プレイバック2014

ネット配信系が「じんわり始まっていた」 by 西田宗千佳

 今年なにを買ったか、なにが面白かったか、ということをAV系ガジェットの軸で語ろうとするのは、わりと難しい。個人的には、これほど「機器を買う」という面での心の盛り上がりが小さかった年もないな、というのが正直なところだ。こういう仕事だから、もちろん、色々買っている。だが、そのどれもが「これ」という凄みに欠けている気がする。ガジェットという軸で見れば、今は技術爛熟・デバイス進化の端境期であり、お買い得だが個性に欠ける製品が多かった、ということはあろう。パナソニックのLUMIX CM1のように、「手に入れば買っていたろう」と思うものもあるし、4Kテレビのように「確かにお買い時になってきたが、個人的には来年回し」というものもある。という点を考えると、来年は色々物欲を刺激される年になりそうだ……という予感がしている。

(日本で発売されていない)パナソニックのLUMIX CM1

 他方、自分の生活を見た時に、じんわりとではあるが「変わってしまったな」と思う部分もある。それは主に、コンテンツの買い方と見つけ方だ。

 資料として、情報源として、エンターテインメントとして、毎年「書籍」にはけっこうな額を支払っている。そのうち、電子書籍の占める比率は、いつのまにか3割を越えていた。毎月、自分の支出をチェックするたびに、雑誌とコミック、小説といったエンターテインメント系書籍の買い方が、自分の中で急速に変化しているのに気付かされた。それらを読むために、iPad Air(今はAir2に買い換えている)の出番は増えている。

iPad Air 2

 ゲームもそうだ。PlayStation 4はいいゲーム機だ。だが、そこには驚きはない。画質は良くなっているが、ゲームの本質が極端に変わったのではない。PS4のゲームの新しさに興奮して眠れない……なんてことはない。

 だが、PS4購入以降、ちょっとした暇がある時や、気になるゲームがある時、ゲームの配信映像を見るようになった自分がいる。私はゲーム専門のライターではないので、ゲームソフトの発売情報や中身については、一般的なゲーム好きの方々と同じような情報しか持っていない。多忙なこともあり、ゲームの情報収集にかけられる時間はどんどん減っている。PS3の時代、特に後期には、自分のアンテナに相当強くひっかかったものでないと、購入して遊ぶに至らない状況になっていた。

 しかしPS4では、その辺の効率が良くなった。気になったものは、とりあえず動画を検索してみればいいからだ。発売後ならば、相当な数のプレイ動画が見つかり、そのゲームがどんなゲームで、自分にあったものなのかが分かる。もちろん、すべてがPS4のシェア機能で共有されたもの、というわけではない。PCを使って作られた動画の方が、実際には多いのだと思う。だが、PS4の発売以降、プレイ動画の共有が気軽になった結果、私のような人間の目にも触れやすくなったのだろう。プレイ動画からゲームを購入する場合も多いので、PS4では、発売時に買った1本をのぞき、自分はすべてダウンロード購入になっている。

PlayStation 4
PS4 Ver.2.00では、ゲーム動画のYouTubeアップロードに対応した

 映像や音楽もそうだ。すべてがネットから見られるわけでも、購入できるわけでもない。だが、「昔のあの曲を聴きたい」と思った時、Music Unlimitedのようなストリーミング配信内で見つかる可能性もかなり高くなってきた。NHKや日テレの番組ならば、リアルタイムで見れなくても、見逃し配信でチェック出来る場合も増えている。

 日本は「オンラインコンテンツが弱い」と言われてきた。「電子書籍元年は明けない」とか「ダウンロード配信もストリーミング配信もマイナーだ」とか言われる。確かにその通りだ。

 しかし、改めて「2014年の自分の消費行動」を見ると、以前に比べ、よりネット側に寄っかかりつつある、と感じる。寄っかかることを許容するだけのコンテンツが、きちんと「販売される」ようになってきているのだ。

 ただし現状、そういったことは、積極的に「オンラインでコンテンツを消費したい」と思っている、私のような人間でないと感じられないかもしれない。新しいものが出ても、人はなかなか気付かない。オンラインならばなおさらだ。「電子書籍に読むものはない」「最近のゲームはつまらない」「ネットで音楽は買えない」という言説は間違いだと断言できるが、その認識が広がるには、時間をかけるか、爆発力のあるサービスの普及か、どちらかが必要だ。

 サービスとデバイスが2015年に変化する、という予兆は見え始めている。その辺は継続的に取材してお届けしていくつもりだが、読者の皆さんも、ちょっとそういう観点で周囲を見渡してほしいのだ。意外と、もう便利になっているのに、気付かないだけ、という部分もあるかもしれませんよ。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
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