを務めたのは、今回アンバサダーに就任した吉本美憂さん。受賞した「クルードさんちのはじめての冒険」を観た吉本さんは「星空が一面に輝くシーンで一目ぼれしました。クルードさんの家族の一員になって冒険したくなりました」と感想を語った。

　アニメ部門の「TVその他」は、今回から新設されたカテゴリで、テレビアニメやOVAなどから選出。第1回は、NHKエンタープライズの「スノーマンとスノードッグ」が受賞。名作アニメの30年ぶりの新作で、パステル調の温かい画作りや、5.1ch化した音声なども評価された。なお、他のノミネートは「COPPELION」、「凪のあすから」の2作品。

クルードさんちのはじめての冒険　2枚組ブルーレイ&DVD

009 RE:CYBORG

スノーマンとスノードッグ

　「ベスト高音質賞」は、ハイレゾ音源を収めた「アントン・ブルックナー：交響曲第4.7.8番 ケント・ナガノ指揮・バイエルン国立管弦楽」(音楽部門のクラシック)と、スクウェア・エニックスのサントラ作品「Before Meteor FINAL FANTASY XIV Original Soundtrack 映像付サントラ/Blu-ray Disc Music」(音楽部門ポップス他)が受賞した。ベスト高画質の映像部門を受賞したのは、「007/スカイフォール 2枚組ブルーレイ&DVD」で、アクションの派手な音だけでなく、静かなシーンの緻密な音の構成なども高く評価された。

アントン・ブルックナー：交響曲第4.7.8番 ケント・ナガノ指揮・バイエルン国立管弦楽

Before Meteor FINAL FANTASY XIV Original Soundtrack 映像付サントラ/Blu-ray Disc Music

007/スカイフォール 2枚組ブルーレイ&DVD

ベスト高音質賞 クラシック部門のプレゼンターを務めたのは、三菱電機の佐藤岳氏

ソニーの金井隆氏も、ベスト高音質賞のプレゼンターを担当。「Before Meteor FINAL FANTASY XIV Original Soundtrack」について講評した

　映像/音声以外に、双方向機能などを評価する「ベストインタラクティビティ賞」は、スマートフォン/タブレット連携のセカンドスクリーン機能を利用できる「プロメテウス 4枚組コレクターズ・エディション」が受賞。「“映画の百科事典”的な使い方もでき、BDの楽しみ方が広がる」としている。

　「ベストレストア/名作リバイバル賞」は、モノクロの表現が高く評価された「シンドラーのリスト　製作20周年アニバーサリー・エディション」。「階調の豊かさだけでなくノイズ除去とのバランスが素晴らしく、公開当時のフィルムの質感を忠実に復元する丁寧な作業の勝利」としている。

プロメテウス 4枚組コレクターズ・エディション

シンドラーのリスト　製作20周年アニバーサリー・エディション

　「ベストBlu-ray3D賞」は、幻想的な映像表現なども話題となった「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日 4枚組コレクターズ・エディション(特製ブックレット付)」で、物語と3D表現が高く融合した点などが受賞の理由として挙げられた。「3Dメガネを掛けているのを忘れるくらい自然で、とって付けたような演出が無い」としている。

ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日 4枚組コレクターズ・エディション(特製ブックレット付)

審査委員を務めるAV評論家の藤原陽祐氏から、20世紀フォックスの代表者にトロフィーが贈られた。ハードウェアメーカーも含むDEG会員に対し、20世紀フォックスから「もっと3Dを頑張りましょう」との力強い訴えもあった

　各賞にノミネートされた作品から選ばれる「審査員特別賞」は、ディズニー/ピクサー作品の「モンスターズ・ユニバーシティMovieNEX」。最新CG技術によるモンスターの肌や毛並みといった質感の表現力などが認められた。パッケージソフトとネットでの動画配信を組み合わせた新しいソフトの形態「MovieNEX」の第1弾ソフトとしても話題となった。プレゼンターを務めたAV評論家の本田雅一氏は、「CGでいろんな質感を一つ一つ丁寧に作って、モンスター一匹一匹に愛着が持てる個性がある。画質/音質を含め総合力で非常に優れており、審査員が皆に知ってほしいと思った作品」と受賞の理由を説明した。

　一般投票のみで決定された「ユーザー大賞」は、2013年のGfK Japanランキングなどを参考に19作品をノミネート。「BDAマイスタークイズ」サイトにて投票が2013年12月2日～12月25日に行なわれ、今回は11,973票が投じられた。受賞したのは、ももいろクローバーのライブ「ももクロ 秋の二大祭り『男祭り+女祭り2012』」。男性ファン/女性ファンそれぞれに向けて行なわれたライブの映像。プレゼンターを務めた日経エンタテインメントの小川仁志編集長は、ももクロの魅力について「セットリストにもある『全力少女』という言葉に象徴されている。何でも一生懸命やる姿がファンに共感を呼ぶ。ライブと同じような元気をもらえるBD」と述べた。

モンスターズ・ユニバーシティMovieNEX

本田雅一氏

ももクロ 秋の二大祭り「男祭り+女祭り2012」

日経エンタテインメントの小川仁志編集長

左から、アンバサダーの吉本美憂さん、「ライフ・オブ・パイ」でグランプリを獲得した20世紀FOXの代表者2名、竹中直人さん、麻倉怜士審査委員長

　上記の受賞作品のなかから、グランプリを獲得したのは、Blu-ray 3D部門でも受賞した「ライフ・オブ・パイ」。遭難した主人公とトラの乗る船を無数のトビウオが通り過ぎるシーンなど、ダイナミックな3D映像が、ストーリーと密接に関わっている点などが受賞の理由として挙げられ、「本作の画質は今後のBDが目指すべきひとつの基準になる」と、審査員の意見が一致したという。

　審査委員長を務めるAV評論家の麻倉怜士氏は、「作品性、画質、トータルでグランプリにふさわしい。トビウオのシーン(チャプター16)では、21:9のレターボックス表示だが、そのフレームを魚が飛び越えた革命的な3D効果があった。ブックレットなどパッケージならではの付加価値もあり、今年を代表するNo.1」と評した。

　プレゼンターは、アン・リー監督の大ファンで作品を観続けているという竹中直人さんが務め、20世紀フォックスの代表者にトロフィーを手渡した。竹中さんは「劇場で観て圧倒されて、自宅で3Dで観て、あまりの美しさに想像を絶した。本当にきれいで、夢を見ているような世界だった」とコメントした。

　20世紀FOXでは、今回のグランプリを受けて、現在2D版のみというBDレンタルに、Blu-ray 3D版も加えることを検討することも表明。「本当は買っていただきたいが、もし観てから買いたいという人がいたら、レンタルで観てから買っていただければ」とした。

竹中直人さん

麻倉怜士審査委員長が講評を述べた

受賞した各社の代表者と審査委員、アンバサダー