HiVi × AV Watchコラボ

4Kテレビ正しく見てる? REGZA Z9Xで学ぶ4K体験のイロハ

基本編:距離や明るさ設定などで最適な視聴体験を探る

「HiVi」に聞く、4Kを“きちんと見る”ということ

 家電量販店のテレビコーナーなどを覗いてみると、まず目に入るのは「4K」の文字。2014年夏、テレビ関連の話題といえば4Kだ。テレビメーカーは各社4Kテレビを発売中で、販売店でも大きなコーナーで展示されている。また、4K放送や配信の動きも活発で、6月2日からは4K試験放送がCSデジタルの「Channel 4K」でスタートし、6月12日開幕のサッカーワールドカップも4Kで放映予定。さらに、10月には「ひかりTV」の4Kビデオオンデマンドサービスも開始予定など、4Kという言葉が毎日のように目に入ってくる。

4Kテレビの正しい視聴の仕方を学ぶ

 ただ、対応製品も増え、放送もスタートしてきているものの、「4K」という言葉だけが一人歩きしている感もある。現在メインのフルHDと比べて縦横それぞれ2倍、3,840×2,160ドットの解像度で高精細な映像が見られる、ということは頭ではわかっていても、4Kテレビの実力はどんなものなのか、あるいは4Kネイティブコンテンツが少ない今の段階で4Kテレビを選ぶことにどんな意味があるのか、正しく把握・理解している人は少ないのではないだろうか。

AV評論家の山本浩司先生

 何を隠そう、筆者も4Kテレビは家電量販店で眺めたことがある以外ほとんど未体験といってもいいレベル。情報としては毎日のように目にしても、「実際に使ってみた」ことは実は無いのだ。

 そこで今回、オーディオビジュアル専門誌「HiVi」を発行している株式会社ステレオサウンドにお邪魔させていただき、東芝の最新4Kテレビ「REGZA 58Z9X」(58型)で実際に映像を鑑賞しながら、AV評論家である山本浩司先生に4Kの基礎から応用まで、マンツーマンでレクチャーしていただいた。

 基本編の今回は、4Kテレビを鑑賞する際に最低限知っておきたいポイントをご紹介したい。REGZA Z9Xシリーズの正しい見方、設置方法、今4Kテレビを選ぶ理由など、4Kテレビを所有している人はもちろん、まだフルHDテレビで満足している人も参考になるところがあるはずだ。

今回のメインとなる東芝の4KテレビREGZA 58Z9X(58型)
今回使用した機材。BDプレーヤーはPanasonicのBZT9600
ヤマハのAVアンプRX-A1030
スピーカーはKEF LS50を使用

4Kテレビを鑑賞する際の最適な距離とは?

 みなさんはテレビを見る時、画面からどれくらい離れているだろうか。我が家にあるのは37インチのフルHDテレビ(REGZA 37Z1S)なのだが、普段は2〜3mの間で視聴している。2mちょうどの距離だと、けっこう近いかなと思える感覚だ。部屋の広さや画面の大きさにも左右されるだろうから、メジャーがあればちょっと測ってみてほしい。

画面からの距離を測っていただいた

 もっと遠くから見ている、という人はいても、同じようなサイズのテレビで常に2mより近いところから見ている、という人はあまりいないんじゃないかと思う。しかし、山本さんの話によれば、たとえば50インチ以上のフルHDテレビの場合は、「画面高(ベゼルは除く)の3倍」の距離が視聴するのに最も適したポジションとのこと。我が家のテレビを仮にこの法則に当てはめてみると、テレビの画面高が約46cmなので、3倍は138cm。つまり普段見ている2〜3mは「離れすぎ」ということになる。

 「画面の高さ×3」の視聴距離が最適とされているのには2つの理由がある。「フルHDテレビの画素構造が目立ちにくい」から、というのが山本さんいわく1つ目の理由。もう1つの理由は、人間の目の水平視野角で30度以上に相当する面積を画面が占めることになり、「映像への没入感が一気に高まる」ため。それ以上近づくとフルHDでは画素(ドット)の粗さが目立ち、離れると臨場感が損なわれてしまう。

 それに対し4Kテレビでは、「画面の高さ×1.5」の距離が基準になってくるという。今回テストに使用したZ9Xは58インチ、画面高は72.1cmで、その1.5倍は108cm強。実際にその位置に座ってみたところ、視野のほとんどが画面で覆われる。これだけの大画面でありながら今までの倍も近づいていいとは、にわかには信じがたい……。

50インチ以上のフルHDテレビで適しているとされる「画面の高さ×3」だとこれくらい
4Kテレビの基準となる「画面の高さ×1.5」の距離は、画面が眼前に迫ってくる感じだ

 ところが、「画素が詰まっているので、近づいて見られる」のが4Kのすごいところだという。単純に考えて同じ画面サイズのフルHDに比べ画素が4分の1の大きさになっているから、近づいてもドットの粗さが目立つことは全くない。水平視野角は60度相当。この角度だと目を大きく動かすことなく、画面の隅々まで無理なく見渡すことができ、かつ臨場感を最大化できるのだとか。逆に言えば、「大画面だからといって離れて見なくてもいい」のが4Kの利点というわけだ。

 60度の視野角を他でたとえれば、映画館のプレミアムシートの最前列、あるいはルーカスフィルムのスクリーニングルームに1つだけ白い布のかかっているジョージ・ルーカスの専用席がそれに当たる、とのこと。「水平視野角60度の位置は、映画製作者にとっても理想のポジションと言うことができる」と山本さん。

 もちろん、1.5倍というのはあくまで目安。カジュアルにテレビを見る、という場合であれば、画面の高さ×2倍でもいいし、フルHDと同様に×3倍でもいい。ただ、「映画を集中して見たい」、「没入したい」といった時には、画面の高さ×1.5倍が基準となる。

 そして、視聴時は部屋を暗くした方がいいとも。ここで大きな疑問が浮かんだが、ひとまず「なぜ部屋を暗くする必要があるのか」を聞いてみよう。

没入感を減退させる“ノイズ”を取り除く

 ステレオサウンドの試聴ルームは、照明を最も明るい設定にしても50ルクス程度とのことで、やや薄暗い。雰囲気たっぷりに4K映像を楽しむことができそうに思えたが、映像に没入したい時はこれよりもっと暗く、完全に消灯した「全暗」にして見るのがおすすめと山本さん。構えて見ることのないニュース番組やバラエティ番組の場合はともかく、映画などの映像作品を鑑賞する時は、山本さん自身も全暗状態で視聴するのが基本だという。

 どうして部屋を暗くするのか。「画面に映し出されている世界とは異なる、周囲にある日常の家具や道具が見えてしまうから。そういうものは“視覚的”ノイズとなる」のだそう。たしかにSF映画を見ている最中に、視界の端にその作品世界とはかけ離れた畳やふすま、ゴミ箱なんかがあると違和感を覚えるかもしれない。照明自体が画面に映り込んだり、自分の姿が映ってしまうのも“冷める”要因になる。

明るい部屋だと映像以外のものがどうしても目に入ってしまう
全暗では映像だけに集中できる。いつの間にか身を乗り出してしまう筆者
テレビの背面から斜め上に向けて間接照明を作るのもおすすめ

 山本さんの場合は、さらに他のAV機器のLEDや液晶表示もディマー機能を使ってオフにしている。画面だけが光っている状態にして、映像の世界に完璧に没入できる環境を整えているわけだ。実際に全暗にすると、テレビ画面以外のものが視界に入ることはほとんどない。ちょっと近すぎると思ってZ9Xの画面から1.5mほどの距離に後退して視聴していた筆者だが、ぽっかり浮かび上がった画面の中で繰り広げられる映像に引き込まれ、いつの間にか身を乗り出して結局本来の108cmの距離から見る形になっていた。

 とはいえ、真っ暗闇の中で映像を見続けるのはさすがにつらい、という人もいるだろう。そのような人には、「テレビの後ろに白熱電球を置いて、下から壁に向けて間接照明を作るとよい」とのこと。こうすれば映り込みを最小限に抑えつつ、没入感を大きく損なうこともなく、ほどよい暗さで画面上の派手な演出に疲れることもない。むしろムーディーな雰囲気を作り出せることもあって、カップルでの映画鑑賞にはぴったりかも、なんて思ったりもした。

適切な明るさ設定が正しいテレビ視聴の第1歩

 さて、ここまでを簡単にまとめると「テレビに近づいて」「部屋を暗くする」のがよりよい4Kテレビの視聴スタイル、ということになるわけだけれど、ちょっと疑問に感じた人もいるはずだ。30代の筆者もそうだが、子供の頃から親にはさんざん「テレビから離れて見ろ」と言われ、アニメなどでは「部屋を明るくして見てね」と注意を促されてきたではないか、と。それとは正反対の考え方で、本当に問題ないのだろうか。

Z9Xの「映像メニュー」

 疑問をぶつけると、「そこで考えなければいけないのが、テレビの映像メニューのモードなんです」と山本さん。Z9Xに限らず、東芝のREGZAシリーズのテレビには、数年前のモデルから「映像メニュー」という設定項目が用意されている。動画コンテンツの場合、Z9Xではこの映像メニューから「おまかせ・あざやか・標準・ライブプロ・映画プロ」など計8つのモードを選ぶことが可能だ。

 山本さんによれば、「“あざやか”は店頭の強い照明の下でもきれいに見える、店頭で勝負している絵」であって、画面はかなり明るく調整される。そのため、部屋が暗い時は「標準」から「映画プロ」へと段階的に画面の明るさが抑えられるモードを選んだ方がよい。実際には画面の明るさ以外の細かなパラメータも変化しているが、映像メニューのモードは単純に「周囲の明るさによって選ぶ」と考えて差し支えない、とのこと。

 では、Z9Xで8つもあるモードのうちどれを選べばよいのかというと、ズバリ「おまかせ」だ。「おまかせ」モードは、テレビ本体に内蔵している照度センサーによって周囲の明るさを検知するほか、テレビ放送のEPG情報などを活用し、自動で画質や画面の明るさを調整するもの。東芝以外のメーカーのテレビが同様の機能を備えていることもあるが、「特にREGZAの“おまかせ”は完成度が高い」と山本さんは太鼓判を押す。

 Z9Xの「おまかせ」モードでは、照度センサーによる明るさの検知にあたり、「室内環境設定」の内容が反映されるようになっている。「室内環境設定」では、室内照明の種類や、照明以外の“外光”の有無に加え、室内の“壁の色”という細かな条件まで指定でき、これらを考慮に入れた画質調整を自動で行う。あらかじめ自分の部屋に合わせた設定をしておくだけで、その時の部屋の明るさに応じた最適な画質で映像を表示するのだ。

「おまかせ」モードを使う際には「室内環境設定」をあらかじめ設定しておきたい
室内照明は電球色と蛍光灯色の2種類から選べる。外光の有無も指定可能
室内の壁の色まで選択できるという徹底ぶり
明るさ調整

 「“おまかせ”モードが、よりよい視聴のための第1ステップ」と強調する山本さんだが、「おまかせ」以外を選ぶシチュエーションはあるのだろうか。それについては、「照度センサーの搭載位置と照明の当たり方の関係で、正しく明るさを検知できないこともある」と明かしてくれた。その場合、「おまかせ」モードのまま「明るさ調整」の項目を選択し、昼、夜それぞれでその時の部屋の明かりにマッチした明るさに微調整できる。

 さらに映像コンテンツに合わせて「もっと画質設定を追い込みたい時」に、「ライブプロ」や「映画プロ」を選んだり、より細かい画質調整にチャレンジすることになる、というわけ。

部屋の明るさに合わせた画質設定が重要。まずは「おまかせ」から始めよう

 改めて説明すると、「テレビに近づいて」「部屋を暗くする」視聴スタイルは、あくまでも「画面を適切な明るさに設定していること」が前提。4Kテレビかどうかにかかわらず、一度所有しているテレビの設定画面に「おまかせ」モード相当の機能がないか確認し、正しい明るさに設定して、そのテレビ本来の実力を引き出してみてはいかがだろう。

4Kネイティブコンテンツが少ない今、4Kテレビを選ぶ理由

 この日は山本さんにZ9Xや4Kのポイントを細かくレクチャーしていただきながら、ディズニー映画「Frozen(日本版タイトル:アナと雪の女王)」をはじめとする新旧の映画コンテンツを視聴した。映像を目にした印象は「さすが4K」と言えるもので、「Frozen」では微細な氷の粒が舞う様子、暗い星空の微妙な濃淡と光の表現、米粒のように小さな人物でもしっかり見分けられる精細さを実感できた。

 だが実のところ、これらの映像は4K解像度ではなく、フルHDのBlu-rayディスク(BD)コンテンツである。筆者には4Kに見えたのだが……。

 5月末の時点で日本国内で4Kネイティブの映像を楽しむ方法は限られている。冒頭で書いたように4K放送はまさに始まったばかりであり、今のところ4K撮影が可能なビデオカメラや、4K外部出力対応のPCをHDMIポートから入力するか、デジカメで撮影した4K解像度相当の写真をメモリカードから読み込んで表示させる、といった手段しかない。

 それでも4Kは買い時だと山本さんは語る。価格面でこなれてきたこともあるが、フルHDの映像であっても、最新の映画のように4K以上の解像度で撮影されたものは、REGZAの「レグザエンジンCEVO 4K」による超解像技術で4K相当にアップコンバートされることで、4Kネイティブの映像と遜色ない画質で楽しむことができるようになっているのが大きい。

 また、元々フルHD解像度未満の地上デジタル放送も最適な画質に変換される。フルHDの大画面テレビで見た時にざらつきがちなテロップ周りも、きわめてノイズが少なく、すっきりクリアに描写されているのを実感できた。Z9Xであれば、大画面であってもテレビ放送を破綻のない映像で見ることが可能なのだ。

 “アップコンバート”という言葉からは、どうしても「4Kネイティブ以下」という否定的なニュアンスが感じられてしまうかもしれないが、少なくとも筆者が「Frozen」を「BDではない特別な装置を使って再生しているのでは」と思い込んでしまうほどに高画質であったことは付け加えておきたい。

 もちろん、テレビ放送視聴が中心という人には、4Kテレビはまだ響かないのかもしれない。山本さんも「映像に没入したいモチベーションのある人」にマッチするプロダクトだと話していた。しかしながらその言葉には、映像を100%楽しみたいユーザーとって、Z9Xシリーズは現時点で最高のエクスペリエンスを与えてくれる4Kテレビである、という意味も含まれている。

 なぜZ9Xが映像を楽しむのに最高の4Kテレビなのか。その理由は次回の応用編に譲るが、山本さんの「マニアの気持ちに全部応えます的な懐の深さが、Z9Xにはある」というセリフが、その疑問に対する明快な回答になっていると言えそう。というわけで、次回はZ9Xの画質に関する設定をさらに深掘りし、その“懐の深さ”をじっくり伺っていきたい。

(次回は6月17日掲載予定です)

次回の応用編ではZ9Xのさらに細かい画質設定まで踏み込む

告知

今回の取材の内容は、6月17日発売の「HiVi7月号」でも、違う観点から紹介しています。あわせてお楽しみください。

HiVi 2014年7月号

FEATURE
いよいよ放送開始! 4Kテスト放送最速チェック

2014年夏のベストバイ決定!

INTEREST
LGが目指す、オンリーワン4K画質とは 藤原陽祐
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HiVi 2014年07月号

(協力:東芝)

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、現在は株式会社ライターズハイにて執筆・編集業を営む。PC、モバイルや、GoPro等のアクションカムをはじめとするAV分野を中心に、エンタープライズ向けサービス・ソリューション、さらには趣味が高じた二輪車関連まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「GoProスタートガイド」(インプレスジャパン)、「今すぐ使えるかんたんPLUS Androidアプリ大事典」(技術評論社)など。